インストラクターの表現力アップ 3~メッセージをもつ

尾陰由美子のちょっとひとこと
「インストラクターの表現力アップⅢ~メッセージを持つ~」
最近の音楽業界は、CD 販売の売上の伸びより、コンサート市場の売上が伸びているようです。どうやらポ
ップは、
「聴く」時代から「観る」時代に変わってきたとのことです。手軽にいつでもどこでも音楽を聴くこと
ができる昨今ですが、やはり LIVE の『生』がいいとうことでしょうか?確かに、コンサートに行くとアーテ
ィストのすばらしい演奏だけでなく、コンサート会場に集まってきた人たちと同じ時間、空間を共有するエネ
ルギーにストレスが発散できたり、楽しい気持ちになったり、やる気が出てきたりするものです。フィットネ
ス業界もそろそろ音楽業界のように「Wii」や「ビデオエクササイズ」から「やっぱりインストラクターの生
のレッスンがいい!」と言われるようになりたいものです。
そのためには、何が必要なのでしょうか?
音楽アーティストとインストラクターは、何が違うのでしょうか?
私は、9 月初旬に山中湖でおこなわれた山根麻以さんの野外コンサートに行ってきました。富士山の麓の山
中湖でおこなわれるこのコンサートは、今年で 3 回目になるそうですが私は初参加でした。通常のコンサート
と違って、地元のアーティストたちがパーカッションの演奏をしたり、フラダンスを踊ったり・・・さまざま
なステージが繰り広げられていました。観客は、芝生の上にシートを引いて、自由に飲食や歓談をしながらゆ
っくりとステージのパフォーマンスを観たり、一緒に踊ったり、中には犬と一緒に走り回ったりと、自由に思
い思いの時間を過ごしています。でも、そこには優しくゆったりとした時間が流れていました。時間が経つ中
で、陽の光の変化が富士山と山中湖の湖面をどんどん変えていく風景がそこにはありました。自然がもたらし
た演出です。やがて、陽が西のほうに傾きかけてきた頃、山根麻以さんのコンサートが始まりましたが、約 3
時間、ステージに集中する素敵な時間となりました。一曲、一曲に想いがこもり、自然と調和し、観客と融合
し、そのたびに自分の感情が変化する不思議なステージでした。そこに集まった多くの人たちが、さまざまな
想いで山根麻以さんのメッセージを受け取っていたように感じました。身体を揺らしながら聴いている人、静
かに微笑みながら聴いている人、何人かでダンスをしながら聴いている人、じっとステージを見据えて聴いて
いる人・・・同じ時間と空間を共有しながら、それぞれが違った味わいをし、それでもエネルギーが 1 つにな
っていくコンサートでした。
「人」はみな一様ではなくそれぞれです。それぞれが「エネルギー(気)
」を持っ
ています。そのエネルギーが集まったときに大きな力が生まれるような気がします。多くの人が作り出すエネ
ルギー、それを「人気」というのであり、それは元気ややる気をもたらします。
フィットネス業界においても「人気」のあるインストラクターは、参加者の笑顔を引き出し、モチベーショ
ンを上げ、リピートしたくなるようなレッスンを提供しています。
「人気」のあるフィットネスクラブもお客様
やスタッフの笑顔が満ちていて、楽しい空間が提供されており、また来たくなるような仕掛けもいっぱいあり
ます。しかし、昨今の不景気の中で、人件費の削減、施設のメンテナンスの遅延、イベントなどの縮小化は、
フィットネスクラブをつまらない空間にしている面も見られます。インストラクターにおいては、どうでしょ
うか?インストラクターとしての仕事に不安や不満を感じていたり、レッスンを頑張りすぎて疲れていたり、
プレコリオだけを覚えて提供できればいいということで、工夫が何もなかったり、お客様の為にサービス力を
高める努力を後回しにしていたり・・・そんなインストラクターのもとに人は集まってくれるでしょうか?
私が思うのは、人気のあるインストラクター、フィットネスクラブにはメッセージ(想い)があるというこ
とです。それも本音のメッセージです。
山根麻以さんのコンサートを通して私が感じたことは、そこに確かな本音のメッセージがあるということで
す。そのメッセージの受け取り方は、人さまざまであり、その解釈もそれぞれだと思いますが、多くの人がメ
ッセージを受け取り、エネルギーに変えていたということです。そのメッセージをより伝えるためのツールと
して音楽があり、ステージがあり、自然が存在したのでした。私たちの現場に置き換えたときに、フィットネ
スクラブがあり、スタジオやプールがあり、プログラムなどのツールがあるわけですが、インストラクターの
メッセージは存在するのでしょうか?メッセージを届けているインストラクターには、自ずと人が集まってき
ます。そのメッセージに共感したり、感動したり、納得したり、心の充足感が得られるはずです。でも、もし
メッセージのないインストラクターだったら、プログラムの流れを単に提供するレッスンだったらどうなるで
しょう?そのようなレッスンに、インストラクターに人は集まるのでしょうか?人は、心がまず動かないと実
際の行動にはなかなか移れません。やる気が出ないと動きたいとは思いません。理屈でわかっていても、気持
ちが伴わないと運動をしようとは思いません。今までのフィットネスクラブ、インストラクターは理屈や運動
のメリットは伝えていたものの、運動を心で感じるアプローチはできていなかったのかもしれません。もっと
言うならば、心に届くメッセージを何もアプローチできていなかったのかもしれません。価格を下げ、新しい
プログラムを提供し、注目を浴び、興味を湧かせ、
「ちょっとやってみようかな~」という動機付けまでは、で
きていたかもしれませんが、実際にフィットネスクラブに来たときに、レッスンに参加したときに心に届くメ
ッセージを伝えていたのでしょうか?
今、フィットネスクラブは、新規入会者の開拓、新規入会者の継続に力を入れて、インストラクターにさま
ざまな研修をおこなっていますが、相変わらず「初心者獲得のためのプログラミングやコミュニケーション」
といったようなスキル習得の研修が花盛りです。箱の中身(メッセージ)を考えることなく、箱作りと包装紙
に手をかけているような研修を受けたインストラクターが届けるレッスンはどうなるでしょう?標準化された
均一のサービスが提供されるようになって、ある意味でのインストラクターの質は上がるものの、人気のある
インストラクターは育っていきません。フィットネスクラブ側は、スタジオプログラムなどグループレッスン
のメリットは十分にわかっているにも関わらず、人気のあるインストラクターを発掘しようとも育てようとも
思ってないのでしょうか?人が人を呼ぶように、まず、クラブのオーナーがメッセージを持ち、それをスタッ
フ全員が共有でき、フリーインストラクターを巻き込んで人気(人エネルギー)を高め、お客様を元気にして
いくことで、お客様自身が人気のある人に変化して新たな顧客を増やしていくという構図ができたなら、どん
なに素晴らしいことでしょう。そのためには、誰にも届くようなありきたりのメッセージや眉唾物のメッセー
ジではインパクトは弱いのです。対象(ターゲット)を明確にし、貴方だけに届けているという特別なメッセ
ージが必要です。いつでも誰でもフィットネスとなったフィットネスクラブに求めるのは難しいことですが、
インストラクターの皆さんならできるはずです。
自分のメッセージを特別な人に(対象者を絞って)
、本音(心から想いをこめて)で伝えていくことが・・・
メッセージを表現する勇気を持ちましょう!