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 ローライブラリー
◆ 2015 年 11 月 13 日掲載 新・判例解説 Watch ◆ 刑法 No.94
文献番号 z18817009-00-070941281
酩酊運転の自動車への同乗と危険運転致死傷罪の幇助
【文 献 種 別】 決定/最高裁判所第三小法廷
【裁判年月日】 平成 25 年 4 月 15 日
【事 件 番 号】 平成 23 年(あ)第 2249 号
【事 件 名】 危険運転致死傷幇助被告事件
【裁 判 結 果】 棄却(確定)
【参 照 法 令】 刑法 62 条、刑法 208 条の 2(平成 25 年 11 月 27 日法律第 86 号による改正前、現・
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 2 条 1 号)
【掲 載 誌】 刑集 67 巻 4 号 437 頁、裁時 1578 号 19 頁、判時 2202 号 144 頁、判タ 1394 号 139 頁
LEX/DB 文献番号 25445545
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ていた。
一審判決(さいたま地判平 23・2・14)は、両名
が本件車両の発進に了解を与えたことと、運転継
続中もこれを黙認していたことを個別に検討しつ
つ、両者は一連のものとして危険運転致死傷の幇
助罪が成立するとした。控訴審判決(東京高判平
23・11・17) は、両名による「了解」と「黙認」
を特に区別することなく、危険運転致死傷の幇助
罪を肯定し、弁護人による本件控訴を棄却した。
これに対し、弁護人から上告があった。
事実の概要
被告人Xおよび被告人Yは職場の同僚であり、
本件車両を運転していたAとは、仕事の指導等を
する先輩の関係にあるのみならず、職場内の遊び
仲間でもあった。XおよびYは、平成 20 年 2 月
某日の午後 1 時 30 分ごろから同日午後 6 時 20
分ごろまでの間、飲食店でAらとともに飲酒して
いたところ、Aが高度に酩酊した様子をその場で
認識したばかりでなく、さらに飲酒するため、別
の場所に向かってAが本件車両で疾走する様子を
後から追う車両内から見て、
「あんなに飛ばして
大丈夫かな」などと話し、Aの運転を心配するほ
どであった。その後、X、Yは目的の店に到着
し、同店駐車場に駐車していた本件車両に乗り込
んでAとともに同店の開店を待つうち、同日午後
7 時 10 分ごろ、
Aから「まだ時間あるんですよね。
一回りしてきましょうか」などと、開店までの待
ち時間に本件車両にX、Yを同乗させて付近の道
路を走行させることの了解を求められた折、Yが
「そうしようか」などと答え、それぞれ了解を与
えた。これを受けて、Aはアルコールの影響によ
り正常な運転が困難な状態で、上記駐車場から本
件車両を発進させてこれを走行させ、これにより、
同日午後 7 時 25 分ごろ、埼玉県内の道路におい
て、本件車両を時速 100 ないし 120㎞で走行させ
て対向車線に進出させ、対向車 2 台に順次衝突
させて、その乗員のうち 2 名を死亡させ、4 名に
傷害を負わせた。XおよびYは、その間、先に了
解を与えた際の態度を変えず、Aの運転を制止す
ることなく本件車両に同乗し、これを黙認し続け
vol.7(2010.10)
vol.18(2016.4)
決定の要旨
「刑法 62 条 1 項の従犯とは、他人の犯罪に加
功する意思をもって、有形、無形の方法によりこ
れを幇助し、他人の犯罪を容易ならしむるもので
ある(最判昭 24・10・1 刑集 3 巻 10 号 1629 頁参照)
ところ、前記のとおりのAと被告人両名との関係、
Aが被告人両名に本件車両発進につき了解を求め
るに至った経緯及び状況、これに対する被告人両
名の応答態度等に照らせば、Aが本件車両を運転
するについては、先輩であり、同乗している被告
人両名の意向を確認し、了解を得られたことが重
要な契機となっている一方、被告人両名は、Aが
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態
であることを認識しながら、本件車両発進に了解
を与え、そのAの運転を制止することなくそのま
ま本件車両に同乗してこれを黙認し続けたと認め
られるのであるから、上記の被告人両名の了解と
これに続く黙認という行為が、Aの運転の意思を
より強固なものにすることにより、Aの危険運転
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新・判例解説 Watch ◆ 刑法 No.94
運転したときは、その運転行為を直接に実行した
者自体の直接正犯行為として評価され、他人を道
具として利用する間接正犯の形態においては犯さ
れないものと解するを相当とする」として、無
免許運転罪の成立が否定されている(岡山簡判昭
44・3・25 刑月 1 巻 3 号 310 頁)5)。自手犯では範
疇上、当該犯罪を自ら直接実行する者以外の正犯
性は問題とならないことから、間接正犯のみなら
ず、共同正犯も排除されることになる。この理は、
運転を基本行為とする危険運転致死傷罪について
も、同様に妥当することになろう6)。したがって、
危険運転致死傷罪などの運転を構成要件的行為と
する犯罪に関与する者は、道交法等で独立犯とし
て処罰される場合を除いて、理論上、狭義の共犯
の可罰性のみが問題となるといえる7)。
2 結果的加重犯の狭義の共犯
危険運転致死傷罪は、暴行の結果的加重犯とし
ての傷害罪、傷害致死罪に類似した犯罪類型とさ
れるが、基本犯に相当する危険運転行為自体を処
罰する刑法上の規定はない8)。酩酊運転について
みると、道交法上の酒酔い運転の罪が「アルコー
ルの影響により正常な運転ができないおそれがあ
る状態」とするのと比べ、運転が現実に困難な状
態が要求されている点で、実際上重なり合いはあ
るものの、行為類型としては狭い。この前提から、
本罪の狭義の共犯者は、形式的には、処罰規定の
ない行為への加担者として処罰される。これは行
為共同説からは説明が可能であるが、犯罪共同説
から説明するのは理論上無理がある9)。
行為共同説に依拠し、加担の対象となる行為は
必ずしも規定上犯罪とされる必要はないとして
も、加重結果と狭義の共犯との関係において、も
う一つ問題がある。通説は結果的加重犯の重い処
罰を、加重結果に対する過失によって根拠づける
ので、結果的加重犯の狭義の共犯は、過失犯に
10)
対する過失の共犯と位置づけられる 。通説は、
過失犯に対する狭義の共犯を認めることに消極的
であり、また、広く承認されている限縮的正犯概
念からは、過失による狭義の共犯は、処罰規定を
欠くため原則的に不可罰となる。限縮的正犯概念
を前提に、危険運転致死傷罪の狭義の共犯を理論
11)
的に基礎づけることにはこのような困難が伴う 。
致死傷罪を容易にしたことは明らかであって、被
告人両名に危険運転致死傷幇助罪が成立するとい
うべきである。
」
判例の解説
一 本決定の意義
本件は、アルコールの影響により正常な運転が
困難な状態で行われた運転(以下、酩酊運転) に
よる死傷事故の際に、運転者に対し、自動車の発
進および走行を了解・黙認した同乗者が危険運転
致死傷罪(当時の刑法 208 条の 2 第 1 項前段、現在
は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処
罰に関する法律 2 条 1 号)
の幇助となりうることを、
最高裁として初めて示したケースである1)。
従来、酒酔い運転に際し同乗する行為は、道交
法の酒酔い運転の罪(65 条 1 項、117 条の 2 第 1 号)
の幇助とされてきた(最決昭 54・11・1 集刑 216
号 243 頁、仙台地判平 20・9・19〈LEX/DB 文献番号
28145434〉2))。また、2007 年の道交法改正によ
り、酒酔いの運転者に対し、車両を運転して自己
を運送することを要求ないしは依頼して同乗する
行為が独立して処罰の対象となった(65 条 4 項、
117 条の 3 の 2 第 3 号。以下、同乗罪)3)。これに
つき、運転者が泥酔して高速度で自動車を運転し
て暴走させたために生じた事故において、車両を
提供し、運転を依頼してこれに乗り込んだ者に対
し、同乗罪の成立を認めた裁判例も存在する(東
4)
京地判平 20・7・16 判時 2015 号 158 頁 )。これに
対し、本決定は同乗者につき、上記の罪ではなく、
危険運転致死傷罪の幇助を認めた裁判例として注
目される。
二 共犯に関する理論問題
1 運転行為の自手犯性
そもそも運転行為に係る罪は自手犯と解され、
自らの手で直接実行する者でない限り正犯たりえ
ない。裁判例でも、原動機付自転車の運転免許し
か保有しない者に対し、自動二輪車を原動機付自
転車と偽り、かつ原動機付自転車の運転免許があ
れば大丈夫である旨申し向けて信用させ、無免許
で自動二輪車を運転させた者につき、無免許運転
罪(現行道交法 117 条の 2 の 2 第 1 号) は、「車輛
の種類に応じた運転免許の有無を基準として、そ
れに応じた運転免許を有しない者が、当該車輛を
2
三 危険運転致死傷の幇助罪の成否
1 はじめに
2
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新・判例解説 Watch ◆ 刑法 No.94
定されてしまいかねない。
3 幇助の故意
幇助の故意については、前提たる正犯者の行為
に関し、運転者がアルコールの影響により正常な
運転が困難な状態であることの認識が必要であ
る。この点、本決定では、Aがアルコールの影響
により正常な運転が困難な状態にあったことにつ
き、両名が特に認識を有していたかについて検討
されていない。
しかしながら、運転者が正常な自動車運転が困
難な状態にある場合、これを認識した者は、その
ような状態にある者の運転する自動車に同乗する
とは通常考え難い。そのようなことをすれば、自
らの身体ないしは生命に危険が及びかねないから
である。この点、一審判決は、両名は本件事故の
前にすでに長時間飲酒していることから、酔いの
ため気が大きくなって冷静な判断ができなかった
としても、あながち不自然ではなく、Aの提案は
店が開店するまでの短時間、付近をドライブする
というものであって、そのために両名がAの運転
する本件車両に同乗することの危険性をあまり認
識しなかったことも十分にありうることであり、
この点は、幇助の故意の認定を左右するものでは
14)
ないとする 。控訴審判決では、両名が長時間
にわたって一緒に飲酒し、AがXに逆らう等の普
段と異なる態度を示すことなど、かなり酩酊して
いたことは誰の目にも明らかであること、Yが飲
食店を移動する途中に、先行して走るAの車を見
ていて、スピードを出して、テールランプが左右
に揺れるように見えたため、Yが「あんなに飛ば
して大丈夫かな」と発言をするなどしてXと会話
したことが認められることから、XにおいてAが
15)
上記状態にあったと認識していたとする 。もっ
とも、両判決が摘示する間接事実から、両名がA
の運転が困難な状況にあったと具体的に認識して
いたと推論するには、いささか飛躍がある。両判
決とも、X、YがAと長時間行動を共にしていた
ことを挙げるが、両名とも酒に酔っていたことを
考えれば、たとえ一緒にいても、Aが運転困難な
ほど酩酊しているとは分からなかった可能性があ
り(AがXに絡んだというだけで、この点の補強と
16)
して十分といえるかも微妙である) 、また、上記
のYの発言は、上告趣意でも指摘されているよう
17)
に、スピードに関するものと解する余地がある 。
同乗者においても、運転の危険性の認識は必要と
もっとも、本決定は上記のような根本的な理論
問題に踏み込まず、幇助罪の成立を認める。しか
し、その場合にもいくつかの理論的課題がある。
2 幇助行為
XとYは、アルコールの影響により正常な運転
が困難な状態にあったAの乗用車に乗り込み、同
車の発進に了解を与え、かつ運転継続中も、本件
事故に至るまでの間これを黙認していた。ここで
は、了解と黙認という 2 つの行為が問題とされる。
一審判決はこれらを別個に検討し、特に後者につ
いては、
「被告人両名には、Aが本件車両を走行
させることを制止しなければならない作為義務が
あった」とすることから、不作為とみているよう
である。これに対し、本決定は、控訴審判決の評
価を踏まえ、両者は一連一体で、全体としてAに
よる危険運転致死傷を幇助したものとみている。
一般論として、危険運転行為の開始に際しての
了承と、その行為の継続中の黙認は、行為態様と
して切り離して考えるより、一体のものとみる方
12)
が自然といえるかもしれない 。その限りでは、
本件XおよびYの行為を全体として作為と解し、
端的にその犯罪促進作用から両者につき幇助を肯
定することもありえよう。行為の開始時点でいっ
たん了承が与えられた場合には、特に撤回等がな
されない限り、行為継続中も心理的な促進作用を
維持しているといいうるからである。
しかし、本件の問責の対象は、単なる危険運
転(ここでは酩酊運転) への幇助ではなく、危険
運転致死傷を幇助したことである。そして、致死
傷の結果発生は直接には、運転継続中のAによる
スピードの出しすぎやハンドル操作の誤り等によ
る。そうであるなら、まさにかかる態度への幇助
こそが、直接の問責の対象と位置づけられる。こ
れとの関係では、
「了解」は単に行為の機縁を与
えたにすぎない(本決定も、X、Yから了解が得ら
れたことが、運転開始の契機となったとする)。了解
と黙認を一連一体とみるとしても、結果との関係
では、運転継続中にそれを止めさせる態度に出な
かったという不作為が中心的な要素である。これ
により、運転を制止する義務の前提となる、運転
者と同乗者の関係や制止の可能性、制止の運転継
続に対する因果性などの要件が、幇助犯成立の要
件として前面に出てくる。これに対し、黙認を作
13)
では、同乗して運転の場にいる
為とする構成
ことによる心理的促進作用により、広く幇助が肯
vol.7(2010.10)
vol.18(2016.4)
3
3
新・判例解説 Watch ◆ 刑法 No.94
18)
する限り 、仮に、X、YがA車への同乗に伴
う自己の生命、身体に対する危険性を的確に評価
できずに乗り込んだとするとしても、少なくとも、
Aの運転が困難であったことについて両名が具体
的に認識していたことを裏付ける事情は、もう少
し丁寧に検討される必要があるのではないか。
5)ドイツの判例・通説は、酩酊運転罪(ドイツ刑法 315
条a第 1 項)を自手犯とする(藤澤牧子「自手犯論(2・
完)」上法 43 巻 3 号(1999 年)229 頁参照)。
6)上野・前掲注1)129 頁、深町・前掲注1)33 頁も同
旨に解する。これに対し、亀井=濱田・前掲注1)124
頁注 5 は、同乗者につき、一般論として危険運転致死傷
罪の共謀共同正犯の余地はあるとする(共同正犯の可能
性を示唆するものとして、前田雅英『刑法各論講義〔第
四 おわりに
本決定は、酩酊運転による死傷事故の際に、事
情を認識しながらこれに同乗した者に対して危険
運転致死傷罪の幇助の成立を最高裁として初めて
認めたものである。飲酒運転による死傷事故に対
し、社会が厳しい対応を求めているとされる中で、
本決定の影響は大きい。それだけに、この間創設
された道交法上の同乗罪や、酒酔い運転の幇助罪
など、競合関係にあるとみられる犯罪との限界づ
けを慎重に検討すべきである。特に幇助について
は、行為態様等に特に限定がないことからも、処
罰範囲の安易な拡散を防ぐ解釈が指向される。そ
の意味でも、上で示してきたような、本件におい
て掘り下げられるべき解釈論上の問題は、依然と
して残されていると思われる。
5 版〕』
2011 年)66 頁)。さらに、坂本・
(東京大学出版会、
前掲注1)397 頁以下は、本件においてX、YとAの間
に共謀共同正犯の関係を認めることは可能であったとす
る(これに対する批判として、照沼・前掲注1)166 頁
注 54)。
7)井上宏=山田利行=島戸純「刑法の一部を改正する法
律の解説」曹時 54 巻 4 号(2002 年)1074 頁は、本罪
は故意犯であることから、要件を満たす場合は共犯の規
定が適用されるとしつつ、その具体的例示においては、
教唆ないしは幇助のみにしか言及していない。
8)井上ほか・前掲注7)1065 頁以下。
9)深町・前掲注1)33 頁は、酒酔い運転等については道
交法上の犯罪を構成することなどを理由に、結論的に本
罪について幇助犯の成立を肯定する。しかし、本文で示
したように、酒酔い運転と酩酊運転とは範疇において異
なる。
10)松宮孝明『刑法総論講義〔第 4 版〕』
(成文堂、2009 年)
271 頁以下参照。
●――注
11)それゆえ、狭義の共犯者自身の過失を前提に、端的に
1)本件評釈として、本田稔「判批」法セ 704 号(2013 年)
過失正犯の成立を肯定するのが理論的には一貫している
115 頁、内田浩「判批」刑ジャ 38 号(2013 年)92 頁以
が、その限りで統一的正犯が妥当するので、全体として
下、
亀井源太郎=濱田新「判批」法時 86 巻 2 号(2014 年)
正犯概念は二元的に理解される。
122 頁以下、
深町晋也「判批」セレクト 2013 年度
(2014 年)
12)内田・前掲注1)96 頁は、本決定につき、両者を一体
33 頁、保坂和人「判批」警論 67 巻 1 号(2014 年)141
の「幇助行為」と認定したものとする。
頁以下、
亀井源太郎「判批」平成 25 年度重判解(2014 年)
13)亀井=濱田・前掲注1)125 頁以下。
166 頁以下、前田雅英「判批」捜研 765 号(2014 年)2
14)刑集 67 巻 4 号 524 頁。
頁以下、
水落伸介「判批」新法 121 巻 5 = 6 号(2014 年)
15)刑集 67 巻 4 号 544 頁。
489 頁以下、
照沼亮介「判批」上法 58 巻 3 = 4 号(2015
16)水落・前掲注1)499 頁は、両名がAと長時間行動を
年)153 頁以下。本件一審判決評釈として、千葉陽一「判
共にしたという事実だけで、酒酔い運転を幇助する意思
批」研修 755 号(2011 年)15 頁以下、坂本学史「判批」
しかなかったと認定する余地が完全に排斥されるとまで
神院 40 巻 3 = 4 号(2011 年)381 頁以下、上野幸彦「判
いえるかはやや微妙とする。
批」刑ジャ35 号(2013 年)127 頁以下。
17)刑集 67 巻 4 号 472 頁参照。これに対し、水落・前掲注1)
2)本件評釈として、
坂本学史「判批」神院 38 巻 2 号(2008
499 頁は、この事実からAの酩酊運転に関する認識は容
年)149 頁以下、
殿井憲一「判批」研修 725 号(2008 年)
易に認定できるとするが、テールランプが左右に揺れる
370 頁以下。
ように見えたことを加味するとしても、この発言内容か
3)今井宗雄「
『道路交通法の一部を改正する法律』につい
ら酩酊運転に関する認識まで認定することには無理があ
て(上)
」警論 60 巻 9 号(2007 年)45 頁は、同乗罪に
るように思われる。
ついて、飲酒運転の幇助のうち特に悪質なものに対し重
18)山口厚『刑法各論〔第 2 版〕』
(有斐閣、2010 年)53 頁。
い罰則を設けるものとする。同乗罪は酒酔い運転の独立
運転者についての指摘であるが、幇助犯としての同乗者
従犯であるが、通常の独立共犯規定と異なり、正犯行為
にも基本的に妥当するであろう。
である酒酔い運転が行われることを要する。
4)本件評釈として、
萩野貴史「判批」法時 81 巻 8 号(2009
年)139 頁以下。
4
立命館大学教授 安達光治
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