なぜ「ドラマ創作工房」なのか?なぜ「演劇」なのか? ワークシ ョップ

北九州ドラマ創作工房ルポ
Reportage
vol.2
昨年9月から、北九州芸術劇場と、生涯学習施設「こども文化会館・到津市民福祉センター(小倉北区下到津)」の共催で
活動してきた「北九州ドラマ創作工房」。参加者自らが地元・下到津を探検して集めてきた題材をベースに一つひとつのエ
ドラマ創作工房の参加者と演劇のプロによる表現コラボ ! 2 /7
(土)北九州芸術劇場・小劇場で発表 !
今回のワークショップでいう「ドラマ」とは、参加者が
質を第一に体験できるわけです。講師の先生は、
「真実
受身ではなく自らが発信しあい、参加しあう形で行われる
その場にいる本人の気持ちになって、ここで生きてみよう」
創作創造活動のこと。欧米では学校教育の現場でも取
と繰り返します。そこには、正解も不正解もありません。
「ど
り入れられていますが、日本ではまだまだ新しい手法と言
う感じたのか?」
「どうしてそう感じたのか?」毎回参加者
えるかもしれません。
に投げかけ、掘り下げていきます。
「ドラマ」の手法を使った表現活動が、一般的に
ピソードを膨らませ、新しい物語「いたびつ川伝説」が完成。2 月7日、
その集大成とも言える発表公演の日を迎えました。
【全14 回のワークショップ】発表会までの活動
① 9 / 6 仲間とドラマとの出会い。心と身体を動かすエクササイズ
② 9 / 20 物語の題材探し。到津八幡神社の宮司さんへの取材
『到津の新しい伝説』を創るための情報収集
③ 10 / 4 到津探検。
④ 10 / 5 集めた情報を元に創った伝説を短いシーンにしたミニ発表会
⑤ 10 / 25 自分を感じる、仲間を感じるエクササイズ+短いシーン創りの練習
⑥ 11 / 11 声に関する基本エクササイズ+前回より少し長いシーン創りの練習
感じたことを、いかに言葉や身体で表現し、伝
⑦ 11 / 15 エクササイズ『協力とは?対立とは?』+即興劇に挑戦
⑧ 11 / 29 声と距離に関するエクササイズ+みんなで創ってきたシーンを合体
えていくか。これは演劇の本質であるのと
上演されている演劇作品と最も違う点は、
“脚
⑨ 12 / 6 台詞は即興でシーン別練習+劇中で歌う曲の歌唱レッスン
本がない”ということ。物語は、即興の劇遊び
同時に、実は日常生活の中で人と人が
⑩ 12 / 24 真実その場に生きる人になってみる。グループ別のパート練習
のようなエクササイズの積み重ねの中で生み
コミュニケーションしながら生きていくう
⑪ 1 / 10 TENSHOさんの指導でパントマイムに挑戦+シーン稽古
出されます。参加者はまず、それぞれのシ
えでも基本であり大切なことです。これ
ーンで感じたことを自分の言葉で表現します。
こそドラマが「生きる練習である」と言わ
つまり「感じたままに表現する」という演劇の本
⑫ 1 / 24 全体の通し稽古
⑬ 2 / 6 リハーサル
⑭ 2 / 7 5ヵ月に及ぶ活動の集大成!
いよいよ発表会
れる由縁なのでは、と感じられました。
[あらすじ]
いよいよ舞台もクライマックス
﹁
い
た
び
つ
川
伝
説
﹂
ある日、路面電車に乗っていた子どもたちが、
不思議な車掌に誘われて迷いこんだのは、
“龍
なぜ「ドラマ創作工房」
なのか?なぜ「演劇」
なのか?
ワークショップを通して、
その答えが見えてくる!
神伝説”を軸にした時間の迷宮。葛藤する親子、
笑いあう恋人たち、忘れてしまいたい思い出…。
すべてが時空を超えて繰り返されていく。
「い
たびつ川」は果たして、伝説のように消えて
しまう運命にあるのだろうか。
【講師インタビュー】
一番のテーマは「気付く」
「感じる」。
自分が 持っているいい部分を、
どれだけ再構築できるかですね。
【講師・演出】 太宰
久夫さん
(玉川大学芸術学部助教授、アートインライフ・表現教育研究所代表)
今回のような講座では、
「演劇や表現はこうあるべきだ」という既成概念に捕われない
【参加者VOICE】
新しい発見が、毎回あったはずです。
「発見」は「経験」としてインプリンティングされ
ます。さらに「発見と経験」を繰り返しながら進んでいくうちに、頭の中が広がってき
いろんな発見があって楽しか った!
なかなか思った通りに
いかなくて大変。
角 香緒里ちゃん(中 2)右
役の気持ちがつかめ
ると自然に言葉が出
てくる。
人物像を掘り下げて
追求したのが勉強に
なりました。
角 知穂里ちゃん(中 1)左
松尾 宏一さん(38歳)
井上 みずほさん(33歳)
「演劇部に入っているんですが、
「シーンづくりでは、自然な言
「
『今この瞬間、どう思いますか?』
部活と違って脚本もないし、自
葉や動作とのギャップに苦しみ
『この言葉が出たということは、
分で考えてシーンやセリフを創るのは、やっぱり難しかった。
ました。頭で考えたものがついつい先行してギクシャクする
気持ちの中にどういうものがありますか?』など、掘り下げ
今回の経験をきっかけに、自分の意見を遠慮せずにきっぱり
んです。それでも何度も繰り返すうちに、少しずつ自然体に
て追求していくのがキツかった。逆に脚本を覚えて演劇を創
言える人になれたら、と思いました。
(香緒里ちゃん)」
「パン
なってきたかな。気持ちのこもったセリフを言う時は、顔つ
っていく方がラクなのでは、と思ったことも(笑)。でも本当
トマイムは難しかったけど楽しかった。前より少しは、表情
きも違いますよね」
に勉強になりました」
や言葉に表現力らしきものがついてきたかな?(ちほりちゃん)
」
パントマイマー
TENSHOさんの指導で
パントマイムに挑戦
頭で考えるだけでな
く、体で言葉で表現
して。
8回目あたりで何か
が吹っ切れました。
堀尾 亜以さん(24 歳)左
ドラマ=日常生活。
その瞬間を生きてい
る実感が大切。
渡辺 智子さん(26 歳)
山本 嘉予子さん(49 歳)右
鍋屋 立子さん(51歳)
「小学校の教員をしているので、
「自分と周りの演技がうまくか
ます。頭の中が広がれば、内側が自由に動くようになる。内側の変化が外側に表れる。
それが「表現」だと思います。皆さんすごくいい人生経験をしてきたはずなのに、それ
に気付いてないことが多い。表現活動の一番のテーマは、
「気付く」
「感じる」。自分が
本来持っているいい部分をどれだけ再構築できるか、ということではないでしょうか。
【アシスタント講師】
異年齢の経験を共有し合える、いい場でした。
大福 悟さん(劇団C4代表・劇作家・演出家・俳優・制作)
毎回、驚きと変化に富んでいて、楽しみながら表現の可能性を再発見させてもらったと思い
ます。今回の大きな特徴は、下は小学生から上限なくいろんな年齢層の方々が参加している
点。単なる異年齢の交流ではなく、それぞれの年代によって異なる考え方や経験したことを
交換し合える、非常にいい場だったと思います。
自分の引き出しにある「感情・感覚」の再現を。
大塚 恵美子さん(劇団「夢の工場」座長・劇作家・演出家・俳優)
人間は、経験の差こそあれ、誰でも自分の引き出しの中に似たような「感情・感覚」を持っ
ていると思います。直接経験していなくても、本や映画で見た間接的な体験もあるでしょう。
何も飾ったり演じる必要はなくて、あなたの中にある直接、間接の体験を、もう一度自分の
中で正直に繰り返してみて、という言葉かけを心がけてきました。
「私は小学校の教員なので、ド
子どもの表現力を高めるために
み合った時が一番楽しいですね。
ラマを創るのも授業を創るのも
はまず自分から、と始めました。今、自分の殻を破るおもしろ
8回目あたりで、初めて自分らしさのようなものが出せたかな。
同じ、と感じています。脚本のないドラマは、すごくおもしろ
自分の意見を主張するいい経験になったのでは。
吉柳 佳代子さん(NPO わいわいキッズいいづか事務局員・俳優)
その時、何かが吹っ切れたような気がしました。
(堀尾さん)」
さを感じています。ドラマ工房では、登場人物の奥深い気持
い。結局、ドラマ=日常生活だと思うんです。その場、その瞬
子どもと大人が一緒に創り合うよさを一番感じました。最近では、相手にどう思われるかを
ちまで想像しながら創っていくのがおもしろいですね。頭で
「役柄の人物像をとことん掘り下げて考えていくんですが、日
間を真実生きていれば OK。日常生活では、セリフなんて決ま
恐れるあまり、自分の感情や表情、表現を抑えてしまう子どもたちが多いんですが、このお
考えるだけではなく、体を動かして表現する大切さを実感で
頃、自分以外の人間の気持ちをここまで深く考えることはな
ってないんですから。要は、人生そのものをいかに味わって
芝居を創っていく中では、その場の状況を一生懸命考え、子どもたちが大人に向かって自分
きたのが新鮮でした」
いので、貴重な体験でした。
(山本さん)」
いるか、ということですよね」
の主義を主張している。すごくいい経験になったのではないでしょうか。
シーン稽古
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