平成26年3月1日 第36回卒業証書授与式 学校長式辞 第14代校長 吉田幸一 Ladies and Gentlemen, On behalf of all the staff of the Kanagawa Prefectural Shichirigahama Senior High School, I would like to extend our sincere congratulations to all of you. I would also like to congratulate your families. When you received your diploma from me, I sent my best wishes to you. Each life voyage has its own difficulties and problems which must be faced alone. We have striven to help you in every way, but the future lies in your hands, and you must await the test and teachings of real experience. 1 今日は、卒業証書授与式にふさわしく、春光に誘われ、桜の蕾もわずかに ふくらむ日となりました。本日ここに神奈川県立七里ガ浜高等学校の第36回 卒業証書授与式を挙行するにあたり、心より喜びを感じると共に、ご来賓の 神奈川県議会議員の早稲田先生、学校評議員で元県立高等学校校長の高梨先 生、七里ガ浜自治会長の五十嵐様、藤沢市立片瀬中学校の上條教頭先生、壇 上のPTA会長の川村様と同窓会会長の岡様のご臨席を賜りましたことに厚く御 礼申し上げる次第です。 275名の卒業生の諸君と保護者の皆様に心よりお祝い申し上げます。ご卒業 誠におめでとうございます。 学窓からは相模湾の大海原が一望できる県立七里ガ浜高等学校は、古都鎌 倉の風光明媚な立地にあり、文武両道、自由闊達をモットーとし、県民が一 度は学んでみたいと憧れる学校です。3年前に卒業生諸君が入学した頃を想 起してみますと、選抜試験は大変な高倍率でした。入学志願書を出しに来た 生徒たちの顔つきが違うと、どの先生方も感想を述べていたことを今も記憶 しています。期待通り、どの生徒も成績優秀であり、何事にもまじめにかつ 意欲的に取組むことができる生徒たちばかりでした。さらに、七高の歴史の 中で、男子生徒が女子生徒を上回ることはそれほど多くはなかったのですが、 36期生以降、男子生徒の方が多く入学する傾向となりました。 入学式は東日本大震災の直後ということもあり、当日の本校生徒の様子に 2 触れました。あの日、夜の帳が下りたこの体育館には、地震で江ノ電が止ま り、行き場のなくなった乗客が集まっていました。男子生徒たちは、幼い子 やご高齢の方や女子生徒たちを優先して、防寒具や非常食を配ってくれまし た。当時の生徒たちのすばらしい行動についてnoblesse obligeという言葉を 用いながら説明しました。 卒業生諸君が、自然環境のみならず、恵まれた教育環境の整ったこの学び 舎で青春の日々を過ごすことができたことは何物にも変えがたい経験であっ たことと思います。エアコンの入った教室での授業、県立高校では珍しく希 望制ではありますが開講された土曜授業に真摯に取り組むことができました。 部活動や学校行事においては、ホームルームの活動では味わえない団結力、 達成感、満足感やチームワークを共有できたことと思います。特に、昨年の 夏の高校野球神奈川大会では久々の四回戦出場を果たしました。野球部の選 手とマネージャーの活躍のみならず、応援席での生徒と保護者の団結の強さ は他校を圧倒しました。日焼けした顔に“七高スマイル”は本当に良く似合 いました。さらに、七里ンピックでの色別対抗、友だちの発表を、息を呑む ようにして見ていた文化祭や合唱祭、昨年からスタートした後夜祭の花火師 による本格的花火の打ち上げ、なぎさマラソンや台湾の修学旅行の感動も忘 れることができないのではないでしょうか。 特に、本校は神奈川県より国際理解教育の推進に関し大きな期待を寄せら 3 れています。国際理解教育に関し、ある青年の話をしてみたいと思います。 青年は幼い頃より両親の影響もあって、外国文学や海外の映画や演劇にふれ る機会が多くあったと聞いています。高校を卒業する頃には大学を卒業した ら海外で仕事をしてみたいと思うようになったそうです。後年、企業に勤務 することになり、ある時上司から「今度ニューヨークに仕事に行ってきなさ い。」と言われましたが、英語の読み書きはできても、会話には自信がなか ったため、躊躇したそうです。当然のことながら失敗と試行錯誤の連続のア メリカ生活でした。日本への帰途、飛行機から雲海を眺めている時、母親の 笑顔が見えました。「英語は半分くらいわかれば上出来よ」と口癖のように 言っていた母との思い出が走馬灯のように蘇り、外国作品の映画や演劇に連 れて行ってくれことを思い出し、母親の愛情に改めて感謝したいと思った瞬 間、一粒、そして一粒と涙が頬を伝ったとのことでした。ここに母親がいて くれたら少しでも親孝行が出来たかもしれないと、思えば思うほど大粒の涙 がとめどなく流れました。帰国して、Fifth Avenueで買ったお土産を写真の 前において、無事に帰国したことを報告したそうです。 この青年のように、いつの時代もどんな時でも、子どもが親を思う気持ち は常に心の中にあるはずです。たとえ言葉には出さなくても、全ての子ども は親への感謝の気持ちを抱いています。本日ご来場の保護者の皆様、皆様の 前に並んでいるお子さま方の感謝の気持ちが伝わってくるのではないでしょ 4 うか。お子様たちはこんなに大きく、そして立派に育ちました。そして自信 に満ちたその姿に喝采を送ってあげようではありませんか。 本校を卒業する諸君は、大学、短期大学、専門学校、就職あるいは進学準 備のそれぞれの進路に向かいます。たとえ進路が異なるになるにせよ、80年 を超える人生では、高等学校を卒業してからの方がはるかに長い時間を過ご すことになる訳です。自らの希望を実現するには多くの困難を乗り越え、不 断の努力が必要となります。日々努力することこそが、自らの夢と希望の実 現という大きな実りを、諸君一人ひとりにもたらしてくれます。「七高で学 んだ者はそれに相応しい社会的な責任と道徳観を持ってほしい」と私が日々 諸君に伝えた言葉“Noblesse Oblige”をこれからの人生できっと実践してく れると信じています。英国の詩人ロバート・ブラウニングは「小さな円を描 いて満足するより、大きな円の、その一部である弧であれ」と言っています。 大きなビジョンを描き、そのビジョンに向けて、多くの人たちと手を携えな がら、突き進めるような生き方をしてほしい。人生は未完成でも良い、本分 を極める生き方こそ価値があるのです。 諸君のこの3年間の行動の一つ一つは、七高生の模範となり、校風の礎と なりました。本日卒業する275名の諸君の行動は七高のよき伝統として学校の 歴史に残ることでしょう。諸君は在校生、同窓生そして私たち全ての教職員 の誉れです。 5 最後に、本日卒業する生徒の七高での思い出を綴った手紙を読み上げたい と思います。「本当にこの七里に入学できてよかった。最高の仲間達と最高 の思い出を作れたし、それを陰で支えてくれた先生や親に本当に感謝です。 一生に一度のこの高校生活最後まで最高だと思えるように、卒業式には先生 一人一人に面と向かって感謝の気持ちを伝えたい。それと、自分や妹の食事 を作り、家事もしっかりやってくれて、自分のために命けずって一生懸命や ってくれる父親を自分は誇りに思います」。 この卒業生のように、全ての卒業生がお世話になった方々に感謝の気持ち を伝えたいのではないでしょうか。 輝く未来に向かって七高で学ぶことができた矜持の銅鑼を高らかに響かせ ながら、この七里の海から出帆してください。いざ進まん 未来に向かって。 「七高スマイルで国際人たれ!」私が最も諸君に伝えたいことばを卒業のお 祝いのことばとして贈ることで、神奈川県立七里ガ浜高等学校第36回卒業証 書授与式の学校長式辞とさせていただきます。 Congratulations! 6
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