体外受精ー胚移植

体外受精ー胚移植に関する説明書
Q1: 体外受精ー胚移植とはどんな治療法ですか?
A1:精子と卵子は、人間の身体を形作っている他の細胞とは異なり、次の世代の新し
い生命になるために準備された特別な細胞です。体外受精ー胚移植とはその精子と卵
子を体の外で受精させて受精卵とし(体外受精)
、それをさらに培養して細胞分裂の始
まった段階(胚と呼ばれる状態)で子宮の中に入れる(胚移植)治療法です。1978 年
にイギリスで初めて成功しました。
体外受精ー胚移植は英語で in vitro fertilization
and embryo transfer と言い、その頭文字をとって IVF-ET とも呼ばれます。
Q2: 体外受精ー胚移植はどんな人に有効な治療法ですか?
A2: 自然の妊娠には、卵管が通じていること、しかもその卵管が自由に動いて卵巣か
ら排卵する卵子をとらえることが不可欠ですが、体外受精ー胚移植では精子と卵子を
体外で受精させた後に子宮へ戻す方法ですので、卵管が通じていない患者さんや、卵
管が癒着などでその動きが障害され妊娠できない患者さん(卵管性不妊)に最も適し
た治療法と言えます。また、最近増えてきている子宮内膜症のある患者さんや様々な
不妊症の検査や治療を行ったにもかかわらず妊娠できない患者さん(原因不明不妊、
難治性不妊)にも有効とされています。また、最近では授精方法として顕微授精を用
いることにより、精子が非常に少ない患者さん(乏精子症)や動いている精子がとて
も少ない患者さん(精子無力症)あるいは射出精液の中に精子が1匹もいない患者さ
ん(無精子症)でも受精させることが可能となり、そのような男性不妊にも用いられ
ています。
Q3: 体外受精ー胚移植を受けるには何か済ませておかないといけない検査があるの
ですか?
A3: 日本では「不妊症であり、体外受精以外の治療法では妊娠が望めない夫婦(法的
に認められた)に対してのみ行う」ことに日本産科婦人科学会の会告ではなっていま
す。しかし、体外受精以外の治療法では妊娠が望めないかどうかを判断することは一
部の(両方の卵管がないとか運動精子が 0 であるとか)場合を除いて極めて困難です。
また A2でお答えしましたように、今日体外受精ー胚移植は様々な患者さんに有効な
治療法です。ですから、いま診てもらっている先生から体外受精を勧められたとか、
体外受精ってどんなものかなと思っている方は遠慮なく一度話をききに来ることを勧
めます。
Q4: 体外受精ー胚移植をうけるにはまずどうしたらいいのですか?
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A4: まず一度夫婦一緒に来院していただいています。ただしこれはあくまでも原則で、
奥さんだけが受診して話を聞きたいという場合にも当院では応じています。その際に
これまでに受けた検査や治療についてわかるもの(紹介状やカルテのコピーなど)が
あれば持参をして下さい。もしそういったものがない場合はなくても結構です。 身体
的、経済的、時間的に大変な治療法ですからまずは十分にその内容をご夫婦二人に理
解していただく事が重要だと考えています。
Q5: 体外受精ー胚移植を受けるにはどれくらい通院をしなくてはならないですか?
A5:
1. 体外受精についての説明を受ける時(ご夫婦で来院)。
2. 体外受精に必要な検査をする時(感染症検査、精液検査など)
。
3. 治療周期の週 3 日は診察をします。主に、超音波検査による卵胞計測と血中 E2(卵
巣ホルモン)値測定をします。ふつう排卵誘発には 7~10 日間かかるため 3~5 回程度
の来院が必要となります。残りの週 4 日は原則的には注射(HMG または FSH 製剤)だ
けなので、必ずしも通院は必要ありません。自宅近くの病院(できれば産婦人科が望
ましい)で注射を受けてもらっても構いません。
4. 採卵日(御主人も精液採取のため来院)。
5. 胚移植。胚移植後の着床を助けるためのホルモンの補充は近くの病院でうけても
らっても構いません。
*御主人の来院が必要なのは 1. 2. 4. です。
*特別な事情がある方(かなり遠方から来られている方、仕事の都合が変えられない
方など)は相談に応じます。
Q6: 体外受精ー胚移植を受けるには入院が必要ですか?
A6: 以前はこの治療法は入院を必要としていましたが、現在は採卵方法が改善され、
移植後の安静時間も長時間は必要ないことがわかり、入院の必要はなくなりました。
当院でも採卵後、移植後は安静室にてしばらく休んでもらった後、異常がなければ帰
宅していただきます。
Q7: 実際の体外受精ー胚移植はどのように行われるのですか?
A7:
1.排卵誘発剤を使用して卵巣の中の卵子を排卵直前の状態まで成熟させます
2.排卵直前の状態にまで発育した卵子を、経膣的に穿刺針を用いて吸引採取します。
尚、この際に卵巣から出血があり、そのほとんどの場合は少量で直ぐに出血は治まり
ますが、ごく稀(約 1/10000 件)に出血が止まらず、手術による止血操作を必要とす
ることがあります。
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3.卵子の吸引採取と並行して精液を採取し、治療に用いる精子を準備します。
4.選別した精子と卵子を一緒にして受精させ受精卵の状態にします。受精障害の場合
は顕微授精により受精させることができます。
5.さらに培養し胚という状態まで育てます。
6.胚を子宮内に移植します。
7.胚移植後は妊娠が成立しやすいホルモン環境をつくります。
尚、このような一連の治療を繰り返し行った場合に、身体に何らかの影響が生じる可
能性(卵巣がんの発生頻度の上昇、閉経が早まる等)が考えられますが、現時点では
明らかな悪影響は確認されていません。今後注意深く見守っていく必要があります。
Q8: 体外受精ー胚移植にはどうして排卵誘発剤が必要なのですか?
A8: 自然の状態では、両側卵巣には一度にそれぞれ数個の卵子が発育し始めますが、
そのうち成熟して排卵されるのは1個か2個で、他の卵子は途中で発育を停止してし
まいます。IVF-ET では移植する胚の数が多くなればなるほど妊娠率は高くなります。
したがって卵巣に何も処置を加えない場合には成熟卵子は1個か多くても2個のため、
成熟卵子と精子が受精してできる胚の数も当然少なくなり、妊娠率を高めることはで
きません。つまり妊娠率を高めるためには多くの卵子を発育・成熟させ、そしてこれ
らを採取して受精させ培養し子宮内に移植することが必要となります。
Q9: 体外受精ー胚移植の排卵誘発とは一体どんなものですか?
A9: IVF-ET の排卵誘発法には様々な方法があります。ここでは最も一般的な方法に
ついて説明をします。まず、IVF-ET を実施する周期の最初の日、あるいはその少し前
から GnRH アナログとよばれる薬剤を使用します。これは排卵誘発剤ではありませんが
これを使用することにより排卵誘発剤をより効果的にかつスムーズに発揮させること
ができます。GnRH アナログ剤には鼻の中にスプレーで薬剤を散布する点鼻剤と皮下に
注射をする注射剤の2種類があります。GnRH アナログ剤の開始後、排卵誘発剤として
hMG(ヒト閉経後ゴナドトロピン)製剤または FSH(卵胞刺激ホルモン)製剤とよばれ
る薬剤を使用します。hMG や FSH は卵子を発育させる作用をもっている筋肉注射剤で、
通常の場合は 7~10 日間毎日注射します。hMG または FSH を使用し、ある程度卵子が
発育したと思われる時点からは、超音波検査による卵胞の大きさの計測や、血液中の
ホルモン量の測定により、発育している卵胞の数や発育状況を調べます。そして卵胞
がある一定の大きさ(約 20mm 程度)に達し、血液中のホルモン値が十分に上昇したと
ころで hMG または FSH の注射を終了し、その日の夜 hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
とよばれるホルモン剤を注射します。hCG 剤も筋肉注射で、発育した卵胞に作用して
排卵の準備をさせる作用をもっています。hCG 注射の翌々日の朝に採卵をし、採卵2
~3日後に胚移植を行います。
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Q10: 排卵誘発による副作用にはどんなものがあるのですか?
A10: hMG 剤や hCG 剤の使用は、基本的には自然の排卵の際のホルモン状態を人工的
に作るものですから、通常は大きな副作用はありません。しかしホルモンに対する感
受性が非常に高い人の場合には、通常のホルモン量による刺激でも過剰に卵巣が反応
し、卵巣が腫大したり腹水や胸水が貯留したりすることがあります。これを卵巣過剰
刺激症候群(Ovarian Hyperstimulating Syndrome, OHSS)といい、hMG 剤と hCG 剤を
使用して排卵誘発を行った人の 5-10%に発生するとされています。卵巣過剰刺激症候
群が重症化すると致命的な場合もあるため私達はその発生防止のため特に注意をはら
い、超音波所見やホルモン測定値の状況によって使用するホルモン量を減じたり、場
合によっては中止することもあります。しかし完全に予防することは出来ず、その程
度が強い場合には入院し加療が必要となることがあります。また症例によっては OHSS
の重症化を避けるために、得られた受精卵を全て凍結保存しその治療周期には胚移植
を行わない方法を選択する場合もあります。
また、稀ですが排卵誘発剤に対してアレルギー反応を起こす方があり、そのような症
状が発生した場合は投与を中止する場合があります。
Q11: 採卵の時は麻酔をするのですか?
A11: 通常採卵は経膣超音波で見ながら腟の中から卵巣に細い穿刺針を刺入して行
い、その所要時間は約 10-15 分程度です。したがって、痛みはそれ程強くはなく、時
間も短いため麻酔なしでも施行は可能です。しかし卵巣の位置や大きさは患者さんに
よって様々なので場合によっては痛みが強かったり、時間が長くかかることがあるた
め、多くの施設では何らかの麻酔(腰椎麻酔、硬膜外麻酔、静脈麻酔、局所麻酔など)
を行っています。当院でも患者さんとよく相談し、原則的には何らかの麻酔を行う予
定です。
麻酔の副作用には血圧の変動や呼吸抑制、悪心、嘔吐、頭痛等があり、当院では麻酔
施行時にはそれらを十分に注意してモニターし、適切に対処できる体制を整えていま
す。
Q12: 胚移植はどのようにするのですか?
A12: まず細いビニール管に胚をゆっくりと吸い込みます。そのビニール管を子宮頚
管から子宮に慎重に入れ、静かに胚を子宮内に注入します。患者さんにとっては通常
の産婦人科の内診とほとんど変わるところはありません。尚、移植する胚の数は原則
1 個とされています。
Q13: 胚移植後はどのようにすごせばよいのですか?
A13: 移植後約 30 分は安静とし、その時点で異常がなければ帰宅していただきます。
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以前は丸 1 日ベッド上で安静にしておいた方が妊娠しやすいなどと言われていました
が、その後の多くの経験から移植後 30-60 分の安静で問題ないことがわかってきまし
た。帰宅後はなるべく安静を心掛ける方がよいと思いますが、日常生活の範囲であれ
ば特に制限はありません。一般的には、子宮が胚を上手に受け入れて妊娠を成立させ
るためにホルモン剤を使用します。使用するホルモン剤には黄体ホルモン、hCG、ある
いは卵胞ホルモンと黄体ホルモンの両方を含む薬剤などがあり、使用法も内服、注射、
坐薬の三つの方法があります。移植の 2 週間後に妊娠が成立したかどうかを基礎体温
の変化、血中や尿中のホルモン測定、超音波断層法などにより診断します。
尚、体外受精ー胚移植を行うと子宮外妊娠(子宮内ではなく卵管や腹腔内、卵巣、子
宮頚管などに着床してしまう)発生の割合が通常の自然妊娠の場合と比較して少し高
くなると言われています。したがって、妊娠判定で陽性になられたら妊娠されている
場所を超音波検査で確認することがとても重要です。
Q14: 体外受精ー胚移植の妊娠率(成功率)はどれくらいですか?
A14: 一般的に治療 1 回当たり 20-40%と言われています。しかし患者さんの状態は
様々ですから一概には言えません。妊娠率に大きな影響を与えるのは移植する胚の数
と患者さんの年齢だと言われています。移植する胚の数を多くすればするほど妊娠率
は上昇しますが多胎妊娠が多くなってしまいます。また若い患者さんは妊娠しやすく、
40 歳以上の場合は非常に妊娠しにくいこともわかっています。したがってこの妊娠率
がすべての患者さんにあてはまるわけではありません。ちなみに日本全国の施設から
の報告を集計した 2014 年 9 月の日本産科婦人科学会の報告(平成 24 年分)では、新
鮮胚を用いた治療の対移植周期あたり妊娠率は 22.6%、凍結胚を用いた治療の対移植
周期あたり妊娠率は 33.7%となっています。流産率や子宮外妊娠の発生数は別紙(表
7, 8)を参照して下さい。
Q15: 体外受精ー胚移植で妊娠した場合、多胎妊娠が多いと聞いたのですが?
A15: 多胎妊娠を恐れて移植する胚の数を減すと妊娠率が下がり、妊娠率を上げよう
として移植する胚の数を増やすと多胎率が上がるという問題を体外受精ー胚移植は抱
えています。多胎妊娠は早産や妊娠中毒症の原因となり、母体や児にとって決して好
ましい状態ではありません。そこでこの妥協点とし平成 20 年 4 月の日本産科婦人科学
会の会告では、
「生殖補助医療の胚移植において、移植する胚は原則として単一とする。
ただし、35 歳以上の女性、または 2 回以上続けて妊娠不成立であった女性などについ
ては、2 胚移植を許容する。治療を受ける夫婦に対しては、移植しない胚を後の治療
周期で利用するために凍結保存する技術のあることを、必ず提示しなければならな
い。」となっています。
2 個の胚を移植した場合の多胎率は 10-15%と言われています。
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Q16: 体外受精ー胚移植で妊娠した場合、子供は元気に生まれてくるのでしょうか?
奇形は大丈夫でしょうか?
A16: 死産について日本産科婦人科学会の報告では、平成 24 年の日本での IVF-ET に
よる分娩数 36656 に対し死産数は 156(0.4%)となっています。妊娠 28 週以降の死産と
出生後1週間以内の死亡を一緒にしたものを周産期死亡といい、この率は通常の妊娠
でも出生の1%を少し下回る程度です。また IVF での先天異常については、同じ報告
で平成 24 年の日本での IVF-ET によって生まれた先天異常をもった児は 744 人(2.0%)
でその内訳は別紙(表 12 先天異常児の調査)を参照して下さい。一般的に出生直後
に異常と診断される児の率は 1~2%とされていますので、IVF-ET での先天異常率も通
常の妊娠とほぼ同程度と思われます。しかし、IVF-ET による出生児の数は一般的な統
計を出すにはまだまだ少な過ぎますし、歴史も浅いため、先天異常や児の長期予後に
ついては今後も注意深く見守っていく必要があります。
Q17: 体外受精ー胚移植にかかる費用はどのくらいになるのでしょうか?
A17: 現在、不妊治療の内、人工授精や体外受精は保険適用外の治療法とされていま
す。また、原則的にはそれを目的として行う検査や処置、投薬にも保険は適用できま
せん。したがいまして当クリニックではそれらについてあらかじめ自費診療料金を設
定して治療を行っております。くわしく別紙の「不妊治療自費診療料金について」を
ご覧下さい。
尚、不妊治療(生殖補助医療を含む)は残念ながら受けられた方全員が必ず妊娠され
る治療法ではなく、治療の結果に関わらず費用がかかります。どうかご了解下さい。
Q18: 体外受精ー胚移植は2カ月以上続けてできるのでしょうか?
A18: Q8でお答えしたように、体外受精治療の多くは排卵誘発を伴います。それは
成功率(妊娠率)を上げるためです。したがって毎周期治療を行うことは卵巣への負
担を考慮すると好ましくありません。通常は 3~4 周期に 1 回の割り合いで治療をする
ようになります。
尚、生殖補助医療は精神的負担が生じる可能性の高い治療で、繰り返し行うことでそ
の可能性はより高まると考えられます。当院ではその点を十分考慮して、患者さんと
よく相談し、治療計画を立てることにしています。
Q19: OHSS の症状がでて入院が必要な場合は、他院に入院になるのでしょうか?
A19:絹谷産婦人科クリニックには残念ながら入院設備はありませんので、他院に入
院していただくことになります。そのような場合には責任をもって信頼のおける病院
へ入院をしていただくようにいたします。私の経験では排卵誘発の方法で OHSS の発症
率はかなり違ってきます。私が広島大学医学部附属病院で体外受精を担当していた時
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の OHSS の発症率は約 5%で、入院を必要としたのは 1%以下でした。
Q20: もし体外受精ー胚移植の治療中にクリニックが停電になったら胚や卵子、精子
はどうなるのですか?
A20:胚や精子の凍結保存は液体窒素という-196℃の液体に浸けて行い、電気は使用
しないため停電は全く関係ありません。しかし、採卵後の卵子や移植迄の胚はインキ
ュベータ-という温度や CO2 濃度を一定に保つ装置内で育てる必要があるため、もし
停電になった場合は大きな問題です。当クリニックではそのような場合を考慮し自動
自家発電装置をクリニック横に設置し、お預かりする大切な胚や卵子、精子が無駄に
ならないように万全を期しております。
Q21: 貴院で体外受精ー胚移植の治療を受ける場合、採卵や移植を日曜日や祝日に行
う事はあるのですか?
A21:体外受精ー胚移植治療において採卵、移植のタイミングは成績を左右する非常
に重要な事と考えています。したがいまして当クリニックでは曜日や祝日にかかわら
ず最適と判断する日に採卵、移植を行っています。ただし、スタッフの研修および休
養や器機の点検・整備のため年に数回(年末・年始、ゴールデン・ウィーク、お盆な
ど)治療が実施できない期間があります。その場合は早めに患者さんに周知するよう
にしております。
Q22: 体外受精ー胚移植をした場合に、しっかり着床するように患者が何か気をつけ
ることはありますか?
A22:残念ながら特にありません。強いて言えば、「安静を心掛ける」くらいでしょ
うか。着床にとって子宮の収縮は好ましくないと考えられています。安静の方が収縮
はおこりにくくなると思います。以前、移植後にベッド上安静を 2 週間行った報告が
ありましたが、妊娠率は変わりませんでした。着床にとってストレスもよくないので、
のんびり、ゆったり過ごすのがよいと思います。
Q23: カウンセリング受けたいのですがどうすればいいですか?
A23: 近年、不妊症治療において心のケアの重要性が明らかになってきました。当院
でもその重要性を認識し、必要と判断した方にはカウンセリングを受けていただいて
います。ご希望の方は遠慮なくお申し出ください。当院の生殖(不妊)カウンセラー
が対応させていただきます。
Q24: 貴院は日本産科婦人科学会による生殖補助医療実施医療機関の登録施設です
か?
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A24 : 日本産科婦人科学会は生殖補助医療実施医療機関の登録を行っています。こ
れは安全で質の高い生殖医療を国民の皆さんに安心して受けていただくための制度で、
当院は現在その登録施設になっています。登録施設は学会に治療成績を報告する義務
があり、また、学会等で当院での成績を発表することがあります。その際には 個人情
報保護法に基づき情報を使用させていただきますのでご了解下さい。
Q25 : 胚盤胞(Blastocyst)培養・移植はどのような治療法ですか?
A25 : 現在の体外受精ー胚移植では、採卵2日目または3日目に胚を子宮内へ移植
するのが一般的です。しかし、これは生体内での生理的現象とは異なっています。生
体内では排卵後(採卵は排卵を意味します)5日目までは受精卵(胚)は卵管内にあ
り、その後胚盤胞の状態で子宮内に運ばれてきます。つまり、排卵から2日目また3
日目の胚は生理的には子宮内にはないはずです。これまでの培養液では採卵から2ー
3日目までしか培養できず、生理的現象とのズレが問題でした。新しい培養液の開発
により採卵から 5 日目までの培養が可能になりました。しかし、最近では胚盤胞まで
培養してから移植すると一卵性双胎の発生が増加するとの報告があり、その点を十分
考慮して胚盤胞培養を行うかどうか決定する必要があります。また、先天異常や児の
長期予後については今後も注意深く見守っていく必要があります。
Q26 : 孵化補助(Assisted Hatching)とはどのような治療法ですか?
A26 : 胚は子宮内で着床前に透明帯からの脱出=孵化(Hatching)現象を起こしま
す。言い換えれば透明帯から脱出できなければ着床はできません。その透明帯からの
脱出=孵化(Hatching)現象を補助する治療法が孵化補助(Assisted Hatching)です。
実際の方法にはいくつか種類あり、針を用いて機械的に透明帯を切開する方法や酸性
の液体を用いて透明帯を溶かす方法、レーザーを用いて熱で透明帯を溶かす方法など
がよく行われます。多くの方がこの治療法で妊娠され、危険性は特にないと考えられ
ていますが、最近、一卵性双胎の発生が増加するとの報告があり、その点を十分考慮
して 孵化補助を行うかどうか決定する必要があります。先天異常や児の長期予後につ
いては今後も注意深く見守っていく必要があります。
Q27 : 2-step transfer(二段階胚移植)とはどのような治療法ですか?
A27 : 「着床」のメカニズムは今だに十分な解明はされておらず、体外受精治療に
おいて十分な妊娠率が得られていない理由の一つです。2-step transfer とは体外受
精治療の際に移植を 2 回に分けて行い、着床率を改善するための方法です。通常の体
外受精の場合と同様に卵巣刺激ー採卵ー授精ー培養を行い、採卵後 2 日目または 3 日
目にまず 1 回目の胚移植を行います。そしてその際に移植せずに残った胚の培養を継
続し胚盤胞まで育て、採卵後 5 日目(1 回目の移植後 2-3 日目)に 2 回目の胚移植を
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行います。胚盤胞移植の前にあらかじめ胚移植を行っておく事によりそれらの胚が子
宮内膜を着床しやすい状態に変化させ、着床率(妊娠率)の向上が期待される治療法
です。ただし、受精卵のうち胚盤胞にまで発育する確率は約 50%なため、通常は 4 個
以上の受精卵が得られた方にしかこの治療法は行えません。当クリニックでは平成 13
年 11 月からこの治療法を開始し、すでに多くの方がこの治療法で妊娠されています。
この治療による先天異常や児の長期予後については今後も注意深く見守っていく必要
があります。
絹谷産婦人科
院長 絹谷 正之
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