音楽のよさや面白さ,美しさを感じ取り

音楽科
研究テーマについて
研究テーマについて
音楽科学習は,多様な表現及び鑑賞の活動を直接体験する
◆ 研究テーマ
音楽のよさや面白さ,
美しさを感じ取り,主体
的に音楽を創造する喜び
を実感する音楽科学習
ことをとおして,音楽のよさや面白さ,美しさにふれ,音楽
と生活とのかかわりに関心をもち,生涯にわたって音楽文化
に親しむ態度を育む学習である。
「音楽のよさや面白さ,美しさを感じ取る」とは,音楽を
ただ単に「よい」と感じるのではなく,よさや面白さ,美し
さがどこから生み出されているのかを〔共通事項〕と関連さ
せながら感じ取ることである。
「主体的に音楽を創造する喜び
を実感する」とは,他とかかわりながら表現を高める過程を
◆ めざす子どもの姿
感じ取った音楽のよさや面白さ,美しさ
を生かし,他とかかわりながら思いや意
図をもって表現を高め合う子ども
谷口 朋美
岡元 雅代
楽しんだり,自分たちの思いや意図が音楽として表されたこ
とに満足感をもったりすることである。これらの積み重ねが,
次の学習への意欲にもつながっていく。
そこで本年度は,感じ取ったことを基に自分の考えをもち,
友達と試行錯誤しながら表現を高めていくことで,
「思いに合
った表現ができた。
」
「曲のよさが伝わった。
」という音楽を創
造する喜びを感じられるようにし,めざす子どもの姿に迫る
ことにした。
研究内容
自信をもって学び合う子どもを育むための学習指導の在り方
1 自分の考えをもたせるための学習指導の在り方
⑴ 音楽のよさや面白さ,美しさを感じ取らせるための指導の工夫
2 他とのかかわりの中で考えを高めさせるための学習指導の在り方
⑴ 友達と伝え合いながら表現を高めさせるための指導の工夫
音楽科研究部における「考えが高まる」の捉え
音や楽譜等を基に,
〔共通事項〕を手掛かりにして表現に対する自分の思いや意図をもち,話合いや試しの表現を繰り返
しながら根拠を明らかにして,思いや意図が伝わる表現に高めること。
友達と伝え合いながら表現を高めさせるための指導の工夫
高まった考え
「~すれば思いが伝わる表現が
できた。
」
「~すると曲の良さが伝わった。
」
〔共通事項〕を
手掛かりとした
自分たちの表現
新たに感じた音楽のよさや
面白さ,美しさを実感させるふ
りかえりの工夫
自分たちの思いや意図と〔共
通事項〕とを結び付ける板書の
工夫
自 分 の 思 い や 意 図
自分たちの思いや意図
考えが高まる
思いや意図が伝わる表現を
するための言葉かけの工夫
音源の効果的な聴かせ方や
教師の範唱(奏)の工夫
音楽のよさや面白さ,美しさを感じ取らせるための指導の工夫
感じ取ったこと
(音・音楽・楽譜・
歌詞・絵等から)
自分の考え
「~すると思いが伝わる表現に
なるのかな。
」
「~のように表現したいな。
」
子どもの言葉で表現の視点
を設定するための〔共通事項〕
の取り扱い方の工夫
音楽のよさや面白さ,美し
さを感じさせる導入の工夫
自信をもって学び合う子どもを育むための学習指導の在り方
1 自分の考えをもたせるための学習指導の在り方
⑴ 音楽のよさや面白さ,美しさを感じ取らせるための指導の工夫
自分の考えをもたせるためには,これから表現する音楽のよさや面白さ,美しさがどこから生み出されているのか
ということを音や楽譜等から子ども自身が気付く必要がある。
そこで,題材の導入で鑑賞を設定し,鑑賞曲から〔共通事項〕を感じ取らせた。そして,感じ取ったことを表現の
視点とすることで,1単位時間においても〔共通事項〕を手掛かりとしながら自分の考えをもつようになった。なお,
〔共通事項〕は子どもに親しみやすいものとなるように,子どもの気付きや表し方をそのまま使い,
「音楽のひみつ」
として提示した。
この題材では,○○(
〔共通事項〕
)を感じ取らせたい。
反復
重なり
変化
鑑賞による
題材の導入
鑑賞による
子どもの気付き
表現と鑑賞の一体化
音楽と出合う
表現の視点をもつ
表 現
○ 2つの以上の曲を
比較聴取させる。
○ 楽譜や歌詞等から
曲を想像させる。
等
子どもの言葉で
表現させる。
○ 憧れをもつ音源を
聴かせる。
自分の考えをもつ
風が吹いて木の葉がゆれる
ように表現したいから,風の音
と木の葉の音を重ねて
表現してみよう。
♪♪♪♪♪♪の
リズムをすずで繰り返し
演奏すると,小川の
流れが表現できる
のかな。
2 他とのかかわりの中で考えを高めさせるための学習指導の在り方
⑴ 友達と伝え合いながら表現を高めさせるための指導の工夫
① 音源の効果的な聴かせ方や教師の範唱(奏)の工夫
教師が子どもに気付かせたい表現の工夫や,ある子どもが感じた音楽のよさや面白さ,美しさを共有させたいと
き等に行った。導入でも音源を聴かせるが,子どもの表現がより高まるように活動の途中にも音源提示や教師の範
唱(奏)を行った。
目的
音源
(視聴覚教
材・録音)
教師の
範唱(奏)
内容
表現の目標をもたせる
模範演奏の音源
表現のよさを感じさせる
2 種類以上の比較音源
分割音源
そうか!「見上げれば」
からのアルトは,ソプラノ
を受け継ぐように入らない
といけないね。
現時点での表現を客観的に気付かせる
子どもの表現の録音音源
表現意欲を促す
表現させたいことを意識しての範唱奏
表現の気付きを促す
誇張した範唱奏
グループ活動を止めて全体に音楽を聴かせたり,グループに合った音楽を聴かせたりするなどして,目的に応
じた音楽を聴かせることで,子どもの気付きが増え,根拠を明らかにした表現の高まりがみられるようになった。
「強く」というの
は全部の音量を大き
くするのですか?そ
れともアクセントを
つけるのですか?
② 思いや意図が伝わる表現をするための言葉かけの工夫
「~だから○○したい」と自分の考えをもった子どもは,根拠を基に試しの表現や話合いを繰り返していくこと
で,思いや意図を表す工夫が伝わる表現へと高めていく。その際,子どもの考えをより具体的なものにしたり,広
げたりするための言葉かけを行った。この言葉かけは,⑴で述べた音源や範奏(唱)の場合もある。
最後の「燃え上がれ」は,
曲のタイトルにもなっている
ので,強く歌いたいね。
全体を強く
もう少し強い方が
歌ってみよう。 いいね。アクセント
1,2,3,はい!
をつけよう。
最後の部分に力強さが出て
いるので,歌詞に込められた気
持ちが伝わってきます。
また,「なんとなく」
「楽譜にかいてあるから」等という曖昧な考えが,根拠を基にした考えになるように,次の
ような言葉かけも行った。
目的
言葉かけの例
子どもの反応
考えをもたせる
「A(の奏法)とB(の奏法)で
「Aの方が,りすが走り回って
は,どちらがイメージした音に
いる様子に合っています。」
合っていますか。」
理由を明らかにさせる
「どうしてこのように表現した
のですか。」
「手を当てて動かしながら吹
くと,本当に鳥が鳴いている
みたいだからです。」
考えを共有させる
「~さんは,どうしてこのように
表現したと思いますか。」
「光のキラキラした感じを出
すために,何度も繰り返して
いるのだと思います。」
表現の高まりを実感させる
「最初の表現と比べて,どのよう
に変わりましたか。」
「音楽の終わりの部分はみんな
いっしょに表現することで,動物たちが集まってき
ている様子が表せました。」
子どもの思いや意図を表現につなげる教師の言葉かけを行い,話合いや試しの表現をする視点を明確にさせたこと
で,どのように表現が変化すれば自分たちの思いや意図に合った表現に近づくかという考えの高まりがみられ,表
現に少しずつ変化が表れるようになった。
③ 自分たちの思いや意図と〔共通事項〕とを結び付ける板書の工夫
子どもの思いや意図を板書に残していくことで,自分たちの意見
として全員で共有でき,子どもが表現の工夫を行うときの拠り所
となった。板書の内容は,子どもの意見を拾いながら,表現の手
掛かりとなる〔共通事項〕へつなげた。
子どもの思いや意図と教師の視点を精選しながら板書を行うこ
とで,子どもが必要に応じて板書をふりかえりながら,表現を高め
ることができるようになった。
成果と課題
〔共通事項〕
自分たちの思いや意図
1 成果
○ 子どもの思いや意図を表現につなげる言葉かけや,根拠を明らかにする言葉かけを行ったことで,一人一人が自分
の思いや意図に向かって,表現を高めていく姿が見られるようになった。
〇 鑑賞から感じ取った音楽のよさや面白さ,美しさを子どもの言葉で表す学習経験を重ねていったことで,より〔共
通事項〕を自分たちのものとして捉え,表現に生かすことができるようになってきたた。
2 課題
○ 自分たちの思いや意図が伝わる表現をより高めさせるためには,音や楽譜等からより多くのことを感じ取らせ,音
楽の言葉で表現させていく活動の在り方を考えていく必要がある。