(特別寄稿) 401k 導入のメリット・デメリットとデメリットを補う対策

(特別寄稿)
401k 導入のメリット・デメリットとデメリットを補う対策
401k 導入のメリットとデメリットは、加入者と会社の 2 つの側面で見ていくことが出来ます。
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加入者従業員のメリット・デメリット
メリット・デメリットは、次のようになっています。ポイントを以下、個別に解説していきます。
<企業型加入従業員のメリット・デメリット>
メリット
デメリット
・年金資産は個人ごとの口座で管理され残高 ・60歳まで原則、解約も借り入れもできな
を常に把握できる
い
・企業の経営状態にかかわらず、資産が保全 ・運用により資産が減ってしまうリスクがあ
される
る
・60歳から65歳までの資金が確保できる ・資産運用のための自助努力が必要となる
・転職時に残高を持ち運べる
・運用により資産が増えれば受取額が増える
(1)会社が倒産しても受け取れる。
・・・資産が厳格に保全されている
退職金制度は一般的に長期勤続者に有利に設計されており、離職率の高い中小企業では従業員にと
って満足行く金額が受け取れません。万一経営状態が悪化し、倒産などということになると、退職金
は絵に描いた餅になってしまいます。
401kでは、拠出金は従業員のもので(事業主返還を除く 注参照)
、それぞれの 401k口座で管理
され、会社の経営状態に関係なく資産は保全されています。また、転職の際でも、新勤務先に 401k
があれば自分の年金資産を非課税で持ち運んだ上で新勤務先から拠出を受けることができます。
(2)60歳から支給
401kは 60 歳まで解約も借入れもできませんから、定年を待たずに退職して、退職金をローン返済
に回すとか独立資金にあてようということはできません。
(3)運用リスク
401k では、資産が増える可能性と同時に減ってしまうというリスクもあり、投資のしくみや経済の
動向を知るなどの自助努力が必要になります。
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401k導入企業のメリット・デメリット
(1)退職給付債務を負わず、全額損金処理できる。
企業にとっての一番の問題は、退職金給付のための原資の確保です。適格退職年金や基金は予想運
用益を大幅に割り込み、適格退職年金は平成 24 年で廃止、基金は解散、代行返上が相次ぎました。
今後も従業員の高齢化が進み、退職金の負担から逃れられない現状があります。
401kを導入する企業にとって一番のメリットは、退職給付債務(退職金を支払う債務)から逃れ
られることです。従業員に拠出さえすれば、万一運用が上手くいかなくて年金資産が減ったとしても、
追加拠出などの負担をする必要がありません。拠出金は全額損金になること、適格退職年金と比較し
ても運用コストが比較的安いのも重要なポイントです。
(2)中途退職者の一時金に対応できない
401kの給付は原則 60 歳以降に行われますから中途退職者の一時金に対応することができません。
また、401kで拠出したお金は従業員のものとして確定しますから、すでに 401kに拠出してしまった
分については減額したり、事業主返還に該当する場合以外は返してもらうということもできません。
従業員への投資教育の重い責務を負うことも、企業が導入に二の足を踏む原因のひとつになっていま
す。
<401k導入企業のメリット・デメリット>
メリット
デメリット
・ 拠出金が損金になる
・中途退職者の一時金に対応できない
・ 企業会計上年金債務とならない
・退職事由による減額ができない
・ 運用によるリスク(追加拠出など)を ・懲戒解雇による不支給ができない
負わない
・従業員への投資教育が必要になる
・ 運用コストが安い
(注)事業主返還
確定拠出年金法により、3 年未満で退職した場合の加入者については拠出金を全額事業主に返還させ
ることができます。3 年未満であれば 1 年、2 年等でも良く、退職金は 1 年以上勤続、3 年以上勤続など
のように一定期間勤続した従業員に支給されるのが一般的ですから、自社の退職金規定に合わせて決め
ることができます。
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代表的な対応策
(1)中途退職一時金について
401k は、公的年金をカバーする年金ですから、途中で会社を辞めた人に一時金として支払うことは
出来ません。近年の法改正により、資産残高50万以下の場合は、一時金として支払われる制度が出
来ましたが、50万円を超えてしまうと一時金としては一切支給されなくなります。そこで、退職金
額の全額を 401k で用意するのではなく、3割とか5割といった一定割合で導入する方法が一般的で
す。
(2)運用のリスクと予定利回り
運用リスクを負うことが401k ですから、これはメリットでもありデメリットでもあるわけです。
最も問題なのは、予定利回りです。401k 導入の一般的な形では、月々の拠出金が 2%で回った場合
に最終の退職金額500万円になるとして、拠出金を逆算していきます。この利回りが高ければ、従
業員に不利、低ければ有利になります。予定利回りは大手企業では2−3%の範囲で設定されていま
す。
この点については、中小企業の場合はもともとの退職金額が低いケースが多いことや、予定利回り
を設定するとそれにいかなかった場合の処理など煩雑になるため、予定利回りを 0 とすることをお勧
めしています。これによって、
「夢のある退職金制度」ができるわけです。