俺の私の不撓不屈 vol. 5 ∼企業トップのインタビューを通して、経営者のビジネス活力を促進∼ チャレンジしてこそ変化も可能に、 どんな危機に遭遇しても道は必ずある! 株式会社イシワタグラフィックス 代表取締役 藤澤克彦 氏 写真植字業の家業を受け継いだものの、時代の変化 にのみ込まれて業界自体が消滅の危機に。自分が歩 もうとする道に逃げ場はなく、行く先にひとすじの灯 りも見当たらない…。そんな状況からチャレンジを繰 り返すことで独自に活路を見出してきた、 「株式会社 イシワタグラフィックス」の藤澤克彦代表取締役社長 を訪ねました。 ■デジタル化という名の時代の波 ■ “気持ちが伝わる” デザインを追求 どんな時代も順風満帆とは言えませんが、過去に経験した もちろん、合併=安泰ではありませんでした。企業とし 最も大きな危機は何かと尋ねられたら「業界存続の危機」と ての興りも過去の歩みも異なる2つの会社がひとつの組織を お答えします。私が26歳で父から受け継いだ時点ですで 形成するのです。正直、やり方・考え方の違いに当初は戸 に、家業である写真植字業そのものが消滅の危機に瀕してい 惑いました。けれども、何を目指しどこへ行くのかを固 ました。これまでにやってきたことが通用しなくなるという め、それを全社員で共有しなければ足並みは揃いません。 状況に、一時は廃業まで考えました。 社員の負担にならない程度に個別に話す機会をつくり、素 直な意見を聞き出しながら会社としての方向性を定めるよ うに努めました。さらに、年4回の全体会議は現在も続けて います。そんな当社が現在大切にしているのは、使う方へ の思いやり、お客様の想いが伝わるデザインの重視と追 求、そして長く手元に残していただける形ある物をつくり 出すことへのこだわりです。 ■フル回転の日々の後に合併を決断 とは言え、父が大切に築いた家業を失いたくはありませ ん。学生時代にグラフィックデザインを多少学んでいたた め、手探りでデザイン・印刷等を請け負って会社運営を続 けました。人を雇う余裕はなく、自身が4番兼ピッチャー兼 監督を務めるような多忙な日々でした。一方、家業の製版 業を受け継いだ妻(当時は結婚前)もまた、業界消滅の危 機に苦しんでいました。相談し合える心強さはありました が、状況を好転させられるような策を見出すことはできず …約10年踏ん張った後に、思い切ってデザインとweb制作 を専門とする妻の会社との合併を決断しました。こうして 現在の「株式会社イシワタグラフィックス」として歩み始 めることになったのです。 ■あの苦しい時期がなければ今もない 今後も同じように業界自体がなくなる危機が訪れないとも 限りません。でも、一度乗り越えた経験があるからか、挑戦 と変化を恐れずに進めば必ず道はあると言えます。そして、 「今の私や会社は、あの大きな波を経験したからこそ存在す る。苦しい時は強くなるチャンスでもある」という教訓を胸 に、この先も前進し続けたいです。 「社員と一緒に『お客様の満足のため、当社にで きること・当社にしかできないこととは?』と考 える。そのチャンスをもらえること自体がありが たいですね」。感謝と挑戦の心を大切にする藤澤 さんの姿勢には、誰にとっても原点となり得る 真っ直ぐな教えが詰まっている。 藤澤克彦氏(ふじさわ・かつひこ) 株式会社イシワタグラフィックス 代表取締役社長 長野市生まれ。23歳で実家の 写真植字業に入り、26歳で代 表を引き継ぐ。2007(平成 19)年の合併と同時に同社の 代表取締役社長に就任。現在に 至る。 次回は、有限会社Bee’ s 松井理恵さんです
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