2013.9月号

*手に触ったり,物を握ったりすることが苦手な児童について
自立活動だより(教師用)
①学校での取り組み
H25.9.19
図書・研修部
・給食の前に洗い桶の水で手を洗うことで,水の感触に慣れるようにしている。
・遊び活動として,絵の具に触ったり,花の苗植えで土の感触に慣れたり,イチゴやキ
ウイなどの果物に触ってその感触を体験するようにしている。
今回の自立活動だよりでは,こども療育センター主催による「地域リハビリテーション
教室」の記録の中から,いくつかを抜粋して掲載します。
9月11日(水)に理学療法士, 作業療法士(質疑応答には不参加), 言語・聴覚療法士
(2名)が来校されました。放課後の研修会では,児童・生徒の様子をビデオ視聴したり,
日頃の子供達の様子を話したりしながら,質疑応答を行いました。
②家庭での取り組み
・大好きなアイスクリームを母親と一緒に持ったスプーンですくって食べる。
・iPadを使って,母親が本児の指を握ってひらがなの字をなぞるようにしている。
調子が良いと「さ」行ぐらいまで,できることがある。
<アドバイス>
・手の平の過敏さゆえに,物に触れたり,持ったりすることが苦手である。
*机や椅子の調整
学校生活の中で,上記のような活動を毎日繰り返して行うことで,少しずつ慣れて,
・椅子は,膝が自由に曲げ伸ばしできるようにする(座位から立位へ)。椅子の手前に
足を置くことで,立ちやすくなる。
調整前
抵抗が減ってくるようになる。触れることや持つことをいろいろな活動の中で取り入
れていけばよいと思う。
調整後
*指先を使って,物をつまんだり,活動をしたりしたいが・・・
・本人が困っていない場合,本人の意識を変えることもしないといけない。
・親指を使っていないと,親指の母指球(付け根)が発達しない。大きなものを握った
り、親指を他の指4本と違う動きをしたりすることで,発達していく。
*場面によって発話量が変化する生徒について
・いつ黙ってしまい,いつよく話すのか,記録をとって共通項をさがすと良い。すると,
例えば初めての場所だと言葉が出ない,初めてのことをしていると言葉が出ない,な
ど,共通点が見えてくる場合があり,対応を考えやすくなる。
・机は,手を机に置いたとき,
背中と肘の角度が45度に
・外の情報量が多すぎるためであれば,机の配置を教室の真ん中ではなく端の方にする
などの対応が考えられる。
なるように調整する。
*発語について
・ものの名前を聞かせるときには,その単語だけではなく,そのものから読み取れるこ
とをたくさん言葉で聞かせてあげると,その単語をよりイメージしやすくなる。
Ex.「りんご」…「りんごだね」だけではなく,「赤いね」「丸いね」「おいしそう
だね」「もぐもぐするね」など
*教師への要求の伝え方について
・「ちょうだい」のサインについて。日常生活の中では,欲しいものに自分で手が届い
・また,口の周りの汚れをハンカチなどで拭き取るときに,周囲から口の中心に動かし
て拭き取ることで,摂食の口の動きが高まるようになるとアドバイスもいただいた。
てしまう場面が多いため,環境を整理して,「欲しいものを先生が持っていて,お願
いしないともらえない」という状況を意図的に作ってはどうか。児童が手を伸ばした
時に間をおかずに黒子役の教師が「ちょうだい」のサインをし,サインをしたらすぐ
に欲しいものがもらえる,という経験を積むことで,サインの定着を図っていくと良
*コップ飲みの指導について
・顎の下を支えて下顎を固定した状態で,コップのみを傾けて飲む経験を積むと良い。
Uコップを使うと顎は動かさずに飲ませやすい。
い。PECS の方法と基本は同じ。後ろの先生は黒子に徹して余計な言葉がけはしな
いようにする。身振りと同時に「ちょうだい」の声のみ聴かせる。
・呼びかけ方の見本(トントンと軽くたたいて呼ぶ。声を掛ける。など)を見せて練習さ
せる。できればもう一人の教師が黒子になって,子どもの手を取って行えるとよりよ
い。
・子どもが表出した要求の内容に合った絵・写真カードを並べて提示し,子どもの手を
*つばを吐くことについて
・つばを吐くことが,嫌なときである場合は,手のサインをさせてから活動をやめるな
どして,嫌なことを伝える手段を構築する。
・口の刺激を求めている場合は,電動歯ブラシなどを口の周りにあてるなど,別の違う
活動に誘うと良い。
取って一緒に絵(写真)を確認しながら言葉を重ねる。
Ex.お茶がほしい…「お茶」と「ちょうだいの身振り」の絵(写真)カードを並べて提示
し,本児の手を取ってカードを差しながら「お茶,ちょうだい。」と言葉を重ね
る。
*よだれが出ることについて
・タオルで拭くこともいいが,よだれを飲み込むよう促し,自分で意識できるようにな
ると良い。
・集中すると,特に出やすいため,学習中は1行書いたら「飲み込もうね」と声掛けし,
*摂食中に身体を激しく動かしたり,不快そうな表情や発声をすることについて
時間を区切ってよだれを飲み込むよう促してはどうか。
・以前,水分摂取の際に身体の動きが多いお子さんに対して,摂食の前に,介助者がゴ
クンと飲んでみせることを続けたら,身体の動きが少なくなったお子さんがいた。食
事の始めは動きが多くても途中で落ち着くお子さんの場合,「何か」が分からず見通
しにくいということもあり,水分摂取の準備段階にある場合がある。摂食の前に,教
師がゴクンと飲んでみせる,コップに触ってみる,スプーンに触ってみるなど,お子
さんによって分かりやすい手掛かりを使った「何か」が分かりやすい支援を続けるこ
とで,「何か」を連想して見通しにつなげられるということもある。
*発音が不明瞭であることについて
・「た」の発声の時に「か」の口で発声しているため,舌の動きに注意を向けさせて練
習すると良い。
・「た」なのか「か」なのか,自分でも聴くことに注意できるよう,どっちの言葉を言
ったのか当てるゲームなどを,本人が落ち込まない程度にしてみるのも良い。
・全体的に鼻に抜ける発声をするので,運動としてこれらに取り組んでみると良い。
「あー」と長く一息で声を出す。10秒目標。
*食べ物やお茶などを口に入れた後,口を閉じることが難しい児童について
・給食の様子を見ていただいた。以前は口の中に入った食べ物がすぐ出てきてしまうた
め食べ物を入れた後,下顎を上の方に押し上げて口を閉じるようにしていた。しかし,
最近は口から食べ物を出さないことが多くなり,本日もほとんど出すことはなかった
「ふー」と長く息を吐く。10秒目標。
ストローでぶくぶく息を吐く。
リコーダーなど,長く息を吐く練習になるもの。
・一息が短いために長い言葉も一息で話そうとするところがある。ゆっくり話すよ
ので今のような関わり方および支援の仕方をしていけばよいとアドバイスをいただ
う促すよりも,区切るタイミングを伝えたり,リズムをとりながら話すように促
いた。
したりすると良い。