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「雪国のバス停」 群馬県 水上一郎
目 次
随 想 病院の食事はなぜ「まずい」のか?…………………<合原康行>… 78
解 説 シリーズ解説:食品産業における環境対策(第8回)
輸送分野におけるCO2排出量削減対策の現状……<黒川久幸>… 80
解 説 シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用(第35回)
醸造用酵母の多様性−ワイン酵母を中心に−……<後藤奈美>… 89
肺魚のため息 甲羅蓋魚と棘蓋魚………………………………<多紀保彦>… 97
海外技術・マーケット情報
天然醸造醤油を用いた食品中の食塩の低減 …………………………… 100
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最近のショットスタイル飲料市場 ……………………………………… 103
無菌包装の現状と課題 …………………………………………………… 106
健康志向消費者の情報源としての栄養表示ラベル …………………… 108
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連載エッセー:食べ物随想 日本語のあそび
−表音文字と表意文字− …………………<田村真八郎>… 110
特別解説:植物工場の現状と今後の課題 ………………………<石井雅久>… 112
特別レポート:日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
−平成21年1〜12月を振り返って−
<醸造産業新聞社 編集部>… 118
技術コーナー:ワイン用ボトル缶の開発 ………………………<佐藤伸秀>… 124
業界トピックス:飲料 三年連続マイナスは避けたい ………………………… 127
業界の話題 …………………………………………………………………………… 128
今月の統計 …………………………………………………………………………… 132
最近の技術雑誌から ………………………………………………………………… 134
野菜・果物を巡って(第十四話) ニュージーランドとキウイフルーツ
… ……………………………………………<吉田企世子>… 139
FOOD
&
PACKAGING
缶詰技術研究会 http://kangiken.net/
随 想
病院の食事はなぜ
「まずい」のか?
あい
はら
やす
ゆき
合 原 康 行
(元神奈川県栄養士会副会長
栄養管理ソリューション代表)
あなたには入院の経験があるだろうか。たとえ
であり,その安全性と栄養価値を無視するわけに
経験がなくても「病院の食事はまずい。」という
はいかない。食べ物の価値がうまい・まずいだけ
声をよく耳にすることがあると思う。どうせ食事
で判断されるのであれば,栄養生理学や臨床栄養
をするのなら,まずいよりもおいしい方がよいに
学などという学問は邪魔なだけであり,今日のよ
決まっている。「そのレストランの食事は病院食
うに生活習慣病が増加してきている現状において
よりまずかった。」という一文がある小説がある
も食事指導などという「お節介な医療行為」は不
そうだが,この小説の著者はそのレストランの食
要である。
事がいかにまずかったのかを強調する手段として
病院食を引き合いに出したわけである。
私が食べ物に関心を持ったのは,食べ物によっ
て健康が左右されたり,病気の治療にまで食べ物
ところで,食事には4つの機能があると考えら
が影響していることを知ったからに他ならない。
れている。まず最初は「空腹を癒す」という本能
考えてみれば,ヒトの体は食べ物によって造られ
としての役割(一次機能),2つ目は生命維持の
ているのであり,その質や量によって生命が左右
ために「栄養補給」としての役割(二次機能),
されても何ら不思議はない。しかし世間では,ミ
そして3つ目は「味,季節感などを楽しむ」とい
シュランガイドをはじめとするグルメブームやテ
う役割であり(三次機能),三次機能の究極の姿
レビのグルメ番組,そして人気スイーツや人気料
がグルメと呼ばれる人たちの行動であろう。そし
理店の紹介など,「うまい・まずい」ということ
て最後の4つ目は,結婚式やパーティーなどの食
のみに焦点が当てられ過ぎ,食本来の役割である
事のように,食事を通して「円滑な人間関係のコ
生命を維持するという視点が抜け落ちているよう
ミュニケーションの手段」をはかるという役割で
に感じられてならない。その一方では,ある特定
ある(四次機能)。多くの人々の関心ごとは三次
の食品を摂取することによって健康を維持・増進
機能と四次機能に集約されており,二次機能に関
するような情報も多く流されている。そもそもヒ
心をもつ者は「野暮」とさえとられかねない。し
トに食べられるために生まれてきた動物や植物は
かし,私たちは食べ物によって生かされているの
存在しないわけで,ヒトは多くの種類の食物を摂
食品と容器
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取することによって,それらに含まれている栄養
あろうと思わざるをえない。これによって国民の
素を消化し,吸収し,そして代謝して自らの生命
医療費は増大し,そのツケは健康保険料や税金の
の維持に利用しているのである。
値上げという形で国民に跳ね返ってくるのである。
メタボ検診によって一躍有名となった「内臓脂
もうひとつ,病院の食事が「まずい」と言われ
肪症候群」と密接な関係にある生活習慣病の多く
るのには大きな原因がある。それは病院食を食べ
は,「食生活習慣病」と呼ぶべきものが多く存在
る喫食者側の問題である。1日中ベッドの上に寝
し,常日頃の食生活と密接な関係にあることが疫
ていて食欲が出るだろうか,ブドウ糖の点滴をさ
学的にも証明されている。
れていて空腹感が起こるだろうか,病気で体調が
悪く熱があるときに食欲が出るだろうかというこ
私は23年間ほど病院において患者さんの食事指
とである。また,多くの薬剤は食欲を低下させた
導や治療食管理の仕事に従事してきたが,患者さ
り味覚異常を起こす。つまり料理をおいしく食べ
んの治療によい料理と患者さんが好む料理との間
るためには,食べる側の健康状態が非常に重要な
には「負の相関関係」が存在することを実感して
のである。健康なときには,このごく当たり前の
いる。
ことを私たちは忘れてしまっている。
たとえば,血圧が高い人は食塩量の多い味の濃
空腹感は本能であるが食欲は本能ではない。そ
い料理を好み,脂質異常症の人はコレステロール
の証拠にコース料理で満腹であってもおいしそう
の多い食品や動物性脂肪の多い料理を好み,肥満
なデザートをみれば,食欲が目を覚まし食べてみ
症の人はエネルギーが高い食事を好む傾向がある。
たいと思うし,空腹であっても恐怖やまずそうな
逆にエネルギーを多く摂取しなければならない人
映像を見た場合には一気に食欲が低下することも
は脂肪の多い料理を好まず,さっぱりとした料理
ある。この本能ではない部分を刺激するために多
を好むのである。ところが治療食は患者さんの嗜
くの料理人や「食の仕掛け人」たちは日々苦労し
好とは逆の料理を提供するのであり,血圧が高い
ているのである。
人には食塩量の少ない薄味の料理を提供し,コレ
ステロール値が高い人の料理は肉類を中心とした
つまり私たちは,料理を単に舌(味覚)だけで
動物性脂肪を控え,肥満症の食事は量も少なく脂
味わっているのではなく,視覚,嗅覚,そして歯
肪を控えた内容であり,エネルギーを多くしたい
ごたえなどの触覚や,食事の際の音・音楽などの
場合には油料理が多くなるのである。極論すれば,
聴覚なども総動員して料理を味わっているのであ
治療食とは患者さんが好む料理とは対極の関係に
る。残念ながら病院食には,これらの料理をおい
ある内容の料理を提供することなのである。これ
しく食べるための条件の一部が欠如していること
では患者さんに「おいしい」と言ってもらえるわ
も多く,欠如せざるをえない環境に置かれている
けがない。つまり病院では「まずい」と言われる
こともまた事実である。
ことを承知で料理を提供していると言ってもよい。
食事をする際,舌で感じる味だけではなく,器
嗜好だけを満足させ,量や質を考えないで食べ
や色彩,盛り付けはもちろんのこと,周りの環境
た結果が今日の生活習慣病の増加につながってい
や健康状態・精神状態等にも気を使って戴ければ
るとすれば,グルメブームとは何と罪深い現象で
幸甚である。
食品と容器
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シリーズ解説:食品産業における環境対策(第8回)
□解説□
輸送分野におけるCO2排出量
削減対策の現状
く ろ か わ・ひさゆき
平成8年4月東京商船
大学助手。在庫マネジ
メントや物流シミュレ
ーション工学を担当。
現在,国立大学法人東
京海洋大学海洋工学部
准教授,多摩大学大学
院客員教授。
黒 川 久 幸
こでは物流の中の輸送を対象に,温室効果ガスの
□ 1.はじめに □
排出状況,そして,排出量削減のための取り組み
2007年に取りまとめられた気候変動に関する政
である「グリーン物流パートナーシップ会議」と
府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書による
「ロジスティクス環境会議」を紹介する。
と,世界平均地上気温は1906年から2005年の間に
また,具体的な輸送におけるCO2排出量の削減
0.74(0.56〜0.92)℃上昇し,20世紀を通じて平
対策として,今年度,表彰を受けた優良事業を紹
均海面水位は17(12〜22)cm上昇したと報告さ
介する。
れている。
□ 2.温室効果ガスの
排出状況と削減の取り組み □
このため地球が過度に温暖化するのを防ぐため
に,世界各国で種々の対策が実行されている。こ
᷷ቶലᨐ䉧䉴ឃ಴㊂䋨ం䊃䊮㪚㪦㪉
(億トンC02)
C0
%12
13.5
13.4 13.6
12.6
CH
%*4
13.1
N
2O
01
13.3 13.5
HFC
*(%Us
PFC
2(%Us
2.1 温室効果ガス排出量の推移
SF6
5(
13.7
13.6 13.6 13.4 13.5
13.6 13.2
日本における温室効果ガス排
出量の推移を第1図に示す。図
より,2007年度における温室効
果ガスの総排出量は,13億7400
万トンであることが分かる。こ
れは,京都議定書の規定による
基準年の総排出量,12億6100万
トンと比べ,9.0%も上回ってお
ᐕᐲ
り,より一層の削減が必要とな
っている。
また,温室効果ガスの内,
第1図 日本の温室効果ガス排出量
出典:環境省「環境白書」平成21年度版
食品と容器
ၮḰᐕ
CO2 排出量は13億400万トンで,
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輸送分野におけるCO2排出量削減対策の現状
これは世界におけるCO2総排出量の4%に相当し
離の削減にも資する港湾の整備
ている。
グリーン物流パートナーシップ会議を通じて,
次に,第2図に部門別CO2排出量の推移を示す。
荷主と物流事業者の連携による取り組みを支援
図より,2001年以降運輸部門からのCO2排出量が
・公共交通機関の利用を促進
減少傾向にあることが分かる。これに対し,オフ
鉄道等新線整備
ィスビル等からの排出を示す業務その他部門や家
既存鉄道・バスの利用促進
庭部門からの排出量が増加傾向にあることが分かる。
エコ通勤等の施策
なお,2007年度の運輸部門からのCO2排出量は
・海上輸送
2億4900万トンで,全体の19.1%を占めている。
船舶実燃費指標(海の10モード)の開発・国際
2.2 京都議定書の基準年との比較 標準化等による海洋環境イニシアティブを推進
日本は2008年から2012年までの
ੑ㉄ൻ὇⚛ឃ಴㊂䋨⊖ਁ䊃䊮㪚㪦㪉
(百万トンCO2)
5年間で,
京都議定書の基準年に
対して温室効果ガスの排出量を6
%削減することになっている。
そこで,京都議定書の基準年と
中 間 目 標 で あ る2010年 の 目 安
と比較した結果を,第1表に示
す。表から大幅な削減が必要で
あることが分かる。
↥ᬺㇱ㐷
ㆇャㇱ㐷
ᬺോ䈠䈱ઁㇱ㐷
2.3 温室効果ガス排出量削減の
のような取り組みを行っている。
第2図 部門別CO2排出量の推移
出典:環境省「環境白書」平成21年度版
○運輸部門の取り組み
第1表 京都議定書および2010年度目標との比較
ㇱ㐷
੩ㇺ⼏ቯᦠ
Ⴧᷫ₸ ᐕᐲ
ߩၮḰᐕ
制等によるクリーンエ
↥ᬺㇱ㐷
ネルギー自動車の普及
ㆇャㇱ㐷
ᬺോߘߩઁㇱ㐷
ኅᐸㇱ㐷
促進
環状道路等幹線道路ネ
ットワークの整備
・モーダルシフトを含め
た物流効率化の促進
国際貨物の陸上輸送距
食品と容器
単位:百万トンCO
න૏䋺⊖ਁ䊃䊮㪚㪦㪉2
よる自動車燃費の改善
低公害車購入の優遇税
ᑄ᫈‛
ᐕᐲ
部門別の対策・施策として,
次
トップランナー基準に
Ꮏᬺ䊒䊨䉶䉴
䉣䊈䊦䉩䊷ォ឵ㇱ㐷
ための取り組み
・自動車単体対策
ኅᐸㇱ㐷
ᐕᐲ߆ࠄ
ᔅⷐߥ೥ᷫ₸
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㨪
出典:環境省「環境白書」平成21年度版
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2010 VOL. 51 NO. 2
シリーズ解説:食品産業における環境対策
スーパーエコシップの普及促進
へ拡大
・航空分野
省エネ効果の高い窓等の断熱と空調,照明,給
飛行経路の短縮を可能とする広域航法
(RNAV)
湯等の建築設備から構成される高効率ビルシス
の導入等の航空保安システムの高度化
テムをエネルギー需給構造改革推進投資促進税
制の対象設備に追加
環境にやさしい空港(エコエアポート)等を推
進
建築物等に関する総合的な環境性能評価手
○産業部門(製造事業者等)の取り組み
法(CASBEE)の充実・普及
電力・鉄鋼業等の大幅な京都メカニズムクレジ
全国の国の庁舎において,太陽光発電,建物緑
ットの活用量の積み増し
化,ESCO等のグリーン化を集中的に推進
中小企業の排出削減設備導入における資金面の
○家庭部門の取り組み
公的支援の一層の充実
消費者等が省エネルギー性能の優れた住宅を選
大企業等の技術・資金等を提供して中小企業等
択することを可能とするため,住宅等に関する
が行った温室効果ガス排出抑制のための取り組
総合的な環境性能評価手法や住宅性能表示制度
みによる排出削減量を認証し,自主行動計画等
の充実・普及
の目標達成のために活用
省エネルギー性能の評価・表示による消費者等
コンビナート等の産業集積地において工場排熱
への情報提供を促進
を企業間で融通する等,複数の事業者が共同し
既存住宅において一定の省エネルギー改修(窓
て自主的に省エネ・排出削減を行う仕組みを構築
の二重サッシ化等)を行った場合にかかわる省
CO2排出低減が図られている建設機械の普及を
エネ改修促進税制を創設
図るため,これら建設機械の取得時の融資制度
□ 3.グリーン物流
パートナーシップ会議 □
を措置
バイオマスの利活用
食品産業の自主行動計画の取り組みを推進
3.1 概要
施設園芸,農業機械におけるCO2排出削減対策
グリーン物流パートナーシップ会議は,国民生
を推進
活を支える物流活動を萎縮させるのではなく,企
○業務その他部門の取り組み
業の自主的な取り組み意欲を醸成するような対策
省エネルギー法を改正し,現行の「工場・事業
を基本とする考えのもと,産業界と物流業界の幅
場単位」による規制から「企業単位」での総合
広い参加を得た社会運動が形になって,2005年4
的なエネルギー管理へ法体系を改正
月に発足したものである。
一定の要件を満たすフランチャイズチェーンに
このグリーン物流パートナーシップ会議は,荷
ついてチェーン全体を一体と捉え,本部事業者
主・物流事業者の連携を深める場として,また,
に対し,事業者単位の規制と同様のエネルギー
物流面におけるCO2排出量削減への自主的な取り
管理を導入
組みの促進を目的としており,次の団体により運
建築物の省エネルギー性能の向上のため,建築
営されている。
物にかかわる省エネルギー措置の届出等の義務
・主催団体
付けの対象について,一定の中小規模の建築物
日本ロジスティクスシステム協会
い
とら
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輸送分野におけるCO2排出量削減対策の現状
日本物流団体連合会
国土交通省,日本経済団体連合会(オブザーバー)
経済産業省
の協力により発足しました。本会議は,物流分野
国土交通省
のCO2排出削減に向けた自主的な取り組みの拡大
・協力団体
に向けて,業種業態の域を超えて互いに協働して
日本経済団体連合会
いこうとする高い目的意識のもと,荷主企業(発荷
2009年12月4日現在の会員数は,企業・団体が
主・着荷主)と物流事業者が広く連携していくこ
2,996団体,そして,個人が99人となっている。
とを促進すべく運営するものです。
3.2 設立趣旨および組織図
物流分野における地球温暖化対策は,国民生活
グリーン物流パートナーシップ会議の設立趣旨
を支える物流活動を萎縮させるのではなく,市場
は下記のとおりであるが,その特徴は荷主と物流
メカニズムを活用しつつ,企業の自主的な取り組
事業者それぞれが互いに知恵を出し合い連携・協
み意欲を醸成するような対策が基本です。パート
働すること(パートナーシップ)により,産業横
ナーシップ会議は,このような考え方のもと,産
断的な取り組みを大きく育てていく場の提供にあ
業界と物流業界の幅広い参加を得た社会運動が形
る。
になったものです。意欲ある事業者の方々がこれ
設立趣旨
を契機に結集し,目標達成に向けたメインプレー
運輸部門におけるCO2排出量は地球温暖化対策
ヤーとして活躍されることを期待しています。
推進大綱に定められた目標値を大きく上回ってい
また,その組織図は第3図に示す構成となって
る状況にあり,実効ある温暖化対策が急務となっ
いる。グリーン物流パートナーシップ会議は,政
ております。物流分野については,これまで,低
策企画委員会と事業推進委員会から構成され,そ
公害車の開発普及や鉄道・海運の利便性向上とい
れぞれ次のような役割を担っている。
った輸送モード別の対策に加え,モーダルシフト
・政策企画委員会
やトラック輸送の共同化・大型化による積載効率向
・グリーン物流パートナーシップ事業全体のマネ
上など物流システムの改善に向けた取り組みを支
ジメント
援してきたところですが,新技術の導入やビジネ
・企業啓発や広報戦略等に関して,政策的な観点
スモデルの再構築を通じて,物流にかかわる燃料
からの企画・立案
消費を削減できる余地があります。これを可能に
・事業推進委員会
するには,荷主,物流事業者単独によるものだけ
・ソフト支援事業・普及事業の選定(推進決定)
・
でなく,それぞれが互いに知恵を出し合い連携・
推進決定事業の評価(フォローアップ)の実施
協働すること(パートナーシップ)により,包括
およびその結果に基づいた政策提言
的なアウトソーシングやオープン参加型モーダル
・優良事業表彰案件の選定 シフトなど先進性のある産業横断的な取り組みを
3.3 活動内容
大きく育てていくことが必要です。
グリーン物流パートナーシップ会議の活動は,
この「グリーン物流パートナーシップ会議」は,
大きく次の3つの活動に分かれる。
そうした連携を深める場として,世話人である杉
(1)支援制度(グリーン物流パートナーシップ
山武彦一橋大学学長のもと,日本ロジスティクス
推進事業)
システム協会,日本物流団体連合会,経済産業省,
(2)CO2排出量算定方法
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シリーズ解説:食品産業における環境対策
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第3図 グリーン物流パートナーシップ会議 組織図
出典:グリーン物流パートナーシップ会議,http://www.greenpartnership.jp/about/construction.html
(3)広報活動等
貨物船等
また,それぞれの活動の概要は次のとおりであ
・共同輸配送に必要なトラック等
る。
・輸送拠点の集約(物流センターの設置)に伴う
(1)支援制度(グリーン物流パートナーシップ
フォークリフト,コンベア等
推進事業)
(2)CO2排出量算定方法
荷主と物流事業者のパートナーシップによるCO2
輸送分野におけるCO2排出量の算定方法につい
排出量削減(省エネ)事業の実施にあたり,下記の
て分かりやすく体系的に整理する活動を行ってい
支援制度を設けている。
る。そして,この活動の成果として「ロジスティ
【普及事業】 クス分野におけるCO2排出量算定方法共同ガイド
「グリーン物流パートナーシップ推進事業」と
ライン」を策定している。現在は,Ver.3(平
して認定されると,NEDO技術開発機構の補助制
成19年3月)が策定されている。
度「エネルギー使用合理化事業者支援事業」を利
(3)広報活動等
用することができる。
優良事業の表彰制度とシンボルマーク・ロゴマ
事業の実施に必要な機器・設備の購入費用の
ークに関する活動を行っている。第4図は,「グリ
1/3以内が補助金として交付される(上限は5
ーン物流パートナーシップ会議」のシンボルマー
億円)。
ク(「ロジくん」と「エコちゃん」)とロゴタイプ
例えば,次のような機器・設備の購入費用である。
の一例である。会社で使用されている読者の方も
・モーダルシフトに必要なコンテナ,シャーシ,
いらっしゃると思います。
食品と容器
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2010 VOL. 51 NO. 2
輸送分野におけるCO2排出量削減対策の現状
第4図 シンボルマーク・ロゴタイプの一例
出典:マーク使用ガイドライン,http://www.greenpartnership.jp/mark/pdf/guide/logo_manual02.pdf
性を明らかにする。
□ 4.ロジスティクス環境会議 □
・源流管理による環境改善の検討
4.1 概要
循環型社会に対応する企業の社会的責任として,
ロジスティクス環境会議は,企業や業界の枠を
ロジスティクスの視点から実施すべき事を明確に
越えて産業界が行政や学界等と共同し,国際的に
し,省資源・省エネルギー化を通じて,リデュー
も評価され得る環境と調和した体系的なロジステ
ス(発生抑制),リユース(再使用),リサイクル
ィクスシステムを構築すると共に,国内外にその
(再生利用)の実現を目指す。まずは製造業(物流
普及啓発を図ることを目的として日本ロジスティ
部門)
・物流事業者・流通業等の各社が環境負荷を
クスシステム協会が2003年11月に設立した会議で
低減するための物流プロセスを検討および実践す
ある。現在は第3期の活動を行っている。
るためのマニュアルを作成する。さらに,適用す
このロジスティクス環境会議は,「グリーン物
る企業の拡大を図ると共に,関係者に対する提案
流パートナーシップ会議」が対象とする地球温暖
を行う。
化対策の推進だけでなく,広く環境問題に対する
源流管理:企業の社会的責任として,商品・サ
取り組みを対象としている。
ービスのライフサイクル全体にわたって環境負荷
4.2 第1期活動の概要と成果
を低減するため,ロジスティクスの視点から,リ
第1期活動の概要と成果は,下記のとおりであ
デュース,リユース,リサイクルの実現を目指し,
る。
製品や荷姿の設計,物流プロセスを構築すること。
期間:2003年11月〜2006年3月
・省資源ロジスティクスの推進
メンバー:企業・団体(108社),自治体(1)
省資源・省エネルギーの視点から物流の環境負
活動の概要と成果
荷を低減するため,モーダルシフトや共同物流等
ロジスティクス環境会議(本会議)のもとに企
の活動促進を図る。サプライチェーンを構成する
画運営委員会を設け,具体的な下記の活動を個別
各企業が一体となって阻害要因の解消を目指し,
の委員会を設けて実施した。
関係者に対する提案を行うことによって省資源・
・環境パフォーマンス評価手法の検討
省エネルギーを促進する。また,各活動の事例収
物流における環境活動の評価を可能とし,その
集を行い,関係者間の情報交換と公開を行う。
評価に基づいてレベルアップを図り,環境活動の
・リバースロジスティクスの調査
活性化を促進する。そのために,評価項目となる
ロジスティクスの視点から,今後本格的に必要
環境負荷指標や標準的な測定方法の整備,測定結
とされるリユース,リサイクルにかかわる物流の
果の評価方法の体系化を図り,マニュアルを策定
あるべき姿を描くために調査活動を行う。また,
する。また,公表されている各種目標値との関連
消費者における還流管理の促進を含め,リバース
食品と容器
85
2010 VOL. 51 NO. 2
シリーズ解説:食品産業における環境対策
ロジスティクスの構築が可能となる環境整備を促
(2)環境負荷低減に取り組む企業を増やす
進するため,関係者に対して提案を行う。
関係企業とパートナーシップを築き,共に環境
還流管理:消費者が購入,使用したモノが適切に
負荷低減に向けた取り組みを推進する。
分別処理され,円滑なリバースチェーンの起点と
(3)情報を発信し,循環型社会の形成に寄与す
なるように,企業が責任をもって製品や荷姿の設
る
計,物流プロセスを構築すること。
活動を通して明らかになった課題については,
・共通基盤の整備
企業・行政・団体等の関係者へ情報発信を行い,
メンバー企業が循環型社会を実現するロジステ
循環型社会の形成に寄与する。
ィクスの構築を推進するため,環境活動にかかわ
4.3 第2期活動の概要と成果
る共通基盤の整備を行い,アウトプットを広く公
第2期活動の概要と成果は,下記のとおりであ
開する。
る。
第1期活動成果
期間:2003年11月〜2006年3月
(1)ロジスティクス分野における環境パフォー
メンバー:企業・団体(96社),自治体(1)
マンス算定
活動の概要と成果
CO2 排出量算定ガイド(Ver.2)(データ収集
第2期ロジスティクス環境会議では,本会議,
方法事例集)【輸配送/トラック輸送版】
企画運営委員会の下に,下記の研究会,委員会を
(2)ロジスティクス源流管理マニュアル(Ver.1)
設け,実践的な改善施策の研究や,主体的に問題
(3)ロジスティクス源流管理マニュアル(Ver.2)
点・課題などを整理し,解決策の方向性や施策を
〜モーダルシフト推進チェックシート・資料集〜
検討した。
(4)『省資源ロジスティクス事例集』
・グリーン物流研究会
(5)取引条件見直しによる物流の環境負荷低減
環境負荷低減活動を推進するため,参加メンバ
効果に関する調査報告書
ーやゲストスピーカーからグリーン物流の各種施
(6)静脈物流共同化プラットフォーム構築調査
策の先進事例の情報収集,関連する施設の現場見
リバースロジスティクス調査報告書(Ver.2)
学等を通じて,実践的な改善施策を研究する。
(7)企業の環境報告書における物流に関する記
・グリーンサプライチェーン推進委員会
載内容実態調査 共通基盤整備委員会(Ver.2)
製品の企画,設計等の源流段階から調達,生産,
また,2006年3月には「ロジスティクス環境宣
販売,回収等の物流プロセスの環境負荷を低減す
言」を採択し,ロジスティクス環境会議およびそ
るため,発荷主,着荷主,物流事業者間で問題,
のメンバーが,循環型社会を実現するため,物流
課題を共有し,解決の方向性,施策を検討する。
分野の環境負荷低減を経営の重要課題として認識
さらに必要に応じて企業,行政,団体等の関係者
し,以下の活動に積極的に取り組むことを宣言し
へ提言を行う。
た。
・CO2削減推進委員会
(1)自らの環境負荷を低減する
各企業のCO2削減活動を推進するため,改正省
自らの活動によって発生する環境負荷低減の目
エネルギー法等の関連法制度への対応も踏まえ,
標を定め,目標達成に向けたマネジメントサイク
荷主企業と物流企業のパートナーシップによる継
ルを推進する。
続的な改善活動を推進する上での問題点,課題を
食品と容器
86
2010 VOL. 51 NO. 2
輸送分野におけるCO2排出量削減対策の現状
整理し,解決策を検討する。さらに必要に応じて
・グリーン物流研究会
企業,行政,団体等の関係者への提言を行う。
環境負荷低減活動を推進するため,参加メンバ
第2期活動成果
ー等からグリーン物流の各種施策の実施事例等の
(1)グリーンロジスティクスガイド
情報交換等を通じて,実践的な改善施策を研究す
(2)CO2削減推進委員会 活動成果報告書
る。
(3)取引条件を考慮した環境負荷低減施策に関
・グリーン物流推進のための取引条件検討委員会
する提案—加工食品をモデルとして—
環境負荷と経済効率を考慮した物流にかかわる
(4)グリーンロジスティクスチェックリスト(Ver.1)
取引条件のあり方の研究を行う。
(5)改正省エネ法対応ヒント集(Ver.1)
・包装の適正化推進委員会
(6)グリーン物流研究会 活動報告書
包装の適正化による環境負荷低減に向けた検討
4.4 第3期活動の概要
を行う。
第3期活動の概要は,下記のとおりである。
□5.CO2排出量削減対策の事例□
期間:2008年5月〜2010年3月
メ ン バ ー: 企 業・ 団 体(86社 ), 自 治 体( 1)
5.1 類型別推進決定件数
2009年11月16日現在
グリーン物流パートナーシップ会議において事
活動の概要
業の推進が決定した事業件数を類型別に分類した
第3期ロジスティクス環境会議では,本会議,
結果を第2表に示す。表からトラックから鉄道や
企画運営委員会の下に,下記の研究会,委員会を
海運へのモーダルシフトが多く行われていること
設け,実践的な改善施策の研究や,主体的に問題
が分かる。特に,鉄道へのモーダルシフトは平成
点・課題などを整理し,解決策の方向性や施策を
17年度から平成20年度までの4年間で56件と最も
検討している。
多くなっている。具体的な事例では,この鉄道へ
のモーダルシフトを紹介する。
第2表 類型別推進決定件数一覧
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注:1事業で複数の類型にまたがるものは,代表的な類型に分類。類型の「その他」は,ラック利用等に
よる積載率向上,特殊コンテナ・シャーシの利用,情報管理システムの活用等
出典:これまでの推進決定事業一覧表(平成17〜20年度),http://www.greenpartnership.jp/pdf/proposal/
result_list/list.pdf
食品と容器
87
2010 VOL. 51 NO. 2
シリーズ解説:食品産業における環境対策
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第5図 事業の概要図
出典:第8回グリーン物流パートナーシップ会議http://www.greenpartnership.jp/pdf/active/kaigi/08/haihu/handout2.pdf
5.2 平成21年度優良事業
CO2排出削減量:306トン/年
国土交通省政策統括官表彰を受けた下記の事業
CO2排出削減率:81.3%
を紹介する。
31ft私有コンテナを導入することにより,トラ
事業名
ック輸送を行っていたケーブルのドラムを効率的
パートナーシップに基づく電線ドラム輸送の大
に積載し,往復輸送に鉄道を用いたモーダルシフ
型コンテナを利用した鉄道輸送へのモーダルシフ
トを実施することでCO2 排出削減と輸送の効率
トによる省エネルギー事業
化を同時に達成した事業である。
事業者
□ 6.おわりに □
筑後運送株式会社
住電日立ケーブル株式会社
地球温暖化対策を推進するための取り組みであ
タツタ電線株式会社
るグリーン物流パートナーシップ会議とロジステ
大電株式会社
ィクス環境会議の活動を紹介した。これらの活動
株式会社合通
に共通するキーワードは,パートナーシップであ
日本貨物鉄道株式会社
る。多くの利害関係者が互いに環境負荷低減の観
事業内容
点から連携・協働することにより,さらなる低減
事業費:24.5百万円
策の推進が図られることに期待したい。
参 考 文 献
(1)グリーン物流パートナーシップ会議,
(2)ロジスティクス環境会議,
http://www.greenpartnership.jp/index.html
http://www.logistics.or.jp/green/index.html
食品と容器
88
2010 VOL. 51 NO. 2
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用(第35回)
○解説○
醸造用酵母の多様性
-ワイン酵母を中心に-
ご と う ・ な み
京都大学大学院農学
研究科修士課程修
了 。 現在,独立行政
法人酒類総合研究所
醸造技術基盤研究部
門副部門長。
農学博士
後 藤 奈 美
フェノール化合物が酵素酸化されて褐変しやすい
○ はじめに ○
ため,仕込み時に酸化防止と雑菌の増殖抑制のた
ころ
人類最初のワインは,紀元前6000年頃,メソポ
め亜硫酸が添加される。またワインができてから
タミアのシュメール人によって造られたと言われ
も,非酵素的酸化や微生物汚染防止のため,貯蔵
ており,8000年の歴史を持っている。現在のワイ
・熟成中や瓶詰め前に一定の亜硫酸濃度になるよ
ンの醸造方法はその当時のものとは異なるが,ブ
うに調整される。
ドウを酵母で発酵させるという大原則には変わり
ワインはブドウに付いた酵母で発酵される,と
がない。ワインの醸造方法の概要を第1図に示す。
言われるが,実際にはワイナリー以外でブドウを
白ワインは,通常,果皮に赤色の色素を含まない
潰してもなかなか発酵を開始しない(日本では密
ブドウを潰し,ジュースを搾って発酵させる。一
造になるので試さないでください)。しかし,ワイ
方,赤ワインは,果皮に赤色色素(アントシアニ
ナリーでは酵母を添加しない場合でも比較的速や
ン)を含むブドウを潰し,果皮や種子といっしょ
かに発酵を開始する場合が多く,
ワインセラーに棲
に発酵させる。アルコール発酵中に果皮から色素
み着いた酵母がいると考えられる。このような自
が,果皮と種子から渋味成分(縮合タンニン)が
然発酵に回帰したり,または続けていたりするワ
抽出され,適度な色と渋味になったところで搾汁
イナリーも一部にはあるが,ほとんどの場合,市
する。ロゼワインには色々な造り方があるが,赤
販の乾燥ワイン酵母が使用される。市販ワイン酵
ワインのような仕込みをして早く搾ったり,赤ワ
母はワイナリーなどから酵母を多数分離し,優れ
インの醸造中に液を一部抜き取ったり(セニエと
た醸造特性を持つ株をセレクトして培養,乾燥し
呼ばれる方法で,抜き取った液はロゼワインに,
たものである。これらの酵母も元はブドウに由来
残りは赤ワインになる),できあがった赤ワインと
すると推定されるが,ワイン醸造中の亜硫酸や低
白ワインを適度にブレンドしたり(この方法は日
pH,アルコールなど,酵母にとっては過酷な条件
本でよく用いられるが,海外では認められていな
に適応した株と考えられる。また,ワイン酵母に
いところが多い)して造られる。ブドウを潰すと
は銅耐性の強い株が多く,ブドウに施用される硫
つぶ
食品と容器
す
89
2010 VOL. 51 NO.2
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
S.cerevisiaeになる株もある2)。
酸銅を含む農薬(ボルドー液)に対する耐性を獲
得した結果と考えられている1)。すなわち,ワイン
○ ワイン酵母の多様性 ○
酵母はブドウとワイナリーの両方の環境に適応し
た株であると言える。
ワインには赤,白,ロゼのほか,ブドウの品種
ワイン醸造には,一部Saccharomyces bayanus
や醸造法のバリエーションを含めると非常に多く
や,S.bayanusとS.cerevisiaeの自然交雑株も用い
の種類がある。高品質なワインには,ブドウ品種
られるが,大部分の株はS.cerevisiaeである。なお,
の特徴や,ブドウの品質に影響を及ぼすテロワー
醸造用酵母の分類は度々変更されているため,
ルと呼ばれる生産地域の特性(気象や土壌など)
S.bayanusと 表 示 さ れ て い て も 現 在 の 分 類 で は
が反映されることが大切と考えられている。ワイ
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おり
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ン醸造ではブドウが主役
わき
で,酵母はあくまでも脇 役
ろ
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で あ る。し か し,酵 母 は た
だアルコール発酵をするだ
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けではなく,ブドウ品種や
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醸造条件に適した菌株が,
ブドウに由来する香り(品
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種特性香)などの特徴を引
き出す,縁の下の力持ちで
あることが明らかになって
いる。
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ワインの品種特性香に
は,ブドウに含まれる香気
成分がそのままワインの香
第1図 ワインの醸造方法
りになるものだけでなく,
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と結合した香気成分の前駆
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する酵素で結合が切られ,
揮発性の香気成分となる例
が知られている(第2図)3)。
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第2図 品種特性香とその前駆体
食品と容器
90
この場合,β-グリコシダー
ゼやβ-リアーゼ活性の高い
酵母を使うと品種特性香の
高いワインを造ることがで
きる。品種特性香は非常に
重要でありながら,その成
2010 VOL. 51 NO. 2
醸造用酵母の多様性ーワイン酵母を中心にー
分が明らかにされているブドウ品種はまだ少ない。
○ DNA多型解析で調べた
酵母の多様性 ○
その場合でも,小仕込みと官能検査という地道な
方法で酵母のセレクションが行われている。
ワインの香りは,品種特性香,酵母が造る香り
醸造用酵母には,アルコール発酵能が高く,酢
たる
(発酵香),熟成香,場合によっては樽の香りなど
酸や硫化水素のような異味・異臭の生成が少ない,
の複合した香りと考えられる。品種特性香のはっ
などの性質が共通して必要とされる。それに加え,
きりしたブドウの場合は,酵母が造るエステルな
清酒酵母では低温発酵性や香気成分の生成能,上
どの香気成分はワインの香りの邪魔になると言わ
面発酵ビール酵母(下面発酵のビール酵母は種が
れるが,比較的個性の少ないブドウの場合には重
異なるが,エールビールなどに用いられる上面発
要で,エステル生成能の低い酵母,高い酵母が使
酵のビール酵母はS.cerevisiae)ではマルトースの
い分けられている。
発酵能,ワイン酵母では適度な亜硫酸耐性,など
赤ワイン醸造では,ブドウの色素やタンニン成
それぞれの酒類によって必要とされる性質が異な
分が醸造中に抽出されるため,比較的高温で発酵
る。また,パン酵母や実験用酵母など酒類醸造以
されるのに対し,白ワインは比較的低温で発酵さ
外の菌株もそれぞれ性質が異なっている。このよ
れる。従って白ワイン用にはある程度低温発酵性
うなS.cerevisiaeの各種菌株は,DNA配列の面で
に優れた菌株が適している。以前は,赤ワイン用,
はどのような関係にあるのだろう?
白ワイン用程度の大雑把な酵母の使い分けであっ
同じ種のなかの個体(酵母の場合は菌株)によ
たが,今ではフルボディの赤ワインに向く酵母,
るDNAシーケンスの違いをDNA多型と呼ぶ。
DN
新酒に向く酵母,ソービニヨン・ブランの香りを
A多型解析には色々な方法があるが,制限酵素消
引き出す酵母,樽発酵のシャルドネに向く酵母,
化とPCRを組み合わせたAFLP(Amplified Fra-
スパークリングワインの二次発酵に適したアルコ
gment Length Polymorphism)解析は,多型の
ール耐性が強い酵母etc.とワインの多様性に合わ
検出頻度と再現性が高く,比較的容易に分析でき
せた多様な酵母がスクリーニングされ,市販され
る方法である。この方法でS. cerevisiaeの実用株,
ている。酵母メーカーのWEBサイトのリストには
ຠ⒳․ᕈ㚅
このような酵母がその性質とともにずらりと掲載
されている。
(例:http://www.lallemandwine.us/
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products/yeast_chart.php,http://www.laffort.com
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/en/products)
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実際に異なる酵母を用いると,ブドウや温度な
㪉㪅㪌
どの醸造条件が同じであっても,ワインの分析値
㪉㪅㪇
㪈㪅㪌
だけでなく,官能検査ではっきりと違いが分かる
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㪜㪚㪈㪈㪈㪏
(第3図)。従って,高品質なワイン醸造には,ブ
ドウの栽培や醸造方法の選択と並んで,造ろうと
㪨㪘㪉㪊
㪮㪉㪎
第3図 各種ワイン酵母で仕込んだ
ケルナーワインの官能評価結果
W27はβ-グリコシダーゼ活性が低いと
されている菌株で赤ワイン用
するワインに適した酵母の選択も重要なファクタ
ーとなっている。
食品と容器
⊒㉂㚅
91
2010 VOL. 51 NO.2
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
実験室株などを解析したところ,供試菌株は①実
各地やイタリア,スペインなどで分離された地中
験室酵母,②清酒酵母・焼 酎 酵母,③ワイン・パ
海グループと,ドイツ,ハンガリー,ルーマニア
ン・ウイスキー酵母の3つのグループに分かれた
等で分離された中央ヨーロッパグループに分けら
ちゅう
4)
(第4図) 。
清酒酵母と焼酎酵母が一つのグループ
れた。また,この2つのグループのルート(根本)
を作るのは,アルコール発酵という選択圧に加え,
の位置にレバノンから分離された酵母のグループ
地理的な要因が大きいのだろうか。このグループ
があることから,多くのワイン酵母の祖先がメソ
のうち,K-7グループには,現在使用されている
ポタミアに由来すると考えられた。ブドウとワイ
主要な清酒酵母であるきょうかい7号,9号,10
ン醸造はギリシャ時代の交易によって地中海沿岸
号などが含まれる。これらの菌株は清酒醸造の立
に広がり,ローマ時代にはさらにドナウ川,ロー
場で見ると大きく性質の異なる菌株であるが,
ヌ川など川沿いの交易路に沿って伝搬したと考え
S.cerevisiae全体のDNAの多型解析の結果から見
られており,これらのワイン酵母はブドウととも
ると,区別できないほど近い関係にあることが分
に伝搬したと推定される。これらの結果から,ワ
かる。最近,当所の下飯
5)
は酵母のゲノム構造上
イン酵母を含む実用酵母の多様性には,地理的要
の特徴から,これらの清酒酵母は同一の親株に由
因と人による選択の両方が反映されている,と考
来する可能性が高いと報告しており,興味が持た
察されている。なお,この報告のワイン酵母のグ
れる。一方,ワイン酵母は同じグループに属して
ループには,日本で分離されたワイン酵母2株
はいるが,供試菌株が容易に識別され,清酒酵母
(OC-2とW-3)および発酵中のワインにコンタ
よりも遺伝的な多様性が大きいことが明らかにな
ミしていた酵母(Y-9)も含まれている。OC-
った。上述したようにワイン酵母には性質が異な
2とW-3は,輸入された乾燥ワイン酵母の使用が
る種々の菌株が含まれており,そのことを反映し
日本で一般化する前に分離された株であり,明治
た結果と考えられる。
時代に欧米からブドウの苗木が導入されたときに
Legrasら
6)
は,SSR(Simple Sequence Repeat)
一緒に付いてきた酵母かもしれない。
解析またはマイクロサテライトDNA解析と呼ばれ
さらに1996年にS.cerevisiaeの全ゲノムシーケ
るDNA解析の方法で,651株ものS.cerevisiaeの解
ンス解析が終了し,その後多数のS.cerevisiae菌株
析を行った。SSRとは,ゲノム中に散在する反復
間のゲノムの比較が行われるようになった。ノッ
配列のうち,2塩基から数塩基のコア配列が何回
ティンガム大学,サンガー研究所などの研究チー
も繰り返している配列を指す。繰り返し回数の変
ム7)は,S. cerevisiae 36株,並びに近縁種である
異を生じやすいため,SSRの前後にプライマーを
S.paradoxus 35株のゲノムシーケンスを行った。
設計してPCRでDNAフラグメントを増幅すると,
その結果,S.paradoxusの樹形図は地理的距離と
酵母の菌株間のような近縁の個体間でも多型が検
よく一致した。一方,S.cerevisiaeの供試菌株はマ
出されやすい。その結果,供試菌株はワイン酵母
レーシア,西アフリカ,北アメリカ,ワイン/ヨー
のグループと,それ以外の酵母のグループに大き
ロッパ,およびサケ(ただし清酒酵母は供試され
く分かれ,それ以外の酵母もパン,発酵乳,清酒,
ておらず,泡盛酵母,ヤシ酒酵母,インドネシア
上面発酵ビール酵母などのグループに分かれて,
のラギの酵母の3株のグループ)の5つのグルー
酵母の用途によって遺伝的な類似性があることが
プと,いずれのグループにも属さない菌株群に分
示された。さらに,ワイン酵母はフランス南部の
けられることが示された。いずれのグループにも
食品と容器
92
2010 VOL. 51 NO. 2
醸造用酵母の多様性ーワイン酵母を中心にー
属さない菌株には,ビールのコンタミ株,患者か
多 様 な 性 質 を 示 す 菌 株 群 で は あ る も の の,S.
ら分離された日和見感染株など自然界に生息する
cerevisiae全体から見るとやはり遺伝的に類似し
と考えられる菌株と,パン酵母や一部のワイン酵
た一つのグループを形成していることが明らかに
母が含まれていた。つまり,S.cerevisiaeの実用株
なった。
には地理的に隔離されたいくつかの系統と,それ
○ 醸造特性は突然変異の
積み重ね? ○
らの系統が交配するような人為的な影響で生じた
菌株があると推察されている。
また,Schachererら8) はゲノムシーケンスの一
ワイン酵母など実用酵母が示す種々の性質の理
塩基多型(SNP)をタイリングアレイというDNA
由が明らかにされている例は非常に少ない。銅耐
マイクロアレイの1種で検出し,分離源の異なる
性の強いワイン酵母では銅耐性遺伝子CUP1のコ
63種のS.cerevisiaeの比較を行った。その結果,
ピー数が増加している,
という報告1)はその少ない
やはりワイン酵母,実験室株,サケ(清酒酵母とそ
例の一つである。ここでは,もう一つの例として
の他の株)の3グループが形成され,日和見感染
ワイン酵母に特徴的な性質である亜硫酸耐性につ
株や自然界から分離された菌株などが,いずれの
いての研究を紹介したい。
グループにも属さ
ず,相互の類縁関
係が低い菌株とし
ᷡ㈬࡮὾㈪
ࠣ࡞࡯ࡊ
て位置付けられた。
興味深いことに,
ワイン酵母のグル
ープには自然界か
らの分離株・日和
見感染株や蒸留酒
用の酵母が含まれ
ࡄࡦ࡮ࡢࠗࡦ
╬ࠣ࡞࡯ࡊ
ており,この報文
の筆者らは,一度
ワイン酵母として
domestication(家
畜化)された株が
自然界に戻ったり,
他の酒類醸造に用
いられたりしてい
るのではないかと
ታ㛎ቶᩣࠣ࡞࡯ࡊ
95
K-5, K-3 (Sake)
Miyazaki (Shochu)
IFO 0249 ("S. yedo")
IFO 0244 ("S. tokyo")
Kagoshima (Shochu)
Awamori-1(Shochu)
K-4 (Sake)
K-1 (Sake)
IFO 0304 ("S. sake")
IFO 0309 ("S. sake")
K-7 group* (Sake)
K-6 (Sake)
IFO 2114 (Whisky)
K-11 (Sake)
K-2 (Sake)
IFO 2043 (Bakery)
IFO 2044 (Bakery)
Montrachet (Wine)
OC-2 (Wine)
K1(V1116) (Wine)
IFO 2375 (Bakery)
EC1118 (Wine)
IFO 1953 (Ale)
IFO 1952 (Ale)
IFO 1951 (Ale)
IFO 10217T
IFO 2112 (Whisky)
IFO 2106 (Whisky)
S288C (Laboratory)
YNN 295 (Laboratory)
A364A (Laboratory)
FL100 (Laboratory)
8761c (Laboratory)
100 ࡈ࡜ࠣࡔࡦ࠻౒᦭₸ 考察している。
これらの研究か
ら,ワイン酵母は
食品と容器
第4図 AFLP解析に基づいて作成したS.cerevisiaeの樹状図
*きょうかい7,9,10,12,13,14,15,701号
93
2010 VOL. 51 NO.2
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
ワイン醸造では,亜硫酸(SO2)が添加される
この繰り返し配列はSSU1の転写制御因子Fzf1タ
ため,ワイン酵母にはある程度の亜硫酸耐性が必
ンパク質の結合部位と類似した配列を含んでいる。
要とされる。酵母の亜硫酸耐性は,SSU1という
そのため,
SSU1-RではFzf1タンパク質が結合しや
細胞膜のタンパク質をコードする遺伝子およびそ
すく,そのために高発現するのではないかと考え
の制御遺伝子に支配されることが報告されてい
られた。Yuasaら11)は,76塩基の繰り返し回数が
る9)。
酵母はメチオニンやシステインのような含硫
多い方がプロモーター活性が強いことを示した。
アミノ酸を生合成するために,硫酸イオンを取り
また,興味深いことにSSU1-Rのプロモーターは
込んで亜硫酸,硫化水素に還元して利用する代謝
FZF1を破壊してFzf1タンパク質が造られなくな
系を持っている。有害な亜硫酸が余っても菌体内
った株でも活性が落ちず,この繰り返し配列に結
にたまらないよう,SSU1タンパク質が酵母菌体内
合するのはFzf1タンパク質ではなく,他のタンパ
の亜硫酸を汲み出すポンプの働きをしていると考
ク質であることを明らかにした。
えられる。ワイン醪から分離されたコンタミ株で
また,Perez-Ortinら12) は,ワイン酵母にはこの
非常に亜硫酸耐性の強いY-9株では,SSU1が強
76塩基の繰り返し回数が3回,4回,6回と異な
く発現していることが明らかになった。Y-9の
る菌株があり,何回もの配列の重複や染色体の組
SSU1(SSU1-R,Rはresistanceの意味)は上流で
み換えの結果,これらの菌株が生じたものと推定
染色体の組み換えを生じており,供試菌株のうち
している。この組み換えを生じた配列には5塩基
実験室株や清酒酵母,多くのワイン酵母ではXVI
の相同領域があると報告されている。わずか5塩
番染色体にSSU1がコードされているが,Y-9の
基の相同配列でこのような染色体組み換えを生じ
他,2株のワイン酵母ではVIII番染色体にコード
ると,酵母の染色体はズタズタになってしまいそ
されていた。また,組み換えに伴ってプロモータ
うだが,その結果酵母が生存できなくなる(致死
く
もろみ
10)
ー領域の配列が変化していた(第5図) 。Y-9
変異)と検出されず,見た目に変化をしないと気
のプロモーター領域では,他の遺伝子のプロモー
づかないことになる。SSU1の上流域の変異は酵
ター領域の76塩基の配列が4回繰り返しており,
母の亜硫酸耐性というワイン醸造に重要な性質を
YHL044W
ECM34
14106
14870
8+++⇟ᨴ⦡૕
76bp
98.7%
98.5%
5574
76bp
cI
Sa
lI
Sa
-1091
-404
-100
SSU1-R
nI
Kp
aI
Ap
1
0.5kb
1377
99.7%
➅ࠅ㄰ߒ㈩೉
100%
SSU1
99.4%
GLR1
:8+⇟ᨴ⦡૕
第5図 SSU1-Rの構造
パーセントはDNAシーケンスの類似度
食品と容器
94
2010 VOL. 51 NO. 2
醸造用酵母の多様性ーワイン酵母を中心にー
変化させたことから,この様な変異が明らかにな
細な変異が多いものと予想されるが,時にドラス
ったと考えられる。なお,ワイン酵母にも組み換
チックな染色体組み換えや配列の重複も生じるこ
えの起こっていないSSU1を持つ株が多くあるが,
とが知られており,SSU1-Rはその例の一つと考
これらの株も清酒酵母や実験室酵母と比較すると
えられる。ワイン酵母をはじめとする実用酵母の
ある程度亜硫酸耐性が強い。これらの株では,ま
各菌株の特性は,このような自然に生じた突然変
た別の要因で亜硫酸耐性が強くなっているものと
異の積み重ねと人による選択の結果であろうと考
推察される。
えられる。
自然に生じる突然変異には,点変異のような微
参 考 文 献
Nature, 458, 337-341(2009)
1)Welch, J. W., Fogel, S., Cathala, G., and Karin, M.,
Mol. Cell. Biol., 3, 1353-1361(1983)
8)Schacherer, J., Shapiro, J.A., Ruderfer, D.M., and
2)Jeong, S.T., 後藤(山本)奈美.J. ASEV Jpn., 12,
Kruglyak, L., Nature, 458, 342-346(2009)
10-20(2001)
3)Ribereau-Gayon,
9)Avram, D., and Bakalinsky, A.T., J. Bacteriol.,179,
P., Glories, Y., Maujean, A.,
5971- 5974(1997)
Dubourdieu, D., Handbook of Enology Vol. 2, pp.
10)Goto-Yamamoto, N., Kitano, K., Shiki, K., Yoshida,
4)Azumi, M., and Goto-Yamamoto, N., Yeast, 18,
Y., Suzuki, T., Iwata, T., Yamane, Y., and Hara,S.,
J. Ferment. Bioeng., 86, 427-433(1998)
1145-1154(2001)
5)下飯仁.第61回日本生物工学会大会講演要旨集,
11)Yuasa, N., Nakagawa, Y., Hayakawa, M.,andIimura,
pp. 223(2009)
Y., Biosci. Biotechnol. Biochem.,69,1581-1588(2005)
6)Legras, J.-L., Merdinoglu, D., Cornuet, J.-M., and
12)Perez-Ortin, J., Querol, A., Puig, S., and Barrio, E.,
Karst, F., Mol. Ecology, 16, 2091-2102(2007)
Genome Res., 12, 153-1539(2002)
7)Liti, G., Carter, D.M., Moses, A.M., and 23 authors,
別刷り合本をご利用下さい
水 の 話
水は地球上のすべての物質と深い関わりをもち,生物の生命活動や人間の生活,文化,産業に重要な役割を演じ
ています。本誌ではこの水の科学的知見から応用までをあらゆる角度から取り上げ,専門の方々に解説していただ
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《内容》
水の科学〔1〕水と生命の誕生と進化/〔2〕水の不思議:水と水溶液/〔3〕水の新たな利用法(機能水)とそ
の評価 水と食品〔1〕食品中の水の状態/〔2〕食品加工と水/〔3〕微生物と水/〔4〕調理と水の関わり/
〔5〕お茶類と水 水と生活・文化〔1〕日本人と水利用,健全な水循環を目指して/〔2〕水道水の安全性とおい
しさ/〔3〕容器入り飲用水の国際規格:食文化と商売の観点から(1)
(2)/〔4〕おいしい水とまずい水(水質
・成分との関係)/〔5〕水道水とミネラルウオーターはどう違う?
-その境界をめぐって- 水と産業〔1〕清
涼飲料と水/〔2〕醸造と水/〔3〕水の新しい利用:精密洗浄用機能水と超臨界水/〔4〕海洋深層水/〔5〕紫
外線殺菌装置の現況 水と健康〔1〕体液とそのはたらき/〔2〕体液の代謝調節とその異常/〔3〕スポーツと
水/〔4〕肌と水
缶 詰 技 術 研 究 会 電話 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 ファックス 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
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2010 VOL. 51 NO.2
広 告 募 集 の お 知 ら せ
いつもご愛読いただきありがとうございます。
さて,缶詰技術研究会は来る平成22年6月15日に,設立50周年を迎える運びとなりました。これもひと
えに皆様方のご支援,ご指導のたまものと重ねて衷心よりお礼申し上げます。
50周年を迎えるに当たり,記念事業と致しまして下記の通り『容器の事典』をとりまとめ,関連業界の
皆様に広くご利用頂きたいと思慮致しております。また,この事典には下記要項にて協賛広告の掲載も計
画致しております。この趣旨にご理解とご賛同を賜りたく協賛広告を募集致します。
☆ ☆ 協 賛 広 告 募 集 要 項 ☆ ☆
1)仕 様 A5版 1頁,1色
2)掲載料 50,000円(1頁)
3)特 典 1冊贈呈 追加ご入用の場合は,定価の20%引きとさせて頂きます。
4)募集締め切り 平成22年2月末日
なお,掲載頁に限りがございますのでお断りする
場合ももありますのでご承知置き願います。
お問い合わせ,および協賛広告をご希望の方は,
電話,FAX,メールなどで,ご連絡願います。
担当 杉本
TEL 03−3663−7251
FAX 03−3663−7253
写真は創立20周年記念の「食品と容器の事典」
Eメール:[email protected]
設立50周年記念『容器の事典』出版趣旨
食品関連の事典類は市中に多々見受けられますが,『容器』に特化したものはほとんど見受けら
れません。近年,食品加工技術の進歩にともなう新しい食品の出現,保冷・保蔵技術の発展,環境
保護やユニバーサルデザイン等の社会的ニーズの高まり等々と相まって,包装容器が非常に多様化
しております。そこで,金属容器や紙容器,プラスチック容器,ガラス容器など容器全般に関わる
事項をコンパクトな『事典』として取りまとめることは有意義であると考え,今般,弊会創立50周
年を迎えるにあたりその記念事業として『容器の事典』の出版を計画致しました。
1. 出版予定時期:平成22年6月15日(予定)
2. 体 裁 :A5版 約300頁 合成レザー表紙,外装ケース付き
3. 検索項目数 :約1,000項目
(金属容器,紙容器,プラスチック容器,ガラス容器等を網羅)
4. 出版部数 :2千部
缶 詰 技 術 研 究 会
〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町1−8−4 http://kangiken.net/
食品と容器
96
2010 VOL. 51 NO. 2
甲羅蓋魚と棘蓋魚
た
き
やす
ひこ
多 紀 保 彦
( 東 京 水 産 大 学 名 誉 教 授 )
その日,家に帰ってメイドのサワンに“パー・
■■■ パー・ファー・オン
ファー・オン”を知っているかと聞いてみた。
“お前は毎日市場で魚調べをしているが,パー
“もちろん知っているよ”という。市場でも売っ
・ファー・オンという魚を知っているか”。ある
ているというので,見つけたら買っておいてくれ,
日,B君にこう聞かれた。ときはいまから45年
と頼んだ。
の昔,ところは東南アジアの内陸国ラオスの首都
そして数週間後のある日,帰宅した私にサワン
ヴィエンチャン,B君はこの国の水産試験場の場
が言った。“パー・ファー・オン,買っておいた
長である。パー〈pa〉はラオ語で魚のことで,
よ”。急いで冷蔵庫を開けた。だがなにもない。
コイはパー・ナイ,メコンオオナマズはパー・ブ
笑いながら彼女は言った。“マンゴーの木の下だ
ックといったぐあいだ。
よ”。すぐに庭に出てマンゴーの木を見ると,平
“パー・ファー・ライなら知っているが,パー
べったい生きものがひもで繋がれてうごめいてい
・ファー・オンというのは見たことも聞いたこと
た。やはりパー・ファー・オン〈pa fa ong〉は
もないよ”というのが私の答えだった。なにかゴ
カメ,より詳しくはスッポンだったのだ。
ルフ用語のような名前だが,どんな魚なのかと尋
あとで調べたところでは,このスッポンは日本
ねると,“体は円く平べったくて,手足のような
のものと同科別属のインドシナオオスッポンとい
ヒレが2対ついている”という。これはくさい。
う種類だった。現地では中国系住民が好むが,ラ
“そいつは魚ではなくて(水棲の)カメ——フラ
オス式の料理もある。日本の鍋と同系統のスープ
ンス語のtortue,英語のturtle——ではないか”
で私も何回か食べたが,ニンニクやレモングラス
と 言 う と,B君 は 少 々 色 を な し て 言 っ た。“ 僕
など香辛料の存在が突出して,あのスッポンその
はフランスの森林学校を出ていて生物学の知識は
ものの滋味を消してしまっている嫌いがあった。
ある。魚とカメの区別ぐらいはできる”。
“えんぺら”は入っていなかった。マンゴーの木
たしかに彼は旧宗主国に留学した当時のエリー
に繋がれたスッポンの方は,食べた記憶がない。
ト組のひとりだった。フランス語に堪能で英語も
さばくのが面倒なので,サワンの知り合いの家に
よくできる。帰国して森林局の技師となり,南部
あげたのだと思う。
のパクセに新設された水産試験場(実態は素朴な
■■■ イエン
養魚場)の場長に任命されたのである。林学出が
水産とは場違いのようだが,フランス式では内水
試験場長のB君が言うように,
“市場(いちば)
面管理は森林管理と一体となっているのである。
調査”は当時の私の日課だった。バンコックのよ
食品と容器
97
2010 VOL. 51 NO. 2
うな近代化された大都市では様変わりしているが,
がおかしいと笑われることもよくあった。
ヴィエンチャンのような地方の中小都市では,昔
そんな笑いの種となった魚にタウナギがある。
も今も,中央市場がショッピングモールや総合ス
いま書いたようにこの国では爬虫類のスッポンは
ーパーの役割を果たしている。ここでは食品から
魚〈パー〉のメンバーだが,タウナギのほうは魚
衣料,電気製品まで,生活必需品はなんでもまか
類のカテゴリーに入らない。以前書いたようにそ
なえ,人々の生活の息吹が直接肌に迫ってくる。
の名にはパーがつかず,たんにイエン〈i’en,
魚売り場では,大型のコイ・ナマズ類からメダカ
y’en〉という。だがこちらにとってはれっきと
ほどの小魚まで,とれた魚はすべて売られる。魚
した魚だから,つい“パー・イエン”といってし
類相調査にはもってこいなわけだ。
まっておばさんたちに笑われるのだった。B君の
わが市場調査の舞台はヴィエンチャンの朝市場
場合と反対に,“この日本人,魚類とイエンの区
だった。ここには盛漁期なら80人以上,閑漁期
別もつかないのか”とおかしかったのだろう。
でも50人ほどの売り子が,地面にひろげたビニ
和名には“ウナギ”が使われているが,タウナ
ールシートや木製のスノコに魚を並べたり金ダラ
ギは正真正銘のウナギとはまったく別系統の魚で
イに活魚を入れたりして売っている。みな女性だ。
ある。よく見ると,両者とも体形はウナギ型だが,
どのおばちゃんも娘さんも顔馴染み,珍しい魚が
形質に基本的なちがいがある。まず,ウナギでは
あると売らずにとっておいてくれるし,魚の名前
背・尾・臀びれがよく発達し,たがいにつながっ
と料理法を懇切丁寧に教えてもくれる。問題はこ
て体を縁取っており,尾の先端部は上下に幅広く
ちらのラオ語の能力で,とんちんかんな受け答え
薄べったい。鰻屋さんの幟にあるように,頭のす
ぐうしろには胸びれがあって,
団扇の
ようにひろげられる。これに対し,
タウナギでは背・尾・臀びれがほと
んど退化していて尾部は細く長く,
胸
びれと腹びれはない。
だから見たとこ
ろは魚というよりはヘビ(蛇)だ。そ
んなこんなで,
この国ではスッポンは
パー
〈魚〉だがタウナギはパーではな
いということになったのだろう。
■■■ パー・ファー・ライ
パー・ファー・オンは知らなかっ
た私だが,パー・ファー・ライ〈pa
fa lai〉の方は市場でいつもお目に掛
かっていたし,
自分で採集したことも
あった。軟骨魚類のアカエイの仲間,
円盤状の体〈体盤〉から長い鞭状の
尾がのびていて,
その背面には鋭い毒
棘がある。アカエイ科に属し,ラオス
のメコン流域には数種が出現する。
なかには体盤の幅2メートル,体重
これがパー・ファー・ライ。写真は1966年6月にヴィエンチャン
の朝市場で採集した標本。
食品と容器
98
600キロ以上の巨大な種類があるが,
めったに見られない。
2010 VOL. 51 NO. 2
海産魚のエイが川に生息するというと,海から
ている。国籍も名前もタイ人だが,お父さんがタ
遡上したものと考えたくなる。昔はみなそう思っ
イ人でお母さんは日本人,小・中学校時代は横浜
ていた。だが世界の大河では,はるか上流域にま
のおばあちゃんに育てられ,タイ語も日本語もネ
ですんでいることが珍しくない。メコンでの私の
イティヴスピーカーである。民俗学などにも興味
最上流の採集記録は,河口から2,000キロの旧王
をもち,遠野物語あたりまでは読んでいる。
都ルアンプラバンである。ここではニシンの仲間
そのプラチヤー君から返事が来た。メールも日
にも出会った。彼らはみな淡水中で産卵し一生を
本語だ。ラオ語と同系言語を話す東北タイの教え
送っているのである。
子に聞いたところ,ファーは“蓋”,オンは“甲
エイはラオスでも日本でも食用となる。日本で
羅”でライは“棘”のことだった。漢字で表せば
は北海道・東北を中心として,“カスベ”の名で
“甲羅蓋魚”と“棘蓋魚”になるでしょう,とあ
煮付けや干物などにして食べられている。東京あ
る。
たりでも酒場の“えいひれ”はオジサンたちのお
なるほどとこの命名に感心しながら私は思った。
なじみだろう。ついでながら,標準和名を“カス
魚 は ラ オ ス で は パ ー〈pa〉, タ イ で は プ ラ ー
ベ”という魚はいない。私たちが食べているカス
〈pla〉,カンボディアではトレイ〈trey〉でヴ
ベは,ガンギエイやメガネカスベ,ドブカスベな
ェトナムではカー〈cá〉であり,魚名にはすべて
どで,カスベはその総称なのである。
この接頭語がつく。ところが日本の魚名では,タ
ラオスのエイ料理はローカルカラー豊かなもの
チウオやシラウオなどはあるものの,ウオが接尾
だ。まず魚体から身を切り出すのだが,背面は硬
語としてつくものは多くない。
いから腹側から包丁を入れる。小ぶりのハンペン
しかし,日本魚名のなかには“ウオ”そのもの
ほどに身を切り取ってボールに入れ,レモングラ
ではなくてもこれから転訛した接尾語がついてい
ス,ライムの葉,ワケギ,トウガラシなどを刻ん
る例がかなりある。ウオはイオで,それがイヨと
だもので和え,塩とナム・パー〈魚醤〉で味を調
なったりヨと訛ったり,あるいはイ(旧仮名でヒ
える。そしてこれをバナナの葉でくるんで焼く。
も)に変化したりする。湧水にすむイトヨやハリ
計2年半のラオス滞在中,私がこの料理を食べ
ヨなどがそれだ。エイのイは残念ながらウオ起源
たのは一度だけ,場所は前出のルアンプラバンで,
ではないらしい。
王様の食事メニューのひとつなのだそうだ。味は
やはり例は多くないが,魚以外を意味する接尾
——うーん,やはり日本人には香辛料がきつい。
語もある。古語の解釈には各人各説があって素人
4
4
4
4
4
4
の私では判断がつかないものが多いが,なるほど
■■■ イトヨ,モロコ
4
4
と思うものもある。そんな例がモロコやタナゴで,
スッポンとエイのラオ名はパー・ファーまで同
“コやゴは虫を意味する接尾語で,昔は魚類は水
じだ。パーは魚だからファーはなにか共通の特徴
中の虫とされていた”という記述は納得できるも
を示しているのではないか,そしてその共通点と
のだった。魚ではないが漢字では蛸も蛤も蝦も蟹
は体が平たいことではないか——と私は考えた。
も,さらには蛇や蛙までみな虫だ。トルコでもエ
そしてすぐ,タイのプラチヤー君にメールを打っ
ビは虫と呼ばれるカテゴリーの生きものだった。
た。英語でいえばflat fish,だとすればオンとラ
日本では鯨は魚,英語でも貝はshellfishでヒト
イはなにを意味するのか,と質問したのである。
デ はstarfish, ク ラ ゲ はjellyfish等 々, 水 の 生
以前にもご紹介したが,プラチヤー〈Prachya
きものはみなfishになってしまう。
Musikasinthorn〉君は東京水産大学に学び大学院
ヴィエンチャンの朝市場のおばちゃんたち,そ
の私の研究室で博士号をとった男で,東南アジ
して場長のB君,スッポンが魚でタウナギが魚で
アではごく数少ない世界レベルの魚類研究者のひ
なくても,それはそれで立派な分類だと思うよ。
とりである。いまはバンコックの大学の先生をし
食品と容器
99
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天然醸造醤油を用いた食品中の食塩の低減
Journal of Food Science(U.S.A.)S255.(’09・8)
文献 №5517
近年,塩や塩化ナトリウムに高い関心が寄せら
した。1組から4組までの結果において,醤油を
れ,減塩食品の需要が増加しており,食品中の塩
使用したものの「全体の味強度」はNaClよりも強
化ナトリウムを減らすことが重要な課題となって
かった。
醤油使用量の最も少ない5組
(1%のNaCl
いる。塩化ナトリウムを減らすと,食品の受容性
を含む醤油)においては,「全体の味強度」は統
サラダドレッシング
も減少することが頻繁に報告されている。ここで
計的に有意差は認められなかった。この結果から,
は,西洋料理を対象とし,天然醸造 醤 油を用いる
サラダドレッシングの「全体の味強度」は,
「2%の
ことにより塩化ナトリウム量を減らすことについ
NaCl」と「1%のNaClを含む醤油」と同程度と
て検討した。
なった。スープでは,0.9%NaClをコントロール
官能試験
とした。1組(コントロールと同じNaCl含量と
健康で,ダイエット処方を受けていなく,食物
なる醤油)では,「全体の味強度」は,醤油の方
アレルギーのない18〜60才の消費者60名を対象に,
がコントロールよりも強かった。2組(0.75%の
官能試験を実施した。ドレッシングでは醸造醤油,
NaClを含む醤油)では,有意な差は認められな
スープ,豚肉炒めでは粉末醤油を用いた。
かった。さらに醤油量を減らした3〜5組では,
醤油使用量
醤油よりもコントロールの方が全体的な味強度は
塩だけを用いたものをコントロールとした。コ
強かった。この結果から,トマトクリームスープ
ントロールとほぼ同程度のNaClを含む醤油を用い
の「全体の味強度」は,
「0.9%のNaCl」と「0.75
たものを1組とし,順次醤油の量を減らした5種
%のNaClを含む醤油」と同程度となった。
類(2組〜5組)を調製し,二肢選択官能試験に
豚肉炒 めでは,0.7%NaClをコントロールとし
より「全体の味強度」を検討した(第1図)。
た。1組,2組では醤油使用の方がNaClコント
パネル数(58)
しょう
パネル数(52)
パネル数
(58)
いた
1組 2組 3組 4組 5組
2組 3組 4組 5組
ロールよりも「全体の味強度」が強かった。3組
豚肉炒め
スープ
パネル数
(52)
パネル数(55)
サラダドレッシング
パネル数(58)
スープ
サラダドレッシング
1組 ドレッシングでは,2%NaClをコントロールと
1組 2組 3組 4組 5組
コントロール=塩分濃度 2%
醤油 1=塩分濃度 1.6%
醤油 2=塩分濃度 1.45%
醤油 3=塩分濃度 1.3%
醤油 4=塩分濃度 1.15%
醤油 5=塩分濃度 1%
1組 2組 3組 4組 5組
コントロール=塩分濃度 2%
醤油 1=塩分濃度 1.6%
醤油 2=塩分濃度 1.45%
醤油 3=塩分濃度 1.3%
醤油 4=塩分濃度 1.15%
醤油 5=塩分濃度 1%
コントロール=塩分濃度 0.9%
醤油 1=塩分濃度 0.9%
醤油 2=塩分濃度 0.75%
醤油 3=塩分濃度 0.6%
醤油 4=塩分濃度 0.45%
醤油 5=塩分濃度 0.3%
1組 2組 3組 4組 5組
コントロール=塩分濃度 2%
醤油 1=塩分濃度
1.6%
スープ
コントロール=塩分濃度 0.9%
醤油 1=塩分濃度 0.9%
醤油 2=塩分濃度 1.45%
醤油 3=塩分濃度 1.3%
醤油 1=塩分濃度 0.7%
醤油 2=塩分濃度 0.75%
豚肉炒め
コントロール=塩分濃度 0.7%
醤油 3=塩分濃度 0.6%
醤油 2=塩分濃度 0.6%
醤油 3=塩分濃度 0.5%
醤油 4=塩分濃度 1.15%
醤油 5=塩分濃度 1%
醤油 4=塩分濃度 0.45%
醤油 5=塩分濃度 0.3%
醤油 4=塩分濃度 0.4%
醤油 5=塩分濃度 0.3%
醤油 4=塩分濃度 0.45%
醤油 5=塩分濃度 0.3%
食品と容器
パネル数
(55)
第1図 「全体の味強度」の二肢選択テスト結果
醤油 1=塩分濃度 0.9%
コントロ
ール=塩分濃度 0.9%
n.s.=有意差なし
*=P<0.05
**=P<0.01
醤油 3=塩分濃度
0.6%***=P<0.001
醤油 2=塩分濃度 0.75%
パネル数(52)
1組 2組 3組 4組 5組
コントロール=塩分濃度 0.7%
醤油 1=塩分濃度 0.7%
醤油 2=塩分濃度 0.6%
醤油 3=塩分濃度 0.5%
醤油 4=塩分濃度 0.4%
醤油 5=塩分濃度 0.3%
100
コントロール=塩分濃度 0.7%
醤油 1=塩分濃度 0.7%
醤油 2=塩分濃度 0.6%
醤油 3=塩分濃度 0.5%
醤油 4=塩分濃度 0.4%
醤油 5=塩分濃度 0.3%
1組 2組 3組 4組 5組
1組 2組 3組 4組 5組
2010 VOL. 51 NO. 2
第1表 調理食品における塩・醤油の置換割合と
塩分含量
1
2
3
4
5
100/0
75/25
50/50
25/75
0/100
■ 好ましさ
● 全体的な味の強度
▲ 塩味
○ 酸味
塩分含量(%)
ドレッシング
2.00
1.78
1.50
1.25
1.00
スープ
0.90
0.87
0.82
0.79
0.75
豚肉炒め
味の強度
試料 置換割合
番号(塩%/醤油%)
サラダドレッシング
0.70
0.66
0.60
0.56
0.50
(0.5%のNaClを含む醤油)では有意な違いは認
食塩/醤油比
められなかったが,さらに醤油を減らした4組,
スープ
5組ではコントロールの方が「全体の味強度」は
強かった。この結果から,豚肉炒めの「全体の味
味の強度
強度」は,「0.7%のNaCl」と「0.5%のNaClを含
む醤油」と同程度となった。
■ 好ましさ
● 全体的な味の強度
▲ 塩味
△ トマト味
これらの結果は,調理食品の「全体の味強度」
を低減することなく,それぞれ食塩含量を50%,
17%,29%低減できることを示している。
食塩/醤油比
最適な醤油置換の割合
豚肉炒め
先の官能テストの結果をもとに,第1表に示す
5種類の塩・醤油の置換割合のドレッシング,ス
味の強度
ープ,豚肉炒めを用い,第2段階目の官能試験を
実施した。
サラダドレッシングでは,5種類の試料におい
■ 好ましさ
● 全体的な味の強度
▲ 塩味
◇ 肉風味
て,総合的好ましさ,味の強度においては有意差
は認められなかった。塩味,酸味では有意な差が
認められ(P<0.001),塩100%のものと塩75%/
食塩/醤油比
醤油25%のものは,その他のものよりも塩味を強
第2図 サラダドレッシング,スープ,豚肉炒めにお
ける官能試験(実線は有意差あり,破線は有意差なし)
く感じるという結果となった(第2図)。
スープでは,5種類の試料において,塩味で有
醤油使用による食品中のNaCl減少
意な差は認められなかったが,好ましさ,全体的
食品のNaClを天然醸造醤油に置き換えること
な味の強度,トマト味では有意差が認められた
により,消費者の受容性を低減することなく全ナ
(P<0.01)。塩100%のものと塩75%/醤油25%の
トリウム含量を減らすことが可能であることを3
ものでは,その他のものよりも味の強度が低くな
種類の食品で明らかにした。
った。
天然醸造醤油の塩減少能力に関しては,2つの
豚肉炒めでは,5種類の試料において,総合的
説明が成り立つ。
好ましさ,味の強度,塩味,肉風味の点で有意な
第1に,低塩のレンズマメとマッシュルームス
差は認められなかった。
ープでは,グルタミン酸ナトリウムと5’
核酸の風
これらの結果は,塩の代わりに醤油を用いれば,
味増強効果が報告されている。同様に,
「うまみ」
総合的好ましさ,味の強度を低減することなく,
物質であるグルタミン酸ナトリウムと5’
核酸はチ
実際の食品で食塩含量を50%,17%,29%減少で
キンスープの塩味を増強することが報告されてい
きることを示している。
る。醤油は天然のうま味成分(グルタミン酸)を
食品と容器
101
2010 VOL. 51 NO. 2
多く含んでいることから,味覚相互作用を生じた
第2段階目の官能試験では,受容性が低下しな
結果,減塩食品で塩味が増強された可能性がある。
いばかりか,総合的な味も低下しなかった。総合
第2に,ここで得られた結果は,既に報告され
味の低下防止の観点から,さらには消費者受容性
ている塩味適合香による「香りによる塩味増強」
の観点から,醤油置換割合をあらかじめ設定する
(odor-induced saltiness enhancement:OISE)と
ことは,望ましい方法ではない。試験した3種類
よく一致している。醤油をほとんど使用しないも
の食品では,最初の官能試験で見出された置換割
のにとっては醤油香と塩味の関連は強くないもの
合と,第2段階目の官能試験で見出された最適置
と思われるが,醤油香が塩味を増強した可能性が
換割合とは同じであった。
ある。醤油香と塩味の関係を明瞭にするためには,
この報告では,通常の方法に従い,消費者の受
さらに1〜2回,試験を実施する必要がある。
容性を1回限りの試験で測定した。しかし,洋食
「香りによる塩味増強」に関するこれまでの研
のNaClを醤油で置き換えることは,洋食のフレー
究は,モデル系として塩を含む水を用いたが,こ
バーに微妙な違いを及ぼす可能性がある。このフ
の報告において実際の調理食品でも「香りによる
レーバーの微妙な違いは,繰り返し暴露すること
塩味増強」が示唆された。スープと豚肉料理では
により顕著な違いとなり,その結果,食品の嗜好
醤油を含む4種類のいずれにおいても「香りによ
性が向上あるいは低下する可能性がある。それ故
る塩味増強」が認められたが,サラダドレッシン
に,繰り返し暴露し,醤油添加による塩減少食品
グでは,食塩75%/醤油25%においてのみ「香り
の長期間にわたる受容性を確認する必要がある。
による塩味増強」が認められた。第2段階目の官
この報告では,3種類の食品において,醤油で
能試験において,スープ,肉料理では醤油置換割
置換すれば食品全体のNaCl含量を減らすことがで
合を増やしても塩味は一定であったが,サラダド
きることを示した。醤油の塩減少能に関するメカ
レッシングの塩味は,食塩75%/醤油25%までは
ニズムは,醤油本来のものである。興味深いこと
同じであったが,それ以上に醤油割合を増加する
に,試験した3種類の食品で,醤油が補完できる
と減少したことから,「香りによる塩味増強」に
NaCl減少割合は異なっていた。NaCl減少割合はサ
よるNaCl減量の補完程度には,境界線が存在する
ラダドレッシングで最も高かった。この現象につ
ようだ。すなわち,天然醸造醤油のNaCl減少能は,
いてはいくつかの説明が可能である。第1に,う
「香りによる塩味増強」だけではなく先の味覚相
ま味と醤油香の質・量は,温度が異なると変動す
互作用との両方の作用による可能性が濃厚である。
るため,加熱工程と高温で食べることは,醤油に
食品中のNaCl含量の減少と,食品の受容性の減
含まれるうま味と香りの有効量を変動させるであ
少とには密接な関係があることがしばしば報告さ
ろう。第2に,ドレッシングで使用した液状醤油
れているが,本報告においては,NaCl含量を減少
と,スープ,豚肉炒めで使用した粉末醤油の香り
しても食品の受容性の減少は認められなかった。
プロフィールは異なっている。第3に,トマトス
さらに,ドレッシングでは全NaCl含量の減少とと
ープと豚肉はグルタミン酸を含んでおり,醤油
もに塩味の程度も減少したが,その受容性は低下
(グルタミン酸を含んでいる)による塩低減効果
しなかった。そのため,サラダドレッシングでは,
に悪い影響を及ぼしたであろう。最後に,ここで
塩味は消費者受容性を支配する決定的な因子では
扱った以外の食品では,醤油のNaCl減少能は先の
ないことが推察された。塩含量減少食品では,高
要因の1つ以上の因子が寄与するであろう。
い受容性を維持するためにはグルタミン酸ナトリ
結論
ウムが効果的であることが報告されている。天然
食品の総合的な味を損なうことなく天然醸造醤
醸造醤油に含まれているグルタミン酸等のうま味
油でNaClを置換でき,消費者の受容性を損なわず
成分,ならびに醤油の香り成分は,塩含量減少食
に食塩含量を減らすことが可能である。
し
品の受容性の維持に効果的と思われる。
食品と容器
(林 清)
102
2010 VOL. 51 NO. 2
最近のショットスタイル飲料市場
Food Technology(U.S.A.)26(’09・9)
文献 №5519
健康の維持とエネルギーレベルの増強を簡便に
めていない。それに代わって,飲料は,「ライフ
できる方法を消費者が求める中,機能性ショット
スタイル」というレベルにまで格上げされてしま
スタイル飲料の販売が伸びている。
ったように思える。
今日の慌しい生活において,私たちは,ますま
Nielsen社によれば,米国のコンビニエンススト
す多くのことを同じ時間に詰め込もうとしていて,
アにおけるショットスタイル飲料の売上は,2008
一見不可能なことを可能にする製品を常に探し求
年の1億500万ドルから2009年6月13日までの1年
めている。消費者の注目を集めている製品の一つ
間で2億9,500万ドルと,179%も増加した。
として,ショットスタイル飲料がある。
さまざまなショット飲料がある中,米国を席巻
ショットスタイル飲料とは,その量が通常4オ
したのは,エネルギーショットである。エネルギ
ンス(約110g)までのもので,エネルギーの素早
ーショットは,これまではもっぱら米国での現象
い増強や必要不可欠なビタミンの補給,免疫機能
であったが,ヨーロッパ諸国でも広がり始めてい
の向上を,便利にサッと飲み干すだけで実現する
る。北米とヨーロッパにおいては2008年に 130%
ものである。調査会社のInnova社が所有する食品
も増加し,1億8,800万本,4億2,300万ドルの売
・飲料データベース(2009)によれば,2007年の159
上を達成した。米国でのエネルギーショットの販
種類から増加して,2008年の時点で 221種類のシ
売は,2007年から2008年に2倍を超える延びを見
ョットスタイル飲料が世界中で販売されている。
せ,食品・薬品・大型小売店(Wal-Martを除く)
ショットスタイル飲料として人気のあるカテゴリ
において6,700万ドルに達した。
ーは2つある。
エネルギーショット
1つは,エネルギーショットで,2オンス(約
エネルギーショットの意図するものは極めて単
57g)ほどの量で活力をもたらす効果がある。もう
純である。カフェイン,ビタミンおよびアミノ酸
1つは,乳製品利用プロバイオティクショットで,
の濃縮により,普通サイズのエネルギー飲料から
生きた細菌その他の栄養を体に与えるものである。
得られるのと同じ「活力」を,少量かつカロリー
変わりつつある飲料市場
ゼロで消費者が得ることができるというものであ
このような傾向の中心には,利便性に対するニ
る。それに加え,普通サイズのエネルギー飲料と
ーズがある。ショットサイズ飲料の登場により,
は異なり,これらショットスタイル飲料は栄養補
迅速かつ便利,しかも携帯性に優れた形で,さま
助食品であると見なされている。エネルギーショ
ざまな栄養ニーズおよびライフスタイルニーズに
ットメーカーの主なメッセージは,
「糖質無添加」
対応することができる。
あるいは「低糖」であり,このことが主流のエネ
過去数年の間に,消費者の飲料へのかかわり方
ルギー飲料との違いであるとしている。
に大きな変化が出てきた。2003年から2008年まで
米国のエネルギーショット市場では現在,Living
の間,従来の炭酸飲料は,米国で1,560万人の大人
Essentials社が製造する“5-Hour Energy”が市場
の顧客を失ったと調査会社のMintel社は推定して
を支配している(写真1)。同社コミュニケーシ
いる。人々はもはや「ゼロ」カロリーの摂取を求
ョ ン 部 長 のC.SPERBER氏 に よ る と,5-Hour Energy
食品と容器
103
2010 VOL. 51 NO. 2
けん
写真1 エネルギーショット飲料“5-Hour Energy”
はコンビニ店で70%以上,食品・薬品・大型小売
第1図 エネルギーショット飲料市場 2007-10 (北米およびヨーロッパ)
店で約75%のシェアを持っている。栄養補助食品
の販売は2008年に1億7,000万ドルを超え,2009年
ルが忙しくなるということは,栄養バランスのと
には3億ドルを超えそうだと同氏は述べている。
れた食事と運動を生活に取り入れる時間がますま
5-Hour Energyは米国のエネルギーショット市場で
す減ることを意味する。「消費者の健康意識が高
優勢を維持しており,コンビニエンスストアで70
まる中,多くの人が気分転換よりも純粋な機能性
%以上,食品・薬品・大型小売店で約75%のシェ
にのみ関心を抱くようになっている。従って,濃
アを持っている。
縮されたショットドリンクは理想的な選択肢であ
「当社がターゲットとする顧客は,いつも働く
る」とZenith International社のJ.FOULDS氏は述べ
大人であった。エネルギー飲料の有名メーカーは
ている。
10代の男性をターゲットにしているようであるが,
これらの濃縮された健康ショットは世界中で主
それらの層はエネルギーの増強などおよそ必要と
に乳製品飲料の形で製品化されており,特定の健
していないであろう。一方,働く大人は本当に活
康問題に特化したプロバイオティクス(体に良い
力を必要としている」とSPERBER氏は言う。
働きをする)細菌を含んでいるものが多い。
エネルギーショット飲料の分野は過去2年間の
エネルギーショット分野とは異なり,乳製品シ
間,非常に活発であった。しかし,将来はどうな
ョット飲料が米国で受け入れられる素地は,アジ
るだろうか? 食品・飲料コンサルタント会社の
アやヨーロッパよりも弱い。プロバイオティク乳
Zenith International社は,北米およびヨーロッパ
製品ショット飲料がアジアで強固な基盤を有して
市場では2010年までにエネルギーショットの販売
いるのは,株式会社ヤクルト本社の功績である。
数が5億本を超え,小売総額が12億ドルに迫ると
同社は,2.2オンス(約60g)入りプロバイオティ
予想しており,同様の傾向が他の地域にも広がる
クショット飲料である「ヤクルト」の販売を1950
と述べている(第1図)。
年代に開始した。ヤクルトが実際に誕生したのは
Datamonitor社のT.VIERHILE氏も,この分野が拡
1935年で,微生物学者代田稔氏によってであった。
大する一方であるという見方で一致している。ほ
今日,ヤクルトは32の国および地域で販売されて
とんどのエネルギー飲料ブランドは今後1,2年
いる。ヤクルトは2007年9月に米国で正式に販売
の間にショット飲料分野の製品を市場に投入する
が開始された。米国では2.7オンスショット(約80
と同氏は見ているが,その一方で,各ブランドは,
g)の形で販売されている。現在,米国でのヤクル
「ある種の成分を使用したり,使用しなかったり
トの販売は西海岸のみである。しかし,それにも
することにより,市場細分化が始まるだろう」と
かかわらず,同社は1日に 100,000本を販売して
述べ,それによってブランドの差別化が始まると
いる。世界的には,1日 2,500万本を超えるヤク
考えている。
ルトが販売されている。
プロバイオティク乳製品ショット
米国の消費者はプロバイオティクス細菌の効用
ますます慌しくなる今日において,スケジュー
にますます注目するようになってきている。買い
食品と容器
104
2010 VOL. 51 NO. 2
物客の65%が消化器系の健康のためにプロバイオ
って,完全で均一にバランスした物理的・化学的
ティクス細菌に多少とも関心があると答えており,
栄養システムを形成する。これら成分の多くは多
28%が非常に関心があると述べている。
機能である。従って,機能性食品の成分を取り除
消費者のプロバイオティクス細菌とその効用に
いたり新たに追加したりすることは,製品の全体
関する知識が増えるにつれ,この数値は上昇する
的バランスを崩す可能性がある。製品品質の構成
であろう。
要素は味,外見,質感であり,それによって消費
製法上の課題
者が品質を判断するという重要なパラメータであ
ショットスタイル飲料に対する人気の上昇は,
るが,必要な栄養素を同時に加えた場合,これら
食品・飲料メーカーにとって胸躍るようなチャン
の3つのパラメータのいずれか,あるいはすべて
スが到来したことを意味するが,それと同時に難
のパラメータに影響を与える可能性がある」と言
題の到来をも意味する。
う。結局のところ,消費者が製品を再び購入する
Fortitech社の専務取締役副社長兼科学技術担当
かどうかを決める主なファクターはその味である。
役員であるR.CHAUDHARI氏は,ショットスタイル飲
この点で,ショット製品は多少なりとも優位性が
料の開発に際して,メーカーが考慮する必要があ
あるように思える。というのは,これらの製品は
る要素が複数あると述べている。その要素とは,
本来,ビタミン補助食品や健康食品とみなされる
味,質感,安定性,口当たり,成分選択と相互作
ことがあるからである。
用である。特定の健康問題に対応するための成分
「5-Hour Energyの味は,必要十分という程度
としては,例えば次のようなものがある。
であればよい」とSTERBER氏は言う。しかし,にお
コレステロール低減:植物ステロール,CoQ10,
いと味の問題があると以前は考えられた栄養素の
ビタミンB類,リコピン,ビタミンE
多くが,今日の技術(例:カプセル化技術)のお
体重管理:共役リノール酸
(CLA)
,
5-ヒドロキシ
かげで,添加することが現実的な選択肢となって
トリプトファン(5-HTP),ガルシニア,クロム,
きている。
食物繊維,緑茶
また,プロバイオティクス細菌は乳製品利用食
エネルギー補給/疲労回復:タウリン,ビタミ
品や飲料でよく利用される。その理由を,米国乳
ンB類,オメガ3,L-カルニチン,ロディオラ,
製品協議会の栄養研究部長であるC.CIFELLI氏は
カフェイン
「プロバイオティクス細菌をミルクやヨーグルト
骨の健康: カルシウム,ビタミンK,マンガン,
その他乳製品などの食品とともに服用することに
ホウ素,ビタミンD
より,プロバイオティクス細菌が,消化過程で分
認知力強化:γアミノ酪酸
(GABA)
,
L-テアニン
泌される胃酸と胆汁から保護されるからである」
オメガ3,コリン,イチョウ,ホスファチジル
と説明する。
セリン
最近の市場動向を考えると,機能性ショット飲
CHAUDHARI氏によれば,複数の機能性成分を取り
料は人々の生活に浸透しているようである。この
扱う際の主な課題は,「食品マトリックスの複雑
ことは,これら飲料に関する科学を前進させるチ
性」であると言われる。同氏は「食品はさまざま
ャンスがメーカーにもたらされることを意味する。
な種類の成分からできており,それらが1つにな
(常盤恭徳)
食品と容器
105
2010 VOL. 51 NO. 2
無菌包装の現状と課題
Food Technology(U.S.A.)70(’09・7)
文献 №5510
無菌包装とは内容物と包装容器を別々に殺菌し,
さまざまな技術の集大成である。消費者の手に届
無菌環境で充填密封する方法である。その結果,
けられた製品は無菌状態でなくてはならない。そ
常温流通市場へ製品を導入できるようになった。
のために必要な加熱殺菌が施され,充填環境はあ
もちろんこの方法は低酸性飲料を対象としたもの
らかじめ殺菌された清潔な空間でなくてはならな
である。ここで新たに紙容器入りの果汁や果実飲
い。
料を考えてみる。
殺菌技術
ESL(Extended shelf life : 賞味期限を延ばし
内容物の殺菌においては,近年,新しい非熱処
た製品)は無菌充填に近い技術であろうか? 端
理方法として超高圧処理と少しの熱または薬剤と
的に言えば無菌充填は単一の技術ではなく,20世
を組み合わせた方法が実施されている。従来の加
紀に見出された多くの技術を結集し,それぞれの
熱方法としてはチューブ,プレート,スパイラル
技術的な境界を越えた融合技術である。
パイプなどの間接加熱や,インジェクション,イ
無菌充填は1920年代にデンマークで,1930年代
ンフュージョン,オーミックなどの直接加熱があ
にアメリカで研究されてはいたが,第2次世界大
る。初期の時代の加熱殺菌は内容物の種類にかか
戦まで注目されることはなかった。Dole式缶無菌
わらず,加熱殺菌を行っていたが,現在では間接,
充填では缶容器はスーパースチーム(ヒーターで
直接法の中で最適な温度,時間で殺菌を行ってい
加熱された蒸気)で殺菌され,内容物はチューブ
る。内容物の物性が水や牛乳とは異なる粘度の製
式殺菌機を用いて殺菌し,split-pea(干して割っ
品の場合,例えば液体というより固体に近い幼児
たグリーンピース)のスープの製品化を実現した。
向けのピューレ製品では無菌包装初期の技術では
さらに,
1950年代には牛乳でTetra Pak社の紙容器
高温で液化し,低温で固化する処方を採用してい
の製品が販売された。この製法に用いる包装容器
た。また,酸性食品であるため微生物的には問題
は,長い管状のフィルムコーティングされた紙容
となりにくいスライスピーチやトマトのダイスカ
器を過酸化水素に浸漬し,ホットエアーで殺菌除
ットの製品では,湯殺菌を行ってから容器に充填
去する方法である。1980年代初頭には,このシス
された。しかし,スープやソースの様な低酸性食
テムは発展し多くの紙容器,バリアーカップ,ボ
品はどの様に殺菌すればよいのか。近年,食品会社
トル,パウチで果汁や果実飲料の製品が市場に導
とFDAが待ち望んでいた掻 き取り式熱交換器が
入された。これらの技術的な競争の中で無菌包装
開発され,この問題の解決策が見出された。
は変化し,開発初期の歴史は人々から忘れ去られ
アセプテック賞
ている。包装技術が大きく発展したため,無菌製
最近のIFT年次大会と同時に開催されるFood
造技術の基本から逸脱する製品も生まれてきてい
Expo®で3つの無菌化処理技術が紹介された。
る。現在では無菌充填と包装技術は発展し尽くし
第1は低酸性食品への電子線の連続照射殺菌で
ており,新しい可能性を見出すことは,ほとんど
ある。この方法はこれまでの殺菌方法に比べ品質
難しいとも思える。無菌包装は殺菌,製造環境,
および栄養価が非常に良い状態で保持される。大
容器,無菌性の維持,コンタミを起こさないなど
容量のパウチにスウィートポテトピューレを入れ,
食品と容器
か
106
2010 VOL. 51 NO. 2
製品化された。FDAからも「問題ない」と支持され
ている。第2は低温の加熱処理を併用した超高圧
殺菌である。超高圧殺菌は単独では殺菌方法とし
ては不十分だからである。殺菌された内容物は無
菌状態で次工程へ搬送されなくてはならない。製
造工程はあらかじめ殺菌され,無菌性が維持され
ている必要がある。無菌性の維持は高温による乾
熱滅菌,蒸気による湿熱滅菌,過酸化水素による
薬剤滅菌など,の方法がある。殺菌された内容物
の搬送のためには無菌性を維持したクリーンルー
ムあるいは外気が進入しない様にクリーンルーム
と同様なシステムが必要である。第3は世界的に
も有名な殺菌剤である過酸化水素を用いた殺菌シ
ステムである。液体過酸化水素をガス状にして殺
写真1 Dairystix製品はAdvanced Electron Beam包
装技術とUHTを用い,173日のシェルフライフを持つ
菌を行う方法である。食品に使用される容器は大
きさ,形状,材質とも多種多様である。PETの無
内容物とは接していないパウチ内へ空気を封じ込
菌充填では,50−60℃に温められたPETボトル中
め,やや満注状態のパウチとする。
にガス状の過酸化水素が注入される。その後,過
その他の殺菌方法として放射線が紹介されてい
酸化水素の希釈と殺菌で反応した残渣を除去する
る。γ線,X線,紫外線,電子線などが以前に研
ために無菌水で洗浄される。PETのプリフォーム
究されたが内容物,包材を変化させることが分か
へガス状の過酸化水素をブロー直前のオーブン入
ってきた。しかし,近年,制御技術の向上,機械
口で導入する殺菌方法も紹介されている。その後
価格の低減,安全性の向上がみられスティックタ
殺菌された空ボトルは無菌的に搬送され無菌充填
イプのコーヒークリーマーで製品化されている
に供される。この方法は水とエネルギーの使用量
(写真1)。
を減少させる。また,60%のポリオレフィンと40
無菌包装は安全が第一である。現在さまざまな
%の炭酸カルシウムのフィルムでできたパウチに
新しい技術が導入される中,十分にデータ検証を
内容物を充填する方法が紹介されている。例えば
行い,事故の無い製品を作る技術を確立する事が
牛乳では殺菌された内容物をパウチ充填した後,
重要である。 (橋本浩二)
さ
別 刷 合 本 を ご 利 用 下 さ い
食品成分の栄養・機能の基礎と新素材の利用技術
B5判/本文 100ページ 定価 2,500 円(送料別)
近年,消費者の健康および健康食品への関心はますます高まり,食品会社でもこれら消費者のニーズに合った製
品の開発が一段と進められている。本書は食品成分の栄養や機能と健康との関連およびこれら素材の利用技術につ
いて専門の研究者に解説願った。
《内容》健康志向食品および飲料開発の底流/食品と健康-とくに食品栄養表示基準制度/健康と栄養(1)タンパ
ク質と健康/健康と栄養(2)油脂と健康/健康と栄養(3)炭水化物と健康/健康と栄養(4)ビタミン・ミネラルの生
理作用/素材各論(1)炭水化物系:①難消化性オリゴ糖,糖アルコールの機能と利用/素材各論(2)炭水化物系:
②食物繊維素材の機能と利用/素材各論(3)タンパク質系:タンパク質,ペプチド,アミノ酸の機能と応用/素材
各論(4)脂肪系:n−3系多価不飽和脂肪酸の生理機能と応用/素材各論(5)ビタミン・ミネラル系:ビタミン・ミ
ネラル系の素材と利用/素材各論(6)抗酸化成分:抗酸化成分の機能と利用
問合せ・申込み先 缶 詰 技 術 研 究 会 電話 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1・ファックス 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
食品と容器
107
2010 VOL. 51 NO. 2
健康志向消費者の情報源としての栄養表示ラベル
The World of Food Ingredients(Neth.)34(’09・9)
文献 №5523
食品が健康に良いかどうか見極めようとすると
Daily Allowance : 一日当たり許容摂取量)やDV
き,消費者が食品包装前面の栄養マークと側面の
(Daily Value : 一日当たり栄養価)などの研究に
栄養表示ラベル(Nutrition Facts panel: NFP)
基づいた栄養標識は食品1食分に含まれる栄養素
のどちらを重視するか,販売者,商品企画担当者,
および熱量を表し,関心を示す消費者が増えてい
研究者は注目している。有名ブランドを持つメー
る。同調査では3つの異なる栄養標識を評価,ど
カーは健康効能を強調した独自の栄養表示によっ
れも前述した2つの自社認定標識よりNFPが信頼
て自社製品を差別化し,また新製品や改良製品を
されていた。研究に基づく栄養標識は,明確さや
際立たせることができる。
食品購入時の栄養情報源として参考になるという
PepsiCo社の
“Smart Choices”
やNabisco社の
“Sen-
面でも優れているという意見が多かった。
sible Snacking”は食品包装前面に付ける自社認定
消費者が包装前面の栄養情報を見るか,側面の
栄養標識の代表例である。同種の製品すべてに共
NFPを見るかを比較すると,後者が圧倒的支持
通の標識なので他社製品との比較に適しているが,
を得ている。両方の情報を見る,あるいは側面の
栄養価の高低には言及していない。包装前面には
NFPだけを見る消費者は栄養関連知識を最も多
さまざまな栄養情報が書かれ,特定栄養素の含有
く持っており,
NFPを見ない消費者は栄養関連知識
量も自社認定健康効能を強調する商業的マークも
が乏しい傾向にあった。
混在するので,より健康に良い食品を選ぼうとす
健康不安層
る際に消費者の助けとなるのはどのような表示方
健康不安を持つ消費者がどのように食品を選ぶ
法なのか,関心と懸念とが共に高まっている。
のであろうか? NFPや種々の表示やマークの利
消費者の反応
用のしかたは健康な人と異なるだろうか? 調査
全米6500人近くの買い物客を対象とした調査で
では45%の家庭には健康不安がなかった一方,健
は,食品包装前面に付けられたさまざまな栄養マ
康不安には,消化器系疾患,糖尿病,心臓疾患,
ークについて評価が行われた。GDA(Guidance
アレルギーなどが挙げられた。いずれの疾患にお
いても食品包装前面
(front of the package : FOP)
①アレルゲン表示
の栄養マークに対する関心が高かった。明確さや
②栄養マーク
参考になりやすさの面では,
GDAやDV等の栄養標
③健康効能表示
識が高く評価された。
④消費期限日付
栄養情報の利用
⑤栄養学的効能表示
健康不安の主なものは体重管理,消化器系疾患,
⑥素材リスト
⑦栄養表示ラベル
(NFP)
心臓疾患である。第1図に食品包装上の栄養情報
と上記3種の健康不安を抱える家庭の利用状況と
%=情報利用率
消化器系疾患
心臓疾患
の関連を示した。NFPはいずれの場合においても
体重管理
最重要情報源となっている。その他については図
を参照されたい。心臓疾患関連の健康効能表示は
第1図 食品包装ラベル記載情報の型と利用率
食品と容器
108
2010 VOL. 51 NO. 2
歴史が長いことと,販売側の積極的な推進努力の
たまものか,患者は他に比べて健康効能表示に関
①購入後NFPを熟読する
②NFPをほとんど見ない
心が高かった。注目すべきは健康不安を抱える消
③NFP中1∼2項目しか見ない
費者にとって,栄養マークが最も関心が低いこと
④NFPをすべて理解できる
である。また心臓/消化器系疾患に比べ,体重を
⑤購入時NFPを熟読する
⑥NFPが購入の決め手となる
気にする人はNFPを除く表示の利用率が低い。
⑦新製品のNFPを必ず見る
消費者と健康不安
1=大いに同意
健康不安のある消費者は,ない人に比べてNFP
総合
をよく利用している。NFPは製品を選ぶ際に決め
5=大いに反対
消化器系疾患
心臓疾患
体重管理
手となる情報を提供してくれるため,家に持ち帰
第2図 健康不安別NFPの使い方
って見るより店で見る(第2図参照)。また健康
帰って表示ラベルをさらに読んだり調べたりする
不安のある消費者はNFPと同様にFOPの栄養情報
ことを期待はできない。家で見ないものが教材に
も利用するが,後者の利用率はかなり劣る。なお
なるはずもない。そこで,健康不安のある消費者
NFPもFOPマークも「すべて理解できる」と答
向けの販売方法として,栄養情報の記載のみに頼
えた人は少なかった。
るのではなく,公正なブランドの立ち上げが推奨
食品業界の課題
されている。一定のブランド製品に付けたNFPの
明確かつ必要なNFPが第一:製品改良や新製品
内容が適正であることが肝要で,業界は信頼に足
開発にあたっては,業界が健康不安のある消費者
る栄養情報をNFPの枠内に収められるよう努力す
特有の需要をNFPに反映できることが肝要である。
べきである。
NFPは既存分野内での事実報告なので,健康効能
統合的ネット販売とNFP:米General Mills社の
や認可を新規に備える必要はないが,既に確定し
Betty Crockerシリーズのグルテンフリーミック
た栄養情報の範囲内で短いリストを作成すること
スに見られるように,メーカーは健康関連のニッ
しかできない。そこで,NFPのどの項目に消費者
チ市場に食い込もうとしており,彼らはネット販
が注目するのか,摂取したい/したくない素材は
売と消費者の直接介入という新しいビジネスモデ
何か,その含有量はどの程度か,といったことへ
ルを活用している。健康関連サイトとの連携で検
の理解が重要となる。一方,消費者が摂取したい
索エンジンを最適化し,消費者の口コミで販促を
栄養素が現行のNFPに記載されていない可能性も
図る方法である。
あり,これは将来の商品企画変更に向けた有力情
政策的課題
報と言える。なお製品の健康効能をNFPに載せる
栄養教育の必要性:健康不安のある人はNFPを
ことは,健康不安を抱える消費者に対する強力か
主要情報源として利用し,FOP栄養マークや文章
つ有効な信頼性形成手段である。新規/改良製品
には重きを置かない。しかしNFPやFOPマークの
には明確で説得力あるNFPを付け,健康効能を強
理解度は,健康不安のない人より多少高いにすぎ
調して消費者に訴えかける必要がある。業者同士
ないため,さらなる栄養教育が必要となる。
が競ってNFPがより目立つように,わかりやすく
NFPがより健康に良い食品選択に影響:健康不
なることは健康不安を抱える消費者にとって喜ば
安を抱えた消費者は,より健康に良い食品を選ぼ
しい傾向なのである。
うとするときNFPを信用する傾向が強い。そこで
栄養教育と公正ブランドの必要性:表示ラベル
政策的には,慢性疾患と関連性のある栄養素を特
の場所にかかわりなく,消費者は栄養情報を完全
定してNFPに記載することを検討し,
NFPをより全
に理解できるわけではないため,栄養教育と表示
米統一的かつ信頼の置ける情報源として提示する
とを並行して進めることが望ましい。これは購入
方法を探るべきである。
時点で行うものであり,消費者が家に製品を持ち
食品と容器
(力丸みほ)
109
2010 VOL. 51 NO. 2
食べもの随想 日本語のあそび
―表音文字と表意文字―
た
むら
しん ぱち ろう
田 村 真 八 郎
(元農水省食品総合研究所所長)
何十年間も,建設する・建設しないで問題にな
このような「ダムはムダ」のように,始めから
っている群馬県の「八ッ場ダム」。建設・不建設
読んでも終わりから読んでも,同じになる文章を
の論議に参入する気は全くありません。ただ言葉
回文と言うのだそうです。回文としては昔(太平
の問題として気になる点があります。つまりその
洋戦争以前)から「タケヤブヤケタ(竹やぶ焼け
発音の「やんばダム」です。「ツ」を「ン」と発
た)」が有名です。また戦後では,前から読んで
音するのは音便だろうと思いますが,そのような
も後から読んでも「ヨノナカバカナノヨ(世の中
音便はあまり思い当たりません。似たような字配
バカなのよ)」などが流行しました。このような
りの「四ツ葉のクローバ」も「よんばのクローバ」
回文を考えるのが趣味の人も多いらしく,かなり
にはなりそうもありません。
長い回文が現在でもよく雑誌や新聞に投稿されて
逆さから読むと,いろいろ考えさせられる言葉
くるようです。
というものがあります。ダムもそのひとつで「ダ
回文のような遊びができるのは日本語の特長だ
ムはムダ」となります。また「八ッ場ダム」の場
そうです。つまり日本語の発音が,すべての発音
合にも,建設・不建設の時の費用が各種,予想さ
が子音に母音がくっついている音節構造になって
れているようですが,予想の場合の費用は「小さ
いて一文字づつ読み易いからだと言われます。 く生んで大きく育てる」のが常とう手段なのだそ
そのため私たち日本人は幼少の頃,意味がわか
うです。例えば,はじめは1000億としておいて,
らないままに調子の切り易いところで区切って文
途中で2000億,3000億という具合にふくらますと
章を覚えることにもなります。例えば「イロハニ
いうことです。それで予想についても「ヨソウは
ホヘト・チリヌルヲワカ・ヨタレソツネ・ナラム
ウソ(嘘)ヨ」となり,なるほどネエというわけ
ウイノ・・・」という具合です。これは「色は匂
です。またずいぶん前から「クスリ(薬)はリス
へど・散りぬるを・我が世・誰ぞ常ならむ・・
ク」なども言いはやされてきました。
・」が元来の文章ですが,子供はそんな哲学的な
「ダンスはスンダ」「マントはトンマ(頓馬)」
高尚な意味は理解できませんから仕方がありませ
というのもあります。スーパーマンなどのマント
ん。
を翻がえして空を飛び活躍するヒーローには,筆
このような読み方を「ギナタ読み」と言うのだ
者も時に憧がれたりもするわけですが,よく考え
そうです。つまり「弁慶が長力を持って・・・」
てみるとトンマな話の中のトンマなヒーローにも
というのを「ベンケイガナ・ギナタヲモッテ・・
思えるということでしょうか。
・」と読んだという話からきているのだそうです。
食品と容器
ナギナタ
110
2010 VOL. 51 NO. 2
このようなことが起こるのは,日本固有の文字
ン・ツー・スリー・フォー・・ ・」,中国語では
を区切りを入れずに,つまり仮名を「分かち書
「イー・アル・サン・スー・・ ・」です。
き」せずにベタ書きにしているからでしょう。で
日本語には二系統の発音があります。ひとつは
すから,文字がバラバラに目に飛び込んで来てし
「 ヒ( イ )・ フ( ウ )・ ミ( イ )・ ヨ( ウ )・ イ
まい,いろいろ順序無視の読み違いを起こします。
(ツ)・ム(ウ)・・・」でいまひとつは「イチ・
国名の「イラク」を食物名の「イクラ」と読んだ
ニ(イ)・サン・シ(イ)・ゴ(ウ)・ロク・・
り,冬期オリンピックの「バンクーバー」が「ハ
・」の系統です。はじめの系統には優しい,温和
ンバーク」に見えたりするのも,あながち筆者が
な感じがあり,後の系統には硬いきびしい感じが
食いしんぼうだからだけではないように思います。
ついています。ですから忠臣蔵の四十七士,「シ
同じように「トレイ」が「トイレ」に間違えられ
ジュウシチシ」を「ヨンジュウナナシ」と読まれ
ることがあるのですが,筆者は「トレー」と書く
てしまうと,演劇関係の方々はガックリと気が抜
ように注意して来ました。
けてしまうということです。
仮名のベタ書きは冗長になります。日本語の場
もちろん,表意文字,1,2,3,・・・にいろ
合は,これを防いでいるのが漢字です。日本の文
んな読み方があることは,円周率などの数字の並
字である仮名(カタカナ・ひらがな)は表音文字
び方を記憶するのには便利です。年配の方なら円
ですから,発音を示しているだけで意味内容を持
周率,3.14159265358979・・・を
「サイシイコクニ
っていません。しかし漢字は表意文字ですから,
ムコ(ウ)サンゴヤクナク・・・(妻子異国ニ向
意味内容を持っています。すなわち「テ」とか
こ(う)産後厄無く・・・)」などと覚えた記憶
「て」は発音を示しますが意味はありません。し
があると思います。
かし「手」は意味(人間の前肢)を持ちますが,
たしかに複数の系統がある場合の利便性もある
発音を直接指示してはいません。中国語では何と
のですが,よくない場合もあります。例えば,ど
発音するか知りませんが,日本語では,「テ」と
うして「都・道・府・県」の四種があるのでしょ
か「シュ」とか発音します。中国文明が長年かか
うか。あらゆる公式文書にこれを印刷し,どれか
って発展させて来た漢字(チャイニーズ・キャラ
に○を付けるというのはズイブン大きな無駄のよ
クター)は優れた表意文字です。表意文字は元来
うな気がして仕方ありません。
はひとつの意味を持っていたのでしょうが,現在
日本ではそれぞれの年を表わすのに,西暦と平
では複数の意味を持たせている場合があります。
成・昭和・大正・明治などの元号とがあります。
ひどいのは「米」です。この漢字は「コメ」の
例えば本年は西暦2010年,元号では平成22年とな
意味と「アメリカ」の意味と「メートル」の意味
ります。これは換算するのがなかなか厄介です。
の少なくとも三つの重要な意味を持たされて大弱
例えば太平洋戦争後の日本人の食生活を大きく動
りです。発音は自由自在で,「コメ・マイ・ベイ・
かしたものに,チキンラーメンと電子レンジがあ
ヨネ・メートル・・・」という具合です。
ります。チキンラーメンはその簡便さがうけて,
日本語の文章を書く場合は,仮名(カタカナ・
世界中の食に影響を与えましたが,その発売は昭
ひらがな),漢字,ローマ字,算用数字などを混
和33年でした。これは西暦に直すと何年でしょう
用します。1,2,3・・・などのアラビア数字
か。また電子レンジは1966年に出現し冷凍食品の
は数を表わす表意文字ですから,発音はいろいろ
利用価値を格段に向上させましたが,それは昭和
あります。今では万国共通の表意文字ですから,
にすると何年でしょう。
発音は各国でもちろん違うわけです。英語では「ワ
食品と容器
111
2010 VOL. 51 NO. 2
特別解説
植物工場の現状と今後の課題
い し い・ ま さ ひ さ
千葉大学大学院自然科学
研究科修了。
農林水産省
入省,
農業工学研究所を
経て,
現在,独立行政法
人農業・食品産業技術総
合研究機構農村工学研究
所農業施設工学研究チー
ム主任研究員。
石 井 雅 久
ら植物を守るために開発されてきた農業技術とい
1.はじめに
える。このように,時ならぬ季節に青果物を口に
わが国に施設園芸が普及したのは,石油化学工
したいという願いは,いつの時代に生きる人々に
業が発展した昭和30年以降のことであるが,世
も共通しており,農業技術の進展とともに,我々
界的に見るとその歴史は古く,その原型は約2000
は自然条件下では考えられなかった植物のポテン
年以前の古代ローマ時代につくられた。この時代
シャルを引き出し,植物の栽培が困難な季節にで
には地中にピットや長い壕を掘り,その上を透過
も多くの青果物を享受できるようになった。しか
性の雲母板で覆って植物を保護していたといわれ
し,わが国の農業をとりまく情勢は大きく変わり
ている。また,わが国でも江戸時代には,油紙を
つつあり,10年後の姿を予想することすら難しい。
張った行灯室のなかで植物を栽培したという記録
この要因はいくつか考えられるが,農業者の減少
が あ る 1)。 施 設 園 芸 の 英 訳 はprotected
と高齢化,耕作放棄地の増加,輸入農産物の増加,
horticultureであり,まさに,厳しい気象環境か
市場機能の変化などが主な要因になろう。一方,
ごう
あんどん
わが国の農業の弱体化が懸念される中
࿦⧓↪ᣉ⸳ߩ⸳⟎㕙Ⓧ㧔ha㧕
60000
で,平成19年の園芸用施設の設置面
積は50,608haの規模を維持している2)
50000
(第1図)。この面積は全耕地面積の
約1%強にしかすぎないが,その重要
40000
性はきわめて高い。平成19年の農業
30000
総産出額は8兆1,927億円であるが,
20000
このうち園芸作物である野菜,果実を
10000
を占め,米1兆7,903億円(21.9%)や
0
ᤘ40 44
含めた合計は2兆7,994億円(34.2%)
畜産2兆4,112億円(29.4%)の生産額
48
52
56
60 ᐔర
5
9
13
を上回っている3)。これら園芸作物の
中で,代表的な野菜であるトマト,キ
ᐕ
第1図 園芸用ガラス室,ハウス等の設置面積の推移
食品と容器
17
112
ュウリ,ピーマン,イチゴ,メロンな
2010 VOL. 51 NO. 2
どでは約6割以上が施設で生産されている。さら
季節にとらわれずに周年的に野菜や果物を購入し
に,花きや果樹においても施設化が進んでいる。
たいという消費者ニーズが加わり,施設園芸は全
この背景には,施設園芸では,野菜,花き,果樹
国的に広く普及した。一方,降雨の多いわが国で
などの収益性が高い農産物が生産できること,環
は,植物に直接,雨が当たると病害の発生や収穫
境制御システムや灌漑システムを導入することに
物の品質低下が誘発される。特に,高温期の降雨
より省力化を図れることがある。さらに,肥料や
は数多くの病害を発生させるので,施設によって
農薬が降雨によって流出しやすい露地栽培と異な
植物を保護することの利点は大きい。夏季に気象
り,施設園芸は降雨の影響を受けにくいため,病
条件が冷涼で,降雨の少ない山間地などでは高価
害の発生や施肥・灌水量を極小化できることも重
な施設を建てずに,パイプハウスの上面にプラス
要な要素である。植物工場は施設園芸から発展し
チックフィルムを張っただけの雨よけ栽培が普及
た農業技術の一部であるが,ここでは施設園芸と
している(第3図)。このように,施設によって
植物工場の背景や特徴を述べるとともに,植物工
植物を覆い,その室内を植物の好適環境に制御す
場の現状と今後の課題などを論じてみたい。
ることにより,様々な青果物が周年的に安定生産
かん
されている。
2.施設園芸
2.3 養液栽培
2.1 施設園芸の背景と意義
従来,植物は自然界の土によって生長・進化し,
本来,多くの野菜や果物には食べてもっともお
今日のような植物形態を形成してきた。土には,
いしい季節がある。これを旬と呼んでおり,その
植物の根を張ることによって茎や葉を支え,生長
香りや色や味のなかから人は季節を感じ取ってい
に必要な水分と養分を根に与える働きがある。し
る。しかし同時に,人は昔から「初物」,「はし
りもの」を好んで食べる習慣があり,ときには高
額でも飛ぶように売れることがある。一般的に,
イチゴの旬は12月のクリスマスの季節であると
思っている人が多いが,イチゴの旬は初夏であり,
冬期に流通するイチゴは本来の収穫期とは大きく
かけ離れている。つまり,真冬に保温や暖房,電
灯照明された温室内の環境を,イチゴは春から初
夏の気象環境として錯覚して,果実を生産してい
るのである(第2図)。また,トマトやナスなど
その他多くの野菜や果物にもそれぞれの旬がある
第2図 パイプハウスでのイチゴ栽培
が,需要の多い青果物は年間を通して流通してい
る。このように青果物に季節感が少なくなったこ
とは,寂しいことかもしれないが,その反面,我々
の食生活に豊かさや潤いがもたらされていること
も否めない。
2.2 施設園芸の特徴
日本の気候には四季があり,四季それぞれの旬
に収穫できる野菜や果物を食するのが本来の姿で
あるが,青果物の旬を先取りしようとする消費者
のニーズが農業技術を進展させてきた。国民総生
産が急速に伸びた昭和30〜40年以降になると,
食品と容器
第3図 雨よけ施設でのトマト栽培
113
2010 VOL. 51 NO. 2
かし,何らかの方法によって植物の根を伸長させ
3.植物工場
るとともに茎や葉を支え,また,水分と肥料を十
分に供給することができれば,必ずしも土は必要
3.1 植物工場の背景
ない。このような考えをもとに,植物に必要な無
わが国の園芸用施設は,土耕栽培を中心とする
機成分を水に溶かして根に供給して植物生産を行
パイプハウスのような低コスト型の施設と,ガラ
う養液栽培技術が開発され,国内外で普及してき
ス温室や硬質プラスチック温室のような資本投下
た(第4図)。
型の施設に,二極化している。特に後者では,温
養液栽培には,以下のような長所がある。
室内の環境をコンピューターによって制御する事
①土の条件にかかわらず,どこでも同じ地下部環
例が多い。他方,資本投下型の施設は建設すると
境が得られる。
パイプハウスのように移設が容易でないため,土
②培 養液の肥料濃度,pH,液温等の根圏環境を
の維持・管理に多大な労力を要するという問題が
植物に合わせて好適に制御できるため,連作障
ある。この土の管理にかかわる労力を省力化する
害がなく,安定生産が可能である。
ために,養液栽培システムを導入する農家が増え
うん
③土のように耕耘,施肥,マルチ張りなどの作業
ている。このような養液栽培システムを導入した
がなく,除草,土壌消毒もする必要がないので,
資本投下型の温室が高度に発展したものが植物工
省力的かつ衛生的な生産環境である。
場といえる。植物工場という言葉が一般的に認識
されるようになったのは,1985年に筑波で開催さ
④培養液の肥料成分を植物の生育に合わせて調整
できるので,環境負荷が極めて少ない。
れた国際技術博覧会以降であるが,この会場では,
1本のトマトから何千個ものトマトが収穫できる
養液栽培システムやタワー型植物工場などが展示
され,土を使わない農業技術が広く認識されるよ
うになった(第5図)。
3.2 植物工場の特徴
植物工場は大きく分けて二つに分類できる。そ
れは,植物を生産するための光エネルギーを太陽
光から得るものと,人工光から得るものである。
太陽光を利用した植物工場は,養液栽培を導入し
た一般の温室を高度化したものであり,周年的に
第4図 ガラス温室でのトマト養液栽培
地上部および地下部などの環境条件を,植物の好
適範囲に制御できる設備を持っている。これを
第5図 国際技術博覧会で展示された
トマトの養液栽培システム
食品と容器
第6図 太陽光・人工光併用型植物工場
114
2010 VOL. 51 NO. 2
「太陽光利用型植物工場」という。一方,太陽光
閣議決定され,地域の農業と商工業が連携して新
利用型植物工場は光エネルギーを太陽光に依存す
たな事業に取り組む「農商工連携」の新たな切り
るため,天候や季節的な変化によって植物の生育
口の一つとして,農林水産省総合食料局長と経済
は不安定となる。この不足した光エネルギーを人
産業省地域経済産業審議官の私的研究会である
工光によって補う設備を付加した植物工場を「太
「農商工連携研究会」の下に「植物工場ワーキン
陽光・人工光併用型植物工場」という(第6図)。
ググループ」が設置され,平成21年4月に「農商
しかし,植物を周年・安定生産する上で,気象条
工連携研究会植物工場ワーキンググループ報告
件は常に不安定であり,植物工場内の環境条件を
書」が提示された。植物工場は現在,全国で50カ
植物の好適範囲に制御するのは技術的にも,生産
所(完全人工光型:34ヵ所,太陽光・人工光併用
コスト的にも非常に困難である。この不安定な気
型:16カ所)が稼働しているが4)(第7図),農
象環境から生育環境を完全に切り放し,植物工場
林水産省は平成23年度末には植物工場の設置数を
内を人工光や空調設備によって人為的に管理する
合計150カ所まで増やす計画である5)。
ことによって,植物の
生産を安定化させる
ことができる。これを
「完全人工光型植物
工場」という。
植物工場には,以下
のような長所がある。
①単位土地当たりの生
産性が高く,施設を
周年利用できる。
②植物の生育環境を好
適条件に制御できる
ため,生育が極めて
早く,年間を通じて
均質かつ高品質な植
物を生産できる。
③生産管理を自動化し
やすく,労働力を省
力化できる。
④完全人工光型植物工
場の場合,室内が外
界と遮断されている
ため,植物を無菌状
態に近い環境で生
産できる。
3.3 植物工場の現状
平成20年9月に「新
経済成長戦略の改訂
とフォローアップ」が
食品と容器
第7図 国内で稼働中の植物工場一覧(平成21年4月現在)(農商工連携研究会,2009)
115
2010 VOL. 51 NO. 2
3.4 植物工場の事例(K社,TSファーム)
あるが,これらの売り上げは野菜価格の影響を大
この施設は,マヨネーズ・ドレッシング類の大
きく受ける。そこで,主要製品の需要を安定化さ
手販売メーカーのK社が開発した完全人工光型植
せることを目的として,植物工場の開発に着手し
物工場である。ここで紹介する植物工場は,東京
てきた経緯がある。また近年,食品の安全性が問
都府中市の閑静な住宅街のなかにあり,まさに究
題となっているが,TSファームでは完全人工光
極の都市型農業といえる(第8図)。この施設で
型植物工場の利点である安全・清浄野菜の生産を
は光,温度,CO2濃度などの環境条件を植物の最
活かして,スーパーなどの量販店や外食・中食産
適条件に制御できるので,レタス類を播 種して
業への野菜販売の実績を伸ばしている。
は
から収穫までに約30日間という短期間で生産で
4.まとめ
きる。また,播種〜移植〜定植〜収穫と栽培ステ
ージを3段階に分けて施設内の利用効率を高める
太陽光・人工光併用型植物工場および完全人工
とともに,三角パネルによる立体栽培方式を取り
光型植物工場には,それぞれ一長一短があるが,
入れることにより,平面栽培方式に比べて床面積
現在,日本で植物工場として営利的に運営されて
当たりの栽培株数を増やしている。さらに,V字
いるものは,後者が多い。本来,日本は温帯気候
空間の上部でランプを点灯することにより,照明
に属し,日照条件にも恵まれているので,人工光
効率は向上し,空調容積も減少するので,従来よ
源を用いた植物工場が必要かどうかは,疑問が残
りも電力コストを削減できる(第9図)。TSファ
るところである。また,「農業は太陽光を利用す
ームの設計・施工および野菜の販売を統括するK
るもの」という概念が,現在の植物工場を不安定
社はマヨネーズやドレッシング類の販売が中心で
な立場に追いつめていることも否めない。以前,
「農業は大地を利用するもの」という概念が,養
液栽培の出現と普及によって覆されたように,人
工光源を利用して植物を生産することは,農業生
産を持続する上で重要な技術になるかも知れない。
ただし,これまでに植物工場は幾度かのブームが
あり,scrap & buildが繰り返されてきたことは
事実である6)。
無限といっても過言でない太陽光を,
今後,植物の生産過程でどのように利用するかは,
近い将来の課題である。しかし,変動幅の大きい
太陽光を採用しつつ,植物工場施設の環境を空調
機によって植物の好適範囲に制御すると,施設の
第8図 完全人工光型植物工場(TSファーム外観)
イニシャルコストやランニングコストが過大にな
り,採算を取るのは難しいのが実状である。従っ
て,今後は,太陽光利用・人工光併用型植物工場
はん
だけでなく,一般の園芸用施設にも汎用化できる
低コストかつ高度な環境制御技術を開発し,施設
園芸のさらなる進展について検討する必要があろ
う。
他方,遺伝子組換え技術と植物工場技術を融合
し,医薬品や機能性食品等を生産するための研究
プロジェクトが進められている。アメリカではト
マトからHIVワクチンを生産する技術7)や,日本
第9図 完全人工光型植物工場(TSファーム内部)
食品と容器
116
2010 VOL. 51 NO. 2
でもイチゴから犬の歯周病に効果的なイヌインタ
ば,次世代に向けた新たな中核産業を創出できる
ーフェロンを生産する技術8)が開発されている。特
可能性がある。
に,医薬用物質生産組換え植物を生産する上で,
本稿では,①施設園芸の意義と背景,②養液栽
一般の農作物との交雑が懸念されてきたが,遺伝
培,③植物工場,④植物工場の現状と今後の課題
子組換え植物を完全人工光型植物工場で生産すれ
について,著者の視点から述べてみた。紙面の関
ば,この問題を回避できる。今後,このように農
係から説明不十分の点や省略した点も少なくない。
業技術を基盤とする異分野との産学官連携が進め
ご意見やご批判をいただければ幸いである。
参 考 文 献
1)三原義秋,温室設計の基礎と実際,養賢堂,pp.273
yokyu.pdf)
(1980)
6)高倉 直,今,なぜ植物工場か−食料とエネルギー
2)農林水産省生産局生産流通振興課編,園芸用ガラス室
自給のAutonomous Houseプロジェクトを−,農業
・ハウス等の設置状況,日本施設園芸協会,pp.197
及び園芸,84(11),1063-1067(2009)
(2009)
7)Matoba, N., Magérus, A., Geyer, B.C., Alfsen, A.,
3)農林水産省大臣官房統計部,
農林水産統計 平成19年
Hanson, C.V., Arntzen, C.J., Bomsel, M. and T.S.
農業総産出額(概算),pp.12(2008)
Mor, Humoral immunity induced by CTB-MPR649-
4)農商工連携研究会編,
植物工場ワーキンググループ報
684 towards the prevention of HIV-1 mucosal tran-
告 書,pp.19(2009年12月21日 確 認:http://www.
smission/infection, 12th International Congress of
maff.go.jp/j/press/seisan/engei/pdf/090424-01.pdf)
Mucosal Immunology,(2005)
5)農林水産省生産局生産流通振興課,<22年度予算概
8)松村 健,
植物バイオプロセス展開における本格研究
算要求> 植物工場(高度環境制御施設)の普及・拡
密閉型遺伝子組換え植物工場システムの開発,
産総研
大,pp.3(2009年12月21日確認:http://www.maff.
TODAY,8,14-15(2007)
go.jp/j/seisan/ryutu/plant_factory/p_sien/pdf/22_
新刊紹介
ソフト・ドリンク技術資料 No.159 発刊のお知らせ
2.フードディフェンスについて
㈳全国清涼飲料工業会では,「ソフト・ドリンク
(
(財)日本食品分析センター テクニカルサービ
技術資料」No.159を発刊しました。ご希望の方はホ
ス部/技術士(総合技術監理部門,農業部門
ームページでお申し込み下さい。
(食品化学) 湯川剛一郎)
◇書 名:ソフト・ドリンク技術資料 No.159
3.農産物の品種判別および産地判別技術の現状
(2009年・第3号)B5判 156ページ
((独)農研機構 食品総合研究所 安井明美)
◇価 格:1部購入の場合=4,500円(全清飲また
4.微生物の簡易迅速検査法と自主衛生検査の形
は日清研会員は3,000円),定期購読の場合=
((独)農研機構 食品総合研究所 川崎 晋)
9,000円(全清飲または日清研会員は6,000円)
5.カルピス株式会社の品質保証への取り組み
◎定期購読は年間3冊,価格はいずれも消費税
(カルピス㈱ 品質保証部 顧問 牧住芳美)
込,送料サービス,10部以上お求めの場合には
6.コーデックスは今 −汚染物質部会−
1割引。(2009年度分はNo.157〜No.159)。
(特定非営利活動法人 国際生命科学研究機
◇申し込み先:ホームページ www.j-sda.or.jp
構(ILSI Japn) 岩田修二)
◇お問合せ先:㈳全国清涼飲料工業会
7.EUにおけるHACCP原則の実施とその「柔軟性」
TEL 03(3270)7300 担当 古内または安達
について
(㈳全国清涼飲料工業会 福田正彦)
◇内 容
ティータイム
座談会
▶良き友は「心の贅沢」 (大塚製薬㈱ 山下裕司)
1.座談会:日本清涼飲料研究会今昔
食品と容器
▶瞬間難民 (㈳全国清涼飲料工業会 福田正彦)
117
2010 VOL. 51 NO. 2
特別レポート
日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
−平成21年の1∼12月を振り返って−
た」との声がメーカー各社から聞かれたように,
清涼飲料の最新市場動向
一昨年秋以降続いている景気低迷,それに伴う自
はじめに:年間着地 3 %減,2 年連続で減少
販機稼働率の低下,あわせて冷夏や暖冬の天候要
炭酸3年連続増加,PB 増加で価格が軟化
因が大きく,メーカー各社の出荷を左右した。2
昨年(1∼12月累計)の清涼飲料市場は前年比
年連続のマイナスは第一次,第二次オイルショッ
3%減と近年にない大きな下げ幅となった。これ
クの時以来三度目。月別にみても,プラスとなっ
まで市場を牽引してきた緑茶・ウーロン茶・ブレン
たのは1,4,11月のわずか3カ月と低調な動き
ド茶など無糖茶とミネラルウォーターが低調に推
となった。
移したことが市場低迷の要因だ。炭酸飲料は3年
カテゴリー別では,不況の影響でPBの伸長や
連続でプラス。
「不況や天候不順の影響が大きかっ
マイボトルによる代替が一部でみられた無糖茶が
けん
第1表 平成21年1∼12月の主要各社の清涼飲料出荷実績前年対比(単位:%)
キリン
業界平均 サントリー ビバレッ
ジ
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
1 ∼ 2 月累計
1 ∼ 3 月累計
1 ∼ 4 月累計
1 ∼ 5 月累計
1 ∼ 6 月累計
1 ∼ 7 月累計
1 ∼ 8 月累計
1 ∼ 9 月累計
1 ∼ 10 月累計
1 ∼ 11 月累計
1 ∼ 12 月累計
102
96
98
101
97
99
96
96
98
96
101
99
99
98
99
98
98
97
97
97
97
97
97
102
99
101
104
102
102
100
92
103
99
102
103
101
101
102
102
102
102
100
100
100
100
101
104
94
99
98
91
90
87
88
89
89
99
98
99
99
99
97
95
94
93
92
92
92
93
伊藤園
アサヒ飲料
大塚
グループ
ポッカ
109
101
97
105
105
109
99
100
102
103
108
105
104
101
102
103
104
103
103
103
103
103
103
107
97
100
110
100
104
99
96
102
98
100
103
102
101
104
103
103
102
101
101
101
101
101
92
90
105
90
90
97
87
89
93
92
110
98
91
96
94
93
94
92
92
92
92
93
93
102
98
100
109
99
107
100
97
108
93
95
97
100
100
102
101
102
102
101
102
101
101
100
コーラ
カルピス コカ・
合計
117
88
98
103
95
114
94
95
102
101
107
102
100
99
101
99
102
100
99
100
100
100
101
100
96
96
101
95
99
92
97
97
95
97
99
98
97
98
97
98
96
96
97
97
97
97
注)コカ・コーラ合計は醸造産業新聞社推計。
食品と容器
118
2010 VOL. 51 NO. 2
全般的に苦戦。緑
茶は伊藤園〈お∼
いお茶〉が前年並
みをキープしたが,
その他はマイナス。
ブレンド茶,ウー
ロン茶も低迷。ミ
ネラルウォーター
は9年ぶりに前年
第2表 平成21年の主要各社の販売箱数実績
総販売箱数
増減箱数
前年比
シェア
コカ・コーラグループ 4 億 7,580(6 億 5,320)△ 1,570(△ 2,230) 97(97) 28.1 (28.3)
サ
ン
ト
リ
ー 3 億 2,350(3 億 5,490)
キ リ ン ビ バ レ ッ ジ 1 億 7,926
伊
藤
ア
サ
ヒ
飲
93
10.6 (11.1)
園 1 億 7,380
550
103
10.3 (9.7)
料 1 億 4,675
167
101
8.7 (8.3)
8,400
△ 630
93
5.0 (5.2)
計 13 億 8,581
△ 2,801
98
81.9 (81.2)
場 16 億 9,200
△ 4,650
97.3
100.0(100.0)
大 塚 グ ル ー プ
6
社
飲
料
総
市
50 (200) 100(101) 19.3 (18.6)
△ 1,368
注)単位:万箱,%。パッケージ製品,シロップ除く。箱数と前年比のカッコ内はシロップ込み
割れ。トップのサ
の数字。シェアのカッコ内は前年。
ントリーはプラス,コカ・コーラ〈い・ろ・は・す〉
発売のタイミングのズレなどにより前年比上は大
が1,000万箱を超える出荷となるなど順調に推移し
きな浮き沈みがでた。
〈ボス・ファーストクラス〉
たものの,他社は軒並みマイナス。特に,輸入は
は好調なスタートを切ったが,その後失速。ポッ
小容量中心にマイナス幅が大きく,輸入量全体で
カのコーヒー・ココア飲料〈ココプレッソ〉は
は15%近いマイナスとなった。炭酸飲料は伸び率
「チェーン店への導入は順調に進んだ」(同社)が
が鈍化したものの3年連続でプラス。
「天候がマイ
冬本番では自販機とスーパーでの量販が中心の販
ナスに働く年にプラスになったのは大きな収穫」
売となった。8月リニューアルの〈ファイア〉は
(大手メーカー関係者)。新たに〈三ツ矢サイダー
製品投入もあり,今秋冬商戦では勝ち組に。ミネ
・オールゼロ〉が登場,ゼロ商品群が下支えする
ラルウォーターはサントリー〈天然水〉が7%増
形は変わっていない。主要ブランドに加え,新製
となった以外は軒並み前年割れ。茶系飲料は上位
品発売が相次いだことも炭酸飲料の数字を下支え
集中が強まっていることに加え,年末に向け,価
した。一方,ボリュームの大きい缶コーヒーは微
格の軟化傾向もみられた。紅茶はトップブランド
糖・無糖製品を中心に数字を伸ばしたが,砂糖・
〈午後の紅茶〉が4%増と堅調なほか,伊藤園
ミルク入りの「スタンダード」はマイナス基調か
〈TEAS’TEA〉や大塚ベバレジ〈ジャワティー〉
ら脱せずにいる。CVS棚でも商品の入れ替わりが
は2倍以上の大きな伸びと。昨秋はフレーバーテ
激しく,各社の新製品投入タイミングは早くなり,
ィーの商品が複数投入され,動きが注目された。
結果定着できない状況が続いた。今年は新製品の
10 月:総市場4%減,水・茶系低調な動き続く
発売をメーカー各社がしぼり,商品育成に主眼を
10月の清涼飲料市場は4%減となった。気温変
置いたマーケティング戦略が予定されていること
動が大きく,ホット飲料も安定的な販売にはほど
から,売り方に変化が起こるか,注目だ。ここで
遠い動きだった。茶系飲料,ミネラルウォーター
は前回(第50巻10月号)を引き継ぐ形で,9∼12
も一部商品を除きマイナス。これまで市場を牽引
月の市場動向を振り返るとともに,今年の飲料市
してきた両カテゴリーの減少が低迷に大きく影響
場を展望していきたい。
した。茶系飲料全体でもマイナスと,「PBやマイ
9月:総市場2%減,コーヒーの出荷量で差
ボトルの影響も少なからずでている」
(大手メーカ
9月の清涼飲料市場は前年比2%減となった。
ー)とみられ,無糖茶全般に停滞感が漂う動きと
秋冬の主力・缶コーヒーは新製品投入やリニュー
なった。緑茶市場は年間通してマイナスと復調の
アル時期のズレにより,ブランドごとに大きな差
兆しが見えない。ミネラルウォーターは小容量で
が出た。ミネラルウォーターや茶系飲料は上位は
国産が伸長も,輸入品が低調で全体はマイナス傾
堅調だが,2番手商品以下は低迷。秋需のメイン
向が続く。缶コーヒーはブランド間の差が大きく,
商材として各社が注力した缶コーヒーは,微糖は
例年以上に前年比の浮き沈みが大きく出た年とな
各社好調な動きを続けているが,スタンダードは
った。「CVS等での商品の入れ替えが活発なこと
食品と容器
119
2010 VOL. 51 NO. 2
も影響している」(中堅メーカー)。また,景気後
量販店 PB 伸長,NB 商品の動きにも影響
退により自販機の稼働率が低迷,各商品の足を引
不況や所得の減少などの影響で消費者の財布の
っ張る形だが,稼働台数の多いメーカーほどその
紐は昨年もきつく締まった状況が続いたが,その
ひも
影響は大きくでたようだ。
財布の中からお金をわずかでも引き出せたのは,
11 月:市場全体1%増も,稼働日増が寄与
スーパーなどで大きく売上げを伸ばしたPBの存
11月の清涼飲料市場は1%増と前年を上回った。
在だ。「少しでも安く」という消費者意識に応える
4月に1%増となって以来のプラス。
「市場低迷に
形で,NBよりも低価格なことからもてはやされ,
歯止めがかかったとは言い難い」(メーカー関係
一部カテゴリーを除き,店舗内の売上げでも大き
者)というようにプラス要因は一昨年が6%減と
な数字を占めるようになってきている。緑茶・ウ
なった裏返し要因に加え,各社稼働日増による上
ーロン茶など茶系飲料やミネラルウォーター,ス
乗せがあった。特に,「ホット飲料の動きは芳しく
ポーツドリンクなどでは価格差を背景に大きく伸
ない」(中堅メーカー)というように,気温差が激
ばしている。一方で,缶コーヒーや炭酸飲料は
しい天候になかなか安定的な出荷にならない状況
「価格差がそのまま影響を受けているわけではな
が続いた。缶コーヒーは新製品発売で前年比上,
い」(大手メーカー関係者)ことから,嗜好性の強
浮き沈みする状況が続く。11月は〈ファイア〉9
い商品群では依然NB商品の優位性がみられるよ
%増,
〈ネスカフェ〉10%増などがプラスで,伊藤
うだ。PBの売上げに占める比率は年々高まって
園はホット用の〈タリーズ・ウインターショッ
きており,2∼3割近くになるチェーンもでてき
ト〉の販路拡大やボトル缶商品〈タリーズ・バリ
た。PBの弊害は売上構成比よりも広い棚スペー
スタズチョイス・ブラック〉の販売が寄与し31%
スをPBに割いて販売していることだろう。大量
増。ただ,キャンペーンの裏返しや製品投入の時
陳列のスペースなどでも集中展開されたり,
「売場
期ズレが影響し,トータルでは微減にとどまった。
での適正なカテゴリー比率が崩れているスーパー
ミネラルウオーターはコカ社の〈い・ろ・は・
なども散見される」
(中堅メーカー)。「粗利益率が
す〉が好調な以外は軒並み低調。「年間通じて,不
高いから儲 かる」という単純な状況ではなく,
景気の影響で消費者の購買動機を高められなかっ
PBの広がりの中でNBを含めた売場づくりの転換
た」
(メーカー関係者)。店頭や自販機での値引き
期にもきている。
もみられ,量販向けの大容量のみならず,小容量
自販機稼働率低迷,再浮上は夏以降か !?
PETでも価格の軟化が懸念される状況になった。
清涼飲料全体の売上構成比で4割弱を占める自
12 月:低調な推移も,一部で 「 押し込み 」 も
動販売機は,不景気の影響や量販店との価格差な
12月の飲料市場は1%減となった。ただ,年末
ど稼働率の低下が目立つ。加えて,関西地区で拡
商戦が好調に推移したという感覚は各社ともなく,
大し首都圏でも増加している「100円自販機」の稼
一部メーカーによる「押し込み」が数字を下支えす
働台数増がこれに輪をかける。定価販売を常とし
る形になったことは否めない。
「市場の実消費はも
てきた自販機は,メーカーや小売店にとって重要
っと低い」(メーカー関係者)ことから,1月の数
な収益源の一つ。周辺の100円自販機にお客を取
字に影響が及ぶことを懸念する声もある。条件軟
られる状況も散見された。100円自販機にはメー
化も一部でみられ,特売価格に反映された売場も
カー各社の棚落ち商品が並ぶが,不況の影響で少
散見された。カテゴリー別では,季節商材の炭酸
しでも安いものを求める消費が出ているとの大手
飲料は順調な流れ,PBとの価格競争にさらされ
の見方だ。「100円自販機周辺は100円売りで対応
ている茶系飲料は実数字よりも厳しい動きとなっ
せざるをえない」
「部分値下げで稼働率が維持で
た。缶コーヒーは順調な動きで推移したが,月末
きれば」などの本音も。オペレーター(自販機充
に大きく数字を伸ばしたブランドがあり,1月の
填運営会社)が稼働率ダウンに絶えきれずに値下
し
もう
てん
数字に影響しそうだ。
食品と容器
げに踏み切るケースもみられる。自販機専用のキ
120
2010 VOL. 51 NO. 2
ャンペーンを行うメーカーもあるが,速効性があ
ビール系酒類の最新市場動向
るわけではない。デフレ下で,店頭との価格差,
100円自販機との価格差が鮮明になる中で,
「あと
はじめに
半年近くは影響が残りそう」との声がきかれる。
昨年のビール系酒類業界は,景気低迷が続く中
新たな伸長カテゴリー,生み出せるか
で「低価格のものしか売れない」という厳しい環
炭酸飲料に続く伸長カテゴリーを見いだせるか
境下での商戦となった。年初にビールメーカー各
が今年の飲料市場を大きく左右することになる。
社が予想した年間の総市場出荷見込みは,
「前年比
ただ,「皆目見当がつかない」「成長の芽がみえな
2∼3%減」でほぼ共通していた。また,カテゴ
い」など各社暗中模索を続ける。ただ,飲料業界
リーとしては,最も低価格である新分野市場が主
の歴史をみてみると,消費者の嗜好の飽きや移り
戦場となることが予想されていた。
変わりを含めても,5年周期の成長サイクルが生
総計 2.1%減,5年連続前年割れ
まれている状況はある。
「景気」「天気」「元気」の
大手5社合計の昨年のビール系酒類年間課税数
三つに期待する−−新年の挨拶で出た言葉だが,
量の合計は,ビール・発泡酒・新分野総計で前年
各社の活発な商品開発,マーケティングが打ち出
比2.1%減の598万1,938㎘となった。前年比的には
せるかが業界全体の活気にもつながる。新製品の
ほぼ年初に各社が予測したとおりとなった。これ
ヒットの率を上げなければならない中で,
「環境」
で,平成17年以降5年連続前年割れとなった。数
「健康/機能」は一つのキーワードになってくる
量は平成6年の724万8,515㎘をピークに漸減傾向
だろう。ただ,「清涼飲料の楽しさ」「面白さ」に
が続いている。昨年の課税数量はピーク時の8割
立ち戻ることも今重要な時期にきている。
強にあたり,平成6年から年率マイナス1.3%のペ
あいさつ
第3表 平成19年∼21年の各社別ビール系酒類年間課税数量
アサヒ
ビ ー ル
発 泡 酒
新 分 野
合 計
ビ ー ル
発 泡 酒
新 分 野
合 計
ビ ー ル
発 泡 酒
新 分 野
合 計
ビ ー ル
発 泡 酒
新 分 野
合 計
ビ ー ル
発 泡 酒
新 分 野
合 計
ビ ー ル
発 泡 酒
新 分 野
合 計
キリン
サントリー サッポロ
オリオン
5社計
平成 19 年
数量
前年比
シェア
(㎘)
(%)
(%)
1,712,677
98.3
49.4
426,975
114.5
27.7
243,562
91.2
19.2
2,383,213
100.1
37.9
995,252
98.5
28.7
827,748
95.4
53.7
548,254
111.3
43.1
2,371,255
100.1
37.8
261,176
105.0
7.5
168,926
86.8
11.0
259,134
109.9
20.4
689,236
101.5
11.0
473,646
100.0
13.7
99,686
78.0
6.5
210,367
99.2
16.6
783,698
96.4
12.5
26,648
94.4
0.8
16,970
101.2
1.1
9,356
104.5
0.7
52,974
98.2
0.8
3,469,399
99.1
100.0
1,540,305
97.5
100.0
1,270,673
104.4
100.0
6,280,377
99.7
100.0
平成 20 年
数量
前年比
シェア
(㎘)
(%)
(%)
1,636,575
95.6
50.5
369,441
86.5
26.0
302,069
124.0
20.9
2,308,084
96.8
37.8
862,457
86.7
26.6
808,503
97.7
56.8
602,614
109.9
41.7
2,273,575
95.9
37.2
264,972
101.5
8.2
155,931
92.3
11.0
337,006
130.1
23.3
757,908
110.0
12.4
453,039
95.6
14.0
73,257
73.5
5.2
193,187
91.8
13.4
719,483
91.8
11.8
25,492
95.7
0.8
15,322
90.3
1.1
10,892
116.4
0.8
51,706
97.6
0.8
3,242,534
93.5
100.0
1,422,454
92.3
100.0
1,445,768
113.8
100.0
6,110,756
97.3
100.0
平成 21 年
数量
前年比
シェア
(㎘)
(%)
(%)
1,531,544
93.6
50.6
319,870
86.6
26.6
391,876
129.7
22.3
2,243,291
97.2
37.5
800,945
92.9
26.5
732,399
90.6
61.0
720,118
119.5
41.0
2,253,463
99.1
37.7
257,820
97.3
8.5
94,376
60.5
7.9
382,104
113.4
21.8
734,300
96.9
12.3
412,042
91.0
13.6
41,490
56.6
3.5
245,734
127.2
14.0
699,266
97.2
11.7
23,839
93.6
0.8
13,044
85.1
1.1
14,734
135.3
0.8
51,618
99.9
0.9
3,026,191
93.3
100.0
1,201,180
84.4
100.0
1,754,567
121.4
100.0
5,981,938
97.9
100.0
注)各社発表の課税数量を使用。
食品と容器
121
2010 VOL. 51 NO. 2
びを予想する向きはなかった。第5表の月別課税
第4表 平成21年の主要ブランド販売数量
ブランド名
スーパードライ
数量の推移をみると,スタートの1月こそ2.3%の
数量
前年比
11,700 万箱 93.4 %
3,565
100.0
サッポロ黒ラベル
1,948
90.4
キリンラガー
1,931
87.4
ザ・プレミアム・モルツ
1,266
110.2
ヱビス計
ビール
一番搾り
1ケタ増にとどまっているが,これは前年の1月
が値上げを控えて出荷が大きく膨らんでいたこと
の裏返し。逆に翌2月は,前年同月が値上げ実施
で2.0%減となっていたことの裏返しで47.3%の大
1,060
97.9
幅増となった。その後は天候不順が災いした7月
モルツ
745
81.7
クラシックラガー
374
84.7
を除くと2ケタ増が続き,年間では20%を超える
アサヒ・ザ・マスター
148
-
アサヒ熟撰
116
57.9
30
88.1
淡麗生
3,099
91.9
この結果,新分野の,ビール系酒類総計に占め
淡麗グリーンラベル
1,670
96.5
スタイルフリー
1,172
103.0
る構成比は29.3%(前年23.7%)に上昇した。缶
麒麟ゼロ
481
68.5
本生アクアブルー
470
63.8
クールドラフト
437
-
MDゴールデンドライ
428
66.8
ル35.9%,発泡酒25.2%を上回っている。家庭用
本生ドラフト
404
46.6
淡麗ダブル
318
-
では完全に「主役」の座を占めた。
ダイエット生
256
61.9
のどごし生
4,569
111.8
クリアアサヒ
1,933
136.9
金麦
1,684
140.8
後の最後まで勝負の行方はもつれた。結果,販売
麦とホップ
1,107
215.5
アサヒオフ
729
-
数量ではアサヒがキリンを20万箱という僅差で上
ジョッキ生
712
68.6
ドラフトワン
605
63.9
コクの時間
429
-
ストロングセブン
420
182.9
麦搾り
265
-
ストレート
231
-
スーパーブルー
192
49.2
ホップの真実
169
-
一番搾りスタウト
伸びで着地した。発泡酒の落ち込み幅の大きさを
考えると,消費者の節約志向がいかに高まってい
るかがうかがえる。
ビール市場に限ると新分野の構成比は41.2%で,
発泡酒
ビール32.0%,発泡酒26.8%を上回り首位。家庭
用市場でみても新分野の構成比は38.9%で,ビー
課税数量はキリンが9年ぶり首位返り咲き
ここ数年,首位を巡るアサヒとキリンの戦いは
最終の12月まで接戦が続いたが,昨年は本当に最
きん
新分野
回り1位を守ったが,課税数量ではキリンがアサ
ヒを上回るという,前代未聞の決着となった。業
界では課税数量を公式な数量としており,キリン
が平成12年以来9年ぶりに首位を奪還した。
ちなみに,販売数量とはメーカーが特約卸に販
売した数量で,これは各社の自主申告の数字。一
方の課税数量は,国税当局(税務署)に届けた製
造数量であり,正確で公式な数字といえる。一般
注)数量の単位は大瓶換算。
的に,「製造」と「販売」には時間的なズレが生
ースで市場の縮小が続いていることになる。また,
じるのが当然であり,今回のように販売と課税
数量が600万㎘を下回ったのは,昭和63年の574万
(製造)で1位が異なるのは理論的にはあり得る
9,828㎘以来,実に21年ぶりのことだ。
が,過去には例がなかった。なお,1位と2位は
新分野急伸,家庭用市場の 「 主役 」 に
入れ替わったが,3位は一昨年に3位に浮上した
総計は2.1%減となったが,分野別にみると動き
サントリー酒類が,昨年も3位の座を守った。
には大きな違いがみられる。目立つのは新分野の
薄れた新商品効果,「 定番回帰 」 鮮明
21.4%増という大幅増だ。年初予想では,メーカ
昨年も多くの新商品が登場したが,目立つヒッ
ー各社とも新分野だけが伸びることは予想してい
ト商品はなかった。最多新商品は〈アサヒ・オフ〉
たが,伸び率は1ケタ台で,このような大きな伸
の729万箱だったが,一昨年の最多新商品〈クリア
食品と容器
122
2010 VOL. 51 NO. 2
アサヒ〉の1,412
第5表 平成21年の月別ビール系酒類課税数量推移
万箱と比べると
はるかに少ない。
ビール系酒類市
場の細分化・多
様化が進み,大
型のヒット商品
が生まれにくい
環境になったこ
とが影響してい
る。また,消費
者もビール類の
新商品にやや飽
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
年間
ビール
数量 前年比 構成比
(㎘) (%) (%)
141,471
77.9
50.1
184,817
76.8
46.8
228,602 112.1
47.8
256,163 104.3
49.9
241,293
92.7
49.0
297,378 100.4
50.6
314,732
85.6
53.8
287,207
92.0
53.1
230,052
94.1
46.4
234,989
93.4
48.9
229,486
93.2
51.3
379,997
96.9
55.6
3,026,191
93.3
50.6
発泡酒
数量 前年比 構成比
(㎘) (%) (%)
64,789
71.2
22.9
91,289
80.4
23.1
107,883 100.1
22.6
108,363
85.5
21.1
109,986
89.0
22.3
117,454
94.4
20.0
109,460
76.8
18.7
100,138
81.0
18.5
96,078
81.5
19.4
94,757
76.8
19.7
82,229
85.8
18.4
118,757
89.9
17.4
1,201,180
84.4
20.1
新分野
数量 前年比 構成比
(㎘) (%) (%)
76,301 102.3
27.0
118,977 147.3
30.1
141,728 135.2
29.6
148,917 135.4
29.0
141,489 113.6
28.7
173,374 129.7
29.5
160,441 105.2
27.4
153,343 110.1
28.4
169,172 127.2
34.2
151,131 118.6
31.4
135,220 117.0
30.3
184,448 123.4
27.0
1,754,567 121.4
29.3
総計
数量 前年比
(㎘) (%)
282,562
81.4
395,083
90.8
478,213 114.8
513,443 106.4
492,768
96.9
588,206 106.1
584,633
88.2
540,688
94.0
495,302 100.0
480,874
95.7
446,935
97.6
683,202 101.4
5,981,938
97.9
注)構成比は各月の総計数量に対する各分野の割合
きた観があるようで,
「あま
り違いがないのなら,なじ
第6表 平成21年のビール系酒類
容器別構成比
との意識が広がっている。
結果として定番商品への集
中がみられ,各社とも定番
商品への注力を強めた。こ
の傾向は今年も続きそうだ。
堅調な動きだった 「 健康・
機能系 」 商品
一昨年,4月からの「特
定健診」をきっかけに糖質
瓶
缶
大樽
瓶
発泡酒 缶
大樽
瓶
新分野 缶
大樽
瓶
缶
総計
大樽
ビール
前年比 構成比(%)
(%) 本年 前年
90.7 22.5 23.2
92.5 45.0 45.4
96.4 32.5 31.4
100.4
0.4
0.3
83.6 94.8 95.8
104.7
4.8
3.9
0.0
0.0
121.4 99.9 100.0
0.1
0.0
90.6 11.5 12.4
99.4 71.1 70.0
97.0 17.4 17.6
ゼロの発泡酒による「ゼロ
ビール 発泡酒 新分野 総計
みのある定番商品を飲む」
第7表 平成21年のビール系酒類
用途別販売動向
前年比
(%)
構成比(%)
本年
前年
業務用
95.2
46.5
45.6
家庭用
91.8
53.5
54.4
業務用
101.9
5.4
4.5
家庭用
83.6
94.6
95.5
業務用
-
0.1
0.0
家庭用
121.4
99.9
100.0
業務用
95.5
24.6
25.2
家庭用
98.7
75.4
74.8
注)ビールはビール酒造組合,発泡酒は発泡酒の
税制を考える会が発表した数字。新分野は発泡酒
の税制を考える会が参考として発表。総計はこれ
らを合わせて醸造産業新聞社が算出。
ぜい
戦争」が話題を集めるなど,市場が一気に急拡大
フの贅沢〉のような新分野規格商品が登場,新分
した健康・機能系商品。昨年は特に大きな話題は
野規格の機能系商品合計で830万箱に達した。価
なかったものの,健康・機能系商品全体の数量は
格の安さも発泡酒規格商品より有利に作用してい
前年比0.2%減の5,255万箱(大瓶換算)となるな
る。発泡酒規格商品は4,425万箱で前年(5,195万
ど,ビール系酒類全体と比べ堅調な動きをみせた。
箱)より15%減少したが,通常の発泡酒の落ち込
ビール系酒類全体に占める構成比は,前年が11.0
み幅の方が大きいため,発泡酒全体に占める構成
%だったのに対し,昨年は総市場の縮小の方が大
比は前年(46.8%)より若干上昇し47.5%となっ
きかったことから0.3ポイントアップの11.3%とな
た。機能系発泡酒で圧倒的なシェアを誇るキリン
った。消費者の健康志向の高さを改めて実感させ
〈淡麗グリーンラベル〉は3.5%減にとどまって
る結果といえよう。
いるほか,アサヒ〈スタイルフリー〉は3.0%増
全体としてはほぼ前年並みの規模を維持した健
となっており,大幅減が目立つ他の機能系発泡酒
康・機能系市場だが,内容的には大きな変貌をみ
商品と比べ,この2商品の強さが際立っている。
せた。一昨年は,商品のほとんどは発泡酒規格だ
(醸造産業新聞社 編集部)
ぼう
ったが,昨年は〈アサヒ・オフ〉やサッポロ〈オ
食品と容器
123
2010 VOL. 51 NO. 2
技術コーナー
SO2
ワイン用ボトル缶の開発
㪪㪦㪉䈱ᓇ㗀䈮䉋䉍⣣㘩
䊐䉞䊦䊛 ធ⌕೷
䋼╙䋳࿑䋾
SO2
CaCO3
1.はじめに
䉝䊦䊚
第1図 従来ボトル缶の断面図
㪚㪸㪚㪦㪊䈮䉋䉍㪪㪦㪉䈱෻ᔕ䉕ᛥ೙
䊐䉞䊦䊛 ធ⌕೷
䉝䊦䊚
ワイン用の容器としては,瓶の製造技術が向上
第2図 ワイン用ボトル缶断面図
した17世紀後半以降数百年もの長い間瓶が使われ
と期待される。このようなきっかけから,当社(大
てきた。最近では容器に瓶以外を用いた製品も世
和製罐㈱)はワイン用ボトル缶の開発に着手し,
の中に出て来てはいるが,それでも「ワインとい
リシール機能付きボトル缶としては世界で初めて
えば瓶に入ったもの」というイメージは,まだま
となるワイン用ボトル缶を開発,2008年に商品化
だ多くの人が持っていると思われる。しかしなが
した(写真1)。本報では,このワイン用ボトル
ら,瓶は保存容器としては非常に優秀であるが,
缶の特徴と開発に際して得られた知見について,
割れる,重いなど取り扱いには注意が必要であり,
その一端をご紹介させていただく。
持ち運びにも多少不便な面があるのも事実である。
そのため,ワインを缶に充填することができれば,
2. ワイン用ボトル缶の特徴
軽くてしかも割れないことから取り扱いも容易で
2.1 亜硫酸の影響
持ち運ぶのも非常に便利になる。また,輸送コス
ワインをアルミ缶に充填する際,最も問題とな
トの削減による環境負荷の低減にも効果的である
るのがワインに含まれる亜硫酸である。一般的に
多くのワインには醸造の段階で酸化防止などの目
的で亜硫酸またはその塩,例えばピロ亜硫酸カリ
ウムなどが添加されている。この亜硫酸は金属腐
食性が極めて強いため,亜硫酸が添加されたワイ
ンを缶に充填した場合,缶の内面金属が腐食する。
その結果,缶に穴が開くことにより漏洩を引き起
こしたり,また亜硫酸と金属の反応により発生す
る硫化水素の影響で,ワインにとって最も重要な
要素の一つであるフレーバーが悪化する。このよ
うな理由で,これまでワインを缶に充填すること
は困難とされてきた。つまり,この亜硫酸による
影響を何らかの形で防ぐことができれば,亜硫酸
入りのワインを缶に充填することが可能となる。
写真1 商品化したボトル缶ワイン
食品と容器
124
2010 VOL. 51 NO. 2
そこでワイン用の缶を開発す
る上で,亜硫酸が金属を腐食す
ることが問題なのであれば,亜
硫酸が金属に到達する前に何
CaCO3
䊗䊃䊦➧
ᮨᑼ࿑
SO2
SO2䉕᝝㓸
らかの形でブロックするのが良
いのではと考え,缶の内面に使
用するフィルム,接着剤の樹脂
組成や添加剤について,食品衛
䊐䉞䊦䊛
ធ⌕೷
䉝䊦䊚
䊪䉟䊮
SO32-
生性を前提に種々検討を進めた。
その結果,接着剤中に炭酸カル
第3図 炭酸カルシウム二酸化硫黄の反応挙動の予想モデル シウムを添加することで,亜硫酸による缶内面の
子の観察を行った。調査サンプルの模式図を第4
腐食を防止できることが分かった。
図に示す。アルミ板に炭酸カルシウムを添加した
2.2 従来の缶とワイン用ボトル缶の比較
接着剤を厚めに塗布し,高濃度の二酸化硫黄雰囲
ここでは,ワイン用ボトル缶の特徴について述
気に暴露した後,その断面をエネルギー分散型X
べる。まず,従来のボトル缶の断面図を第1図に
線分析(EDS)のマッピングにより観察した。
示す。従来のボトル缶では,亜硫酸由来の二酸化
その結果を第5図に示す。硫黄のマッピング結
硫黄がフィルムや接着剤を通過してアルミにアタ
果から,接着剤の表層部で二酸化硫黄由来の硫黄
ックし,腐食を引き起こす。
元素が留まっている様子が観察できた。この結果
一方,ワイン用ボトル缶の断面図を第2図に示
により,炭酸カルシウムの効果により二酸化硫黄
す。接着剤中に添加された炭酸カルシウムの効果
がブロックできていることが確認できた。ここで,
により,亜硫酸由来の二酸化硫黄の影響を抑制し
硫黄検出部の厚みは2μmとなっているが,
実際の
腐食は起こらない。
缶の場合は接着剤の厚みは2μmよりも非常に薄く
なっている。それにもかかわらず,ワイン用ボト
3. 耐亜硫酸機構に関する考察
ル缶は亜硫酸の影響を受けないことから,炭酸カ
3.1 予想された缶内部での炭酸カルシウムと二
ルシウムの添加による効果が亜硫酸の捕集以外に,
酸化硫黄の挙動
他にもあるのではないかとの考えに至った。
ここでは,亜硫酸に対する炭酸カルシウムの効
3.3 SO2による加工部の接着剤の劣化
果を調査した結果について述べていく。まず,炭
炭酸カルシウムの亜硫酸捕集以外の効果につい
酸カルシウムが亜硫酸に対して効果的であると分
て調査するため,以下の試験を実施した。第6図
かった際,予想された缶内部での炭酸カルシウム
は調査サンプルの概略図と顕微鏡写真である。調
と亜硫酸の挙動について第3図に示す。ワイン中
CaCO3
の亜硫酸は気相部では二酸化硫黄となるが,この
二酸化硫黄がフィルムを通過し,接着剤を通過し
䉝䊦䊚
ធ⌕೷
ようとする際,接着剤中の炭酸カルシウムが二酸
化硫黄を捕集することで,アルミに到達せず,腐
SO2
食が進行しないという現象が缶内部で起きている
と予測した。つまり,炭酸カルシウムは単に二酸
化硫黄の捕集剤として働くと考えた。
3.2 接着剤の二酸化硫黄雰囲気暴露試験
䊙䉾䊏䊮䉫㗔ၞ
その予測を裏付けるため,まず炭酸カルシウム
入りの接着剤が二酸化硫黄をブロックしている様
食品と容器
第4図 調査サンプル模式図
125
2010 VOL. 51 NO. 2
䋼╙䋸࿑䋾
න૏㕙Ⓧᒰ䉍ធ⌕೷ਛ䈱ⓨሹᢙ䋨୘䋩
䋼╙䋶࿑䋾
S
ធ⌕೷ෘ䉂䋺20ʅ䌭
⎫㤛ᬌ಴ㇱ
ෘ䉂䋺⚂2ʅ䌭
⚻ㆊᤨ㑆
第7図 炭酸カルシウム添加量と接着剤中に発生
した空孔の数の関係
第5図 硫黄のマッピング結果
査方法は,アルミ板に炭酸カルシウムを添加しな
分かった。また,空孔の数は暴露時間を長くして
い接着剤とフィルムを貼り付けた材料をプレスに
もあまり変化は見られなかった。
て加工したのち,高濃度の二酸化硫黄雰囲気に暴
亜硫酸による接着剤の劣化と炭酸カルシウムの
露した材料の断面を顕微鏡にて観察した。その結
関係について,実際の缶の場合で考えてみると,
果,接着剤中に空孔ができていることが分かった。
製缶工程においてフィルムがラミネートされたア
この空孔はプレスにて加工を受けた部分のうち,
ルミ材が加工を受けると,品質上は問題ないレベ
圧縮変形を受けた部分に多く発生していた。この
ルの微小なキズやクラックが接着剤に入る。炭酸
結果から,圧縮変形を受けた接着剤が二酸化硫黄
カルシウムがない場合は,亜硫酸の影響によりこ
により劣化し,空孔ができたと考えられる。
の微小なキズやクラックのダメージが進行し,そ
3.4 接着剤の劣化と炭酸カルシウ添加量の関係
の結果腐食に到る。一方,炭酸カルシウムがある
続いて接着剤に添加する炭酸カルシウムの量を
場合は,亜硫酸によるダメージの進行が抑制され,
変化させ,同様の調査を実施した結果を次に示す。
腐食が起こらない。これが,亜硫酸の捕集以外の,
第7図は炭酸カルシウム添加量と接着剤単位面積
炭酸カルシウムのもう一つの効果であると考えら
当たりに発生した空孔の数を調査した結果である。
れる。
は
PHRとはper hundred resinの略で樹脂100に対し
4.まとめ
含まれる炭酸カルシウム量を表す単位である。こ
の結果,変形を受けた接着剤中の空孔の数は,炭
以上,炭酸カルシウムの効果についてまとめる
酸カルシウムの添加量が多いほど減少することが
と,まず一点目が亜硫酸の捕集効果,二点目が加
工された接着剤が亜硫酸によ
って受けるダメージ(劣化)
を抑制する効果であると考え
られる。今後は,得られた知
見をさらに応用,発展させ,
SO2
ടᎿ
新たな技術の開発につなげ
ていきたい。
䉝䊦䊚
䉝䊦䊚
ធ⌕೷
100µm
䊐䉞䊦䊛
ធ⌕೷
䊐䉞䊦䊛
(大和製罐株式会社 総合研
第6図 調査サンプル概略図および顕微鏡写真
食品と容器
126
3
究所第2研究室 佐藤 伸秀)
2010 VOL. 51 NO. 2
1
業
界
ト
ピ
ッ
ク
ス
◇飲料 三年連続マイナスは避けたい
起。新製品でも糖類ゼロの缶コーヒー「驚きの
2010年の飲料商戦が開幕して約1カ月が経過
ZERO」を1月から全国発売した。キリンビバレ
した。昨年の生産量は,最盛期の冷夏とその後の
ッジも1月より「ファイア」から「デミタスショ
天候不順,さらに不況による事業系自販機の稼働
ット」「ブラックスペシャル」をリニューアル発
率低下等もあって前年に比べて3%程度のマイナ
売。アサヒ飲料も微糖缶コーヒー「一番ドリップ
スだった。これは08年に続く二年連続の前年割れ
微糖」を新発売。その他,ダイドードリンコやJT,
であり,二年連続前年割れは20数年ぶり。
ポッカ・明治製菓も続々と新製品を発表。今年は
けん
カテゴリー別では,炭酸飲料は「ゼロ」系の牽
微増ながら成長が期待できそうだ。
引で3年連続プラスとなり,コーヒー飲料はカテ
再浮上が期待される茶系飲料は,本格発表はこ
ゴリー全体ではマイナスも,引き続き無糖・微糖
れからだが,アサヒ飲料が「朝の健康ブレンド茶」
タイプが増加。しかし,成長を続けてきたミネラ
として「十六茶」を2月からリニューアル。コカ
ルウオーターは9年振りに前年実績を割り,茶系
・コーラシステムが今春より「爽健美茶」と「同
飲料も踊り場から抜けだせず,厳しい戦いを強い
・黒冴」に植物由来のプラントボトルを採用して
られた。
リニューアル。紅茶では,キリンビバレッジが2
今年は,経済環境の好転は予測できないだけに
月から「午後の紅茶」より微糖タイプのチルド紅
飲料市場の伸びも期待できそうにない。現状では
茶「微糖ミルクティー」を,特保の「ストレート
良くて「横ばい」というのが一般的な見方。成熟
プラス」には3月から大容量の1.5ℓを,さらに
市場の中で競争が熾烈化することは間違いなく,
砂糖ゼロ・脂肪ゼロの新ミルクティーとして3月
昨年以上に厳しい戦いが予想され,正に「勝負の
から「ヘルシーミルクティー」も発売する。
年」となろう。こうした中で新製品がカギを握る
「環境」で天然水訴求に変化
ことは間違いなく,今後,続々と智恵を絞った新
ミネラルウオーターは,コカ・コーラシステム
製品が発表される。そこで主要カテゴリーの今年
の昨年のヒット商品「い・ろ・は・す」が,今春
の動きを予測してみた。
より植物由来の素材を使ったPETボトル「プラ
炭酸は今年も「ゼロ」系が牽引
ントボトル」を使った新容器でリニューアル品を
炭酸飲料は,昨年は「ゼロ」系のコーラと透明
発売。サントリーも国内最軽量の2ℓPETで製
炭酸が底支えしたが,今年もこれらを中心に新戦
品をリニューアル。価格志向が根強いミネラルウ
略が打ち出されそうだ。「ゼロ」系は,昨年から
オーター市場の中で,「環境」による付加価値で
「三ツ矢」など透明炭酸にも波及。これが市場活
何とか局面を打開しようという思惑がありそう
性化につながることは間違いない。
だ。
缶コーヒーは,最も期待できる分野とあって一
昨年は天候不順の影響もあってマイナスで着地
部メーカーは昨年末から早々と新戦略を発表。コ
したスポーツ飲料は,今年は冬季五輪やサッカー
カ・コーラシステムは,発売35周年を迎える「ジ
のワールドカップなどスポーツイベントが目白押
ョージア」で「エメラルドマウンテンブレンド」
しだけに期待感が大きい。また,機能性飲料は,
のマーケティング活動をさらに強化。「ようこそ
新たな機能性素材が加わる動きもあり,市場活性
ジョージアへ」をキャンペーンテーマに需要を喚
化が期待できそうだ。 (業界誌記者 井上拓郎)
し
ち
訂正とお詫び 弊誌Vol.50 No.11「業界トピックス」の記事中に,
『ホットPET飲料が市場に出回ったのは2000年からで,
先発は伊藤園』
の記述がありましたが,
弊会で調査した結果,
『1999年に株式会社日本サンガリアベバレッジカンパニーが
商品化した』ことが分かりました。訂正するとともにお詫び申し上げます。
食品と容器
127
2010 VOL. 51 NO. 2
業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より
業界の話題
JFA2008年 度FCチ ェ ー ン 統 計 調 査 チ ェ ー ン
減量するプロジェクト「減装(へらそう)ショッ
数・店舗数とも初めて規模縮小
ピング2009-2010」を13日からスタートした。同
(日食 2009/11/18 日付)
プロジェクトは10年11月14日まで行われる。
日本フランチャイズチェーン協会(JFA)がま
容器包装が減量化されている商品を「減装商
とめた「2008年度JFAフランチャイズチェーン統
品」として推奨。無理なくごみを減らす運動「減
計調査」で,72年調査開始後初めてチェーン数,
装ショッピング」を全国に拡大展開するため,流
店舗数が減少した。外食業,サービス業のM&A
通・メーカー・生活者・NPOが一体となった基
(企業の合併・買収),低価格化が影響した。総計
準づくりと店舗オペレーション開発・ノウハウ蓄
は1231チェーン(前年比15チェーン減),23万0822
積に取り組む。
「減装ショッピング」を社会全体の
店(2.1%減)
,売上高20兆8087億円(2.5%増)
。
スタンダードとするには,同運動が実践できる小
小売業は店舗数,売上高とも伸長した。コンビ
売店を増やすことを重要目標としてとらえ,今年
ニエンスストア(CVS)のタスポ(成人識別たば
度は小売での店舗オペレーションを開発し,10年
こ自販機ICカード)効果が売上高を押し上げた。
度以降に多店舗展開を行う基盤を構築するとして
業態別では家電量販店,ドラッグストアが店舗数
いる。
・売上高とも2桁増となった。フランチャイズチ
今回はイオンリテール,コープこうべ,ダイエ
ェーン(FC)化の進展と店舗大型化が伸長要因。
ーの3社の協力により,
「ジャスコつくしが丘店」
ホームセンターも売上高を伸ばした。
(神戸市北区),「コープこうべシーア」(同東灘
外食業はメニューの低価格化,M&Aが減少要
区),「ダイエー甲南店」(同)の3店舗で「減装シ
因となった。その中でアイスクリーム,ハンバー
ョッピング」を実施している。売場の「減装商
ガー,イタリアンレストランは健闘した。サービ
品」に推奨POPなど目印を付けて購入を促すほか,
ス業は理容・美容,学習塾・カルチャースクール
ポスターなど,さまざまなコミュニケーションツ
の成長が続いているが,クリーニングサービス,
ールを用いて,来店客に容器包装が少ない商品の
自動車整備,リース・レンタルサービスはチェー
情報を伝えていく。
ン数・店舗数・売上高とも減少した。
なお,産学連携でマーケティング開発を行う
土方清JFA会長(サークルKサンクス会長)は
「ごみじゃぱん減装研究会」
(09年10月6日設立)
「FCビジネスは昨年,売上高20兆円の大台に乗
には,メーカー6社(花王,キリンビール,日本
った。消費者にFCシステムが受け入れられた証
ハム,ハウス食品,マンダム,レンゴー)が参加
左。健全なFCビジネス発展のために,本部と加
している。
盟店のよりよい関係を創り上げる必要がある」と
述べた。
2009年清涼飲料業界10大ニュース 天候不順な
どで2年連続減産 (日食 2009/12/16 日付)
ごみじゃぱん,
「減装(へらそう)ショッピング」
清涼飲料記者会は9日,09年の清涼飲料業界の
プロジェクト開始 包装ごみ少ない商品推奨
10大ニュースを次の通り決定した。
(日食 2009/11/20 日付)
(1)不況・天候不順で戦後3度目の2年連続生
神戸大学の学生を中心に運営している特定非営
産量減(2)キリンとサントリーの合併交渉等,業
利活動法人(NPO法人)ごみじゃぱん(代表=
界再編活発化(3)ゼロ系がけん引し3年連続で炭
神戸大学大学院経済学研究科教授・石川雅紀氏)
酸飲料伸長(4)海外市場への投資活発,M&A
は,CO2削減社会実現のため,包装ごみの少ない
等海外戦略加速(5)ミネラルウオーター,9年ぶ
商品を選ぶ買い物基準を普及させ,日本のごみを
りに前年割れ(6)PETボトル08年度回収率77.9
食品と容器
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2010 VOL. 51 NO. 2
業界の話題
%,2年前倒しで目標達成(軽量化も順調)(7)
地域色を活かした地サイダー,銘柄増加し市場定
コカ・コーラシステム,植物由来の「プラントボ
着(8)ヒートポンプ自販機の増加,屋内24時間消
トル」商品化 「爽健美茶」に導入へ
灯スタートで温暖化対策進む(9)消費者の安全・
(日食 2009/12/21 日付)
安心意識さらに高まる--消費者庁設立(10)節約
コカ・コーラシステムは17日,サトウキビ由来
志向強まり,PB市場拡大。〈次点〉商品開発強化
の素材を使用した新しいPETボトル
「プラントボ
で豆乳が復調。
トル」を発表した。これは,コカ・コーラの全世
界共通の事業指針“リブ・ポジティブリィ”のも
2009年缶詰業界10大ニュース 企業収益回復,レ
と,持続可能な容器に対する新たな取組みで,石
トルト好調 (日食 2009/12/16 日付)
油由来素材への依存を低減したパッケージとして
缶詰記者会は9日,
「2009年の缶詰業界10大ニ
市場に提供する。日本では2010年3月15日から,
ュース」を選定した。企業収益が全体的に回復し
ブレンド茶「爽健美茶」「同 黒冴」,4月12日か
たことに加え,レトルト食品や魚肉ソーセージの
らミネラルウオーター「い・ろ・は・す」の3品
好調,さらにはツナ缶の低価格化などがトピック
に導入していく。同ボトルを採用することで,年
に挙がった。選定された10大ニュースは次の通り。
間2045㎘相当の原油使用量削減となる見込み。
(1)缶・瓶詰・レトルト食品の見直し人気高まり
日本コカ・コーラの魚谷雅彦会長は「今回の新
企業収益回復
PETボトルの導入を第1ステップとし,システム
(2)レトルト食品生産5年連続30万t台を維持し
全体でサスティナビリティへの活動を積極的に推
08年も記録更新
進していきたい」と方向性を示した。
(3)鰹鮪の原料相場反落と円高でツナ缶詰の低
「プラントボトル」は,サトウキビから砂糖を
価格化再燃
精製する工程の副産物の糖蜜をPET樹脂成分に転
(4)08年の魚肉ソーセージ生産2000年代最高の
換して,最大で30%使用したPETボトル。従来の
6.7万t(前年比8%増)記録
PETボトルと形状,重量,強度など同じ機能を持
(5)沖縄県東村に国産パインアップル缶詰工場
ち,リサイクルも可能。再生可能な植物資源を使
が完成。久しぶりの缶詰国内新工場
うことで,コカ・コーラの社会的責任として持続
(6)08年のユニバーサルデザインフード生産,
可能な社会の実現への貢献を目指す。
21%増で65億円規模に成長
今回,市場へ投入するのは「爽健美茶」の500㎖,
(7)08年度スチール缶リサイクル率88.5%と産構
350㎖,「黒冴」 の500㎖,「い・ろ・は・す」の
審ガイドラインを8年連続でクリア。リデュース
520㎖,280㎖の5アイテム。順次,その他製品へ
率「自主行動計画」2%を2年前倒しで達成
の導入を検討している。「爽健美茶」シリーズは,
(8)08年のカツオ加工品輸入100万箱突破
同ボトルを採用することで“自然の恵みを内側に
(9)日本製缶協会が設立50周年迎える。
「50周年
も外側にも採用した植物生まれのお茶”をコンセ
史」発刊
プトにした「新生・爽健美茶」として大々的にア
(10)日本総合研究所の「食品産業CO2削減大賞」
ピールしていく。
(農水省補助事業)に会員企業が大臣賞,総合食
同ボトルについては,コカ・コーラのグローバ
料局長賞,優秀賞を受賞
ルな展開としてすでにデンマークでは炭酸飲料で
次点として「日本缶詰協会,レトルト食品専用
導入しており,今後,カナダ,アメリカ,ブラジ
サイトを開設。双方向のコミュニケーション推進」
ル,メキシコなどのマーケットへも投入していく
が選ばれた。
予定。コカ・コーラシステムでは,石油由来の素
食品と容器
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2010 VOL. 51 NO. 2
業界の話題
材から,植物由来の素材への切り替えを図ってお
すでに同社はエビ製品の7割をセミIQF凍結品
り,将来的には100%植物由来の素材を原料とし
に切り換えており,最終ユーザーからは解凍の手
たリサイクル可能なPETボトルの製品化を目指
間がかからず使い勝手がよいとの評価を得ている。
している。
水の使用量も約10分の1ですむ。賞味期限は国際
規格である注水凍結品の半分の1年半となるが,
日本水産,小型・軽量化を推進 業界へ協働呼び
必要十分と判断している。また脱水シャーベット
かけ (日食 2009/12/28 日付)
アイスを使用することで,現状の氷使用量を約30
日本水産は食品や水産物の流通過程でのコスト
%減量化する目標を立てている。
削減と環境負荷低減を目指し,ダウンサイジング
(小型化)・ダウンウェイティング(減量化)の推
2010新春の抱負:全国清涼飲料工業会・古平昭
進を社内外に働きかけている。包装資材や物流・
信会長 (日食 2010/01/06 日付)
運輸業,他メーカーなども巻き込み,一企業では
昨年の清涼飲料業界を振り返ってみますと,生
困難な流通全体にわたる最適化を図りたい考え。
産量全体では,最盛期での冷夏,それ以降の天候
旗振り役の酒井久視・事業推進本部副本部長は
不順という悪条件に加え,一昨年来の景気低迷影
「各社トップが社内で先陣を切って指示しないと
響による事業系設置自動販売機の稼働率低下など
進展は難しい。ニッスイが開発したツールや手法
もあり,残念ながら3%程度のマイナス,2年連
は隠さない。業界全体で活用して欲しい」と訴え
続の前年割れとなる見込みです。2年連続での前
ている。
年割れは業界において実に20数年ぶり,第一・二
同社は06年4月から,
(1)製品パッケージサイ
次オイルショックの時期以来戦後3度目のことで
ズ見直しによる外箱空間の最大利用(2)保管パレ
今回の景気低迷の厳しさを如実に物語っているよ
ットサイズに合わせた外箱寸法の適正化(3)製品
うに思います。
小分けトレーを省くことによる包装材コスト削減
主要商品カテゴリー別には,健康志向を反映し
--などに取り組んできた。これら規格統一や小型
て,無糖やカロリーゼロをうたった,いわゆる
化によるダウンサイジング効果として,年間で食
「ゼロもの」シリーズがけん引する炭酸飲料が3
品1億円,水産物5000万円のコスト削減を実現。
年連続の伸長となり,コーヒー飲料においても無
輸配送時の積載効率が高まったことや,倉庫での
糖・微糖タイプは増加となりましたがカテゴリー
パレット数減少と包装材の使用量減が奏効した。
全体では前年割れ,大きく成長を続けてきました
国内のCO2排出量も196t削減した。
ミネラルウオーターも9年振りに微減,茶系飲料
さらに今後,企業の枠を超えた業界の協働で,
も前年割れという厳しい状況なっており,今年の
さらなるコスト削減と環境負荷軽減が可能になる
好天と一刻も早い景気回復,会員各社の商品開発
と主張。
(1)氷の減量化(2)段ボール(外箱)の
・マーケティング活動の強化により市場回復が図
軽量化--によるダウンウェイティングが,輸送エ
られることを切に願うところであります。
ネルギーとCO2排出量を大きく減らすという。特
一方,09年の清涼飲料業界は国内市場の成長鈍
に流通時の鮮度保持に必須と思われる氷の使用を,
化,収益性悪化といった状況を見据え,企業合併,
(1)エビなど注水凍結品をグレーズ水のみで固め
新たな業務提携といった業界再編の動きが活発化
る「セミIQF凍結」にシフトする(2)鮮魚輸送
するとともに,海外市場への投資・M&Aなどの
時の氷は脱水したシャーベットアイス(脱水率85
海外戦略が加速した年となりました。
%・温度マイナス2.4度C)を利用して軽量化す
さて,私ども清涼飲料工業会では,業界の果た
る--ことで効果が大きいと試算する。
すべき責任として,地球温暖化防止対策ならびに
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2010 VOL. 51 NO. 2
業界の話題
容器包装の3R(リデュース・リユース・リサイ
としての意見表明を行っておりますが,今後,消
クル)推進にかねて取り組んでおります。温暖化
費者の皆さまのニーズに十分にお応えすることが
防止対策では,中味生産工程でのCO2削減を継続
できるよう,ホームページ上での情報提供や電話
的に推進するとともに,昨年は自動販売機におけ
などでのお問い合わせへの対応のあり方を,消費
る省エネルギー推進の自主行動計画
(2012年目標
者団体・学識経験者・会員各社のご協力を得なが
:05年対比CO2総量37%削減)策定後の初年度に
ら清涼飲料業界としてのガイドラインとして策定
あたるため,自販機本体での省エネ,屋内設置自
してまいります。
販機の蛍光灯24時間消灯といった活動に最注力い
今年も,経済環境には引き続き厳しい状況が予
たしました。詳細な結果はまだ集計ができており
想されますが,関係諸官庁・団体,報道関係の皆
ませんが,ヒートポンプ機の投入などによる自販
さまのご支援を心よりお願い申し上げます。
機本体の省エネに関しましては,見込みを大きく
上回る成果が得られ,大幅なCO2削減が図られて
伊藤園中央研究所,緑茶カテキンの一種「EGCg」
おります。今年度も屋内自販機の24時間消灯活動
にインフルエンザ感染予防効果を確認
ともどもヒートポンプ機の投入を継続強化し,エ
(日食 2010/01/13 日付)
ネルギー削減目標の早期達成を目指してまいりま
伊藤園の中央研究所は12月下旬,緑茶に含まれ
す。
ているカテキンの一種である「エピガロカテキン
容器包装の3Rにつきましても,素材リサイク
ガレート(EGCg)」が,新型インフルエンザの
ル関連8団体と連携し,2010年を目標年次とした
原因となるブタ由来ウイルスを含めた3種類のウ
自主行動計画の推進に取り組んでおりますが,特
イルスに対して感染阻害作用を示し,ウイルス感
に清涼飲料の容量ベースで63%を占める容器の
染予防に有効であることを確認した。静岡県立大
PETボトルでは,2年前倒しで回収率目標を達成
学薬学部の鈴木隆教授との共同研究によるもので,
するとともに,ボトル軽量化においても最大ボリ
すでに特許出願を行っている。
ュームゾーンである無菌充填容器を中心に確実に
実験では新型インフルエンザウイルスを含む3
成果を積み上げてきております。2010年は3R推
種のウイルス液と緑茶から抽出したEGCgをそれ
進自主行動計画の最終年となりますが,関係団体
ぞれ混合し,これを実験用の細胞に添加して感染
の皆さまにご協力いただきながら容器包装8素材
させた。その後,感染細胞を一定時間培養し,イ
それぞれに関して一層の成果獲得に向け努力して
ンフルエンザウイルスに感染した細胞を数え,感
まいる所存でございます。
染予防における有効性を測定した。その結果,
また,懸案となっております原料原産地表示問
EGCgと混合していないウイルス液を細胞に添加
題では,昨年,気候・収穫量・価格などの変動へ
した場合の感染細胞数を100%として,EGCgを
の対処の必要性から原料調達先の複雑な変更が発
混合した感染細胞は感染率が50%に抑制されたと
生するため,ラベルでの表示は困難であると業界
いう。
訂正とお詫び 先月号(Vol.51 No.1)の新春特集「体細胞クローン技術にかかわるリスク評価とその利用方向」の記
事で誤りがありました。下記のように訂正し,お詫び申し上げます。
P7の第1図とP8の第2図を入れ替えてください(キャプションはそのままです)。
食品と容器
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今月の統計
Υ
(℃)
30
ᖺ
25
2008年
20 ᖺ
ᖺ
2009年
2007年
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10
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0 㸯᭶ 㸰᭶ 㸱᭶
1月 2月 3月
ᖹᖺ್
平年値
㸲᭶
4月
㸳᭶
5月
㸴᭶
6月
㸵᭶
7月
㸶᭶ 㸷᭶ ᭶ ᭶ ᭶
8月 9月 10月 11月 12月
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平均気温の推移(1~12月・東京)
(千㎘)
700
2008年
600
2009年
2007年
新分野
500
発泡酒
400
300
ビール
200
100
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
月別・ビール・発泡酒・新分野別課税数量推移
(千㎘)
700
2008年
ビン
600
2007年
2009年
大樽
500
400
300
缶
200
100
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
ビールの月別・容器別課税数量推移(発泡酒・新分野込み)
食品と容器
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今月の統計
食品と容器
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2010 VOL. 51 NO. 2
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ɜព៥ɝ特集―食品分析技術と品質保証―
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ɜព៥ɝ特集Ⅰ―微生物のストレス損傷とその制御―
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ɜព៥ɝ生活習慣病に配慮した低GIビスケットの検討−
中鎖脂肪(MCT)と機能性糖質甘味料を用いて−
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ɜព៥ɝ特集Ⅱ―DHA・EPAによる疾病予防(DHA・
EPA協議会公開講演会より)―
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ɜព៥ɝ特集―機能性食品素材の近況―
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食品と容器
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ɜព៥〕特集1 ―乳化剤の最新技術動向―
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134
2010 VOL. 51 NO. 2
最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝ内食化で増勢続くレトルト食品市場/低価格化
進行に懸念
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ɜព៥ɝ経済指標の動きと缶詰,レトルト食品の消費の
関連
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ɜព៥ɝ缶詰の生産個数変化
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ɜព៥ɝ特集2 ―加工油脂の役割と利用技術−
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ɜព៥ɝ食品業界の商品開発における官能評価法
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ɜព៥ɝ2009年酒類・食品産業総括/"Wショック・W
シュリンク"が痛手/2009年の酒類・食品産業/企
業統合・事業再編が加速した1年
᧘ᯕᯨ‫ق‬Ꮞឞಏ‫ܫ‬ᶬ51ᶨ²²ᶩ³᷾³¸ᶨ'±º¯²³ᶩᶮ
ɜព៥ɝコスト高続いた輸入ペースト類,一服感見通し
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ɜព៥〕特集―食品業界の未来潮流―
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ɜព៥ɝ09年清涼飲料市場/天候不順,低価格志向浸透
などで前年割れか
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ɜព៥ɝ特集─飲料の新製品開発と原材料・機器─
Beverage Japanᶬ Ɖ336 ´¶᷾·ºᶨ'²±¯²ᶩᶮ
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品の味づくりについて−
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ɜព៥ɝ2010年の食品流通業界展望
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ɜၔԠϜᄘɝ食品産業・食品流通のゆくえ
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の活性化策/有力メーカーの商品政策を探る
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ɜព៥ɝデフレに立ち向かう冷凍食品市場/低価格対応
と新カテゴリー開発へ
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ɜព៥ɝ平成21年の缶詰業界
食品と容器
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135
2010 VOL. 51 NO. 2
最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝ特集―地方発の食品素材・技術の展望―
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ɜព៥ɝ特集―機能性包装の近況―
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ɜព៥ɝ新春特集―世界における“日本食”―
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ɜព៥ɝ特集 ―変革時代の食品包装を考える―
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ɜព៥ɝ新春企画─海外動向─
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ɜព៥ɝ年間特集―食品の品質保証技術―
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ɜព៥ɝバブルから“巣ごもり消費”の時代へ/「男も
料理の時代」12年の変遷/男 の 料 理 に も 広 が っ た
“生活者視点”
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ɜព៥ɝ値下げ合戦が減益に直結した食品スーパー/百
貨店は集客力アップが喫緊の課題
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ɜព៥ɝ特集―食品機械・装置の開発―
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食品と容器
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ɜព៥ɝ改正省エネ法の概要/平成22年度から「事業
者」単位で規制
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ᶨ²³ᶩ³±᷾³¶ᶨ'±ºᶩᶮ
136
2010 VOL. 51 NO. 2
最近の技術雑誌から
○アメリカの飲料企業の運営とサプライチェーン調査
海
外
編
A Peek Inside Your Operations
A.Kaplan and J.Cioletti … ……………………… 40〜42
○2009年のGlobal Packaging Design賞を受賞した
邦文の題名は内容に従って付けてありま
すので,原題と異なる場合があります。
飲料容器 Best in Beverage Packaging
……………………… 44〜45, 48
Beverage Industry(U.S.A.)Vol.100 Oct.(2009)
Food Engineering(U.S.A.)Vol.81 Oct.(2009)
○2009年,アメリカのボトルドウオーター市場
○アメリカの食品工場の現状と将来
Spending Declines Drag Down Bottled Water
State of Food Manufacturing
S.Scott… …………………………………… 14〜16, 18
Production Shifts to Home Meal Market
○競合が激化するコンビニエンスストア
K.T.Higgins… …………………… 48〜50, 52, 54〜55
C-Stores Face More Competition
○最近の充填装置の進歩
S.Theodore… ……………………………… 36, 38, 40
Fillers that Fit the Bill ○飲料容器のラベルの軽量化
W.Labs… ……………………… 67〜68, 70, 72, 74, 76
Labeling Materials Worth their Weight
E.Fuhrman………………………………………
Prepared Foods(U.S.A.)Vol.178 Oct.(2009)
○スポーツ飲料とエネルギー飲料の研究開発現状
○2009年,Spirit of Innovation賞を受賞した
Targeted Performance Ingredients Deliver
製品開発チーム
Results
Spirit of Innovation Awards
E.Fuhrman … …………………………… 46, 48, 50, 52
42〜45
W.A.Roberts Jr. … ……………… 15〜16, 18, 21〜22
The Goodness of Soup
Food Engineering & Ingredients(U.S.A.)
Oct.(2009)
A.Holay……………………… 25〜26, 29〜30, 33〜34
○空中微生物のモニタリング
○エスニック料理と味付けの基本
Something in the Air:
Building on the Basics
Monitoring Airborne Microorganisms
A.Rittman… ………………………………… 47〜48, 50
… …………………………… 6〜8, 10
○食物繊維と健康への役割
○サラダ野菜の微生物汚染
Finding Facts on Fiber
Food Safety in the Field:
S.K.Patil … …………………… 55〜56, 59〜60, 62, 65
Microbiological Contamination of Salad
○子ども向け食品の製造処方
Vegetables
Formulating Kids' Products
………………………………
L.Wisniewski … ……………………… 67, 69〜70, 72
○食品中の抗生物質の分析法
○世界のフレーバーのトレンドと処方
Methods for the Analysis of Antibiotics in
A World of Great Taste
Food
E.Mannie… ………… 75〜76, 78〜79, 81, 83, 85〜86
R.Companyó et al. Beverage World(U.S.A.)Vol.128 Oct.(2009)
………………………………
○世界の飲料企業トップ100
The Detection of Melamine in Milk Products
The Beverage World 100
J.Lampinen ○2009年,スープ販売の原動力は健康志向
……………………………………
食品と容器
11〜14
16〜19
○乳製品中のメラミンの検出
20〜37
……………………………………
137
22〜25
2010 VOL. 51 NO. 2
最近の技術雑誌から
○食品の安全性を向上させるプロテオミクスと
○金属検出とX線装置
マススペクトロメトリー
Seeing the Unseen
Proteomics and Mass Spectrometry:
W.Labs… …………………………………… 33, 35〜39
Driving Food Safety Forward
A.Nasi and P.Ferranti… ……………………
30〜33
Food Manufacture(U.K.)Vol.84 Nov.(2009)
○バイオベース包材と微生物数の制御
○シーフード加工における計量システムと廃棄物削減
Bio-based Packaging Materials:
Trawl for Profit
Control of Microbial Populations
C.Cutter… ……………………………………
R.Addy… ………………………………………
36〜37
Beverage World(U.S.A)Vol.128 Nov.(2009)
○食品中のアロマ成分の検出技術
Food Aroma Compounds:
○飲料企業の環境保護政策調査
Tools and Techniques for Detection
H.H.Jeleń and M.Majcher … ………………
Iudustry Trends:Green, Behind the Scenes
38〜41
…………………………………
The World of Food Ingredients(Neth.)
Oct./Nov.(2009)
Green Packaging:Second Nature
A.Kaplan… ……………………………………
Green Ingredients:Green Revolution
12〜14
H.Landi… ………………………………………
○新しい乳製品の開発現状
Dairy Adapts to the Challenge
57〜58
Food Technology(U.S.A.)Vol.63 Nov.(2009)
M.Hilliam… ………………………………… 21〜22, 24
○「旨み」パワーの利用
○新しいタンパク質の基準
Unleashing the Power of Umami
New Protein Standards
J.B.Marcus… ……… 22〜24, 27〜28, 30, 32, 34〜36
M.Lipp et al. ………………………………… 36, 38〜39
○シーフード消費の健康効能
○新しい加工技術の役割
Communicating the Net Benefits of Saefood
Role for Novel Processing
Consumption
H.de Vries … ……………………………… 46, 48, 50
M.Harris et al.… ………………………………
○より健康的なスナック
38〜44
○今日のニーズやトレンドに合ったテクスチャーの
Healthier Snacking
改善 51〜53
Hooked on a Mouthfeeling
○フラボノイドの抗酸化能
D.E.Pszczola… ………………………………
The Real Power of Flavonoids
47〜57
○糖尿病予防に有効な素材
C.Kay … …………………………………… 94, 96〜98
Defeating Diabetes
○科学的に証明された栄養と機能性食品
L.M.Ohr…………………………………………
Evidence-Based Nutrition
A.Shao… ……………………………………
46〜47
○環境に優しい飲料の開発
Sweet Success Stories
T.Barker … ……………………………………
27〜29
○環境に優しい二次包装とインク
○飲料と甘味料
S.Marshall … …………………………………
67〜68
59〜62
○水分量と水分活性の測定
103〜105
○ビタミンDの新しい可能性
Measuring Moisture Content & Water Activity
New Vitamin D Potential
N.H.Mermelstein………………………………
C.Davis………………………………… 106, 108〜110
○パイロットプラントの課題
64〜68
The Challenges of Pilot Plants
Food Engineering(U.S.A.)Vol.81 Nov.(2009)
J.P.Clark… ………………………………… 70〜71, 74
○食品加工とエネルギーの効率的使用
○板紙容器のリサイクル
Get Smart About Energy Usage
Paperboard Package Recycling:A Success Story
K.T.Higgins… ………………………… 26〜28, 30, 32
A.L.Brody… ……………………………………
食品と容器
138
72〜74
2010 VOL. 51 NO. 2
がいるので驚いたが,人間では刈り取りにくい場
野菜・果物を巡って
所の雑草を牛が食べてくれるので,土手もきれい
に刈り込まれた状態になるとの説明を聞いて,な
るほどと感心したことである。家畜と人間が自然
(第十四話)
ニュージーランドと
キウイフルーツ
の中で具合よく共存しているのである。
環境がよいので日本からの永住者も増えている
とのことで,特に,定年を迎えたご夫婦が移住さ
れるとのことであった。
訪ねた研究所はこじんまりした清楚な建物であ
ったが,周囲に広いキウイフルーツ畑を所有して
吉田 企世子
いて,品種改良,栽培管理,その他種々の研究が
(女子栄養大学名誉教授)
意欲的になされていた。
有機質肥料の施用により農薬は殆ど散布しない
という栽培方法をとっていたが,畑一面がアルミ
製の敷物で覆われていた。太陽熱を反射すること
今では日常的な果物となっているキウイフルー
により果実の光合成を促進すること,また雑草が
ツであるが,わが国で一般的に流通したのは比較
生えない環境がつくられているとのこと。大変優
的新しく,日本食品標準成分表(食品成分表)に
れた方法であると感じた。日本ではこのような方
その成分値が掲載されたのは昭和57年(1982年)に
法が試みられているのかどうか。
発表された四訂食品成分表からである。当時は主
研究所に展示されていたキウイフルーツを見て
にカリフォルニアからの輸入品であったが,現在
その品種の多いことをはじめて学んだ。その頃,
はニュージーランドからの輸入量が圧倒的に多い。
日本では果肉が緑色のヘイワードという品種が主
わが国でも年々生産量が増加しており,愛媛,福
で,黄色果肉のゴールドが少々流通し始めたとこ
岡,和歌山,神奈川,静岡,山梨の各県が主な産
ろであった。
地となっている。12月から4月頃は国内産が多く
サイズの小さいものから大形のもの,果肉の色
店頭に並ぶ時期である。ニュージーランドと日本
が黒紫色や紅色がかったものなど,30種程度の品
は気候が逆なので,生産される季節が異なり,日
種を見学した。しかし,実際に生産者が栽培して
本のキウイフルーツ生産とはあまり競合しない点
いるのは緑色か黄色果肉の品種が主であった。
では具合のよい果物なのである。
キウイフルーツはマタタビ科マタタビ属の植物
少々古い話になるが,2001年の春にニュージー
で,原産は中国の南部である。したがって,別名
ランドでの栽培状況を見学する機会を得て,5日
チャイニーズ・グーズベリーともいわれる。1904
間ほど滞在した。成田空港から約10時間の飛行時
年に中国を訪れた女性旅行者によってキウイの種
間であったが,同行した友人との会話が楽しく,
がニュージーランドに持ち込まれ,農夫達によっ
一睡もすることなく喋り続けた記憶がある。オー
て品種改良されて現在のキウイの原種が誕生した
クランドからバスでキウイフルーツ研究所に向か
と伝えられている。キウイフルーツの外観がニュ
う途中の田園風景が美しく,羊や牛が多く放牧さ
ージーランドの国鳥であるキウイに似ていること
れており,ゆっくり草を食べている様子がのどか
からこの名が生まれたというのが定説である。ニ
であった。しかし歩いている人には全く逢うこと
ュージーランドの動物園でキウイ鳥を見てなるほ
がなかったのは少々寂しい感じがした。ガイドさ
どと感じたことである。
んの話によると,この国では人間より羊,牛の数
国際的に生産量が最も多いのがニュージーラン
の方が多いとのこと。かなり急斜面の土手にも牛
ドであると思っていたところ,一位はイタリアで
食品と容器
139
2010 VOL. 51 NO. 2
世界の36%を占めていることを知って意外に感じ
ている。
た。ニュージーランドが二位で世界の27%である。
タンパク質分解酵素のアクチニジン活性が強い
続くチリが13%,フランス,ギリシャなどの生産
のもキウイフルーツの特徴である。この点を理解
量が,ニュージーランドの20%弱であり,日本は
していないと思わぬ失敗をすることになる。ある
10%程度の生産量である(2007年)。
給食施設の栄養士がゼラチンで凝固させたゼリー
キウイフルーツは優れた栄養成分を多く含有し,
にスライスしたキウイフルーツをたっぷりのせて
カリウム,葉酸,ビタミンC,ぺクチンその他の
美しく仕上げたという。ところが,時間が経過し
食物繊維などの含有量は果物の中でも多い方であ
たらゼリーの表面が溶けてしまったとのこと。専
る。
門家としての知識不足が非難されたそうである。
四訂食品成分表に始めて掲載された成分値と現
ゼラチンはタンパク質であるから,アクチニジン
在使用されている五訂増補食品成分表の値を比較
によって部分的に分解されてしまったのである。
してみるとカリウム,ビタミンC共に後者の方が
スライスした果肉を沸騰したシラップ液の中で少
少なく,食物繊維も僅かではあるが少なくなって
し加熱し,酵素を不活性化して用いれば問題なか
いる(四訂では葉酸は測定されていない)。この原
ったのであるが。また,ある小学校で給食のデザ
因が何によるのかは推察が困難である。
ートに出されたヨーグルトが苦いということで問
ニュージーランドから輸入されている品種ヘイ
題になった。ヨーグルトには小さくカットしたキ
ワードとゴールドの成分を比較分析したことがあ
ウイフルーツが加えられ美味しく仕上げたつもり
るが,ヘイワードよりゴールドの方がカリウム,
なのである。加えて直ぐに食べるのであれば問題
ビタミンC,糖分の含量が多い。特にビタミンC
ないが,学校給食では調理してから供食するまで
は前者の69mg / 100gに対して後者は103mgという
に時間がかかるので,牛乳タンパク質の一部が分
結果であった。酸味成分である有機酸含量は同程
解して苦味のあるペプチドが生成されたのである。
度である。味わってみると明確であるが,ゴール
酵素活性の強い食品を扱う場合には相応の知識
ドの方が甘味は強い。
が必要になる。
キウイフルーツは果肉が硬いうちに収穫し,追
ニュージーランドの夜空は満天の星で素晴らし
熟して軟化したところで食用とするが,ヘイワー
い眺めであった。是非,南十字星を見たいという
ドは追熟中のビタミンC増加が大きいという特徴
ことで,クルーズで夜の海へ出掛けた。望み通り
がみられた。食べ頃を把握するには果実の上下を
に南十字星を仰ぎ見て幸せを感じたことである。
かるく押した時にやや柔らかく感じた時期とされ
立春とは名ばかりの厳しい寒さ
我が家の犬は,エアコンの下や窓越しの日だまりが定
が続いています。2月の季語は早
位置です。暖かい春の訪れを望んでいることは確かです
春,春めく,春浅し,春遅し,春
が,春の気配を感じているかは不明です。 (一)
祭,春寒等,春が付いたものが数多
く見られ,早く暖かい春が来るのを
食 品 と 容 器 第 51 巻 第 2号
望んでいる様子が感じられます。
FOOD & PACKAGING 平成22年2月 1 日発行
この寒さの中でも,花木は敏感に春の気配を感じ取っ
発行所 缶
ている様です。私は毎年2月になると,新宿御苑へ寒桜
を見に行くのを楽しみにしています。さすがにこの寒さ
定 価
1部 800円
年間 8,000円
(送 料 共)
では,宴会をしている人はいませんが,カメラ撮影の人
々が,数本の桜を囲んでラッシュ状態です。ソメイヨシ
ノの開花した土日には,当然ながらお酒を持って花見に
−禁無断転載−
行きますが,八重桜の時期の方が人も少なく,また珍し
編 集 人 発 行 人 印刷所
飯
十
塚
時
秀
正
夫
義
大和サービス株式会社
乱丁・落丁本はお取り替えいたします。
い緑色の花の桜もあり好きです。
食品と容器
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