博物館の歴史

111003理系のための博物館概論2
博物館の歴史
1.近代博物館とその前身
1)近代以前の収集館
・個人収集家のコレクション
・王族のコレクション 15-17世紀の王侯貴族は珍品陳列室を愛好
2)近代博物館
①資料や展示があること
②非営利であること
③恒久的であること
④公開されていること←前回抜けていた、ここが近代に独特の要素
2.大英博物館の成立
1)大英博物館 The British Buseum 1753年設立、1759年開館
2)個人の遺産が生んだ博物館 法律による保存公開、建物の資金は宝くじ
3つの個人収集物(=コレクション collection)の国家への寄贈
ハンス・スローン(1660-1753)収集自然史資料
オックスフォード伯爵家収集写本類
コットン一族写本コレクション
3)自然史博物館の分離と独立
1880年代 自然史部門は別の場所へ移管
1963 自然史博物館 The Natural History Museum として独立
3.他のヨーロッパ諸国の博物館
1)フランス
1789 フランス革命 王室美術コレクション→革命政府の所有物
1793 ルーブル美術館(共和国博物館)開館、国立自然史博物館(王立植物園)設立
2)ドイツ
プロイセン国王のコレクション→国立美術館建設の勅令(1810)
1830 ベルリン国立美術館開館
3)ロシア
エカテリーナ2世(在位1762-96)が絵画や収集・製作工芸品収集
1917 ロシア革命(10月革命)王宮コレクション→エルミタージュ美術館
4)イタリア メディチ家(フィレンツェ)のコレクション→ウフィツィ美術館
5)スペイン 王室美術館の散逸防止→プラド美術館
3.百科全書と博覧会の時代
博物館と同様に全世界の知識/資料の体系化を目指したもの。近代ヨーロッパの獲得した技術と世界観を具体
的な資料(collection)で表現したものが博物館であり博覧会。博覧会の出品作品が博物館の基礎資料となること
も多い。陳列手法は「地球上のすべての産物を部類や国籍によって区分」(吉見1992)する近代的視点。
では、伝統的視点とは?
1)分類する世界 18-19世紀
・『百科全書』(1751-1772)フランス
大阪府立図書館のデジタル図書 http://www.library.pref.osaka.jp/France/France.html
・リンネ『自然の体系 第10版』(1758)スウェーデン 現在の学名(=二名法)を採用普及
ドイツ バイエルン州図書館 http://reader.digitale-sammlungen.de/resolve/display/bsb10076014.html
ドイツ ゲッチンゲン大学図書館 http://gdz.sub.uni-goettingen.de/dms/load/img/?PPN=PPN362053006
アメリカ 生物多様性遺産図書館 http://www.biodiversitylibrary.org/item/10277
*以上のリンクはWikipedia " Systema Naturae" より http://en.wikipedia.org/wiki/Systema_Naturae
2)万国博覧会:新技術、建築の発表の場ともなった 19世紀後半から20世紀
Great Exhibition(英)、World's Fair(米)、Exposition Universelle(仏)
「博覧会」は Exhibition の翻訳(1867年といわれる)
「博物館」は福沢諭吉が『西洋事情』(1866)で使用、普及 *明治元年(1868)
1851 第1回ロンドン
水晶宮(クリスタルパレス)
1862 第2回ロンドン
福沢諭吉が見学、ビクトリア&アルバート美術館
1867 第2回パリ
徳川幕府、佐賀藩、薩摩藩が個別出品
1873 ウイーン
日本国政府初出品
1876 フィラデルフィア ベルの電話、日本政府は庭園と茶室を出品
1889 第4回パリ
エッフェル塔、植民地パビリオン
1900 第5回パリ
アールヌーボー、オルセー駅、動く歩道、入場者4800万人
<参考文献>
出口保夫.2005.物語大英博物館.中央公論新社(中公新書1801)
西村三郎.1999.文明のなかの博物学(上・下).紀伊國屋書店.
吉見俊哉.1992.博覧会の政治学.中央公論社(中公新書1090).