3.形態と生理・生態 1)形態と生理 (1)樹体 常 緑 の 中 高 木 で 、品 種 に よ り 直 立 性 、開 張 性 、中 間 性 が あ る 。樹 齢 は 極 め て 長 く 、南 欧 に お い て は 樹 齢 が 1,000 年 以 上 の オ リ ー ブ 樹 が 見 ら れ る 。 土 壌 条 件 の よ い 土 地 で は 、 成 木 に な る と 樹 高 が 10m 以 上 に も な る 。 根 の 酸 素 欠 乏 に は 極 め て 敏 感 で 、他 の 植 物 に 比 べ 酸 素 要 求 度 が 強 い 性 質 を 持 っ て い る 。オ リ ー ブ が 一 般 的 に 浅 根 性 と い わ れ る の は 、耕 土 が 浅 く 孔 隙 量 の 少 な い 土 壌 が 原 因 し て い る た め で あ り 、深 い 土 壌 で は 根 も 深 く 伸 び 生 育 も よ く 、決 し て 浅 根 性 で は な い 。な お 、根 は 繊 維 の 発 達 が 劣 り 脆 く 、強 風 に よ っ て 倒 伏 し や す い の で 、風 当 た り の 強 い 所 で は 、常 に 支柱をしておく必要がある。 新梢は、前年枝の頂芽及びえき芽から発生するが、2 年生以上の枝の 陰 芽 か ら も 発 生 す る 品 種 が あ る 。前 者 は 直 立 性 の 品 種 に 多 く 、隔 年 結 果 性 が 強 い 。後 者 は 開 帳 性 の 品 種 に 多 く 、隔 年 結 果 性 が 弱 い 。枝 の 切 り 返 し 部 分 か ら の 不 定 芽 の 発 生 は 各 品 種 と も 良 好 で 、任 意 の 部 分 で の 切 り 返 しが可能である。 葉 は 革 質 披 針 形 の 単 葉 で 対 生 に 着 き 、品 種 に よ り 大 き さ 、形 態 、葉 色 、 毛 じ の 多 少 等 が 異 な る 。葉 表 は ク チ ク ラ 層 に 覆 わ れ て 光 沢 の あ る 灰 緑 色 で 、葉 裏 は 密 生 し た 毛 じ に 覆 わ れ 銀 白 色 を し て い る た め 、風 に 吹 か れ る とそよそよと反射して美しい。 (2)花と果実 花 芽 は 前 年 の 春 か ら 夏 に 伸 長 し た 枝 の 葉 え き に 、12 月 頃 か ら 生 理 的 に 分化を始め、形態的には翌年 3 月下旬頃に分化する。4 月上・中旬に萌 花後、花茎を伸長しながら急速に花器の形成・発達が進み、5 月中旬に はほとんど完成させて 5 月下旬~6 月上旬に開花する。 花 は 複 総 状 花 序 で 、白 色 の 小 花 を 1 花 序 10~ 30 個 着 生 す る 。直 径 3mm 程 度 の 合 弁 花 冠 で あ り 、4 片 の ガ ク と 1 雌 ず い 、2 雄 ず い を 有 し て い る 。 柱 頭 の 発 育 が 不 完 全 あ る い は 退 化 し た 不 完 全 花 も 多 数 発 生 す る 。不 完 全 花 の 発 生 は 冬 ~ 春 に か け て の 土 壌 の 乾 燥 状 態 、樹 体 の 栄 養 不 良 で 特 に 多 く な り 、完 全 花 と 不 完 全 花 の 割 合 は 品 種 や 年 に よ っ て 著 し い 差 が 見 ら れ る 。な お 、花 に は 蜜 が な く 、香 り は ほ の か に 香 る 程 度 で あ る が 、香 り 成 分 は 多 種 確 認 さ れ て お り 、オ ー デ コ ロ ン 等 オ リ ー ブ 香 水 と し て 利 用 さ れ て い る 。オ リ ー ブ は 、多 量 の 花 粉 を 飛 散 さ せ る 風 媒 花 で 、自 家 不 和 合 性 が強い。オリーブの不結実現象の原因の 1 つは自家不和合性にあるが、 品種によっては自殖能力があるものもある。 オ リ ー ブ は モ モ や ア ン ズ と 同 じ 核 果 類 に 属 す る 。果 実 に は オ リ ュ ロ ペ イ ン と 呼 ば れ る タ ン ニ ン 様 物 質 が あ り 、渋 味 が 強 く て 生 食 す る こ と は で き な い 。 果 実 は 、 外 果 皮 、 中 果 皮 ( 果 肉 )、 内 果 皮 ( 核 ) 及 び 種 子 ( 胚 乳 ・ 子 葉 ) に 分 か れ る 。 果 形 は 品 種 に よ っ て 異 な り 、 大 き さ も 1~ 10g 以 上 の も の ま で 様 々 で あ る 。外 果 皮 は 初 め 緑 色 を し て い る が 、成 熟 す る とともに緑黄色から赤紫色に変わり、完熟すると黒紫色に着色する。 果肉と種子にはオレイン酸グリセライドを主成分とするオリーブ油 が 含 ま れ 、 含 油 率 は 高 い 品 種 で 21% 、 低 い 品 種 で は 6.0% 前 後 で あ る 。 果実肥大と葉数との間には密接な関係が見られ、1 果当たりの葉数が 多 く な る と 果 実 は 大 き く な る 。 塩 蔵 用 出 荷 基 準 で あ る 横 径 14mm 以 上 の 果 実 を 確 保 す る に は 、‘ ミ ッ シ ョ ン ’ で 10 葉 、‘ マ ン ザ ニ ロ ’ で 5 葉 が 最 低 必 要 と な る 。な お 、葉 数 の 増 加 に よ っ て 果 実 は 肥 大 す る が 1 果 当 た り の 葉 数 が 20 枚 を 超 え る と そ の 効 果 は 認 め ら れ な く な る 。 2)気象と土壌 わ が 国 の オ リ ー ブ 栽 培 は 、導 入 当 初 は 不 結 実 現 象 が 多 く 見 ら れ た 。そ の 理 由 は 、結 実 に は 異 品 種 の 花 粉 が 必 要 で あ る こ と 、不 完 全 花 の 発 生 が 多いことへの知識がなかったことによる。 オ リ ー ブ の 栽 培 は 、温 暖 で 年 間 降 雨 量 が 少 な く 土 壌 の 排 水 が 良 好 な 所 が 適 地 と さ れ て い る 。気 象 条 件 は 、年 平 均 気 温 14~ 16℃ の 地 帯 で 栽 培 が 可 能 で あ る が 、1 月 の 平 均 気 温 が 10℃ 以 上 で は 花 芽 分 化 が 抑 制 さ れ 、15℃ 以 上 で は 不 可 能 と な る 。低 温 被 害 に は 樹 体 は 比 較 的 低 温 に 強 く - 12℃ 以 下 、果 実 は 緑 果 で - 3℃ 程 度 、熟 果 は そ れ よ り 抵 抗 力 が 強 い 傾 向 に あ る 。 オリーブ栽培の適地は降雨量の少ない地帯が第 1 条件であると考えら れ る 。し か し 、花 芽 分 化 及 び 完 全 花 の 形 成 、あ る い は 果 実 の 生 長 に は 相 当な水量を必要とするため、季節によって十分な降雨量が必要である。 土 壌 条 件 は 、耕 土 が 深 く 肥 沃 で 、保 水 性 が あ り 、し か も 、排 水 の 良 好 な 土 壌 が 最 適 で あ る 。痩 せ 地 で は 生 育 が 劣 り 、不 完 花 の 出 現 が 極 め て 多 く、開花しても結実しない現象が生じる。
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