平成24年度(2012年度) 英語科教育に関する研究 中学校英語科における確かなコミュニケーション能力の育成 -「書くこと」と「学び合い」を生かすフィードバックの試み- 研究員 中川 恵実子 キーワード フィードバック 気づき(noticing) 言語活動の充実 「話すこと」と「書くこと」 学び合い コミュニケーション能力の育成 1 研究の背景と目的 中学校学習指導要領解説外国語編では、発信力 や文構造等を活用する力を重視する観点から、4 技能を統合的に活用できるコミュニケーション 能力を育成するとともに、とりわけ、その基礎と なる文法については、言語活動と一体的に指導す るものとしている。これは、平成20年の中央教育 審議会答申での指摘によるものでもある。 また、外国語能力の向上に関する検討会による 「国際共通語としての英語力向上のための5つ の提言と具体的施策」では、グローバル社会に通 用する確かなコミュニケーション能力を育成す る必要性が示されている。 これらを踏まえ、確かなコミュニケーション能 力の育成には、考えや気持ちを伝え合うなどの活 動を通じて言語材料の定着を図り、さらに、自ら の表現について思考・判断する場面を活動の中に 取り入れる必要があると考える。 一方、外国語の習得には、インプット、インテ イク、アウトプットの三つのプロセスがあり、ア ウトプットからインテイクへのフィードバック での気づき(noticing,言語の特徴等への学習者に よる気づき)が有効である。 そこで、本研究では、生徒が自らの表現につい て思考・判断する言語活動として、「書くこと」 と「学び合い」を生かすフィードバックを試みる ことにより、本主題に迫ることとした。 2 研究の方法 本研究では、自らの表現に対する気づきを促す にあたり、 「書くこと」と「学び合い」を生かす フィードバックが有効かどうか明らかにする。フ ィードバックとして、生徒が、英語で話したこと をもとに友だちと書いて振り返る場を活動に仕 組むことで、自らの表現に対する気づきが促さ れ、確かなコミュニケーション能力の育成につな がるか、実証授業と調査から検証した。 実証授業は、中学校第3学年の生徒を対象と し、 「書くこと」と「学び合い」を生かす言語活 動を一時間につき毎回15分ずつ、全16時間実施し た。毎回の活動には、①気づきのきっかけをつく るために、話す前に「ペアで書く」②自らの表現 への意識を高めるために、「4人で話す」③表現 力の高まりにつながる気づきを促すために、話し た後に「元のペアで書いて振り返る」という3段 階で行った。また、単元全体で、題材・言語材料・ 生徒の表現力に応じて、スモールステップを踏ん だ。 調査は、生徒対象に、「書くこと」と「学び合 い」を生かすフィードバックに対する意識と、英 語力との2点について実施した。前者は質問紙に よるアンケート、後者は「話すこと」に関する面 接式テストにより行い、実証授業の事前事後で比 較分析した。 3 結果 実証授業では、発話量の増加とともに、自分た ちの表現がどう伝わったか等についての意識の 高まりが見られた。さらに、自分たちの表現に対 する気づきや調整とともに、表現力の高まりが見 られた。また、 「書くこと」と「学び合い」を生 かすフィードバックに対する意識調査からは、 「楽しい」「力が付く」とする傾向が、面接式テ ストからは、表現の量・質・内容についての向上 が見られた。 これらのことから、 「書くこと」と「学び合い」 を生かすフィードバックを継続的に行うことに より、自らの表現に対する気づきが促され、確か なコミュニケーション能力の育成へつながるこ とが期待される。 4 結論 「書くこと」と「学び合い」を生かすフィード バックは、自らの表現に対する気づきを促し、確 かなコミュニケーション能力の育成につながる。 -12- 英語科教育に関する研究 平成24年度(2012年度) 英語科教育に関する研究 研究構造図 確かなコミュニケーション能力の育成 フィードバック インプット input インテイク intake アウトプット output 気づき(noticing) 書くこと 学び合い 言語材料の活用としての「書くこと」から 英語で伝える「学び合い」から 伝わる表現を考えるための「書くこと」へ 英語で考える「学び合い」へ 気づきと調整・表現力の高まり ペアで書いて振り返る 意識の高まり 4人で話す 気づきのきっかけ ペアで書く 自らの考えなどを相手に伝えるための発信力や 基本的な文構造等を活用する力の育成の重視 (中学校学習指導要領) -13-
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