2章 - 九州大学大学院経済学研究院・大学院経済学府・経済学部

2016年度 九州大学 経済学部 専門科目
環境経済学
2016年10月14日,21日
(10月26日改訂版)
九州大学大学院 経済学研究院
藤田敏之
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2 外部性と市場の失敗
2.1 外部性(1)
外部性(外部効果)・・・ある経済主体の市場における行動がその市場
に参加しない主体の厚生に影響を与えること
外部経済(良い影響)
技術的外部性(市場を通じない影響)
外部性
外部不経済(悪い影響)
金銭的外部性(市場を通じた影響)
「外部経済」,「外部不経済」の代わりに「正の外部性」,「負の外部性」
という表現がなされることもある
本講義では技術的外部性のみを考える
Kyushu University UI project Kyudai Taro,2007
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2.1 外部性(2)
●技術的外部経済の例
・隣家の庭に咲く花がもたらす効用
・養蜂業者と果樹園(双方向)
・教育による文化水準の向上
●技術的外部不経済の例(外部費用がもたらされる)
・騒音による精神的苦痛
・鉄道機関車の火粉による森林焼失(ピグー)
・工場の排水による漁獲費用上昇
・CO2排出による地球温暖化(双方向)
以下,外部性の存在により効率的な資源配分がなされないことをモデ
ルにより説明する
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2.2 消費による外部不経済(1)
●部分均衡モデル
愛煙家A氏と嫌煙家B氏が同居している.Aによるタバコという財の消
費はAに便益をもたらすが,同時にBに被害(外部費用)をもたらす
金
額
C
Aの限界便益
社会的限界費用
G
P
F
E
H
OP:タバコの価格
CD:Aの需要曲線
Bの限界被害
(限界外部費用)
O
Q* Q
D タバコの数量
Aの純便益を最大にする均衡消費量はOQ → Aの純便益 CPE
Bの被害 FPE
総便益 CPG-FGE
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2.2 消費による外部不経済(2)
金
額
C
Aの限界便益
社会的限界費用
G
P
F
E
H
Bの限界被害
(限界外部費用)
O
Q* Q
D
タバコの数量
しかしタバコの量をOQから少し減らすことによるBの被害減少分(青)
がAの便益減少分(赤)よりも大きいことから,消費量の減少によるパレ
ート改善の余地があることがわかる
パレート最適なタバコの量はOQ*→ Aの純便益 CPHG
Bの被害 GPH
総便益 CPG (均衡よりFGE増加)
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2.2 消費による外部不経済(3)
金
額
C
Aの限界便益
社会的限界費用
G
P
F
市場の失敗による損失
E
OQ:市場均衡
OQ*:パレート最適
H
Bの限界被害
(限界外部費用)
O
Q* Q
D
タバコの数量
●以上の分析からわかること
1)市場均衡では外部不経済をもたらす活動は過大になる→ 市場の失敗
外部経済をもたらす活動が過小になることも同様に示すことができる
2)しかし外部不経済を完全になくすのが最適であるわけではない
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2.3 生産による外部不経済(1)
次に一般均衡モデルを扱う(ある財の消費が他の財の市場に与える
影響を考慮)
●モデル
製紙工場が川に汚水を流すことによって下流での漁獲高が減少す
る状況を分析する
X:紙の生産量,Y:魚の生産量
生産要素は労働のみ.各財に投入される労働量をLX, LYとおく
(一定)
生産関数
仮定:
(外部不経済)
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2.3 生産による外部不経済(2)
●生産可能曲線
以上の仮定のもとで生産可能性曲線が下図の青線のように描かれる
Y
生産可能性曲線の接線
Y1
の傾きの絶対値
=限界変形率
(社会でXを1単位増加させる
ためにYをどれだけ減らす必
要があるか)
Y2
LY
LY1
LY2
X1
O
LX1
LX2
L
X Taro,2007
Kyushu University UI project Kyudai
X2
X
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2.3 生産による外部不経済(3)
●限界変形率の評価
ある状態からLXをΔL増加させてX, Yの変化を調べる
Xの増加は
LYはΔL減少するので
よって限界変形率は
労働シフトに 外部不経済
による影響
よる影響
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2.3 生産による外部不経済(4)
●市場均衡
生産者行動
賃金を1と基準化してX, Yの価格をpX, pYとする
各部門の生産者の利潤最大化より
よって
消費者行動
消費者iのX, Yの消費量をXi, Yi,効用関数をui(Xi, Yi)とすると効用最
大化より
(価格比=限界代替率)
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2.3 生産による外部不経済(5)
●市場均衡(続き)
社会的効用関数を
とおくと,
となるが,任意のiに対して
が成り立つため,
以上より均衡では
が成り立つ
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2.3 生産による外部不経済(5)
●均衡の非効率性
パレート最適な生産量の組合せは社会的効用を最大にする点であ
り,そのための条件は
(限界変形率=限界代替率)
右図は生産可能性曲線を再掲したものである
Y
パレート最適点は生産可能性曲線が無
差別曲線と接する点P
一方
無差別曲線
(u(X,Y) = 一定)
P
より均衡での
M
限界代替率は限界変形率よりも小さい
右図より均衡は生産可能性曲線上でP
の右下に位置することがわかる(点M)
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O
X
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2.3 生産による外部不経済(6)
●以上の分析よりわかること
市場均衡では紙の価格が相対的に低く,紙の過大生産,
魚の過小生産が生じ,結果として社会の得る効用が最適
な状態と比べて小さくなってしまう
紙の相対価格が紙の生産による外部不経済を反映しない
ことが原因
→ ここでも市場の失敗が生じることが示される
これらの市場の失敗を是正するための政府の介入(政策)
が必要になる
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参考図書
●部分均衡モデル
細田衛士・横山彰『環境経済学』有斐閣アルマ,第2章,
pp .51-57.
●一般均衡モデル
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社,第2章,pp. 4853.
時政・薮田・今泉・有吉『環境と資源の経済学』勁草書房,
第2章,pp. 30-32.
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