西日本新聞 避難用品 3種類準備を 2016 年 4 月 21 日 枕元、非常袋、備蓄3日分 熊本地震では、被災地の物資不足がなかな か解消せず、避難所で生活する人たちは不便 な暮らしが続いている。九州全域で余震が続 く中、 「もしも」に備え、私たちはどんな準備 をしておけばよいのか。防災士や暮らしの知 恵に詳しい主婦に、 (1)そのまま逃げられる よう枕元に置いておくもの(2)持ち出せるよう非常袋に入れておくもの(3)避難生活に 備えておくもの-の3段階に分け、準備する物のポイントを聞いた。 〈枕元に置くもの〉 今回、前震(14日)と本震(16日)の発生は夜間や未明だった。日本防災士会久留米 支部長の江藤正剛さん(68)=福岡県久留米市=は、枕元にスリッパや靴を備えるよう呼 び掛ける。屋内でもガラスなどが散乱し、避難口まで行くのにけがをする恐れもあるためだ。 「逃げ出す際、足の保護は最優先です」 月刊誌「婦人之友」の愛読者でつくり、暮らしの知恵を学び合う「福岡友の会」。会員の一 人で、阪神大震災のとき自宅が被災した主婦、山路英子さん(68)=福岡市城南区=はい つも笛を持ち歩く。 「閉じ込められた際に大きな音で助けを求められる」からだ。 いざ地震が来たらどうするか。発生時はまず、テーブルの下などに身を隠す。揺れが収ま ったら玄関を開けて避難口を確保し、徒歩で避難する。子連れの場合は、危険に備えて両手 が使えるよう、抱っこではなくひもなどを使っておんぶする。江藤さんは「自宅や勤め先か ら避難所までの経路確認を、家族で話し合い、実際に歩いてみてほしい」と助言する。 建物の倒壊の恐れがある場合は着の身着のままで逃げるが、それ以外は非常持ち出し袋を 持っていく。火災防止のため、電気のブレーカーを落として避難する。 江藤さんは「袋の中身は市販品では不十分」と指摘する。高齢者や持病がある人は毎日飲 む薬や入れ歯、乳幼児のいる世帯は紙おむつやお尻拭きなど、家族の構成に合わせて必要な 物を準備する。携帯電話を充電できる手巻き式のラジオ兼懐中電灯なども重要。レジ袋は、 トイレや骨折時の応急手当てなどに使える。 重要なのは「背負える重さ」であること。福岡友の会会員で主婦の牧野古都美さん(75) =同市南区=は5年前に準備した非常持ち出し袋が、体力の衰えに伴い背負えなくなってい た。「そろえただけで満足せず、定期的に背負ってみることが必要です」 。水は500ミリリ ットルのペットボトルで準備すると、重いときは置いて行くなど、重さの調整がしやすい。 食料も、持てるだけ持っていく。 被災時に誰が自宅にいるか分からないため、家族全員が持ち出し袋の場所を把握しておく ことも大切だ。 〈避難生活への備え〉 避難所は基本的に物資は十分ではない。避難が必要なくても、停電や断水の恐れがあるた め、江藤さんは「3日間は自力で生き延びられる備えをして」と指摘する。自宅には非常持 ち出し袋とは別に、生活に必要な物を3日分ほど用意しておきたい。飲料水は一人当たり一 日3リットル。保存食は日頃も使える缶詰やレトルト食品などがよい。 牧野さんはラップと手ぬぐいを備える。ラップを使えば皿を洗わずに済み、体に巻けば保 温効果も。手ぬぐいはタオルよりかさばらず、包帯代わりにもなる。風呂の残り湯をペット ボトルに入れ、トイレに置いておくと断水対策になる。 山路さんがお薦めするのは、あめだ。 「先の見えない避難生活で、あめの甘さが不安を和ら げてくれた」という経験談を聞いた。空気が乾燥し、ほこりっぽい避難所で喉を潤す効果も あるという。
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