水落 文夫 - 日本大学文理学部

平成 23 年度 日本大学文理学部個人研究費研究実績報告書
体育学科・教授・水落
研
究
課
題 ジュニアアルペンスキー選手に対するイメージトレーニングの効果
研究目的
および
報
研究概要
告
研 究
の
の
概
結 果
要
研 究
の
考 察
・
反 省
研究発表
学会名
発表テーマ
年月日/場所
研究成果物
テーマ
誌名
巻・号
発行年月日
発行所・者
文夫
本研究は,中学生および高校生ジュニアアルペンスキー選手のイメージ想起能力(運動イメージ
の明瞭性と統御可能性)の特徴と,イメージトレーニングによる向上効果を検討することを目的とし
た。個人差はあるものの,中学生付近の時期にイメージ想起能力発達の敏感期があると報告されて
いる。したがって,短期間の集中的なトレーニングによる向上効果が期待される。そこで,3 ヵ月間のト
レーニング期間を設け,月 1 回のトレーニング講習と自宅でのホームワークによる毎日のトレーニング
を課した。トレーニングに用いるイメージストーリーには,視覚,筋感覚,感情イメージのそれぞれを想
起するような内容のものを複数用意した。そして,トレーニング前後の想起能力の変化を,2 つの質問
紙による心理尺度とメンタルローテーションテストによって評価することで,イメージトレーニングの効
果を検証した。
トレーニング前に評価したイメージ想起能力の鮮明性と統御可能性は,個人差が大きく,性の影響
力は小さかった。年齢が低い選手の内的・運動イメージの明瞭性は,外的・視覚イメージに比べて低
い傾向を示した。明瞭性が低かった選手は,スキー滑走シーンのイメージ想起において阻害様態の
発生が多かった。3ヵ月のトレーニング後の評価では,主に筋感覚イメージと感情イメージの明瞭性
が向上した。統御可能性を評価するための,メンタルローテーションテストにおいて,正しく判定する
までの反応時間は有意に短縮した。トレーニング前に対するトレーニング後の変化量とその個人差
は,統御可能性の方が鮮明性より大きかった。ジュニア期は様々な機能発達のレディネスが高いた
め,参加者にとってこれまでに経験したことがないトレーニングは,刺激が弱いにもかかわらず効果を
もたらしたのかもしれない。なお,トレーニングによる主観的できばえが明確だった選手は,自分の能
力向上を実感し,スキーパフォーマンスに対する効力感を高めた。
アルペンスキー選手は,競技力を高め,レースで実力を発揮するために,イメージを想起して行うト
レーニングやリハーサルが必要である。イメージ想起能力が低いスキー選手は,イメージを活用したト
レーニングやリハーサルの効果も低いと考えられるため,この機能が著しく発達する時期に,適正で
十分な刺激を与えて発達を促しておくことが求められる。今回の研究により,ジュニア期のアルペンス
キー選手のイメージ想起能力は個人差が大きく,比較的低レベルの選手も認められた。しかし,短期
間の計画的で集中的なイメージトレーニングにより,統御可能性を中心とした能力向上効果が高いこ
とも認められた。ただし,トレーニングに参加した選手が少数であり,年齢や性にばらつきがあったこ
と,十分なコントロール群が確保されていないことが課題である。さらに,このようなトレーニングによる
能力向上と実際のスキーパフォーマンスとの関係も今後の検討課題である。
※この欄は,本報告書提出時点で判明している事項についてご記入ください。