Title ラグビーフットボールの攻撃方法について : ゲーム分析を 中心として

Title
ラグビーフットボールの攻撃方法について : ゲーム分析を
中心として
Author(s)
松岡, 敏男
Citation
[岐阜大学教養部研究報告] no.[34] p.[337]-[345]
Issue Date
1996-09
Rights
Version
岐阜大学教養部保険体育研究室 (The Faculty of General
Education, Gifu University) / 岐阜経済大学 / 市邨学園短期大
学
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/3981
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
岐阜大学教養部研究報告第34号 ( 1996)
337
ラ グ ビ¬ フ ッ ト ボールの攻撃方法 につ いて
ゲーム分析 を 中心 と して
松岡敏男, 福地和夫 1), 寺田泰人2), 岡本昌也 3), 野々村博 4)
保健体育研究室
(1996年 6 月28日受理)
Game A nalyticaI Studies on A ttacking
Play in R ugby F ootba! 1
つ
Toshio M A TU OK A , K azuo F U K U CHI , Y asuhito TE R A D A
M asaya OK A M OT O and H iroshi N ON OM U R A
I .
緒
言
近年, ラ グビーゲームで は, ス ピーデ ィ ーな動 きの中で, 展開ラ グビーを指向 し, プ レー
の継続性 を重要視 し て きた。 また, ゲームの流れを良 く す るす るためにボールを 3個使用す
る シス テ ムを行っ た り, ルール的に も, ラ イ ンア ウ ト で はボールが横切 っ た時点 よ り 自陣側
であ れば, どの地点で も ボールを投げ入れる こ とがで きる よ う にな っ た。 また, 反則時で は
味方の選手が前方 に残 っ て いる状態であ っ て も オ フ サイ ド と な らず, 攻撃す る こ とが可能に
なっ た。 このよ う な こ とで各チームが積極的な攻撃を行 う よ う にな り, 戦術の上に も大 きな
影響 を与 える よ う にな っ て きた。
最近の傾向 と して, どのよ う な場所で も素早 く 攻撃で きる機会があれば速攻 を行 う チ ーム
が増 え, 各チ ームの速攻が 目立つ よ う になっ て きた。 ある程度決ま り切っ た攻撃を行 う よ り
も, 積極的に攻撃を行 う こ とがラ グビーの技術の発展に繋が り, ラ グビーを よ り魅力的なス
ポー ツ に して行 く よ う に思われる。
本研究ではこのよ う な積極的プ レーを指導す る立場 にある教員が集まっ て行 う 全国教員大
会のゲームと国民体育大会の少年の部のゲーム (高校生) の攻撃方法を主と して分析 し, 近
年の攻撃方法の変化 をみよ う と した ものである。
f.
方
法
分析方法は, 対象のゲームを ビデオに撮影 して分析 を行っ た。 第12回全国教員大会の試合
1) 岐阜経済大学 2) 市邨学園短期大学 3) 愛知工業大学 4) 大阪経済大学
338
松 岡敏 男 ・ 福 地 和 夫 ・ 寺 田泰 人 ・ 岡本 昌 也 ・ 野 々村 博
( 時間は30分ハーフ 一決勝は35ハーフ ) と, 愛知国民体育大会少年の部 ( 高校生) を対象 と
し た。 国体の決勝戦 を除 き, ゲームの全て を収録 した。 試合の結果が50点以上開いたゲーム
は分析の対象外 と し, 最終的に教員大会 9試合, 国体11試合の分析を行っ た。
分析 の観点は下記の 3項 目を 中心 にま とめた。
表1 攻 撃
L. 0
勝
教
員
-
者
SD
敗
N
X
-
者
SD
N
X
勝
高
校
N
X
-
者
SD
敗
N
X
-
者
(
SD
( 回数)
P ( FK )
S
25分換算
25分換算
170 (53)
141
19.3(6)
15.7
2. 7( 1. 1)
76 ( 5)
63.0
8.6(0.6) 7.0
K. 0
25分換算
74(4)
2. 6
141 (45)
12.8(4. 1)
3.9(2.0)
115 ( 5)
10. 5(0.5)
130 (35)
11.8(3.2)
3.9( 1.5)
UO( 4)
10.0(0.4)
66(3)
21.3
2.9
1. 3
6. 8
2. 8
120 (45)
100
103 ( 7)
85. 1
13.4(4.9) 11. 1 1L 6(0.8) 9.5
0.8
2.6
3.1( 1.9)
4.8
2. 4
10
13(2)
55.6
7. 4
6. 1
1. 1
1. 3
54.8 67(63)
7.4
F. C
25分換算
61.4 25(23)
8. 3
D. 0
6. 2
17( 1)
11
1. 2
1.4
134( 16)
35
3. 2
12. 2
2. 7
4. 0
0. 9
123( 17)
11. 2
57
5. 2
4. 8
1. 5
2. 8
12
8
13
15
) 内は敵ボールを取っ た数, N は総数 (教員大会は 9試合の合計, 国体は11試合の合計) , X
は一試合のの平均回数
*
L .0 : ラ イ ン ア ウ ト
S : ス ク ラ ム
D .0 : ド ロ ッ プ ア ウ ト
表2
攻撃
方法
地域
ラ の
イ攻
詐
ド
宵
隷
詐
畠
尹
言
K .0
: キ ッ ク オ フ
ラ イ ンア ウ ト , ス ク ラ ム, ペナルテ ィ か らの攻撃方法
SH , SO の
キック
C. T . B 以 下
のキ ッ ク
パス攻撃
FW の攻撃
(サイ ド攻撃)
ミ
( 回数)
ス
自
敵
自
敵
自
敵
自
敵
自
敵
勝者
敗者
13
11
18
10
2
8
1
20
0
17
5
2
4
13
0
3
37
18
44
54
高
校
勝者
15
4
2
0
8
9
1
0
7
10
23
敗者
8
3
23
U
18
24
35
45
攻撃 SH , SO の
方法 キ ッ ク
地域
自
敵
C. T . B 以 下
のキ ッ ク
21
パス攻撃
FW の攻撃
ミ
(サイ ド攻撃)
自
敵
自
敵
4
4
2
自
敵
自
敵
教
員
勝者
敗者
22
11
1
1
26
16
5
3
5
7
15
17
高
校
勝者
敗者
34
33
20
14
1
0
0
6
13
攻撃 SH , SO の
方法 キ ッ ク
地域
自
敵
ぺ攻
詐
P : ペ ナ ル テ ィ
F .C : フ ェ ア ーキ ャ ッ チ
教
員
ス攻
の
回 数
教
員
勝者
敗者
19
23
17
4
高
校
勝者
敗者
40
36
17
10
0
C. T . B 以 下
4
n
ス
3
5
23
27
1
16
2
7
17
5
14
2
10
パス攻撃
のキ ッ ク
FW の攻撃
(サイ ド攻撃)
自
敵
ミ
ス
P
G
自
敵
自
敵
自
敵
1
0
2
6
1
11
0
0
0
0
1
1
5
12
0
0
19
17
0
0
0
0
3
4
6
5
5
9
38
33
0
0
2
4
19
20
ラ グビー フ ッ ト ボールの攻撃方法について
ー ゲーム分析 を中心 と して ー
339
尚, 教員大会の決勝戦は35分ハーフ で あるが統計上30分ハーフ で計算 して も処理上問題な
い場合は30分ハーフ に換算 し て統計処理 した。
分析点
1. 攻撃回数及び攻撃方法 について
(1)
ラ イ ンア ウ ト , ス ク ラ ム↓ペナルテ ィ 等か らの攻撃回数
(2) 攻撃方法について
2.
ト ラ イ にな っ た ケ ース の分析
3. 速攻の有効性 について
Ⅲ。 結
1.
果
攻撃回数及び攻撃方法について
ラ イ ンアウ ト, ス ク ラ ム, ペナルテ ィ 等か らの攻撃回数 ( 1次攻撃の回数) を ま と めた も
のが表1である。 /
(1) 攻撃回数
ラ イ ンアウ トからの攻撃回数は教員の場合, 勝者の一試合平均が15.7回 ( 25分ハーフ計算)
と一番多 く 行われ, 敗者が11.1回であっ た。 高校の場合, 勝者の一試合平均が12.8回であ り,
敗者が11.8回で あ っ た。
ス ク ラムからの攻撃回数は, 教員の場合, 勝者の平均が7.0回 ( 25分ハーフ計算) , 敗者が
9.5回であ っ た。 高校の場合, 勝者の平均が10.5回で あ り, 敗者が10.0回で あ り , 高校大会の
方が両者 と も教員よ り多 く 行われた。
ペ ナルテ ィ からの攻撃は, 教員の場合, 勝者の平均が6.8回 ( 25分ハーフ計算) , 敗者が6.1
回で あっ た。 高校の勝者の平均が12.2回で あ り, 敗者が11.2回で あ り, 高校の方が両者 と も
に教員よ り多 く 行われた。
その他 ( キッ ク オフ,
ドロ ッ プアウ ト , フ ェ アキャ ッ チ ) からの攻撃は, キ ッ ク オフの場
合, 教員の勝者の平均が2.4回 (25分ハーフ計算) , 敗者が6.2回で あ っ た。 高校 の場合, 勝
者の平均が3.2回で あ り, 敗者が5.2回で あっ た。
(2) 攻撃方法
ラ イ ンアウ ト, ス ク ラ ム, ペ ナルテ ィ 等か らのそれぞれの一次攻撃方法について ま と めた
ものが表 2 で あ る 。
ラ イ ンア ウ トか らの攻撃方法は, 自陣で は, 教員の場合, 勝者, 敗者 と も にキ ッ ク攻撃が
多 く , パス攻撃やフ ォ ワー ドによる攻撃は少なかっ た。 高校の場合, 勝者, 敗者 と もにキッ
ク攻撃が多 く 行われたが, 同様にパス攻撃やフ ォ ワー ドによる攻撃 も多 く 行われた。
敵陣では, 教員の場合, 勝者, 敗者と もにパス攻撃が多 く 行われたが, フ ォ ワー ドによる
攻撃やキッ ク攻撃 も多かっ た。 それに比べて高校の場合は勝者, 敗者 と もにパスやフ ォ ワー
ドに よる攻撃が主体 と して行われ, キ ッ ク攻撃が少なかっ た。
ス ク ラムからの攻撃方法は, 自陣では, すべて においてキ ッ ク攻撃が多 く 行われた。 敵陣
で は, 教員はパス , キ ッ ク , フ ォ ワー ド に よる攻撃が同 じ割合で行われていた。 高校 の場合
は, 勝者, 敗者 と もにパス攻撃が一番多 く 行われ, 次にキッ ク攻撃, そ して フ ォワー ドによ
る攻 撃で あ っ た。
340
松 岡敏 男 ・ 福 地 和 夫 ・ 寺 田泰 人 ・ 岡 本 昌 也 ・ 野 々村 博
ペナルテ ィ , フ リ ーキ ッ ク の攻撃方法は, 自陣で は, 教員 と 高校の勝者, 敗者 と も にキ ッ
ク攻撃が多 く 行われた。
敵陣で は, 教員がキ ッ ク攻撃やペナルテ ィ ゴールが多かったのに対 して高校の場合は, キッ
ク攻撃よ り も, フ ォ ワー ドを中心 と した攻撃が多 く 行われた。
ペ ナルテ ィ ゴールは教員が反則全体の26.7% の割合で行 われ, 成功率は59.5% で あ っ た 。
回数で は勝者, 敗者 に差がなかっ た。
高校の場合 は反則全体の16.4% の割合で行われ, 成功率は59.0% であっ た。
キッ ク オフ,
ド ロ ッ プ ア ウ ト , フ ェ アーキ ャ ッ ヂか ら の攻撃方法は再獲得の割合が少な く ,
相手側の攻撃か ら始 まる ケースがほと ん どで あ っ た。
2次攻撃 ( モ ール& ラ ッ ク後の攻撃) を ま と めたのが表 3 である。
教員の場合, 自陣での攻撃はキッ クが多 く , 敵陣で は勝者, 敗者と もにパス攻撃やフ ォワー
ドを中心 と した攻撃が多 ぐ行われた。
高校の場合は自陣で は教員同様キッ ク攻撃が多 く , 敵陣で は勝者, 敗者 と もにパス攻撃や
フ ォ ワー ドを中心 と した攻撃が多 く 行われた。
表3
2次, 3 次攻撃方法
( 回数)
2
攻撃
SH , SO の
C. T. B 以下
方法
キ
の キ ッ ク
ッ
ク
パス攻撃
FW の攻撃
(サイ ド攻撃)
地域
自
敵
自
敵
自
敵
自
敵
教
勝者
7
21
1
2
1
37
2
39
員
敗者
7
6
2
0
0
9
1
13
高
勝者
19
16
0
0
4
37
9
62
校
敗者
n
13
1
2
7
40
3
35
トラ イ にな っ たケ ース の分析
(1卜 攻撃現象について
ト
ト ラ イ になっ た時の攻撃開始時点で分類 を行 っ たのが表 4- 1, 2 である。
教員の場合, 9試合の合計が59回, 高校で は11試合の合計が53回の ト ラ イ があ っ た。 教員
の ト ラ イのケース はラ イ ンア ウ トからが多 く (合計27回) , 高校ではペ ナルティ か ら の ト ラ
イが多かっ た (合計18回) 。 次に多かっ たのは, 教員, 高校 と もにス ク ラー
ムで あ っ た。 これ
らは攻撃の開始時点で あ り, ラ イ ンアウ トやス ク ラ ム。の後にモ ール & ラ ッ ク が形成 さ れ,
その後に ト ラ イ になっ た場合 も最初の攻撃プ レー現象で処理 した。
表4- 1
レ
ト ラ イ場面の攻撃開始時点
卜
( 回
その他
数
ライ ンア ウ ト
スク ラム
教
勝者
25
15
7
0
1
48
員
敗者
2
2
6
0
1
11
高
勝者
9
11
13
3
3
. 39
校
敗者
2
6
5
0
1
14
ペ ナルテ ィ
キッ ク オフ
合
計
)
ラ グ ビー フ ッ ト ボールの攻撃方法 につ いて
表4 - 2
ー ゲーム分析 を中心 と して 一
341
ト ラ イ にな っ たケース
( 回数)
教
員
勝者
LO
一展
S
開
勝者
13
1
1
FW の攻撃等
5
1
4
2
キッ ク攻撃等
7
0
4
0
一展
開
FW の攻撃等
キ ッ ク攻撃等
P
高 二校
敗者
敗者
一展
開
0
2
2
6
4
7
0
3
2
6
0
2
0
1
0
0
0
FW の攻撃等
1
1
2
0
ク イ ッ ク攻撃
5
5
10
5
キッ ク攻撃等
0
0
1
0
1
1
3
1
その他
(2) 攻撃方法 につ いて
=
勝者の場合, 教員のラ イ ンアウ トではオープ ンへの展開による ト ラ イが多かっ た。 ス ク ラ
ムで は, フ ォ ワー ドの攻撃やキ ッ ク攻撃が多かっ た。 ペナルテ ィ では, 速攻か らの ト ラ イが
多かっ た。 高校の場合は, ラ イ ンアウ ト で はキ ッ ク攻撃やフ ォワゞ ドの攻撃による ト ラ イが
多 く , ス ク ラムでは, オープンへの展開による ト ライが多かった。 ペナルテ ィ では, 速攻か
らの ト ラ イが多かっ た。
◇
敗者の場合は, 教員で はペナルテ ィ か らの速攻の ト ラ イが 5回と多かっ た。 高校の場合は,
スク ラ ムからのオープ ンへの展開による ト ラ イが多かっ た。 また, ペナルテ ィ からで は, 速
攻の ト ラ イが 5 回と多かっ た。
¥
3。 速攻の有効性 について
速攻 について ま と めた ものが表 5 であ る 。
(1)
回
数
っ
教員で は, 合計46回行われ, 勝者チ ー ムが24回, 敗者チ ームが22回で あ っ た。 ペ ナルテ ィ
やフ リ ーキ ッ ク か らの速攻が38回で あ り , ラ イ ンア ウ ト か らの速攻は 8 回で あ っ た。
表5
速攻 について
ニ
回
ニ
数
ゲ イ ンラ イ ン
有効
損失
撒
次 の攻 撃権
有
無
ト ラ イ に結び
付 い た 回数
教
勝者
24
24
0
15
9
5
員
敗者
22
21
1
13
9
5
高
勝者
敗者
60
57
3
41
19
12
55
50
5
31
24
4
校
)
342
松 岡敏 男 ・ 福 地 和 夫 ・ 寺 田泰 人 ・ 岡本 昌也 ・ 野 々村 博
高校で は, 合計115回行われ, 勝者チ ームが60回, 敗者チ ームが55回で あっ た。 ペナルテ ィ
やフ リ ー キ ッ ク か らの。
速攻が106回で あ り, ラ イ ンア ウ ト か らの速攻は 8 回であ り, フ ェ アー
キ ャ ッ チ か ら 1回行われた。
(2) 有 効性について
ゲイ ン ラ イ ンを突破 し た攻撃につ いて は有効 と し , 突破出来なかっ た ものについて は損失
と し た。
教員の場合, 46回速攻 を行 っ て ゲイ ンラ イ ンを突破出来なかっ たのは 1 回で あ り, 速攻で
はほと ん どがゲイ ンラ イ ン を突破 して いた。 また,
ト ラ イ に結 びついたケース は勝者, 敗者
と も 5 回 で あ り , 合計10回で あ っ た。
高校の 場合, 115回速攻 を行 っ て ゲ イ ン ラ イ ン を突破 出来なかっ たの は 8 回で あ っ た 。 ト
ラ イ に結 びついたケース は勝者が12回で あ り, 敗者が 4 回で あ り, 合計16回で あっ た。
速攻 を 行 っ たが, 何 らかの理由で , ゲームが中断 した場合, 速攻 を行 っ た側 に次の攻撃権
があ るか ないかを調べた。 教員の場合, 勝者が24回速攻 を行い, 次の攻撃権 を得たのが15回
であ り, 相手ボールか らの攻撃で始 まっ た場合が9回で あ っ た。 敗者の場合は22回速攻を行っ
た中で攻 撃権がある場合が13回で あ り, 攻撃権 を失っ た場合が9回で あっ た。
高校の場合, 勝者が60回速攻 を行 っ た中で41回が次の攻撃権があ り, 19回が相手ボールか
らの攻撃 で始 まっ た。 敗者の場合は, 55回の攻撃回数中で31回が次の攻撃権があ り, 攻撃権
を失 っ た 場合が24回で あ っ た。
全体で は速効か ら ト ラ イ に結 び付いたケース は26回あ り,
IV.
1.
考
ト ラ イ全体の23.0% で あ っ た。
察
攻撃 方法について
勝者 と敗者の攻撃回数を比較 した場合, 勝者チームはラ イ ンアウ トからの攻撃回数が多
かっ た。 このこ と は敗者チ ームにと っ ては押 し込まれている場合が多 く , 地域を挽回するた
めにキ ッ ク によっ て外に蹴 り出すためにラ イ ンアウ トからの再開が多 く なっ た と思われる。
ス ク ラ ム で は高校は一試合平均20回とかな りの回数で組まれていた。 勝者 と敗者の回数には
差がなか っ たが, 国民体育大会 とい う全国レベルの大会であっ て もプ レヤーに多 く のミ スが
あ っ た り , また レ フ リ ー もモ ールや ラ ッ ク で の早めの処置 を し て いた結果 1) に よ り増 え た と
思 われ る 。
ペナルテ ィ は高校の場合, 一試合平均23回と多 く 起こ っ た。 これは速攻な どで攻め られ,
10メ ー ト ル後方に戻 り切れなかっ た り, 同 じ よ う な反則 を繰 り返すために再度反則 を取 られ
たケース が多 く , 不注意による こ と も原因している と思われる 7)。 過去のゲーム分析 と 比べ
た場合, 社会人はラ イ ンア ウ トからの開始が多 く な り, ス ク ラ ムの回数が減少 1) して きて い
る。 また 毎年のルール改正のために十分にルールを理解 していない と思われる よ う な反則が
増え, 反則数は増加傾向3)7) にある と思われる。 こ のこ と はプ レヤーだ けの責任 と は言 え な
い面 もあ り, 指導者のルール研究 も課題 と思われる。
ラ イ ン ア ウ ト, ス ク ラ ム, ペ ナルテ ィ か ら の攻撃方法は, 自陣か らの場合 は教員 ・ 高校生
の勝者, 敗者の全て に共通 し S. H や S. 0 に よる キ ツク攻撃が主体 と な っ ていた。 地域 を挽
回 し, 敵 陣に入 り, そ こか ら次の攻撃を行 う ための手段 と考え られる。 しか し, 今回の分析
ラ グ ビー フ ッ ト ボールの攻撃方法について
ー ゲーム分析 を中心 と して -
343
で は, 高校の場合 は自陣か らで もパス攻撃や フ ォ ワー ド を中心 と した攻撃を行い, キ ッ ク攻
撃は比較的少なかっ た。 攻撃 を継続 して ト ラ イ を取 りたい と積極的にパス攻撃 を行っ た もの
と 思 われ る ○
゛
。・
・・ r
¶
。
敵陣で は, 教員の場合 は勝者, 敗者共 にラ イ ンア ウ ト , ス ク ラ ム, ペ ナルテ ィ か ら の攻撃
はパス攻撃, フ ォ ワー ド による攻撃そ し て キ ッ ク攻撃 を組み合わせて行七
) て いた。 また, 安
ケ平の研究8) では大学生の場合キッ ク を用いた攻撃が多い と述べている。
高校の場合 は, 勝者 と敗者の攻撃はパス攻撃, フ ォ ワー ド による攻撃が中心で あ り, キ ッ
ク に よる攻撃が少なかっ た。 さ ら にペナルテ ィ ゴールを狙 え る敵陣であ っ て も, ペナ ルテ ィ
ゴールを狙わず,
ト ラ イ を と りにいったケ= スが多かっ た 2)。
教員の場合, 自分 自身の数多 く のゲームを行っ た経験, また多 く のゲームの観戦 している
経験 よ り, 地域 に合わせた効率の良い攻撃 を行い, キ ッ ク を旨く 利用 し, 出来るだけ楽にゲー
ムを進めよ う と していた と思われる。 し か し, こ のよう な攻撃方法は今まで行われて きたゲー
ムと ほと ん ど同 じパ タ ー ンで あ り, 次に行われる プ レーの方法 も比較的予測が立てやす く ,
ゲーム内容 と して は魅力的で ない と思われる。 それに比較 して高校の攻撃方法は自陣, 敵陣
の区別な く , ボールの継続 を重視 し, パス攻撃 を主体 と したゲーム展開を行 っ て いた。 ツ 部
には勝利 を強 く 意識 し, 教員 と 同様なゲームを行 っ て いたチ ーム もあ っ た。 攻撃 を行 う 時に
早 く 攻撃す る必要がある場合は積極的に行 う こ と は良いが, なにがなんで もj早 く 攻撃 しなけ
ればと行っ たプ レー,も多 く 見 られ, 速攻 による ミ ス も多かっ た。 プ レーを選択する時に前後
のプ レーを頭に入れ,
ト ラ イ を取るために最良の攻撃方法を選択すべ き適格な判断を行 う 必
要がある と思われた。
2。
ト ラ イ に な っ たケ ースの分析
犬
ト
ト ラ イ になっ た攻撃開始時点では一番多かっ たのが ラ イ ンア ウ ト で あ り,
ト ラ イ全体の
35. 7% で あ っ た。 攻撃側に と っ て は防御 と の間隔が20メ ー ト ル以上あ り, タ イ ミ ング良 く ボー
ルが獲得されればよ り多 く のチ ャ ンスになるためだ と思われる。4)
十
1
ラ イ ンアウ トからの攻撃方法は, 教員はオープ ンへの展開による ト ラ イ ( 25.4% ) で あっ
た。 しか し, 高校の勝者の場合はオープ ンに展開による ト ラ イが少な く , キ ッ ク やフ ォ ワー
ドの攻撃による ト ラ イ のケースが多かっ た。
ス ク ラ ムで は, 教員はフ ォ ワー ドを中心 と した攻撃やキ ッ ク攻撃による ト ラ イが多かった
が, 逆に高校では展開プ レーのケースが多かっ た。
ペ ナルテ ィ で は, 教員は速攻による ト ラ イが10回あっ た。 こ れは反則 を犯 したチ ームが10
メ ー ト ル戻 り切 ら ない間に攻撃す るため に防御側の体制が整わず攻撃側が有利 に展開さ れ,
ト ラ イ に結びついた と思われる。
春 口の研究2) では防御形態のく ずれているラ ッ クかちが一番多 く , ラ イ ンアウ トが一番少
ない とあっ た。 現在は, ラ イ ンア ウ トか ら攻撃方法はルール改正によ りボールの確保が容易
にな り, また ラ イ ンア ウ ト上でモ ールを形成 し, 押 し込 こ まれる と 阻止出来ない よ う な状況
であ るために ト ラ イ になるケースが増えて きた。 こ のよ う なプ レーは世界的な傾向で あ り,
強 く 大 きな フ ォ ワー ドを持っ ているチームにはこ の方法が有利であ る。 こ のよ う な攻撃方法
が教員にも高校生に も多 く 見 られた。 ラ イ ンア ウ ト だけで な く , ゴール前での全ての攻撃に
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松 岡敏 男 ・ 福 地 和 夫 ・ 寺 田泰 人 ・ 岡本 昌也 ・ 野 々村 博
主流 と な っ て きてい る と 思われる 。 モ ール& ラ ッ ク後か らの ト ライ は教員の場合, 全部で27
回であ り , 高校生の場合は30回で あ っ た。 モ ール& ラ ッ ク後は防御 ラ イ ン もみだれてお り,
ト ラ イ を取 る には有利で あ る 。2)
3。 速攻の有効性 につ いて
ペナルテ ィ やラ イ ンア ウ ト において のルール改正 によ り速攻の可能性が大 き く な っ た。
プ レー開始時点 よ り味方が前 にいて も攻撃出来る こ と によ り, 攻撃側が大変有利になった。
防御側 は10メ ー ト ル下が ら なければな らず, 陣形 も整わない う ち に攻撃 さ れる ためにゲイ ン
ラ イ ンを突破 さ れる こ とが多い。 今回の結果をみて もゲイ ンラ イ ンを突破出来なかっ たケー
ス は反則地点を間違えた結果で あ っ て, 攻撃を行 っ てゲイ ンラ イ ンを突破で きなかっ たケー
ス はなかっ た。 これゆえ速攻は大変有利な攻撃法であるが, 攻撃を行っ て ボールがデ ッ ドに
なっ た時, 次の攻撃権が相手にある場合が多 く , 速攻後のプ レーを活用す る努力が必要 と さ
れる。 高校生 も積極的に攻撃 を行い, ペ ナルテ ィ や, ラ イ ンアウ トから も積極的に速攻を行っ
ていた。 しか し, ペ ナルテ ィ か らの速攻の場合, いつ も フ ォ ワー ド を中心 と した攻撃であ り,
続いて反則を得た場合であっ て も, また同じ よう な攻撃が多 く 見 られた。 また, そのよう な
場面で今度は攻撃側が反則 を犯 し, 攻撃権 を失 う ケース も見 られた。 高校生の敗者チ ームの
次の攻撃権の損失は42.6% で あ り, 2度攻撃 した と して も, 次の攻撃権 は L度は相手側 の攻
撃権か ら始 まる こ と にな る。 も っ と ボールを生か し, 次の攻撃に繋げる努力が必要 と思われ
る。
一
V.
ま と め
こ
全国教員大会 と国民体育大会少年の部 ( 高校生) のゲームを分析 した結果, 以下のこ と
が分かっ た。
1)
-・
自陣での攻撃は教員 ・ 高校生共にキ ッ ク攻撃が主体である。 敵陣での攻撃は, 教員で
はキ ッ ク , パス , ラ ンな どいろ いろ な攻撃法 を行っ て いる のに対 し て, 高校生で はパス
攻撃や, フ ォ ワー ド を中心 と した継続 を重視 した攻撃 を主体 と し て行っ て いた。
2)
ト ラ イ になっ たケース は, 教員がラ イ ンア ウ トから始まる場合が多 く , 高校生ではペ
ナルテ ィ からが多かっ た。
攻撃方法 と して は教員はラ イ ンア ウ ト か ら はオープ ンへの展開, ス ク ラ ムか ら はフ ォ
ワー ド攻撃やキ ッ ク攻撃, ペ ナルテ ィ か ら は速攻が中心で あ っ た。
高校生で は, ラ イ ンア ウ ト か ら はフ ォ ワー ド攻撃やキ ッ ク攻撃, ス ク ラ ムか ら はオー
プ ンヘの展開, ペナルテ ィ からは速攻からの ト ラ イが多かっ た。
3)
速攻の有効性についてはゲイ ンラ イ ンの突破には有効であっ たが, ボゞ ルがデ ッ ドに
な り次の攻撃権で は教員 ・ 高校生 と もに失う 割合 (教員39. 1% , 高校37.4% ) が高かっ
た。
ラ グ ビー フ ッ ト ボールの攻撃方法について
ー ゲーム分析 を中心 と して ー
345
参考文献
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3)
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4)
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報告
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5)
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6)
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岐阜大学教養部研究報告
7)
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8) j 安ヶ平浩 : ラ グビーのゲーム分析
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一千葉県大学ラ グビーについて ー, 国際武道大学紀要, 2:35-