4 街の魅力や方向性について みんなで考え、こだわっていく

宿の改築を行い、お風呂を直し、トイレもウォシュレットにしたという。しか
し、頑張っても頑張ってもスキー客は減っていく。
スキー場があるから客が来るという時代は終わった。これからはスキー以外
の楽しみが体験できる、街の魅力というものが重要となる。おいしい食べ物も
その魅力の1つである。スキーのついでにおいしいものが食べられるというよ
りも、おいしいものを食べに行く「ついで」にスキーを楽しむといった、逆転
の発想が必要となる。
「時速4km」のまちづくりは、観光地に限らない。かつて商店街も、街を歩
いて巡る楽しみ空間だった。モノだけを売っていたのではない。同時に提供す
る生活の知恵や街の情報、心を和ませるふれあいや発見など、もっと豊かで力
強い競争力を持っていた。
例えば魚屋さんが「サバの味噌煮には生姜をちょっと入れるといいよ」と
いった旬の情報を教えてくれた。本屋さんに行けば、山登りに詳しいご主人で
あれば、日本の百名山をどの順番で登ればいいかを教えてくれた。ところがそ
ういう情報が抜けてしまったので、商店街に元気がなくなっていった。
しかし、今、生活に根ざした元気な商店街があれば、逆転の発想でそれ自体
が観光地になりうる。ここにこれからの観光地、地域づくりのヒントがある。
単一ではなく複合的に、あるいは従来の視点を逆転してみるなど、旅行者(訪
問者)の視点から、自分たちの街の魅力を再検討することが重要だ。
街の魅力や方向性について
みんなで考え、こだわっていく
ここで、反面教師としての「さびれる街」の要件について考えてみたい。
「さびれる街」の多くは活性化について議論しない。右肩上がりの高度成長
期の時代には、活性化といえばたくさんの人がやってくることが目的になった
から、とりあえず大型イベントを行った。イベントで何万人来場したという結
果を重要視したために今でも何か一過性の大規模なイベントなどを考えがち
だ。誰もそこから先の継続的な活性化の議論をしないできた。
しかし、
活性化というのは、
その地域にどういうスケールの、
どういう質の、
どう
いうお客さんに来てもらいたいか、そのための資源やシナリオを考えることだ。
※3
※3 「地産地消」
その土地で取れたものや作られた産物を、
その土地で消費するという意味。観光客は、
山の中の旅館でマグロの刺身が出てくるより
も、近くの川で取れた川魚の方を求めている。
新鮮さや希少価値などともあいまって、農家
レストランなど、最近の地域づくりや観光地
活性化のキーワードの一つとなっている。
わが地域は、わが街は環境にやさしい。あるいは「地産地消」で自慢できる
安全なものだけをお売りする。大量のお客さんに来てもらうよりは、限られた
きちんとしたお客さんに、繰り返しモノを提供し、永く愛してもらうことのほ
うが大事になる。こうしたことをしっかりと議論しなければいけない。
2番目に、美しくない地域、個性のない街は衰退する。美しくないというの
は、どこにでもあるような、個性や風格のない街という意味だ。どの地域にも
ある施設などいろいろなものを全部平均的にそろえてしまったから、駅を降り
てもどこかと同じようなお店が並び、どこかで見たような街並みが続く。せっ
かく訪ねてみたのに、これではがっかりということになる。
わが地域はこういうことにこだわる、というものを持つべきだ。例えば看板
を統一し、地域の個性を打ち出したものにする。あるいはその街の、暮らしに
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