【2016.3月号】No.439

月刊
第38巻第3号通巻439号2016年3月1日発行(毎月1回1日発行)1980年10月23日第3種郵便物認可
3
2016年
◆マスコミ事情
◆企業広報研究
東日本大震災から5年
まるで“モグラたたき”
「想定外」続くテレビの災害報道
(株)テレビ朝日 災害報道担当部長 久慈省平
企業広報功労・奨励賞を受賞して
セブン&アイ・ホールディングスの広報と、
私の広報観
(株)セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 広報センター シニアオフィサー 山口公義
「対話」を重視した広報IR活動で
ステークホルダーの理解を深める
(株)カプコン 秘書・広報IR部長 田中良輔
◆メディアに聞く
(株)フジテレビジョン 報道局生活情報部長 角谷公英
439
March
今 月 の 表 紙
横浜銀行は、地域経済を支える金融機関として、地域
と一体となって発展することを目指している。写真
は、2015年3月に
「横浜マラソン2015」で行員がボラ
ンティア活動に参加している様子
『経済広報』では、裏表紙に関連する写真・イラストを表紙に
掲載しています。
3
月の動き
国内
1日
2015年10 ~ 12月期の法人企業統計
(財務省)
7日
1月の景気動向指数速報
(内閣府)
8日
1月の国際収支速報
(財務省)
2月の消費動向調査結果
(内閣府)
2月の景気ウォッチャー調査
(内閣府)
11日
1~3月期の法人企業景気予測調査
(内閣府・財務省)
14 ~ 15日
日銀の金融政策決定会合
17日
2月の貿易統計
(財務省)
29日
2月の失業率
(総務省)
2月の有効求人倍率
(厚生労働省)
海外
4日
1月の米貿易収支
(米商務省)
2月の米雇用統計
(米労働省)
10日
ECB
(欧州中央銀行)
定例理事会
(ドイツ・フランクフルト)
15日
2月の米小売売上高
(米商務省)
15 ~ 16日
FOMC
(米連邦公開市場委員会)
(米FRB
(連邦準備制度理事会)
)
17日
2015年10 ~ 12月期の米経常収支
(米商務省)
28日
2月の米個人所得・消費統計
(米商務省)
マスコミ事情
東日本大震災から5年
2016年3月号目次
まるで“モグラたたき”
「想定外」続くテレビの災害報道
2
久慈省平((株)テレビ朝日 災害報道担当部長)
企業広報研究
企業広報功労・奨励賞を受賞して
セブン&アイ・ホールディングスの広報と、
私の広報観
4
山口公義((株)セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 広報センター シニアオフィサー)
「対話」
を重視した広報IR活動で
ステークホルダーの理解を深める
7
田中良輔((株)カプコン 秘書・広報IR部長)
企業広報研究
日本企業に迫るグローバルクライシスの影
その最新事例と対処法
10
グローバル広報は国内広報とどう違うか
12
リチャード・レヴィック(レヴィック社 会長兼CEO 危機管理コンサルタント)
ロス・ローブリー(エデルマン・ジャパン(株) 社長)
Facebook運用から
複数ソーシャルメディア運用のフェーズへ
〜変わりゆく生活者とメディアの関係、
注目高まるソーシャルメディアにおける情報発信のキホンとは〜
14
小野寺 翼((株)メンバーズ エンゲージメント・ラボ)
ANGLE
エネルギーを繋ぐ力
森田浩司(電気事業連合会 広報部部長)
18
メディアに聞く
生活情報部で報道価値を高める
角谷公英((株)フジテレビジョン 報道局生活情報部長)
19
企業PRの
「明日のヒント」vol.3
広報担当者は「トップのプロデューサー」となれ
岡本純子(コミュニケーションストラテジスト/(株)グローコム 代表)
23
国際プロジェクト紹介⑧
ユスロン駐日インドネシア大使との懇談会を開催
24
連載
経済広報センター NEWS
企業広報ニュース(広報トピックス/ Book)
企業・団体のCSR活動
(
(株)
横浜銀行)
3月の動き
20
25
裏表紙
表紙裏
発行/一般財団法人経済広報センター 国内広報部
東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館 TEL:03-6741-0021
印刷/三葉株式会社 TEL:03-3294-4751
※本誌掲載の記事・写真・イラスト・図版の無断掲載を禁じます。
2016年3月号〔経済広報〕
1
マスコミ事情
まるで“モグラたたき”
「想定外」続くテレビの
災害報道
~東日本大震災から5年~
久 慈 省 平(くじ・しょうへい)
(株)
テレビ朝日 災害報道担当部長
「想定外」を反省した気象庁
は従来の警報をはるかに超える被害が想定される
「まさか、こんなことになるとは――」。東日本
ときに発表されるものです。東日本大震災と同じ
大震災が起きた2011年、私たちは「想定外」という
2011年夏、紀伊半島を直撃した台風12号は和歌山
言葉を何度聞いたことでしょう。国内初のマグニ
県を中心に甚大な被害を及ぼしました。気象庁は何
チュード9.0の巨大地震、15メートルを超える大津
度も大雨警報を発表しましたが、約100人の死者、
波、
“絶対に安全”な原発の電源喪失、そして、メル
行方不明者を出す結果となりました。この反省から
トダウン……。未曽有の大災害から私たちは何を学
生まれた特別警報は、
「数十年に一度の災害」
「直ちに
んだのでしょうか。あれから5年を経て、「想定外」
身の安全を図る」といった耳に残るキャッチフレー
はなくなったのでしょうか。
ズと共に、住民避難に繋げる
“最後の切り札”
として
「想定外」という言葉は、当然ですが、5年前に
初めて使われたものではありません。1995年の阪
神・淡路大震災は、「神戸で地震は起きない」という
“神話”を信じた地元自治体や住民が直下地震の対策
2
起きる災害に備えています。そのひとつ、特別警報
国民に浸透しています。
「想定外」を生かした好例で
す。
テレビ局の
「想定外」
と災害報道の強化
をほとんど取っていなかったことが問題になりまし
さて、東日本大震災では、テレビ局の災害報道で
た。東日本大震災は逆です。宮城県沖を震源とす
も多くの
「想定外」
がありました。テレビ朝日系列で
る巨大地震が起きる確率は30年以内に99%ともい
は、東北沿岸部の8カ所に設置していた情報カメラ
われていて、東北の三陸沿岸は、明治三陸大津波
(情カメ)
が、地震の揺れには耐えたものの、いずれ
(1896年)、昭和三陸大津波(1933年)、チリ地震津
も停電でダウンした上に津波で流されてしまい、津
波
(1960年)など、近代に入ってからだけでも、何
波襲来の決定的瞬間を記録することができませんで
度も津波の被害を受けてきた地域です。しかし、そ
した。地震が起きた瞬間の
「揺れている映像」
を記録
の東北地方ですら津波対策は十分とは言えず、過去
するスキップバック録画は、その揺れの大きさを表
の教訓を生かすことはできませんでした。事前に情
すには欠かせない素材です。しかし、巨大地震に見
報があっても、準備をしていても、「想定外」の事態
舞われたテレビ局は
“その瞬間”
を切り取って編集す
に対応できなかったことが分かります。
る余裕がなく、放送できなかった局もありました。
そういった反省を生かしているのが気象庁です。
岩手・宮古湾や、宮城・気仙沼港を襲った大津波
この5年間で、沖合津波観測情報、竜巻目撃情報、
の迫力ある映像。テレビ朝日系列局のカメラマンが
噴火速報など次々に新しい制度を取り入れて、次に
撮影した貴重な映像ですが、実はこの映像は放送す
〔経済広報〕2016年3月号
マスコミ事情
るまで数日かかりました。撮影したカメラマンとの
新たな想定外
通信手段が途絶えてしまい、映像を送るどころか安
否不明の状態が続いたからです。
これらの問題はこの5年間で少しずつ改善されて
東日本大震災では津波による
「想定外」
の恐ろしさ
を経験しました。テレビ朝日を含む多くのテレビ局
います。情カメは津波に襲われないように高台へ移
は、津波警報が発表されたときは地震情報よりも、
転。停電でも稼働するように電源を併設するケース
津波からの避難コメントを優先して伝えて、
「直ちに
も増えています。スキップバック録画の編集は自動
高台へ避難」するよう呼び掛けます。大きく改善し
化が進み、局によっては緊急地震速報の段階で編集
たことのひとつですが、私たちの努力をあざ笑うか
を始めたり、震度の大きな場所を選んで編集したり
のように、この5年間は新たな
「想定外」
に悩まされ
する機能もあるようです。携帯電話が不通、もしく
ています。
ふくそう
は輻輳した経験から、衛星携帯電話やIP電話を増
おととし9月27日、御嶽山
(長野・岐阜)が水蒸
やし、お互いの位置を確認できるGPS機能を付け
気噴火し、戦後最悪となる63人の死者・行方不明
た無線機の導入も進んでいます。
者を出す大惨事となりました。秋の行楽シーズン、
災害報道の強化はテレビ朝日だけでなく、テレビ
土曜日のちょうど昼時、高齢者でも簡単に登れる
界全体で協力して取り組んでいるものもあります。
山。火山が噴火することは分かっていたことです
例えば、津波警報や注意報が発表されたときに、テ
が、条件によっては噴火がこれほど恐ろしい結果を
レビ画面に表示される日本地図。津波が襲来する沿
もたらすことは
「想定外」
でした。この日を境に、全
岸部に色を塗り、危険な場所が一目で分かる重要な
国のすべての火山がいつ噴火しても対応できるよう
情報ですが、東日本大震災のときは各局がそれぞれ
に、系列局を挙げて準備を進めています。
違う色で表示していたため、視聴者が混乱しまし
そして、去年9月10日の関東・東北豪雨。台風
た。震災後、各局で統一して、大津波警報は紫、津
18号の通過後、栃木県、茨城県に大雨特別警報が
波警報は赤、津波注意報は黄と全局が同じ色を使っ
発表され、土砂災害に備えた万全の取材態勢を取っ
ています。
たはずでしたが、過去最大の300ミリを超える雨
仙台平野を襲った津波が、家屋や車、人を次々に
量、鬼怒川の堤防決壊という
「想定外」
の事態に対応
飲み込んでいく上空からの映像をご記憶の方もいる
は後手に回りました。この日の昼ニュースは栃木県
と思います。あの映像はNHKのヘリコプターから
の鬼怒川温泉で、旅館の建物が川に沈み込む様子を
撮影したもので、テレビ朝日系列を含む民放局は
現場から生中継するなど、十分な災害報道ができた
持っていません。民放各局のヘリコプターは待機し
と思っていました。しかし、本当の主戦場は鬼怒川
ていた仙台空港が津波に襲われて壊滅、取材に飛び
の下流、茨城・常総市でした。水は高いところから
立つことができなかったためです。今や災害だけで
低いところに流れます。土砂災害、水害は下流に集
なく、事件・事故でもヘリコプターからの映像はテ
中します。後から考えれば当然のことなのですが、
レビには不可欠です。このときの反省から、全国の
このときは思いもよらない場所で起きた事態に、き
ヘリコプターを安全な場所に移動する動きが活発化
ちんと対応できなかったことが悔やまれます。
しています。在京キー局のヘリコプターが待機する
地震よりも津波への対応を強化すると土砂災害が
東京ヘリポートは、東京湾に接していて、津波被害
起き、土砂災害への対応を進めると火山が噴火す
の可能性があります。そこで、複数の社で協力体制
る。次から次に起きる自然災害への対応は、まる
を構築し、一定期間ごとに持ち回りで自社のヘリコ
で
“モグラたたき”
のようです。東日本大震災から間
プターを茨城県の筑波山にあるヘリポートに待機さ
もなく5年。
「想定外」の事態はこれからも起きるで
せています。もし、各社のヘリコプターが津波で壊
しょう。
「一人でも多くの命を救う」
ことを目指して、
滅した場合は、生き残った1社が撮影した映像を各
テレビ局の災害報道対応に終わりはありません。k
社で共有できるルールをつくりました。
2016年3月号〔経済広報〕
3
企業広報研究
企業広報功労・奨励賞を受賞して
第31回
「企業広報賞」で企業広報功労・奨励賞を受賞された、セブン&アイ・ホールディングスの山口公
義執行役員広報センターシニアオフィサーと、カプコンの田中良輔秘書・広報IR部長に、自社の広報活
動と広報観について話を伺った。
セブン&アイ・ホールディングス
の広報と、私の広報観
山 口 公 義(やまぐち・きみよし)
(株)
セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 広報センター シニアオフィサー
多様な広報経験により培った“外様の視点”
な会社の広報を経
私は1995年に西武百貨店の本社広報室に着任し
で業務を捉えるこ
てから現在に至るまで、約20年間広報業務に従事
とができるのが私
している。着任から暫く後の西武百貨店は、経営不
の 強 み だ。2011
振による改革が始まり、当時の私の広報としての主
年に、突然の辞令で現職に就いてからは、百貨店業
な仕事は、マスコミの厳しい問い合わせに対応する
態のみならず、コンビニエンスストア、スーパーな
ことだった。2002年には経営破綻したそごうに出
ど様々な業態の事業PRに加え、セブン&アイグ
向・転籍し、再建を目指して広報業務に取り組ん
ループ全体の企業価値向上を目指し、積極的な広報
だ。広報というと、自社の良い報道を出すために、
活動に努めている。
どうPRするかと考えがちだが、このころの私の広
報業務は、もっぱらネガティブな報道をどう抑える
かに尽力していた。
2003年には、そごうと西武が統合再編したミレ
セブン&アイ・ホールディングスの概要
セブン&アイ・ホールディングスは、2005年に
セブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、デ
ニアムリテイリングへ出向した。当時は弱者連合と
ニーズジャパンの共同株式移転により設立された。
揶揄されることもあったが、晴れて、業界初の持ち
傘下企業は約150社、
「百貨店・食品スーパー・総合
株会社誕生をアピールする広報業務に取り組んだ。
スーパー・コンビニエンスストア・フードサービ
2006年にミレニアムリテイリングがセブン&アイ・
ス・金融サービス・IT/サービス」を主要な領域
ホールディングスの傘下に入ってからは、百貨店事
として事業展開をしている。グループシナジーを追
業会社としての企業価値向上に向けて、新しい企業
求し、お客さまにこれらの店舗・サービスを横断的
の形を積極的にPRした。このころは、西武百貨店
に利用していただくことで、グループとしての企業
時代の危機管理に追われた広報とは全く異なり、前
価値の最大化を目的としている。
向きで積極的な広報業務に取り組んでいた。
百貨店や経営破綻会社、経営統合会社など、様々
4
験し、外部の視点
〔経済広報〕2016年3月号
現在、日本を中心に、世界17カ国でコンビニエ
ンスストア、スーパー、百貨店など約5万6000店
企業広報研究
舗
(海外FCコンビニエンスストア含む)を展開し、
社に広報業務に関する興味・関心事についてアン
1日当たりの来店客数は世界で約5500万人、国内
ケートを実施したところ、「リスクマネジメント対
で約1950万人に上る。2014年度のグループ全体の
応」や「災害発生時の初動対応」など、危機対応につ
売り上げは約10兆円で、売り上げの大半はセブン-
いての関心が高かった。緊急案件発生時にはコミュ
イレブンによるものだ。セブン-イレブンでは、国
ニケーションを密に図るが、各事業会社が抱える個
内だけで1日約550万個のおにぎり、約200万杯の
別の広報課題の掌握については、まだ十分でないと
セブンカフェを販売している。
感じている。
セブン&アイ・ホールディングスの広報体制
セブン&アイ・ホールディングスの広報組織「広
また、PR活動など日常活動におけるグループ内
での広報対応ルールは明文化されておらず、発生し
た案件ごとに適時口頭で対応している点も課題だ。
報センター」は、セブン-イレブン・ジャパン、イ
現在、主なメディア対応や報道予定を知らせる「広
トーヨーカ堂、そごう・西武の広報活動を直接担当
報センターレポート」を毎週、新聞掲載情報を毎日
するとともに、それ以外のグループ各事業会社の
発信するなど、グループ内における情報共有の促進
広報活動をサポートしている。セブン-イレブン・
に取り組んでいる。
ジャパン、イトーヨーカ堂に広報セクションはな
く、広報業務は広報センターに集約している。
「広報センター」業務指針
・ マスコミ他を活用した社内外における広報活
動により、業界のリーディングカンパニーた
る存在を確立させる。
・ その実施においては、各事業会社単位のみな
らず、常にグループ全体を視野に入れた取り
組みを心掛ける。
「PR活動」
は成功しても3割、
「公聴活動」
で10割実現を目指す
広報業務は、大別すると
「PR活動」
と
「公聴活動」
になると考えている。公聴活動とは、いわゆる情
報収集とその共有である。冒頭でも述べたが、広
報ではPR活動ばかりが目立つが、重要なのは公聴
活動だと私は考えている。いわゆる
「攻め」のPR
活動は、報道予定があったとしても、ほかに大きな
広報センターの陣容は総勢13名で、社外広報を
ニュースが入ってくれば流れてしまうといった不可
10名、社内広報を3名で担当している。お客さま
抗力がある。野球でいえば打撃、良くて3割といっ
と接点のある事業を24時間365日、大規模に展開し
たところだ。一方、公聴活動は守備と走塁に例えら
ているため、事件や事故など、毎日何かしらの事案
れる。情報は自ら外に出向くことで取ることができ
が発生する。マスコミなどからの電話による問い
る。練習すればするほど上達し、10割実現も夢で
合わせは1日約150件、年間1500件の取材対応、70
はない。この日々の公聴活動、すなわち社内外情報
件の記者会見、380件のプレスリリース作成などを
の収集と共有を、広報センターの最重要課題に位置
行っている。少数精鋭で全ての情報を集約し、経営
付けている。
トップとの直接コミュニケーションを徹底、即断即
決、スピーディーな対応を実現している。
課題は各事業会社の広報課題の掌握
当社の活動指針は、時代の変化に対応することで
あり、日々の社会変化の把握は、業務遂行に不可欠
だ。もっとも、変化対応といっても全てが変わるわ
けではない。パソコンでいうOSのように変わらな
上記以外のグループ各事業会社の広報セクション
いものもある。当グループでいえば、経営トップの
の現状として、総じて専任組織はなく、他業務との
「利益を出さねば経営ではない」
「真似をするな」
「皆
兼務が大半となっている。年4回、グループ内主要
の賛成するものは失敗する」といったスタンスだ。
各事業会社12社の対外広報担当者を対象とした「グ
一方で、
“買い手市場”
だから
「画一的ではなく、独自
ループ広報連絡会」を開催しているが、現状は本社
性重視」
、
“モノが溢れ、消費飽和”
だから
「価格より
からの一律の業務指示にとどまっている。各事業会
価値重視」などの考え方は、アプリケーションのよ
2016年3月号〔経済広報〕
5
企業広報研究
うに時代の変化により変わっていく。こういった社
に経営トップの考えを代弁するなど、信頼関係を築
会変化の把握は、日常の業務を淡々とこなすだけで
くことができた。広報責任者ともなると、経営トッ
はできない。情報を取ろうという意識と行動が重要
プの考えを、言われる前に把握できていることは、
だ。
最低の条件だと思っている。
私は、常にウォッチすべき媒体物を決めている。
紙媒体だけでなく、ネットニュースや特集を絡めた
オンライン記事にも注目している。紙面の都合上、
PRとは、人の心を打つ努力
情報収集・共有は、やはり情報交換が基本であ
書き切れなかった記者の本音や思いが込められてい
り、人との繋がり、ネットワークづくりが社内・社
ることがあるからだ。また、各企業の決算リリース
外とも重要だ。私は百貨店時代、業界の中心企業で
も重要だ。小売り全体の動向と各企業の状況、トー
もないがため、人と同じことをやっても記事にして
タルのスタンスで物事を見るようにしている。
もらえないという点で、大いに苦労した。現在、当
毎日のニュースが業務に結びついている。ニュー
グループは小売り大手として、リリースを出せば取
スを知らずして、日々の業務は進まない。当社に
り上げてもらえることが多く、マスコミからの取材
は、当グループの個別案件のみならず、紛争問題、
依頼も日々あまたある。その点で、当広報センター
災害といった社会情勢の変化や日経平均株価につい
のメンバーは恵まれている。本来PRとは、何かし
ても、その影響を問う取材が入ってくる。当グルー
ら人の心を打つ努力が必要だ。これは社内において
プの自社報道に関する社内関心度は高く、報道され
も同様で、人の輪を広げ、相手の手助けになること
た内容について社内の担当者から問い合わせが入る
を考える。多くの人と接すれば、苦手な人も出てく
ことも多い。社員はどうしても固有案件に目がい
るかもしれないが、情報収集・共有する上で妨げと
き、大きな、硬いニュ-スはおざなりになる傾向が
ならないよう関係構築にいつも努めている。
あるが、グループ全体として非常に多くの商品を取
マスコミとの関係を密にするためには、常に旬な
り扱っている中で、なんらかの関係が出てくること
情報を提供することを意識している。広報センター
は多い。これらのニュースにも目を通すよう広報の
の方針として、記者が交代するタイミングを大切に
立場から提唱している。
している。特に、初めて小売り業界を担当する若い
広報責任者は経営トップの代弁者
記者などは、業界への理解も少なく不安も多い。初
めて会ったその日に、業界の戦略や特徴などをまと
企業広報責任者は、経営トップの代弁者だ。先に
めた個人資料をメールで送るなど、信頼を築くため
も述べたが、私はそもそも西武百貨店の広報からそ
の工夫をしている。特に用がなくても、相手の関心
ごう、ミレニアムリテイリングと様々な会社の広報
度合いにかかわらず、情報提供は絶やさない。情報
を担当してきた。外部の視点でホールディングス広
は一方通行ではない。こちらが情報発信すれば、欲
報を見ることができるのは私の強みだが、現職に着
しい情報は必ずどこかで返ってくる。継続すること
任当時は、これまで経営トップと接する時間が少な
で報われることを、私自身が経験してきた。
かったことから、十分な信頼関係を築けていなかっ
広報センターは現在13名という少人数で運営し
た。そこで、まず経営トップと接する時間を多く持
ているが、広報に長く携わったスペシャリストばか
とうと、トップのマスコミ取材には全て同席し、翌
りではない。長くいると、詳しくなるが、どうして
日朝一には経営トップが話した内容をまとめたメモ
も個人の癖のようなものがついてしまう。できるだ
の作成を自らに課した。多いときは1日3件から4
けニュートラルに対応できるよう、人材の循環、育
件の取材対応をすることもあり、相当な労力がか
成も大切にしながら、当グループの発展に貢献して
かったが、1年半もすると経営トップの考え方が次
いきたい。
k
第に分かるようになり、トップとのコミュニケー
ションも円滑になっていった。その後は取材対応時
6
〔経済広報〕2016年3月号
(文責:国内広報部主任研究員 大野祥子)
企業広報研究
「対話」を重視した
広報IR活動で
ステークホルダー
の理解を深める
田 中 良 輔(たなか・りょうすけ)
(株)
カプコン 秘書・広報IR部長
カプコンの概要
カプコンは、1983年に創業された。この年は任
天堂のファミリーコンピュータが発売された年であ
り、東京ディズニーランドが開園した年でもある
ことから、「エンターテインメント元年」と呼ばれて
<2015年度 広報IR活動運営指針>
1.良質な広報IR活動を遂行し、経営と事業
の需要に応える
2.当社および業界イメージの向上への貢献
3.開発・事業部の直接支援に重点注力する
4.戦力の底上げによる組織力向上
いる。当社のコアビジネスは、プレイステーション
やニンテンドー3DSなどの家庭用ゲーム機向けソ
1点目について、広報IR室は、企業広報・I
フトの開発・販売である。また、家庭用ゲームで生
R・CSR
(企業の社会的責任)
を担当している。そ
み出されたコンテンツをモバイルや遊技機、映画、
れぞれのステークホルダーとしっかり対話し、彼ら
キャラクターグッズなどにマルチ展開する、ワンコ
の意見を経営にフィードバックすることが、当室に
ンテンツ・マルチユースを基本戦略としている。
「ス
求められている役割だ。
トリートファイター」や「バイオハザード」「モンス
2点目は、ゲームはクールジャパンのひとつとし
ターハンター」など世界的に売れているコンテンツ
て良いイメージを持つ一方、勉強の邪魔、時間の無
を多面的に使うことでシナジー効果を生み出し、収
駄というマイナスイメージがあることも事実だ。ま
益の最大化を図っている。
た、クールジャパンといってもメディアの論調はア
ゲーム業界の経済産業としての
認知度向上に貢献したい
ゲーム業界は主要産業と比較して規模がそれほど
ニメ、マンガが主だ。実際の経済統計ではアニメ、
マンガよりもゲームの方が圧倒的に外貨を稼いでい
るのだが、そういうところはなかなか知られていな
い。こういった点をしっかりPRしていきたい。
大きくなく、歴史も浅いという特徴がある。メディ
3点目は、広報が直接的に事業を支援すること
アもゲームのタイトルは知っていても、ゲーム業界
だ。例えば、当社ではアミューズメント施設の運営
を経済産業としてなかなか認知していないことが多
を行っているが、最近シニアの来店が増えている。
い。広報IR室は、当社の取り組みに加え、経済産
シニアの動向はメディアの関心が高い分野であるた
業としてのゲーム業界の理解促進にも貢献したいと
め、広報IR室からアミューズメント施設を運営し
いう思いがある。
ている事業部にシニア層取り込みの施策を持ち掛
2016年3月号〔経済広報〕
7
企業広報研究
け、メディアへの露出を図り、アピールに繋がった
取り組みを統合報告書で開示したことによって、資
事例がある。
本市場から非常に素晴らしい取り組みだと評価して
資本市場と信頼関係を築く
現在、広報IR室のメンバーは8名で、新卒から
IRサイトはメディアのアクセス窓口
業務経験8年程度のベテランまで幅広いキャリアで
当社の統合報告書は、機関投資家だけでなく、個
構成されている。当社は大阪に本社、東京に支店が
人投資家や学生、マスコミなど広範な層を対象にし
あるが、メンバーを大阪と東京で分けるとリソース
た総合会社案内と位置づけている。報告書には客観
が偏在化するので、パフォーマンスを考慮して全員
性を保つため市場データやマーケットシェア、アナ
が大阪を拠点として活動している。現在CEOは大
リストとの対談を入れている。対談するアナリスト
阪を中心に、COOは東京に常駐しているので、私
には、できる限り厳しい指摘をお願いしている。自
は週1、2度日帰りで東京に行く。私以外のメン
社を紹介するものなので迎合する内容では、余計信
バーもフットワークを武器に、記者対応などで定期
頼を失ってしまうからだ。統合報告書はIRサイト
的に東京と大阪を行き来している。
に掲載するだけでなく、冊子でも発行している。投
当社はIR活動にもかなり力を入れている。ゲー
資家はサイトで確認することが多いので、冊子は不
ム業界はヒットビジネスのため、間接金融だけでな
要との考え方もあるが、当社では統合報告書を就職
く直接金融からも資金調達するべく、資本市場と信
活動中の学生やメディア、個人投資家に配布するこ
頼関係を築こうと考えているためだ。決算発表は大
とで、自社および業界の理解促進に繋げている。
阪取引所で行い、記者会見をユーチューブで配信し
IRサイトは、最も費用対効果の高い広報ツール
ている。翌日に東京でメディアと投資家向けに決算
として認識している。就職活動中の学生、メディア
説明会を行い、質疑応答の内容をIRサイトに掲載
のアクセス窓口という位置づけだ。当社のIRサイ
している。あらかじめ、どのようなやり取りがあっ
トは自社だけでなく市場データも解説付きで掲載し
たかを公開しておくことで、その後の投資家との個
ているため、ゲーム市場を検索したメディアが当社
別ミーティングでは非常にスムーズに話が進むと
サイトにたどり着き、問い合わせを受けることがあ
感じている。また、当社の外国人の持ち株比率は
る。その機会を生かしてメディアにキャラバンに行
直近
(2015年9月)で39%まで上がっていることと、
き、自社報道に繋がった事例が、TBSテレビの
フェアディスクロージャーの観点から英語資料を同
日にIRサイトに公開している。
社外取締役とのスモールミーティング
8
いただいた。
「がっちりマンデー!
!」
だ。
国内初の買収防衛策否決
2015年、当社が総力をかけて注力した取り組み
当社が機関投資家向けに行っている特徴ある取り
のひとつに、買収防衛策の導入がある。買収防衛策
組みとして、社外取締役とのスモールミーティング
は2008年に初導入し、以降2年ごとに更新してき
がある。2014年にスチュワードシップコードが適
たが、2014年に賛成48%、反対52%で否決された。
用されたあたりから、ガバナンスの実効性について
日本で否決されたのは、当社が初めてだ。否決の要
問われる機会が増えている。当社は2014年からア
因は取締役の任期などの考え方に違いがあり、大方
ニュアルレポートに取締役会の内容を公開している
の外国人投資家が反対したことと、当社にとって買
が、2015年は社外取締役と実際に対話する機会を
収防衛策は単なる買収防衛ではなく成長戦略のため
設けようということで、投資家10名と社外取締役
に必要と考えていたが、その主張のアピール不足
との質疑応答を実施した。中には非常に厳しい質問
だった。実は否決される数日前に結果の予測はつい
もあったが、双方言いたいことは言えたので、対話
ていたが、取り下げることはしなかった。この策は
の糸口としては非常に良かったと感じている。この
必要と判断して株主に諮っているものであり、否決
〔経済広報〕2016年3月号
企業広報研究
されそうだからといって途中で取り下げることは株
私財を投じてゼロから個人でワインビジネスを始め
主に失礼だ、というのが取締役会での結論だった。
た。辻本には起業し人を雇用し税金を納めることが
否決されて最初に行ったことは、経営陣の主要メ
社会貢献だという信念がある。広報としては、60
ディアのロングインタビュー対応だ。説明が足りな
歳からリスクを負いビジネスを始める人間がいるこ
かったことが否決された第一要因だったため、当社
とを日本の若い起業家に知らせたい。辻本の思いや
の考えを丁寧に説明すること、そしてあらゆるス
考えを社内の次世代のメンバーにしっかり伝えてい
テークホルダーと対話し理解を深めていただくこと
きたいと考えている。広報対応としては、ワインビ
に努めた。国内外の投資家に対しては、あらためて
ジネスは個人事業なので、カプコンのCEOである
否決された要因分析を説明し、具体的に何がダメ
辻本の姿と絡めながらメディアに伝えている。広報
だったのかヒアリングも実施した。取締役会で議論
スタッフからの説明だけで足りないときは同じ経営
を重ね、投資家との対話で譲れないところは理解を
の目線ということで副社長から、または、本人に直
求めながら、ROE(株主資本利益率)の目標値、取
接面会してもらうこともある。
締役の任期、発動の決定機関を株主総会へ変更な
私の広報観
ど、様々な見直しを行った。2015年6月、再度買
収防衛策の導入を諮った際、今回は多数の外国人投
ゲーム業界は、3カ月、6カ月で状況が大きく変
資家が賛成してくれたこともあり、賛成75%で可
わる。私は広報IRを16年間担当しているが、飽
決された。現在、ガバナンスコードなどにおいて対
きることは全くない。3カ月前と説明する内容が大
話の重要性が挙げられているが、この1年しつこい
きく変わることもあるので、ステークホルダーとの
くらい対話を続けたことで出せた結果だ。
信頼関係を維持するためには、偽らず、身の丈に
地方創生への貢献
合った活動が重要だ。
仕事はやるからにはトップクラスを目指したい。
ほかにも力を入れている取り組みとして、ゲーム
このポジションはメディアや投資家など、一流の人
コンテンツを活用した地方創生がある。当社には、
たちの意見を聞くことができる。情報交換しながら
全国津々浦々の戦国武将が登場する「戦国BASA
レベルアップしていきたい。広報IR室は、社外と
RA」というゲームがあるが、地元ゆかりの武将を
社内の橋渡し役なので、社内に対しては「身内の理
登場させて、地方への観光客誘致や博物館の入場者
論は通じない」という話をし、一方で社外に対して
数の増加、選挙の投票率向上に貢献するという取り
は意見を聞く、当社の考えを理解していただくとい
組みだ。過去の実績などを紹介したプロモート資料
う
「2.5人称視点」のスタンスでいる。社内、社外の
を広報IR室で作成し、自治体や博物館、選挙管理
双方のバランスが大事だと考えている。
委員会に我々が直接売り込みにいく。ゲームを活用
当社は経営トップが数値による透明化の経営を
して集客することに対しては、先方の中でも賛否両
行っているので、広報IRもできる限り数値で説明
論があるが、若年層に興味を持ってもらうには、ま
していきたい。広告換算などの評価手法もあるが、
ずは来てもらうことが大切ということを理解いただ
それだけに頼るのではなく、独自性のある活動を
いている。これでゲームが売れるわけではないが、
行っていきたい。ゲーム業界はまだまだ啓発が足り
ゲームも使い方によっては社会の役に立つというこ
ないところがある。社会および経済へのゲームの効
とが周知できれば、さらに社会に貢献できるので、
用についてしっかり説明や対応を尽くし、自社のみ
引き続き取り組んでいきたい。
ならず、業界のさらなる理解促進のために貢献して
創業者の経営哲学を伝えたい
いきたい。 k
CEOの辻本憲三は当社の創業者であるが、カプ
コンを上場させただけでなく、60歳を過ぎてから
(文責:国内広報部主任研究員 大野祥子)
2016年3月号〔経済広報〕
9
企業広報研究
日本企業に迫るグローバル
クライシスの影
その最新事例と対処法
リチャード・レヴィック
レヴィック社 会長兼CEO 危機管理コンサルタント
リチャード・レヴィック氏は、
『Forbes』や『Time』のレギュラー執筆者であり、
「役員会
(ボードルーム)
に最
も影響力を持つ100人」に4度選ばれた米国のクライシスマネジメントの第一人者である。同氏が来日した
機会に、グローバル化を進める日本企業の留意点、取るべき方策について聞いた。
マーケットから突きつけられた新たな課題
の法律は大事件を起こしたときに何億ドルという莫
現在、日本はグローバル市場から新たな課題を突
大な罰金を課すだけでなく、比較的軽微な事象に対
きつけられている。この課題はここ数年間で急激に
しても罰金を課すことができる。そして、この法律
顕在化し、なおかつ、非常に深刻なものだ。日本は
の特徴として法域に国境がないことが挙げられる。
世界で最もデジタルメディアを活用している国のひ
米国に子会社や工場がなかったとしても、米国に上
とつだが、多くの人がこれをデジタル革命と捉えて
場していなかったとしても、米国当局はこの法律の
いる。しかし、これは情報革命だ。システム全体の
適用を主張できる。事実、米国司法省が課している
変化、つまりパラダイムシフトであり、歴史的に見
罰金を最も多く課された企業は米国企業ではなくア
て農業改革や産業革命と同様の大きな影響を及ぼす
ジア企業であり、次は欧州企業、その次にやっと米
ものだ。一般市民がパソコンやスマートフォンを持
国企業という現状だ。昨今においては世界銀行やア
ち、記者になり、プロデューサーになり、カメラマ
フリカ開発銀行といった国際開発金融機関などが、
ンになっている。人々はメディア以外の多くのソー
日本企業に多額の課徴金を課したり、プロジェクト
スから情報を入手できるようになり、企業は一般市
への参加を禁止したりという事態も起きている。
民からの批判を受けやすくなった。これまで日本企
業は、なんらかのクライシス事象が発生すると、そ
危機発生時の対応に失敗する3つの要因
の事象を一過性のものと捉えがちだった。事象が収
では、なぜ日本企業が標的にされているのか。そ
束したなら、その事象に対する準備をやめ、いつも
れはまさに規制当局が日本企業の危機管理に対する
通りに回帰する。それが日本の企業文化だった。し
脆弱さを知っているからだ。日本企業は非常に素晴
かし、こうした時代の変化は新たなクライシスの潮
らしい戦略を持ってグローバル化を進めてきた。し
流をつくり、日本企業もこれまでと同じようなスタ
かし、いったん不測の事態、特に海外で危機が発生
ンスでいることはできなくなっている。
したとき、適切な対応を取った日本企業を思い浮か
新たな訴訟リスク
10
ど、38カ国の政府が汚職防止法を活用している。こ
べることは難しい。日本企業がグローバルレベルの危
機に直面したとき、対応に失敗する要因は3つある。
情報の流れだけでなく、規制環境も変化してい
1点目は、恐れだ。多くのCEOは企業が成長す
る。10年ほど前から、米国の証券取引委員会、司
る過程では力を発揮できるかもしれないが、本当の
法省、FBIが連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)
チャレンジはその歯車が逆回りし始めたときだ。世
を積極的に適用するようになった。今では、英国な
の中で恐れを感じたときに良い判断ができる人は一
〔経済広報〕2016年3月号
企業広報研究
人もいない。こと「恥の文化」を持つ日本企業では、
コミュニケーションを取り続けることで、スムーズ
CEOが感じる恐れの影響が対応に強く出る。もち
に戦略を実行し、危機にうまく対応することができ
ろん、日本人以外でもいつもうまく対応できるわけ
る。部門間で意見が異なる場合もメールではなく対
ではないが、恐怖心を克服する強い覚悟を持って取
面で論じるべきだ。
り組まなければならない。
2点目は、過去と同じ方法では現在の問題を解決
CSR活動と戦略をリンクさせる
できないということだ。デジタル時代の危機対応
我々は企業のCSR
(企業の社会的責任)
活動につ
は、これまでのやり方、考え方は通じない。危機が
いてもアドバイスしているが、CSR活動は単なる
発生したとき、最も重要なのは企業でも文化でも、
チャリティーだと考えてはいけない。CSR活動は
その企業が善意であったかどうかという意図でもな
企業のコミュニケーション戦略、レピュテーション
く、そこで起こった「ストーリー」だ。被害者の生々
戦略上重要な要素だ。CSRにおいて、重視すべき
しいストーリーがネットやメディアに露出し、事態
は、企業が何をやっているかではなく、ニーズが
の風向きを大きく変えたりもする。インターネット
どこにあるかだ。企業が行うプロジェクトによっ
時代の今、もはや広報の世界ではBtoBオンリーの
て、最終的に誰に、どのような便益がもたらされて
コミュニケーションというのはない。取引先ではな
いるのかを把握することが必要だ。その上で、CS
くエンドユーザーが、またはその企業と全く関係な
Rが実際にどれだけの恩恵をもたらしたのかが分か
い人たちが、SNS
(ソーシャル・ネットワーキン
るような、受益者を主人公とする2、3分の短い動
グ・サービス)を通じて、その企業を批判する能力
画を制作し、どれほどの社会的インパクトが生み出
を持っているということを忘れてはならない。
されたかを可視化する。企業自らが、社会貢献を声
3点目は、Why we can't(なぜできないか)だ。グ
高にアピールするのではなく、生活者自身が企業を
ローバル企業でよくあることだが、危機が発生する
ポジティブに評価していることが分かるものである
と、法務、人事、IR、渉外など、各部門が自分た
ことが重要だ。ここでは動画がポイントになる。動
ちのテリトリーの立場で主張する。こういった場
画はウェブ上で共有されることで、何十倍もの影響
で、弁護士に話を聞くと、できない理由を主張し
力を発揮する。例えばインターネットで企業名が検
て、その結果、何も行動が起こせないことがある。
索された際、その動画があることで、検索結果のネ
貴重な時間を費やしたにもかかわらず、初動を取る
ガティブニュースの順位が下がっていく。企業はコ
機会を失い、一般市民に対する説明内容も決まらな
ミュニケーション戦略、ネット戦略とCSR活動を
い。特に日本企業では、広報と法務の意思疎通が不
リンクづけ、自社にとって、どのようなプロジェク
十分な企業が多いため、こういったことに陥りやす
トがふさわしいか見極めなければならない。しっか
い。
りと結び付けることができれば、そのCSR活動は
部門を超えたオープンなコミュニケーションを
企業のレピュテーションに貢献する強力なツールと
なるだろう。
危機が発生した際には、まず戦略を定める必要が
最後に
ある。それはコミュニケーション戦略であり、対政
府戦略であり、法的な戦略だ。
(クライシスに結び付
外国市場、特に米国、英国マーケットの思考回路
く)批判や規制は欧米を発端とすることが多い。故
について十分に理解すること、自社のCSRの取り
に、その秘匿特権について理解しておかなければな
組みを世論やメディアに紹介してくれる独立した第
らない。日本の法的特権とは性格が異なっている。
三者(有識者、政治家など)を増やすこと、外国の
問題が発生してすぐに広報と法務が話し合った場
ソーシャルメディアに対して自社の批判が台頭しつ
合、それは秘匿特権対象となり、規制当局も原告弁
つあるかどうかをチェックするリスクマネジメント
護士もアクセスすることができない。そうすること
を導入すること、こういった取り組みを平常時から
によって戦略を有利に進めることができる。
行うことが、緊急時に自社を助けることに繋がるだ
また、危機が継続している間は、異なる部門、異
なる役職の人たちが互いに信頼し合い、オープンな
ろう。
k
(文責:国内広報部主任研究員 大野祥子)
2016年3月号〔経済広報〕
11
企業広報研究
グローバル広報は
国内広報とどう違うか
ロス・ローブリー
エデルマン・ジャパン(株) 社長
経済広報センターは2月9日、
「企業広報講座」
(東京会場第6回講座)
を開催した。エデルマン・ジャパンの
ロス・ローブリー社長が、グローバル広報と日本国内での広報の違いや注意点を説明し、日本企業がどのよ
うなグローバル広報体制を構築すべきかについて講演した。参加者は約70名。
グローバル広報について
コンテクスト文化の最たる日本では、文脈に多くの
日本企業が、グローバル広報に注目し始めたのは
意味を含ませることを好む。日本のリリースを見る
3年ほど前からではないか。そのころからグローバ
と、主張よりも正確な情報提供に重きが置かれ、事
ル広報についての問い合わせが増えた。しかし、な
実をただ述べているだけのものが多い。一方、海外
かなか次のステップには進まない。多くの企業の海
で発信されるリリースには、強い主張が含まれ、ス
外売上比率が伸びたこともあり、グローバルな広報
トーリー性に優れたものが多く見られる。これは、
体制を構築したいという経営トップが増えている
こういった文化の違いに起因しているといえるだろ
が、その広報体制をつくるのは、簡単なことではな
う。
い。各社それぞれの事情があり、予算や人員、グ
また、昨今では、自動翻訳技術が進化しており、
ローバル広報の目的も異なっている。スーツで例え
キュレーションサイトなどでは、海外のニュースが
るならば、One-size-fits-allのスーツはなく、一社
すぐに翻訳され、配信されている。逆のケースもあ
ごとにテーラーメイドで丁寧に作っていく必要があ
り、日本のニュースが自動翻訳され、ロイターやブ
る。そのことを、まずは経営トップに理解してもら
ルームバーグなどの海外メディアで流れるといった
う必要がある。
ことが発生している。つまり、言語の壁が壊れた
事業のグローバル化を広報で支援するために
多くの企業が海外進出を果たしている今、広報活
今、日本と海外で異なるリリースを発信するといっ
たことが成立しなくなり、日本のリリースが発信さ
れた瞬間に翻訳されて、全世界へ発信されること
動も海外のステークホルダーを対象に含めること
で、誤解を生むリスクが出てきている。そのため、
は避けられない。海外への情報発信には、コミュ
グローバル広報では、海外だけに焦点を当てるので
ニケーションの3要素である「話し手」
「メッセージ」
はなく、国内広報も全て含めた考え方が必要になっ
「聞き手」の特性が日本国内とは異なることを理解す
ることが重要である。
●
「話し手」の違い
12
直接的な表現で正確に伝えることを好む。一方、高
てきている。
●「メッセージ」
の違い
日本のような高コンテクスト文化から低コンテク
日本は、社会の均一性が強く暗黙知の共有を前提
スト文化の地域へ向けたメッセージ作りには「言っ
とした高コンテクスト社会であるといわれている。
たつもり」という落とし穴が付きまとう。また、日
エドワード・ホールの著書『文化を超えて』による
本とは、逆の意味での捉え方をされてしまう恐れが
と、スイスやドイツは低コンテクスト文化であり、
ある。例えば、日本では、100年続いた老舗など、
〔経済広報〕2016年3月号
企業広報研究
歴史があることがプラスの企業イメージを与えるこ
ようにメッセージを広めるかといったデジタル戦略
とがあるが、海外では、古くさいなどマイナスの企
が求められている。
業イメージを与えてしまうことがある。
また、海外でのプレスリリースでは、社長のコメ
ントがカッコ書きで提供されることが多い。これら
は、広報担当者が作成し、そのほとんどが経営トッ
メディアリレーションも現地の
事情を反映する
グローバルに広報活動を展開するためには、その
プのチェックなしで発信されている。このように、
地域の事情を把握しなければならない。例えば、製
企業が伝えたいメッセージを社長の肩書きを使って
品にトラブルがあった際に日本では、社長が会見に
流し、それが記事として掲載されることがよくあ
出ることを求められるが、米国では、CEOより
る。しかし、日本企業では、コメントを入れないリ
も、その製品を熟知した事業部トップや技術部門の
リースが多く、海外メディアのニーズに応えられて
責任者が会見に出ることが好まれる。このように、
いない。現在のリリースに社長のコメントを入れる
国ごとの文化や事情に合わせて、情報発信の方法を
か、その承認プロセスをどのように整えていくかな
考えていかなければならない。
ど、海外向けリリースを作っていく際には、検討す
グローバル広報体制の課題
べきである。
●
「聞き手」の違い
先ほどのリリースに社長のコメントが求められて
いるといったように、
「聞き手」側のニーズを把握し、
それに合った情報提供をしていくことが重要であ
る。多くの企業は自社のホームページに企業概要を
掲載しているが、ストーリー性がないものが多い。
たとえ、日本国内で知名度があったとしても、その
会社のことをよく知らない海外の記者がホームペー
ジを見た際に、サイトの英語版が情報の列挙になっ
グローバル広報体制の課題には次のようなものが
ある。
1.グローバルセンターとしての役割――本社から
情報を発信するか、ハブ体制にするか、ローカ
ル体制にするかを決める
2.グローバル・ガバナンス――各市場の意思決定
プロセス、コミュニケーション方法、測定基準
などをグローバルレベルで統括する
3.グローバル人材の育成――グローバルおよび
ていたり、社長の経歴が履歴書のように書かれてい
ローカルで活躍できる人材を発掘し、教育し、
たりすると、何を行っている会社かよく分からな
繋ぎとめておくためのプロセスとツールを開発
い、といったことが起こってしまう。会社概要にス
トーリー性を持たせることで、海外の人たちの理解
を深めることができる。
また、海外のメディアやステークホルダーが強く
求めている情報は、その企業が社会にどう貢献する
する
まずは、グローバルに対応した広報体制を整備す
ることが必要である。冒頭で述べたように、各社そ
れぞれの事業展開やグローバル広報の目的によっ
て、最適な広報体制は異なる。
かといった社会的意義に対する説明である。
「 聞き
次に、見落としがちな点であるが、整備した広報
手」のニーズを理解した上でのコミュニケーション
体制を生かすルール作りが必要である。リリースは
が求められている。
どの時点でハブ拠点と連携するか、現地との協力体
デジタルを活用する重要性
制をどうするか、情報発信時に本社の承認がどのレ
ベルで必要かなどを決めていく必要がある。
日本企業はトラディショナルメディアとの関係構
最後に、グローバル人材の育成が最も難しい問題
築に重きを置く傾向にあるが、デジタルを活用する
である。特に、日本では、グローバル広報を理解
重要性を忘れてはならない。トラディショナルメ
し、言語の壁を超えて、企業の文化や事情を説明で
ディアとハイブリッドメディア(ウェブメディア)の
きる人材は少ない。良い人材を育てるためにも、社
大きな違いは、ハイブリッドでは検索ができ、情報
内コミュニケーションに力を入れる必要がある。日
を容易にシェアできることである。簡単にシェアで
本企業は、これらの課題について、適切に対応して
きることで、情報は拡散していく。情報発信はどの
いかなければならない。
メディアからでも構わないが、オンライン上でどの
k
(文責:国内広報部主任研究員 西田大哉)
2016年3月号〔経済広報〕
13
企業広報研究
Facebook運用から
複数ソーシャルメディア
運用のフェーズへ
〜変わりゆく生活者とメディアの関係、
注目高まるソーシャルメディアにおける情報発信のキホンとは〜
小 野 寺 翼(おのでら・つばさ)
(株)
メンバーズ エンゲージメント・ラボ
Facebook、Twitterの企業活用が浸透し、最近は
です。
LINEやInstagramといった、ソーシャルメディアへ
「携帯・スマホ・タブレット・パソコン」
閲覧の多
の注目も高まっています。日本国内では、2010年
くは、インターネットへの接触であると推測されま
ごろよりFacebookのユーザー利用が広まり、企業
す。生活者のメディア視聴の中心が従来のマスメ
視点でも
「Facebookページ運用=ソーシャルメディ
ディア
(テレビ)
からインターネットに移り変わった
ア運用」という時代がスタート。数年の時を経て、
節目の年といっても過言ではないでしょう。
次のフェーズが訪れていると感じています。
データで見る「インターネット」
と
「生活者」
の接触の変化
下図は、生活者が1日の中でインターネットをど
のように利用しているのかを示すデータです。
まずは、生活者のインターネットやソーシャルメ
ディアへの接触に関する、大きな変化を示すデータ
(博報堂DYグループ ソーシャルメディア・マー
ケティングセンター調べ:「全国ソーシャルメディ
アユーザー 1000人調査」第3回・分析結果報告)を
紹介します。
(博報堂DYの調査を元にメンバーズが作成)
SNS
(ソーシャル・ネットワーキング・サービ
2014年はインターネットというメディアにおい
ス)
に最も多く時間を使っていることが分かります。
て歴史的な年でした。
「携帯・スマホ・タブレット」
この流れで、生活者のソーシャルメディア利用に
と
「パソコン」の閲覧時間が「テレビ」を追い越したの
関するデータを見てみましょう。各ソーシャルメ
ディアにおける、生活者の利用時間の変化(比較:
1年前)
を示すデータ
(ICT総研:
「2015年度 SN
2014 年
S利用動向に関する調査」
)
です。
1年前と比べ
「増えた」
という回答が最も多かった
のはLINE、次いでInstagramという結果です。この
2010 年
2メディアは、生活者がスマートフォンを中心に利
(博報堂DYの調査を元にメンバーズが作成)
14
〔経済広報〕2016年3月号
用しているメディアであり、近年の「スマートフォ
企業広報研究
ているページや友だちが発信した情報
すべてが届くわけではなく、そのユー
ザーにとって関連が高いと判断された
情報のみが届きます。この優先度を判
断するのが
「ニュースフィードアルゴリ
ズム」と呼ばれるロジックです。優先度
の判断基準は様々ですが、ユーザーに
よるページへのアクセスや該当ページ
への投稿へのアクションなども重要な
判断基準となります。故に、関係構築
ン」の普及や接触時間の増加に大きく起因している
ものと考えます。次いで、FacebookやTwitterへの
回答が多くなっています。
が重要なメディアだといえます。
そのため、商品PRやイベント情報といった「企
業視点」のみではなく、プラスアルファ「生活者
企業広報という視点でもソーシャルメディアの活
(ファン)
目線」
を盛り込むことがポイントです。
用、そして、Facebookだけではなく、Twitter、さ
らにはLINEやInstagramを視野に入れた「複数ソー
シャルメディア運用」の重要性を示唆するデータで
あると感じます。
各ソーシャルメディアのメディア特性
「複数ソーシャルメディア運用」を考えるに当た
り、まずはそれぞれのメディアの特性を整理しま
し ょ う。Facebook、Twitter、Instagram、LINEの
4メディアの国内ユーザー数とメディア特性をまと
めました。
ソーシャルメディア
Facebook
Twitter
国内ユーザー数
・ファンとの関係構築
・ターゲットを選んだ情報発信(リーチ)
2,230万人以上
・即時性の高い情報発信とコミュニケーション
・リツイートが生む伝播力の高さ
※推定値
※推定値
810万人以上
Instagram
※Facebook社公表値
5,800万人以上
LINE
メディア特性
2,400万人以上
※LINE社媒体資料より
・写真を中心とした感性訴求のコミュニケーション
・若年層/女性を中心としたユーザー層
・ユーザー数を生かした大規模なリーチ
・サイト、店舗への送客メディア
次項以降では、それぞれの特性を踏まえ、各メ
左)Nissan:エイプリルフール(4月1日)のタイミングで、社
名変更というウソ投稿を実施。実際に、社名を変えた社屋
写真を紹介するといった、この日だけに許される「ユーモ
ア」が生活者目線でもウケ、ファンからの反響が集まって
います。
右)ANA.Japan:飛行機の操縦席から見える風景を動画で紹
介。航空会社らしく、ファンが普段はなかなか見ることが
できない興味深い内容に人気が集まっています。また、動
画はほかのタイプの投稿(写真やリンク紹介)と比べ比較的
リーチが伸びやすい傾向にあります(メンバーズ調べ)。
ま た、 情 報 を 届 け る に は 投 稿 広 告(Promoted
Post)の活用が重要です。投稿を広告として出稿す
ることで、より多くのユーザーにリーチできる機能
です。実際、企業のFacebookページのオーガニッ
ディアの活用のポイントをご紹介します。
ク(広告出稿を行わない)投稿のリーチ率(リーチ数
■Facebook:ファンとの関係構築とターゲットに
/ファン数)は減少傾向にあり
(平均:15%程度
(メ
向けた情報発信
ンバーズ調べ)
)
、情報の露出という視点では広告の
Facebookは自社のFacebookページが発信した情
活用が必須ともいえます。また、広告を活用するこ
報を、ファン
(そのページに対し、いいね!をして
とで届けたいユーザーの年代・性別・趣味嗜好、自
繋がってくれたユーザー)に届け、関係構築・コ
社サイトへの訪問状況といった様々な情報を元に
ミュニケーションを行える場です。そこで、重要な
ターゲティングしてリーチすることもできます。広
のが
「ニュースフィードアルゴリズム」の存在です。
告の活用も視野に入れ、より多く、より適切な生活
ユーザーのページ(ニュースフィード)には繋がっ
者に情報を届けましょう。
2016年3月号〔経済広報〕
15
企業広報研究
※Facebook広告については下記ページを参考にし
Facebook同様、Twitterにも様々な広告機能が存
てみてください。
在します
(例:プロモツイート:企業発信ツイート
Facebook広告:Facebook for Business
をリーチしやすくする広告)。こちらも活用してみ
https://www.facebook.com/business/products/ads
てください。
■Twitter:即時性の高い情報発信やコミュニケー
ション!リツイートによる伝播を
Twitterは140文字以内のテキストをベースに情
参考:プロモ商品:Twitter for Business
https://biz.twitter.com/ja/ad-products
■Instagram:写真を軸とした感性訴求のコミュ
ニケーション
報発信を行うメディアです。その手軽さ故に、即
時性に優れています。商品やイベントの紹介から
Instagramは画像や動画などの素材を軸とした感
何気ない挨拶、リアルタイムでの情報発信、時事
性訴求のメディアです。企業や生活者が撮影し、時
を盛り込んだユーモアまで。多くの企業が、そん
にこだわりを持って加工(Instagram内包機能)した
なメディア特性を生かし反響に繋げています。
写真を投稿し共有する。そんな世界観がベースとな
ります。若者や女性を中心に人気を集めている点も
特徴です。
左)タ ニ タ
(@TANITAofficial)
:
朝 の 挨 拶 と 共 に、 タ イ ミ
ングにマッチした自社商
品を紹介。
右)SHARP シャープ:今まさ
に、テレビCMで紹介され
ている自社商品をリアルタ
イムでツイート。
以下で紹介する2事例ですが、いずれの企業も
FacebookやTwitterではイベント情報やCSR
(企
業の社会的責任)情報など様々な情報を発信してい
るのに対し、Instagramではフォロワーに喜ばれる、
訴求力の高い写真に特化し発信しています。
即時性の強いTwitterはテレビ放送との連携にも
向いています。
フォロワーの共感を得たツイートは、リツイー
ト機能を介してフォロワーからフォロワー、さら
にその先のフォロワーへと広い伝播に繋がる点も
特徴です。
また、リプライ機能
(@)を使えば、個人ユーザー
のツイートに企業アカウントから語り掛けること
が で き ま す。 こ の 機 能 を 利 用 し、 ア ク テ ィ ブ サ
ポートを実践している企業も存在します。Twitter
上で困っている生活者を企業が見つけて語り掛け、
左)TOYOTA:クルマ好きと想定されるフォロワーに対し、必
ずクルマが写り込んだ写真に特化し紹介。
右)ローソン:店舗で販売の商品(スイーツを中心に食べ物)と
いった訴求力の高い写真に特化し紹介。
手助けする。従来のカスタマーサポートは顧客か
らの問い合わせを待って対応するといった、受け
またInstagramの特徴として「ハッシュタグ」が重
身と呼べるサポー
要 視 さ れ ま す。FacebookやTwitterに も 存 在 す る
トで したが、 ソー
機能ではありますが、Instagramには、Facebookや
シャルメディアの
Twitterが持つほかのユーザーに共有する機能(シェ
存在 が、こう いっ
アやリツイート)が存在しないため、フォロワー以
た攻めのサポート
外のユーザーとの数少ない接点を生む機会ともいえ
を可能にしました。
ます。
富士通FMVサポート窓口のアクティブサポート事例
16
〔経済広報〕2016年3月号
企業広報研究
・ホーム投稿
LINEもFacebookの よ う に、 ホ ー ム 画 面 と 呼 ば
れる自社ページに投稿
(ホーム投稿)を行うことが
できます。投稿された情報は友だちのタイムライ
ン(注)に届けることができます。ホーム投稿には、
Facebookと同様に、投稿を見た友だちがアクション
(いいね・コメント・共有)をとることができる、関
係構築やコミュニケーションに繋げることができま
ジュエリーブランドのアカウントで投稿された写真。ハッ
シュタグ
「#婚約指輪」をクリックすると同様のハッシュタグが
付与された写真が一覧で表示される。インタレスト軸での検
索対象とできる。グローバルを意識し英語のハッシュタグを
複数付与している点もポイント。
す。クイズやリサーチを実施し、友だちとのコミュ
ニケーションに繋げている事例が多くなっています。
(注)タ イムライン:各ユーザーが繋がっている企業や友だ
ちのホーム投稿を表示し確認できる画面。
■LINE:大規模リーチを武器に、サイトや店舗に
送客、友だちとのコミュニケーションにも
先述の通り、LINEは国内で最も利用者数が多い
プラットフォームです。この利用者数を武器に大
規模なリーチを強みとしています。また、スマート
フォン中心の利用である点も特徴です。
企業アカウントの主な発信方法は、2通り存在し
ます。
・メッセージ
ユーザー同士のやり取りと同様、友だち(企業
アカウントと繋がっているLINEユーザー)にメッ
セージを送ることができます。友だちにメッセージ
が届くと、プッシュ通知でお知らせが届くため
(ユー
ザー側で通知オフに設定も可能)
、従来のメール配信
よりも高い開封率を望めます。メッセージで、主に
サイトや実店
左)ジョージア:新発売の商品を紹介。
「飲んでみたい人は⇒い
いね」と依頼をし友だちからのアクションに繋げている。
発売前に、反響のリサーチ指標としても活用できる。
右)アットホーム:画像を使い間違い探しクイズを実施。テキ
ストを使い、いいねスタンプの種類で選択肢(間違い箇所
数)を提示し、解答を募っている。
※ホーム投稿の「いいね」は複数種類のアイコン(顔文字)で押
し分けることができる。テキスト部でアイコンごとに選択
肢を割り当て回答してもらうことができる。
企業広報における、ソーシャル活用のこれから
本稿では、生活者とソーシャルメディアとの関わ
舗への
「送客」
りの変化から、複数のソーシャルメディア運用にお
に成果を発揮
ける情報発信の基本的な考え方をご紹介しました。
します。
まずはそれぞれのメディア特性を理解し、各メディ
アの活用法を考え、自社に合ったメディアを選定し
ましょう。
そもそもの、ソーシャルメディア活用の大前提と
なりますが、ソーシャルメディアは自社に何かしら
左)
楽天市場:セール開催のお知らせをメッセージで配信し集
客に活用。
右)
ローソン:実店舗で販売の商品を紹介。しずる感たっぷり
の写真を使い興味を訴求し実店舗への来店や購入促進を
狙っている。また、詳細を知りたいユーザー向けに商品紹
介ページへのリンクを設定しサイト送客にも繋げている。
1枚の画像で複数の情報・リンクを紹介している点もポイ
ント。
の興味を持ってくれている生活者と繋がれる場所で
す。そんな生活者が求める情報を届けることで、自
社に、より興味を持ってもらい、さらに好きになっ
てもらい、時にコミュニケーションにも繋がる。企
業発信におけるソーシャルメディアの重要性、その
再確認のきっかけとなれば幸いです。
k
2016年3月号〔経済広報〕
17
ANGLE
エネルギーを繋ぐ力
電
気事業連合会は、
「電気事業の
電の必要性、原子力発電所の安全対
健全な発展を図り、もってわ
策の考え方と具体的事例などについ
が国の経済の発展と国民生活の向上
て、ご説明をしています。電力の供
に寄与する」ことを目的に、全国の
給は平常時ばかりでなく緊急時も、
電力会社10社で構成された団体で
現在のことばかりでなく将来のこと
す。主な活動は、電気事業に関する
も考えていく必要があることを踏ま
調査研究、資料・情報の収集、知識
えると、エネルギーの選択肢のひと
の普及などです。広報部では、毎月
つとして原子力は欠かすことができ
実施している会長による記者会見を
はじめ、ホームページなどの各種媒
体を通じて様々な情報発信を行って
森田浩司
(もりた・こうじ)
電気事業連合会
広報部部長
広報活動としては、このほかに
も、環境問題への取り組みや、統計
情報、海外の電力情報など、電気事
います。
今年4月からの電力小売り全面自由化を控え、電
業全般について行っています。電気事業における
気料金に注目が集まっていますが、電気事業は「経
CO(二酸化炭素)
排出量は国内全排出量の3割以上
2
済性」のみならず、
「供給安定性」
「環境性」を併せて考
を占めていることから、地球温暖化問題を電気事業
えていくことが求められています。しかし、この3
の重要課題として位置づけ、毎年、
「電気事業におけ
つの課題を同時に解決することはとても困難です。
る環境行動計画」
を策定し公表しています。昨年は、
発電方法には、火力、水力、原子力、再生可能エネ
電気事業連合会関係12社と新電力有志24社により、
ルギーがありますが、どれも完璧なものはなく、そ
低炭素社会実現に向けた新たな自主的枠組みを構
れぞれ長所・短所を持っています。そのため、これ
築・公表しました。
らの特徴を活かしながらバランス良く組み合わせる
「エネルギー・ミックス」を基本としています。
最近の話題としては、電力の安定供給に取り組む
電力各社の社員を紹介したホームページの動画コン
しかし、福島第一原子力発電所の事故以降、原子
テンツがあります。
「エネルギーを繋ぐ力」と題した
力に対する信頼は大きく揺らぎ、様々なご意見をい
この動画は、発電、送電、配電の各部門で活躍す
ただいています。電気事業者としましては、福島事
る社員の安定供給にかける想いを紹介したもので、
故後に見直された原子力の規制基準をクリアするの
10名の社員を紹介しています。私たち電気事業者
はもちろんのこと、さらなる安全性向上に向け、た
は、電気を安定的にお届けすることが最大の使命で
ゆまぬ努力を続けているところですが、依然として
あり、社会のお役に立つことが喜びであり、誇りで
厳しいご意見をいただいております。
す。そんな想いを少しでもご理解いただければと考
こうした状況から、社会の皆さまから少しでもご
理解をいただけるよう、電気事業連合会のホーム
ページをはじめとする各種媒体を通じて、原子力発
18
ないものと考えています。
〔経済広報〕2016年3月号
え作成した動画です。ぜひ、一度ご覧いただければ
幸いです。 URL:http://www.fepc.or.jp/enelog/movie/
k
メディアに聞く
生活情報部で
報道価値を高める
■経済部、社会部の一部が生活情報部に統合された
とお聞きしたが、その目的は。
角谷公英(かどや・こうえい)
(株)フジテレビジョン 報道局生活情報部長
角谷 記者活動のクラウド化だ。部を統合し、これ
までのタテ割り発想ではなく、これまでと異なる観
点から経済・社会・政治を報道し、報道価値を高め
ラエティー番組やイベント、映画、などなどいろん
るのが狙いだ。部がなくなったとはいえ、当然、兜
なコンテンツをプロデュースした。だから、いろい
クラブ担当、厚労省担当がいる。ただ、これまでの
ろなものを見ても、
「これはバラエティー向きだな」
発想だと、どうしても財務省、経産省、厚労省と、
「イベント向きだな」
といろんな角度から考えてしま
権力のある取材先を主語にした切り口になりがち
う。報道も、いろんな角度で覗いてみて可能性を膨
だ。しかし、生活情報部では、制度改革を報道する
らませてみたい。
にも権力を持たない人の側・思う通りにならない人
■企業の広報部門と接して思うことは。
の側に立った報道を心掛けている。例えば、医療制
角谷 紙のリリースは、もう終わってもいいのでは
度改革を報じるにも、
「どうして薬代がこんなに高い
ないかと思っている。特に、文字だらけのリリース
のか」と思っている人たちの気持ちを基本にしたい。
は。ビジュアルが大切だ。これはマスコミ側も悪い
■生活情報部になって、例えば、どのように変わっ
のだが、ファクスで送ってほしいと要望する。この
たのか。
ため、私の部下のところにも毎日、何百枚ものリ
角谷 例えば、国立競技場の問題にしても、「これ
リースがファクスで送られてくる。ぱらぱらとめく
は政治部、これは社会部」という発想ではなく、誰
り、目に留まったものの中から、面白いと思ったも
の責任でこうなったのかという問題意識を共有し、
のだけが採用される。われわれも情報が欲しい、リ
チームで取材する。視聴者からすれば、
「この問題は
リースが欲しい。しかし、目に留まらなければ意味
社会部担当なのか、政治部なのか」は関係ない。こ
がない。そのためにもビジュアルが重要だ。
れまでだと、ここまでは社会部、ここからは経済部
私はテレビ局のためにも、企業広報のためにも、
ということもあったが、生活情報部では、1人の記
テレビ局にリリースを蓄積する情報貯蔵タンクのよ
者が、官庁や政治家を取材し、その延長で企業を取
うなものが必要だと思っている。それがあれば、情
材することもある。
報を必要としているテレビ局の担当者が、誰でも検
■これまでの担当は。
索をすることができる。一方の企業もリリースをそ
角谷 入社後、ドラマ「北の国から」のADを経験し
こに送ればいい。今のように、関心のありそうな記
た。仕事は、キツネのエサ係から始まった。当時エ
者、知り合いのデスク、解説委員などと、1つのテ
サをやりながら、キツネはエサを食べるとき、こん
レビ局に同じリリースを何通も送らなくて済む。k
な表情をするのか、このサイズでカメラで撮れば、
こういう絵になるな、などということが分かった。
正直しんどい仕事だったが、物事をいろんな角度か
ら見ることができるようになった。その後、情報バ
(聞き手:常務理事・国内広報部長 佐桑 徹)
1992年にフジテレビ入社。ドラマのAD、「めざましテレ
ビ」チーフプロデューサー、お台場合衆国団長などを経て、
2015年に報道局に異動、企画取材部長を経て2月より現職。
2016年3月号〔経済広報〕
19
11月23日~ 12月15日
NEWS
~エネルギー・環境技術の最先端
想定できるか、記者会見をいつ設
と将来展望~燃料電池やICTを
定するかなどの実践演習に取り組
活用したエネルギー高度利用技
んだ。参加者は23名。
術」、講師:穴水 孝 東京ガス 営
業イノベーションプロジェクト部
Keizai Koho Center News
執行役員 部長)
11
/
30
30日~ 12月4日の日程
で、
「ロバート・ボッシュ財
団ドイツジャーナリスト訪日プロ
グラム協力」を実施した。
(詳細は、
早稲田大学理工学部で
11
/
23「企業人派遣講座」を実施
うため、
「事業活動に関する懇談
した。
( テーマ:
「21世紀における
会」を経団連会館で開催した。懇
科学技術と社会~センシング技術
談会終了後、法政大学の武石恵美
11
/
30
の現状と展望~リモートセンシン
子キャリアデザイン学部教授が、
聘プログラム」を実施した。
( 詳細
を会員に説明し意見を伺
本誌2月号を参照)
30日~ 12月4日の日程
で、「ASEAN政治家招
グ」
、講師:四家 千佳史 コマツ
「ダイバーシティ時代の働き方」
を
執行役員スマートコンストラク
テーマに講演し、企業経営にとっ
ション推進本部長(兼)コマツレン
て重要なダイバーシティ・マネジ
タル 代表取締役会長)
メントについての問題点や課題な
11
/
30
らびに女性活躍推進新法の内容を
創生に関する講演会」を福岡で開
簡潔に説明した。参加者は70名。
催した。テーマは、
「日本の経済と
11
/
24
早稲田大学商学部で「企
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
は、本誌2月号を参照)
大阪経済大学の岡田晃
客員教授を講師に、「地方
地方経済の行方~少子高齢化時代
11
/
27
「企業広報講座
(第3回
の税・財政・社会保障を読み解く
ベーションと成長戦略~第2次
大阪会場)
」を開催し、山
~」
。岡田氏は、訪日外国人が増
産業における取り組み(5)」、講
見インテグレーターの山見博康代
加する中、地方への経済的な波及
師:内海 実 花王 エグゼクティ
表取締役が、
「広報・危機対応の基
効果が大きい観光産業の育成は急
ブ・フェロー)
本と企業危機にいかに対応する
務であり、受け身ではなく積極的
か?~基本を学び5つの演習を通
に地方を世界に押し出すような、
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
じて実践力を身に付けよう~」を
官民、業種・業態を超えた戦略が
で「企業人派遣講座」を実
テーマに講演した。参加者は、危
重要だと述べた。参加者は20名。
施した。
( テーマ:
「科学技術特論
機発生時、記者からの質問を幾つ
た。
( テ ー マ:
「日本企業のイノ
11
/
25
20
11
/
26
当センターの事業活動
〔経済広報〕2016年3月号
早稲田大学理工学部で
11
/
30「企業人派遣講座」を実施
塩の結晶などを見学し、
「たばこ」
した。
( テーマ:
「21世紀における
を深めた。
と「塩」の歴史と文化について理解
科学技術と社会~センシング技術
の現状と展望~生体の計測」、講
師:内山 朋香 タニタ 開発部生体
科学課)
12
/
1
広島市立大学で
「企業
人派遣講座」を実施した。
ながら説明した。参加者は54名。
(詳細は、本誌1月号を参照)
12
/
2
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
で「企業人派遣講座」を実
施した。
( テーマ:「科学技術特論
(テーマ:「21世紀の企業の挑戦
~エネルギー・環境技術の最先端
~ブロードバンド時代のビジネ
と将来展望~二酸化炭素の回収・
マ ス コ ミ 幹 部 と 企 業・
ス戦略~セレンディピティ」、講
貯留技術の現状と展望」
、講師:
団体の広報担当役員、広
師: 松 本 敏 文 T & Y マ ツ モ ト
熊谷 司 日揮 営業本部中国事業推
コーポレーション 代表取締役)
進部部長)
は2007年から年に1度開催して
12
/
1
12
/
4
お り、2015年 は、 マ ス コ ミ 側 か
た。
( テ ー マ:「 日 本 企 業 の イ ノ
学の渡邉浩平大学院メディア・コ
ら新聞社の経済部長、論説委員、
ベーションと成長戦略~第3次
ミュニケーション研究院教授が講
編集委員、経済誌編集長、テレビ
産業における取り組み
(1)
」
、講
演した。渡邉教授は、SNSの発
局経済部長など52名、企業側か
師:阿波 誠一 ヤマト運輸 執行役
展に伴い、胡錦濤政権下・習近平
ら広報担当役員、広報部長など
員経営戦略部長)
政権下の事故報道を例に、現在の
12
/
1
報部長との懇談の場として、
「マス
コミ、企業・団体の広報関係者と
の懇親会」を開催した。この会合
早稲田大学商学部で「企
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
133名が参加した。
12
/
1
「生活者の企業施設見学
勉強会
「中国メディアの
現状」を開催し、北海道大
中国メディア環境を冷静に見極め
12
/
2
日本理科教育支援セン
る術を示唆した。参加者は40名。
ターの小森栄治代表を講
会」をたばこと塩の博物館
師に、企業広報講演会「技術を子
(東京都墨田区)で開催し、社会広
どもたちにどう説明するか」を開
12
/
4
聴会員28名が参加した。参加者
催した。小森氏は、戸田建設が五
アと日本企業との懇親会」を開催
は、学芸員の解説を聞きながら、
島列島に建設した浮体式洋上風
し、日本企業の海外広報・中国事
たばこゾーンでは国内外の喫煙具
力発電施設の仕組みを、水に浮か
業担当者など47名、在日本中国
や美術工芸品、塩ゾーンでは日本
ぶ洋上風力発電模型を使い、子ど
メディア37名、中国大使館から
の塩づくりの工程・特徴や世界の
もにも分かりやすい形で実験をし
6名が参加した。
2014年 度 に 引 き 続 き、
本年度も「在京中国メディ
2016年3月号〔経済広報〕
21
11月23日~ 12月15日
NEWS
Keizai Koho Center News
略」、講師:堀 修 東芝 研究開発
ンバー制度開始説明会」を経団連
センター所長)
と共催した。マイナンバーに関わ
る各省庁から、導入に向けてのス
12
/
8
早稲田大学商学部で「企
ケジュールの確認と、事業主が進
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
めるべき直近の具体的な事務に加
た。
( テ ー マ:「 日 本 企 業 の イ ノ
え、マイナンバーの今後の活用に
ベーションと成長戦略~第3次
ついて説明があった。参加者は約
産業における取り組み
(2)
」
、講
600名。
早稲田大学理工学部で
12
/
7「企業人派遣講座」を実施
師:福田 輝光 NTTデータ ビジ
した。
( テーマ:
「21世紀における
グデータビジネス推進室室長)
ネスソリューション事業本部ビッ
科学技術と社会~センシング技術
した。
( テーマ:「21世紀における
講師:須賀 健人 Niantic Labs ア
12
/
9
ジア統括マーケティングマネー
施した。
( テーマ:「科学技術特論
講師:稲葉 陽子 NTTデータ 技
ジャー)
~エネルギー・環境技術の最先端
術革新統括本部技術開発本部サー
と将来展望~航空業界におけるエ
ビスイノベーションセンター課
長)
の現状と展望~位置情報ゲーム」、
12
/
8
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
で
「企業人派遣講座」を実
のぞみ総合法律事務所
ネルギー ・環境先端技術」
、講師:
の結城大輔弁護士と森総
木下 陽介 全日本空輸 整備セン
合研究所の森健代表を講師に、企
ター部品事業室原動機生産業務部
業広報講演会
「企業の危機管理~
生産技術チームリーダー)
初動対応の重要性と広報部門への
期待~」を開催した。参加者は67
名。
(詳細は、本誌1月号を参照)
12
/
8
12
/
11
12
/
15
慶應義塾大学総合政策
学部・環境情報学部で「企
マ:
「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
見る『経団連ビジョン』⑤」
ロードバンド時代のビジネス戦略
~スマートハウスにおける新たな
サービス創出に向けた取組み」、
マ:
「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
12
/
14
ロードバンド時代のビジネス戦
滑な対応を促進するため、
「マイナ
マイナンバー制度
(社会
保障・税番号制度)への円
PR・IR・危機管理
4月号
の現状と展望~ビッグデータ」、
日本経済新聞に
「数字で
京都大学で
「企業人派遣
講 座 」を 実 施 し た。
(テー
科学技術と社会~センシング技術
業人派遣講座」を実施した。
( テー
と題する「意見広告」を掲載した。
定価:1300円
(税込)
編集・発行
株式会社宣伝会議
購読申込
講師:吉田 博之 大和ハウス工業
総合技術研究所主任研究員)
インターネットからもお申し込みいただけます。
http://sendenkaigi.com/
〔経済広報〕2016年3月号
k
(国内広報部 鈴木陽子)
[巻頭特集]
わが社の広報
「イノベーション」計画
[青山広報会議]
広報部を新設 何から始める?
[特別企画]
新年度に社内の理解を深めよう
月刊「広報会議」読者サービスセンター
TEL: 0 3 - 3 4 7 5 - 3 0 1 0
22
早稲田大学理工学部で
12
/
14「企業人派遣講座」を実施
広報活動とネットリスク Q&Aハンドブック
企業PRの「明日のヒント」
vol.3
広報担当者は
「トップのプロデューサー」となれ
岡本純子(おかもと・じゅんこ) コミュニケーションストラテジスト/(株)グローコム 代表
トップのコミュニケーション力がこれまでになく
トーリー)の棚卸、発掘
求められる時代、皆さんの会社の社長、幹部の方々
作業が第一段階だ。
「見つ
は存分にその力を発揮できていらっしゃるだろうか。
ける」のステップは図2
まずは、以下のテストで、トップのコミュ力を皆
さんなりに診断していただこう。
1.訴 え た い メ ッ セ ー ジ が あ ま り 明 確 で は な い。
2.メッセージがあまり心に刺さらない。
3.抽象的な言葉が多くないか。
4.聞き手に分かりにくい言葉を使っている。
5.聞き手のインスピレーションやモチベーション
を喚起しない。
6.エネルギー・情熱が感じられない。
7.アイコンタクト、表情、ジェスチャーなどの
「デリバリー」がうまくない。
8.比喩、逸話、ストーリーなどの要素があまりない。
9.一方的に、自分の話したい話だけをしている。
10.スピーチ、プレゼン、挨拶の前にほとんど練習
しない。
5~7個当てはまっていたら、黄信号。8~ 10
個当てはまっていたら完全な赤信号である。ここ
で、広報の担当者が取るべき方策は2つ。トップに
のように3階層から成
る。①メディア、外部有
識者などへのヒアリング
■図1 リーダーシップコミュニケーション
リーダーシップコミュニケーションの3step
の3step
語るべきストーリーを
FIND
 トップ・社内外ヒアリング・調査
見つける
 経営課題の抽出
 コーポレートストーリーの棚卸
 パーソナルストーリーの棚卸
CREATE
 コンセプト策定
つくる
 ストーリーライブラリーの作成
 キーメッセージ、Q&A作成
 スピーチライティング
COMMUNICATE
伝える
 メディアトレーニング
 パブリックスピーキングコーチング
 メディアコミュケーション
 ダイレクトコミュニケーション
■図2
FIND
見つける
エグゼクティブが語るべきストーリーを見つけて、集める
 経営環境調査による課題抽出
努力してもらって、コミュ力をなんとしてでも上げ
 経営課題
 競争環境
 ステークホルダーの評価・関心
てもらうか、広報として、トップのコミュ力を上げ
 コーポレートストーリーの棚卸
るためにできるだけのバックアップ体制を取ること
 企業ストーリー(ブランドコンセプト)
 商品のストーリー
 従業員のストーリー
だ。これが2つともできれば万々歳だが、日本の
 パーソナルストーリーの棚卸
トップやエグゼクティブの78%(筆者推計)が「俺は
 経営信条
コミュニケーションが上手だ」
「コミュニケーション
 パーソナルストーリー
 課題認識・戦略
など重要な課題ではない」「生まれつきだから仕方
やデータ分析などから外部環境を把握した上での経
ない」と思っている節があるので、前者はなかなか
営課題の抽出、②会社の資産である商品、サービ
ハードルが高い。
ス、人に関するストーリーの棚卸、さらには③トッ
となると、広報の皆さんが、
「トップをプロデュー
プの個人的な哲学・ストーリーの棚卸だ。
ス」していくことが早道だ。秋元康がAKB48を育
ここでオススメするのがトップ、エグゼクティブ
てたように、米国の大統領候補の参謀のように、皆
に徹底したヒアリングを実施すること。その手法以
さんがトップやエグゼクティブのコミュ力を磨き、
下、3ステップの進め方については次回、詳しくお
演出し、育てていくのだ。
伝えしたい。 トップコミュニケーションを図1のように、見つ
ける→つくる→伝える、の3ステップで捉えてみよ
う。このステップはどのPRの作業の基本動作に
も共通しているが、まずは徹底したコンテンツ(ス
k
岡本純子(おかもと・じゅんこ)
読売新聞記者、電通PRコンサルタントを経て渡米。帰
国後、独立し、企業のPR支援などを手掛ける。
「トップコミュニケーション」分野の経験が豊富。
(http://www.glocomm.co.jp/)
2016年3月号〔経済広報〕
23
国際プロジェクト紹介⑧
ユスロン駐日インドネシア大使
との懇談会を開催
経済広報センターはかねてより、海外のオピニオンリーダーとの懇談会などを積極的に開催している。
この活動の一環として、会員企業・団体と主要国の駐日大使との忌憚のない意見交換の場を設けていくこ
ととし、その第1回会合を1月20日に、ユスロン駐日インドネシア共和国大使を招き、開催した。
日本側からは、経団連の友野宏副会長(新日鐵住金相談役)、大八木成男日本・インドネシア経済委員長
(帝人会長)をはじめ23名が参加。日尼経済関係やTPP
(環太平洋経済連携協定)
、テロ対策など、幅広い
テーマについて活発な意見交換が行われた。
以下はユスロン駐日インドネシア大使の発言概要で
ある。
【ユスロン大使発言概要】
2015年、日尼関係は大きく前進した。ジョコ大統領
来日
(3月)
、経団連ミッションの訪尼(4月)、日本イ
ンドネシア文化経済観光交流団の訪尼(二階俊博団長
ほか1000人以上、11月)といった重要な交流があった。
加えて、インドネシア人の訪日者数も前年比30%増加
し、20万人を超えた。インドネシアと日本は、戦略的
なパートナーである。両国の関係は望ましい方向に向
かっている。
日本はインドネシアの開発に関して、最も重要な
パートナーである。2015年、インドネシア投資調整庁
の日本事務所が日本企業に許可したインドネシアへの
懇談会の模様とユスロン駐日インドネシア大使
直接投資の件数は、前年比96%増加した。高速鉄道建
設の件はあったが、両国の経済関係は、ますます強固なものとなっている。
インドネシアでは、外国からの投資を促進すべく、昨年、関連手続きの簡素化など、8項目から成る政策パッ
ケージを決定した。この中には、1000億ルピア以上の投資か、1000人以上の雇用を計画する企業に対しては、
3時間以内に投資申請を認可するシステムの導入も含まれる。
インドネシアの2015年の経済成長率は4.7%で、前年(5.0%)を下回った。世界銀行は、2016年の途上国全体の
成長率を4.8%としているが、ぜひともこれを上回りたいと考えている。世界銀行は、インドネシアの2016年の
成長率を5.5%と予測しており、これは、インドネシアの経済ファンダメンタルズに対して高い信頼を寄せてい
る証左である。もちろん、中国経済の減速や資源価格の下落により、国際経済が混迷していることは大きな問題
である。これに対処すべく、インドネシアとしては、インフラ整備における政府支出の拡大、国内消費の活性
化、ならびに投資手続き簡素化の一層の推進に取り組んでいく。
2015年には、国際経済スキームにつき、2つの大きな進展があった。ひとつは、10月のTPPに関する大筋
合意であり、もうひとつは、12月のASEAN経済共同体の発足である。TPPについては、既にインドネシ
アは参加の可能性を検討している。ASEAN経済共同体については、域内の関税撤廃が進んでいるが、非関税
措置にも努力し、地域の統合性をさらに高めていきたい。
1月14日、ジャカルタで連続爆破テロが起きた。これに対してはインドネシアの治安当局が、迅速な対処に
成功した。発生の30分後には警察当局が現場を制圧し、4時間後には平穏を取り戻した。テロ事件が為替や株
価に影響することもなかった。インドネシア政府はテロ撲滅に真摯に取り組み、インドネシア居住の日本人の安
全を守るために、あらゆる対応を行っていく。
k
(国際広報部主任研究員 長谷川正彦)
24
〔経済広報〕2016年3月号
企業広報ニュース
博報堂、博報堂DYメディアパート
広 報
トピックス
ナーズは共同で「ASEANメディアコ
ンテンツ調査」の2015年版をASEA
ASEANでの日本に関する
情報源、「テレビ」「口コミ」が上位
N主要3カ国(タイ、ベトナム、インド
ネシア)で実施した。
調査では、日本への高い来訪意向が
続いており、3カ国全体の傾向として
「1年以内に訪問したい国」
「将来的に訪
問したい国」において日本の順位がいず
れもトップ3に入っていること、また、
日本に関する情報源の国別比較
日本に対するイメージは、タイでは「食」
「観光」
「技術」
が60%前後と高く、ベトナム、インド
ネシアでは、
「技術」
「食」
「教育」へ興味を示し、イメージ構造が比較的似ていることが分かった。
最後に、日本に関する情報源を聞いている。7つのメディアジャンル
(地上波テレビ、口コ
ミ、有料テレビ、ソーシャルメディア、動画サイト、ポータルサイト、広告)のうち、各国共
「テレビ」と「口コミ」が高いが、タイとインドネシアでは
「地上波テレビ」
が多いのに対し、ベト
ナムでは「有料テレビ」が活用されている。また、ソーシャルメディアなどのネット情報がこれ
らのジャンルを補完している構造がうかがえる。
k
(国内広報部主任研究員 西田大哉)
Book
『未 来 に 選 ば れ る 会 社 CSR
から始まるソーシャル・ブランディング』
同書は、環境とCSR(企業の社会的責任)にフォーカスし
た日本唯一のビジネス情報誌
『オルタナ』編集部が、CSRに
特化した取材を8年にわたり行い、その内容をまとめた集大
成の一冊だ。タイトルの「未来」には、「未来の顧客」
「未来の社
会」
「未来の従業員たち」という思いが込められている。
企業にとっての最大のミッションは組織や事業を永続化す
ることであり、その実現には営利の追求だけでなく、社会
全体から支持されることが必要だ。同書では、企業のコアバ
リューに「社会的課題の解決」を置き、「ソーシャル・ブラン
ディング」を「顧客だけでなく社会全体から支持されることに
より
『未来の顧客』に選ばれるための『強み』を作り上げるため
の作業」と定義している。
では、企業はどのような作業をすればよいのか。同書では、
ソーシャル・ブランドは「E(エコロジカル)
」
「S
(ソーシャ
森 摂
(オルタナ編集長)
+
ル)」「G(ガバナンス)」の3つのエリアから成り、企業が各エ
オルタナ編集部 著、
リアで社会的課題を解決するための活動を選び、展開してい
学芸出版社
くことだと説明し、その際の具体的な「8つのステップ」と
2015年10月発行、
「27のポイント」を解説している。
1800円
(税別)
また、ソーシャル・ブランディングの実践事例として、大
企業編、中堅企業編、海外企業編の計20社の取り組みを紹介
している。
ソーシャル・ブランディングについての丁寧な解説と豊富な事例が掲載された同書は、これ
からCSR活動を導入する企業はもちろん、既に取り組んでいる企業が自社を振り返る際にも
参考になる。
k
(国内広報部主任研究員 大野祥子)
2016年3月号〔経済広報〕
25
2016
3
企業・団体のCSR活動
横浜銀行が取り組むCSR活動
(株)横浜銀行
お問い合わせ先
横浜銀行 経営企画部広報室
TEL:045-225-1111
HP
http://www.boy.co.jp/boy/csr/index.html
http://www.kkc.or.jp/
平成
昭和
年 月 日発行
(毎月 回 日発行)
第
年 月 日第 種郵便物認可
55 28
10 3
23 1
3
1
1
「職場体験」では、店頭や金庫などの見学を通じて、金融の仕組
みや銀行の役割について学ぶことができる
「環境」
では、環境に配慮した経営に取り組む企業
努めるとともに、社会的課題を意識した企業行動お
制度や、インターネットバンキングにおいて、紙
よび地域貢献活動を積極的に推進することにより、
の通帳を発行しないweb専用の無通帳口座
「マイス
社会に貢献し、地域の発展と一体となって発展す
マート通帳」サービスを取り扱っている。2015年5
ることを目指している。横浜銀行のCSR(企業の
月には
「マイスマート通帳」
サービスにより削減でき
社会的責任)は、この考え方に基づき、「本業の金融
た紙資源額の一部で、植樹活動を実施した。
サービスを通じたCSR活動」
「社会的課題を意識し
「こども」
では、待機児童の減少や地域の子育て支
た企業内CSR活動」
「ボランティア・寄付協賛等の
援の充実を図るため、地域の幼稚園への設備投資を
地域貢献によるCSR活動」の3つの活動を柱とし
積極的に支援し、安心して子育てできる環境づくり
て取り組んでいる。
に取り組んでいる。また、金融の仕組みや銀行の
それぞれの活動の実践に当たっては、特に重点的
役割について学ぶ職場体験を受け入れているほか、
に対応すべき項目として、美しい環境を未来に残す
「はまぎん こども宇宙科学館」や「横浜銀行アイスア
ための
「環境」、地域の未来を担うこどもを育成する
リーナ」
のスポンサーとなり、こどもたちに
「体験す
ための
「こども」、魅力あふれる地域づくりのための
る機会」
と
「発表する機会」
を提供している。
「地域」
の3つを中心としている。
「地域」では、地方公共団体がまとめる「地方版総
合戦略」
の策定および推進に協力をするため、
「地方
創生推進プロジェクトチーム」を設置した。また、
地域金融機関が持つ情報や知見などを生かしてソ
リューションを提供し、かながわブランド使用商品
の開発を支援するなど、地域畜産物のブランド強化
への取り組みを進めている。
同行は、2016年4月1日に東日本銀行と経営統
合し、持株会社
(株)
コンコルディア・フィナンシャ
ルグループを設立するが、これまでと変わらず地域
経済の発展に貢献できる金融機関を目指していく考
「第10回湘南国際村めぐりの森 2000本植樹・育樹祭」で植
樹を行った
発行:一般財団法人 経済広報センター
えだ。
k
(国内広報部主任研究員 西田大哉)
Printed in Japan
3
439
発行人/渡辺 良 編集人/佐桑 徹 [ ISSN 0918–4600
]
東京都千代田区大手町一 三
(本体価格三〇〇円+税)
- 二
- 経団連会館 電話〇三 六
- 七四一 〇
- 〇 二 一 〒一〇〇 〇
- 〇〇四 ( 送料別、賛助会員の購読料は会費に含む)
価の結果、所定の金利を差し引きする環境格付融資
号
を金融面で支援するため、横浜銀行独自のモデル評
し、円滑な資金供給と適正な金融サービスの提供に
号通巻
信用秩序の支え役としての本来の役割を十分認識
38
巻第
横浜銀行は、地域経済を支える金融機関として、