講演「新興アジア諸国への道産食品輸出のビジネスチャンス」要旨 日時

講演「新興アジア諸国への道産食品輸出のビジネスチャンス」要旨
日時:平成26年3月13日(木)
場所:札幌きょうさいサロン8階
講師:タイ王国政府政策顧問
松島大輔
◆東アジアの持つポテンシャルの高さ
・東アジアの人口は、タイ 6,000 万人、ベトナムは
もうすぐ1億人、ミャンマー4,000 万人で東アジ
ア全体では6億人の規模である。
・2017年には中間所得層(250 万円~650 万円)
の方々は 6,000 万人~8,000 万人になる見込みで
ある。日本と同じかそれ以上のマーケットが実は
隣にあるということ。
・さらにベトナムやインドは人口の半分が25歳以
下で、今後車や家など、たくさん消費してくれる年代が一番多い人口構成になっている。これ
は、言わば日本の1950年代と同じである。かたや日本は人口の4人に1人が65歳以上で
あり、今後マーケットは縮小していく一方の国である。特に食に関しては、感応商品であるの
で、こんなところではマーケットは成立するはずはない。
・タイには日本から 4,000 社が進出しており、実はタイのGDPの6割は日本の会社から生み出
されている。会社の売上高経常利益率の平均は 11.5%もある。
(日本の食品加工業は 3、4%程
度)
◆東アジアの経済段階
・一人あたりGDPが 2,000 ドルを超えると、3種の神器(白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)に火
がつくと言われており、言わば日本の1950年代頃である。
・3,000 ドルを超えると3C(カラーテレビ、クーラー、車)に火が付く。日本の1960年代
と同じころである。
・タイの一人当たりGDPは、現在 5,500 ドルである。これは日本の1978年と同じで、所得
の余裕が少し出始める頃。商品にも若干の付加価値を求めるようになる。
・タイの次に経済発展することが予測されるのはベトナムであり、現在は日本の1960年代後
半と同じ段階にある。
・その次はミャンマーが来るだろう。日本の1950年から1960年代のはじめと同じ段階で
ある。
・各国の経済段階をきちんと把握することが重要であり、買ってくれるお客さんをつかむことが
大事。客がいなければ商売にならない。投資環境や通関などの心配は二の次である。
・タイの反政府デモを心配される方もいるが、実際は身の危険がある状態ではない。メディアで
はセンセーショナルな報道をされているが、実になごやかな感じであり、交差点を封鎖して毎
晩深夜までカラオケをして騒音に迷惑している程度である。
◆東アジアで求められるビジネス
・売りたいものを持っていくのではなく、現地の人が買いたいものを持っていくことが大事。日
本の車が世界で通用しているのは、国ごとのニーズを的確に把握しこれを徹底したからと言え
る。
・アジア各国では様々な規制があるが、規制は作るものと捉えられており、いかに自分のビジネ
スに有利な規制を作るかが重要である。そのために国や自治体を巻き込んでやっていただきた
い。
・一人当たりGDPが 5,500 ドルを超えると宅配サービスが始まり、これが商流を変える。
・アジアの方は、日本に観光に来てたくさん買い物をする。食と観光は一体で取り組んでいただ
きたい。昨年7月にビザ解禁になり、アセアンから大挙として観光客が北海道に来た。その際
たくさんお土産を買ったが、あまりにも量が多くて運べないということが問題になった。そこ
で新たな宅配サービスというビジネスチャンスが生まれる。食についても観光だけでなく、い
ろいろな切り口でビジネスを展開するチャンスがある。そのように持続可能なビジネス体系を
作り上げることが重要である。
・タイは典型的な屋台文化であり、外で食べることがほとんどで、家庭で料理を作るのは1割程
度。家は狭いので寝るために帰るだけである。
・バンコクでは月に10軒のペースで日本料理店が出店されている。今では、バンコクで食べら
れない日本食はないと言ってもいい。
・アジアでは日本食は健康食のイメージが強い。油を使わない体にいい食事という印象があり人
気となっている。
・1パック3千円する日本のイチゴあまおうをタイに 1,000 パック持って行ったところ1時間で
完売したとのこと。タイにもフルーツはあるが、逆に本物志向になっている。
・タイはフルーティな酒が好まれる。チョーヤの梅酒も定番になっていて、チョーヤが品名に捉
えられているほど。白い恋人やかりんとうも有名である。
・北海道ブランドということだけに安心していてはいけない。47都道府県どこも同じように食
の売り込みを熱心に行っている。雪が降るのは北海道だけではない。さらに韓国もフードポリ
スに取り組んでいる。今のうちにしっかりと市場を取りに行くことが重要である。
◆お互いプロジェクト
・2011年、日本では震災、タイでは洪水の被害にあった。お互い被災国として助け合い、連
携を取るようになった。
・アセアン全体で「お互いプロジェクト」というも
のに取り組んでいる。アセアンにないビジネスに
対し、日本のクラスターと連携し持続可能なビジ
ネスにするという取組である。2か月に一度、日
本の各地域のキーパーソンが集まり会議を行って
いるが、そこでの結論は売りたいものを売るので
はなく、現地で欲しがるものを売ることが重要で
あるということだった。
・このプロジェクトの1つである新潟の「ライスバレープロジェクト」では、魚沼産のこしひか
りをそのまま輸出するのではなく、加工技術をアセアンに展開しようというもの(現地で主流
である長粒種によるパックごはんの技術や人工透析患者向けの低たんぱく米の開発等)
・日本の課題は岩盤規制と看板系列である。規制があることで自由なビジネスが阻害されている。
また、取引関係も固定化されているので自由な取引ができない。一方タイでは、自由なビジネ
スが展開されている。
・日本国内の特区という考えもいいが、東南アジアを活用した新しいイノベーションを起こすこ
とが大事。アジアに欠けているものを日本が提供していただきたい。
・日本各地で色々な「お互いプロジェクト」を仕掛けているので、是非活用いただきながらビジ
ネス展開していただければ幸いである。