平成 25 年度 研 究 課 題 研究目的 お よ び 報 研究概要 告 研 究 の の 概 結 果 要 研 究 の 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書 研究成果物 テーマ 誌 名 巻・号 発行年月日 発行所・者 申請者氏名 嘉吉 純夫 ㊞ いわゆる独断論に真っ向から対立しながらも、互いに思想的立場を異にする不可知論、相対主義およ び懐疑主義を、認識論の領域においてのみならず、価値論の領域においても、歴史的、哲学的に考察 することが、本研究の眼目である。そのために、申請者は、古代ギリシアに遡り、まずプラトン的超越主義 に対して、アリストテレスがどのように修正を加えたか、また、彼がプロタゴラス的相対主義に対してどのよ うに対峙したかを検討する。それを踏まえて、アリスティッポスの不可知論的感覚主義、アルケシラオスの 折衷主義、エピクロスの経験主義、ピュロンによる前期懐疑主義、さらにはセクストス・エンペイリコスによっ て完成される後期の純粋な懐疑主義等々、それぞれの思想的淵源と対立の機縁を考究する。そして、そ の成果を価値論の観点から再考察し、以上の思想的立場の分岐点とを探求する。さらに、余裕があれ ば、それらの諸立場が、ニヒリズムの陥穽をいかに回避しうるのか、という点についても考究を加えたい。 本研究は、いまだ継続の途上にあるが、一筋の道、すなわち、プロタゴラス他のソフィストたちの提起し た倫理的相対主義(正邪善悪は個々人の立ち位置によって異なり、絶対的・普遍的な善悪は存立しえな い)に対して、以後の哲学者たちがどう立ち向かったか、という道筋が見えてきた。プラトンは、相対性を 免れない現世を超えた叡智的なイデア界を、個性を保ったままの魂の共通の故郷とみなすことによって その難題を克服しようとし、アリストテレスは、相対性を認めた上で、そもそも何が善に見えるか、その見え 方自体に責任があるとすることによって(人それぞれの善悪の判断に同等の正しさや妥当性があるので はなく、そこに価値の優劣の差がある)、対抗しようとした。また、ストア派は、自然の理法や摂理を措定 し、各人のうちにそれを認識しうる理性の潜在的可能性を想定することによって相対主義的価値観を克 服しようとし、懐疑論者たちは、価値認識の相対性から(相対主義者たちとは反対に)個々人の判断はい ずれも信用できないとして、確定的な判断を下すこと自体の不当性を導き出すことによって、問題を回避 しようとした。不可知論者たちは、さらに真理の認識不可能性を打ち出すことによって、問題そのものを抹 消しようとした。現在、なぜ彼らがそれぞれの思想的ポリシーをとることになったのか、鋭意考察中である。 毎年のことであるが、本年もまた、つぎつぎと蓄積してゆく文献を十分に吟味・検討する時間的余裕が 得られなかった。それでも、上記のように、一定の見通しが得られ、今後の進むべき方向性が見えたこと は、収穫であったし、先行きに希望をもつことができた。文献読解の作業の効率化を図り、来期に向かっ て一層の努力を重ねたい。 ※この欄は,本報告書提出時点で判明している事項について御記入ください。 学会名 発表テーマ 年月日/場所 哲学科・教授 不可知論、相対主義、および懐疑主義の思想的相克 考 察 ・ 反 省 研究発表 学科・資格
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