平成 24 年度 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書 物理学科・教授・千葉 剛 研 究 課 題 研究目的 お よ び 報 研究概要 告 研 究 の 概 要 の 衝突するブラックホールの影 天の川銀河も含めて銀河の中心には太陽の 100 万倍以上の質量を持った巨大ブラックホールが存在 すると考えられている。その根拠となるのは銀河中心における星のケプラー運動の観測による間接的なも のである。しかしながら、ブラックホールを特徴付けるのは「事象の地平面」の存在であり、直接的な存在 確認のためには事象の地平面の存在に付随した現象を探る必要がある。 ブラックホールによって光が曲げられるため、遠方の星を観測するとブラックホールによる「影」がみえ る。この影を観測することがブラックホールの存在の直接証明になる。これまでの研究ではひとつのブラッ クホールによる影しか研究されていなかったが、実際にはブラックホールは連星系をなしている場合があ ると考えられる。われわれは最近になって、二体以上の場合には一体の場合と大きく異なり、ブラックホー ルの影には単なる重ねあわせではない複雑な構造が現れることを見出した。本研究の目的は、二体のブ ラックホールによる影の構造を、解析的数値的手法により、詳細に解析することにある。 多 体 の ブ ラ ッ ク ホ ー ル の 静 的 厳 密 解 で あ る Majumdar-Papapetrou 解 と 動 的 厳 密 解 で あ る Kastor-Traschen 解を用いて、ブラックホール回りの光の伝播の振る舞いを測地線方程式を解くことによ り解析し、多体ブラックホールの影の形状を求めた。ブラックホールの影は単なる単体の重ね合わせだけ ではなく、影の周りに「眉毛」のような形状をした構造が表れることを見出した。また本体の影の形状も間 隔が近づくとともに非常にゆがんだものになった。これらの振る舞いを定性的に理解するために、間隔が 大きい極限で測地線方程式を解析的に求めた。その結果、眉毛の幅はブラックホールの間隔に反比例 することを見出した。また、影の変形は間隔と質量によることが分かった。 結 果 研 究 今後は、ブラックホール周りの降着円盤による放射の効果も取り入れた計算を行いたい。また、ブラックホ ールの回転の効果も取り入れた計算も行いたい。 の 考 察 ・ 反 省 ※この欄は,本報告書提出時点で判明している事項について御記入ください。 研究発表 学会名 発表テーマ 年月日/場所 研究成果物 テーマ 誌 名 巻・号 発行年月日 発行所・者 Akifumi Yumoto, Daisuke Nitta, Takeshi Chiba, Naoshi Sugiyama, Shadows of Multi-Black Holes: Analytic Exploration, Phys. Rev. D86, 103001 (2012). "Shadows of multi black holes", invited talk at Japan/Thai workshop in cosmology (Pattaya, Thailand, December 25, 2012) 「膨張する宇宙」, 日本大学文理学部夏季オープンキャンパス理系講演会(2012 年 7 月 15 日). 「加速膨張する宇宙」, 日本大学理工学部物理学科軽井沢オリエンテーション講演会 招待講演, 日本大学軽井沢研修所(2012 年 5 月 23 日). ニュートン 2012 年 10 月号 特集「ダークエネルギー」(取材協力).
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