リサーチャーズレポート「三宅島の台所」

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■築穴製菓見学
島で唯一の製パン所、築穴製菓の見学記録。
見学日時:2012 年 11 月 5 日(月)7:00〜10:30
○築穴製菓について
築穴製菓の現在の主人カズさんは 3 代目。おじいさんの頃は主に和菓子などの菓子類を作っていた。パンづ
くりを始めたのは 1975 年頃のことだ。現在は菓子類の製造は行っていないが、三宅島には新築祝いに餅まき
をする風習が残っており、祝い用の餅作りは請負っている。かつては一度に 120 キロを頼まれることもあっ
たというが、見学の翌週に入っていた注文は 60kg 分。昔と比べて少なくなったとはいえ、餅まきの風習が残
っていることに驚いた。
現在は島内の商店から注文を受け、その分だけを毎日作って配達している。築穴製菓は製造のみで、販売は
すべて島内の商店。レストランに卸したり、週に 1 回は給食用のパンも焼く。給食用は学校給食に指定された
専用の粉を使う。おやつパンや総菜パン、食パンなど全部で約 20 種類ほどを4人のスタッフで製造。サンド
イッチ用の食パンも、焼きそばパン用のホットドックパンも、バーガー用のバンズも毎日焼く。すべての作業
が淡々と、丁寧に、テンポよく進んでいった。
粉や、フィリングは長年同じメーカーのものを使い続けているものがほとんど。こだわりすぎないのがこだ
わりだ、とカズさんは言う。例えば、カレーパンのカレーは 40 年同じ業者から仕入れていたり、ソントンの
チョコクリーム、東京のあん屋のあんなど長年同じものを使っている。そのせいか、小倉あんパン、チョコク
リームパン、パピロ、ジャムパンなどなど、どのパンも昔から知っている、なんとも懐かしい味がする。サン
ドイッチ用の卵フィリングなど、総菜パン用の具材は手作りしている。
また、冬になると、
「ニッキリ」の注文を受ける。
「ニッキリ」とは、サツマイモをふかして柔らかくし、ミ
ンチ機にかけてミンチ状にしたものを干したものだ。今回、現物を目にすることはできなかったが、ミンチ状
の干し芋のようなものらしい。それを再びふかして柔らかくもどし、白餅に加えて芋餅を作るために使われる。
大きなタンスのようなものは手製の発酵室で、隣のボイラーから出る蒸気を利用して温度と湿度を調整でき
る仕組みになっている。ボイラーの上に置かれた大きな釜には水を張っておき、ボイラーの余熱で温められて
常に湯気がたっている。蒸気を無駄無く利用するために、釜の上に小さな穴の開いた鉄板を乗せて蒸気を強く
し、その上に蒸し器を置いて赤飯を作ることもある。オーブンは 2000 年の全島避難前から 40 年近く使って
いる年代物が 1 つと、避難解除となった 2005 年以降に導入したものが 1 つ。生地をこねる機械も、成形する
機械も長く大切に使われていることが一目見て分かった。
さらに築穴製菓にとっても、カズさんにとっても大切なものが、毎日欠かさずにつける「仕込計算表」
。毎
日の天気、気温、湿度、粉の量と水の量など日々のデータが書き溜められているファイル。神棚のような場所
にずらりと並ぶそのファイルは、2001 年上から 2004 年下版までがごっそり抜け落ちている。ここにも、2000
年の全島避難の痕跡が残されていた。
毎朝生地の仕込みは朝 4 時から始まる。すべてのパンが焼き終わるのが 10 時頃で、その横では総菜パンが
作られる。総菜パンに使う食パンやバンズは冷めてからでないと使えないので、前日に焼いたものを使う。切
り落とした耳は、ご近所のウサギを飼っているお宅に届けるそうだ。すべてのパンが出来上がる頃には掃除も
すっかり終わっていて、商店ごとに仕分けられたパンが車で配達されると製パン所の朝の仕事は終わる。
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○道具、器具など
(左)生地をこねるためのミキサー。レーズンパン用のレーズンと生地をあわせるのにもこれを使う。
(中)ボイラー。湯気が出ている部分に小さな穴が開いた鉄板をのせて蒸気を強くし、上で赤飯を蒸すこともある。
(右)奥の茶色い部分がカズさんお手製の発酵室。その手前のスチールワゴンにはこれから発酵させる成形された生地が並ぶ。
(左)40 年間使っているオーブン。パンの種類によって、古いオーブンと新しいオーブンを使い分ける。
(右)成形機。左上から生地を入れると、空気が抜かれて下に出て来る。さらにメッシュの下を通り抜けるときにクルクルと巻かれる。
(左)毎日のデータがみっちり記録された仕込計算表。同じファイルに整理され収められている。とても大切な職人のための記録。
(右)和菓子を作っていた頃から使っている木製のばんじゅう。浅いタイプもある。今は箱を作る職人がいなくなってしまったそうだ。
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○パンができるまで
(左)ベンチタイムが終了したパン生地を細長くのばし、円筒の型に巻き付ける。同じ回数だけ手早く巻けるようになるには修行が必要。
(右)最終発酵が完了すると生地は 2 倍ほどにふくれる。生地の表面がさらりとするまで乾燥させてから焼くと焼き色が美しく仕上がる。
(左)焼き上がり。右側がオーブンから出た素のまま、左は油をうっすら塗ってつやだしされたところ。このあとクリームを詰める。
(右)クリームはアーモンドとチョコレートの 2 種類で、こちらはチョコレート。オリジナルの袋に包まれて完成となる。袋の柄が素敵。
(左)手前は一番人気のメロンパン。ずらりと並べられたパンはこの後、商店からの注文伝票に従って仕分けされる。
(右)ばんじゅうに仕分けされたパンが車に積まれて各商店へと配達される。毎日だいたい 10 時 30 分頃の風景。
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○その他いろいろ
(左)サンドイッチは作業台いっぱいに食パンを並べて一気に作る。手前は玉子サラダ、奥はツナサラダ。淡々と素早く作業が進む。
(右)築穴特製バーガー。ころんとしたハンバーグがこんがり色よく焼かれていた。その上にトマト、タマネギ、ピクルス、ケチャップ。
(左)ツイストという名前の揚げパン。色づいた面と面の間の白いラインがおいしさを引き立たせる。砂糖かきな粉をまぶして完成。
(右)コッペパンに挟まれるのはパピロというクリーム。少し酸味があるカスタードといった味わい。これも人気の定番パン。
(左)成形を体験したうぐいすパン。中国粉ものの花巻のように、あんを挟んだ生地をねじって成形する。奥はクリームパン。
(右)築穴特製食パンをトーストにしてくださった。マーガリンとハチミツをたっぷりかけてがぶり。この後、揚げパンも試食した。
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■三宅島の郷土料理 −島のお母さんに聞く−
島のお母さんたち 4 人に島の料理について話を伺った。集まってくださったのは、彦坂晶子さん、佐久間
通さん、佐久間陽子さん、平野てる子さん。お手製の赤芽芋の煮物や、赤芽芋のゆかりフライ、ムロアジの刺
身やあら汁もいただいた。日常の料理からおせち料理の話までおしゃべり好きなお母さんたちと楽しい座談会
を開催することができた。その他、島で出会った方から教わったことも記しておく。
※「・」ではじまる項目が座談会以外での聞き取り内容
===============================================
座談会
開催:2012 年 11 月 6 日(火)
会場:三宅島大学本校舎 食堂
協力:彦坂晶子さん、佐久間通さん、佐久間陽子さん、平野てる子さん
===============================================
1)畑のもの
○里芋
*里芋は茎が赤い赤芽と青い白芽がある。秋頃から出まわるが、白芽のほうが少し早い。赤芽は 11 月後半く
らいから。赤芽のほうが味がよくしみるし、ねばりが少ない。
*汁ものの具にしたり、そのまま甘く煮る。ゆでて皮をむき、山椒みそをつけて食べるのもおいしい。
*芋を煮る時に少しだけみそか醤油を入れておくとぬめりが押さえられる。
*芋を素揚げにしてゆかりをつけたり塩こしょうにしたりすると、嫌いな人でも食べやすくなる。フライにし
た芋が余ったら、酢豚に入れたり、甘みそをつけて食べる。
*どこにでも売っているのは小芋だが、親芋もおいしい。大きいものでも 150 円くらいで売っている。
*親芋は皮をむいてから食べやすい大きさに割るから味がしみ込みやすいが、丸のまま煮る小芋は味がしみに
くいのでみそを入れたり味つけを濃くする場合もある。
*大きめに切って炊いて、食べるときに割ったら真ん中が白いままなのもおいしい。芋本来の香りが残る。
*白芽は味がしみにくいので煮るときにみそを入れたりする。
*芋を上手に炊けるようになるには、何回も作るのが大事。
*堀って間もない間の土が乾いてないうちは、包丁でこそげるように皮をむくと薄くむけるのでよい。
(左)商店で売られていた赤芽芋。
(中)煮物のプロの陽子さんが作った赤芽芋の親芋の煮物。
(右)ゆかりをまぶした赤芽芋の素揚げ。
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●里芋の聞き書きレシピ
[里芋の煮物]
30 センチくらいの大きな鍋で炊くくらいの量。
:材料:
赤芽芋の小芋または親芋 1.5〜2kg くらい、にぼし 10 尾くらい、砂糖大さじ 5〜7 杯、醤油お好みで
:下ごしらえ:
大きいにぼしだったら苦みが出るので頭と腹をとっておく。小さいものならそのまま使う。
里芋は皮をむいて好みの大きさに切る。
:作り方:
芋が隠れるくらいに水を入れて、10 尾くらい煮干しを入れて煮る。
芋が柔らかくなる前(竹串などが刺さらないくらい)くらいに砂糖を加える。
(大さじ 5〜6 杯くらい)
さらに少し煮て、醤油を少しだけ加える。
(味がしっかり付きすぎない程度)
芋が煮えた頃に、汁の味を見て砂糖と醤油を足す。
醤油を入れたあとは火を弱くして少し煮る。ほっくりと割れ目ができてきたらそろそろ。
汁があるうちに火を止めて、ふたをしてしばらく置いておくと余熱が入って、味もよくしみ込む。
一度冷めてから食べたほうがおいしい。
[里芋のみそ汁]
材料:
里芋、アシタバ、だし
作り方:
里芋は皮をむき、塩でもんでぬめりと汚れを落としてから食べやすい大きさに切る。
だしで煮てやわらかくなったら、みそを加える。アシタバの刻んだのを吸い口にちらすとよい。
●里芋の思いついたレシピ
[里芋の煮物の芋餅]
:材料:
里芋の煮物、片栗粉またはホットケーキミックス
:作り方:
里芋の煮物が余ったら、一度温めてからつぶして、片栗粉を加えて混ぜる。
棒状にまとめておいて、食べるときは油をひいたフライパンで両面こんがりと焼く。
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○アシタバ
*島内にはアシタバ畑じゃなくてもそこらじゅうにはえている。
*シンコ(若い芽のこと)のほうが天ぷらにしても、他の料理にしても柔らかい。
*大きく育った太い茎の部分は斜め切りにすれば使える。
*年中採れる。11 月頃が一番採れる。
*新芽が出たら、つむ。そうすると次の芽がすぐ出てくるが、放っておくと大きくのびすぎて固くなる。
*芽をつんでもすぐ「明日」にははえてくるから、
「アシタバ」と呼ばれている。
*みそ汁の青物に新芽をつまんで刻んでいれたらよい。
*醤油とみりんで炊いて佃煮にしてもおいしい。鰹節も入れる。
*湯に塩をくわえずにアシタバをゆでて、その汁をのめば栄養が無駄にならず体によい。
・油と一緒に調理すると苦みが和らぐので、炒めたり、ツナと和えたりするとよい。
(左)アシタバ。これは大きく育ってしまっているほう。
(中)アシタバをゆでてから揚げと一緒に味噌炒めにしたもの。
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●アシタバの聞き書きレシピ
[アシタバのツナマヨ和え]
:材料:
アシタバ、ツナ缶(オイル漬けがよい)
、マヨネーズ
:作り方:
アシタバはさっとゆでて水気を切る。
食べやすい大きさに切って、ツナ缶(オイルごと)
、マヨネーズを加えて和える。
※ツナ缶と醤油で和えるのもおいしい
[アシタバの佃煮]
:材料:
アシタバ、醤油、みりん、鰹節
:作り方:
ゆでたアシタバを刻んでから、醤油とみりんで煮る。好みで砂糖を加えてもよい。
味がしみたら鰹節をまぶして出来上がり。
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●アシタバの思いついたレシピ
[アシタバとお揚げの炒め物]
:材料:
アシタバ(葉の部分だけでもよい)
、薄揚げ、醤油(または味噌とみりん)
、サラダ油(またはごま油)
:作り方:
アシタバはさっとゆでて水気をしぼって、食べやすい大きさに切っておく。
薄揚げをフライパンでこんがり焼いてから1cm くらいに切る。
フライパンにサラダ油を熱して、アシタバと薄揚げを加えてさっと炒める。
アシタバがほぐれたら、醤油をジャッとまわしかけて全体に絡めて出来上がり。
※味噌を使う場合は、あらかじめ味噌をみりんにとかしておくと作りやすい。
[アシタバの茎入り野菜炒め]
:材料:
アシタバの茎、タマネギ、ニンジンなど残り野菜、ベーコンやソーセージ、塩・こしょう
:作り方:
アシタバの茎は斜め切りにする。他の野菜も同じくらいの大きさに切る。
ベーコンを食べやすい大きさに切って炒める。
野菜を加えてさらに炒め、塩・こしょうなどで味を整える。
○ニガッタケ
*春に採れる。ゆがいてから冷凍しておく。そうすると苦みがとれる。
*東京で採れたてのニガッタケを振る舞ったら、
「どうしてあのタケノコ苦いのかしら。うちの鍋がダメなの
かしら」と言われたこともある。でもその苦さが重要で、普通のタケノコは物足りなくて食べられないほど。
*苦さはみそ汁にするとよく分かる。つゆまで苦くはならないが、タケノコの苦みがおいしい。
*新ジャガイモ、新ニガッタケ、新タマネギ、アシタバで作るみそ汁が最高。
*肉じゃがにも入れる。肉は豚を使う。
*ゆでておいて酢みそをつけて食べてもおいしい。煮付けよりも苦みがやわらぐ。
*丸のままゆでただけだと苦いが、縦半分に割って中の白いモロモロをとってから食べるとよい。
*炒めても苦い。天ぷらにするときは生のまま衣をつけて揚げる。
*島の人はゆでたてに醤油をつけておひたしのようにしても食べる。
春に採ってゆがき、冷凍されていたニガッタケ。
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○サツマイモ、サツマ餅、芋餅、ニッキリ
*ゆでてつぶして片栗粉か米の粉を入れて棒状にまとめて冷凍しておく。焼き芋の残りを使ったり、牛乳や白
ごまのすったのを入れてもよい。きなこを入れたりもする。食べるときは焼いたり、団子状にしてゆがいたり
する。汁粉にはあわない。
*昔の人はサツマ餅をナマコにした。それだと半分食べて残っている分がすぐに腐ってダメになるから、今は
のして小さく切ってもらうようにしている。それを冷凍しておいておく。
*白い餅を搗いておいておく。乾燥したサツマイモをもう一度蒸し器で蒸して、白い餅と一緒に混ぜて搗く。
それの時に芋をふかしすぎると柔らかくでベタっとなってしまいよくない。
*ミンチ機でふかした芋をミンチ状にし、そのままの状態を風が吹く日にざるにのせて乾燥させ、保存してお
く。サツマ餅を作るときにふかして使う。西風が吹く日でないと作れない。西風が吹くと 1 晩で乾く。乾くと
干し芋のようになる。ニッキリと呼ぶ。
*ニッキリをそのまま揚げて食べるとカリントウのようでおいしい。干しっことも呼ぶらしい。
*サツマ餅は 2kg のニッキリに、1 うすの 1/3(6 合くらい)の餅を入れ。
・芋餅には 2 種類あって、一つはゆでたサツマイモに片栗粉を入れて棒状に固めてから焼いて食べるもの。も
う一つは、搗いておいた白餅にニッキリを混ぜて搗いたもの。
(左)芋餅の焼く前食べる分だけ切り分ける。
(右)切った芋餅を焼いたもの。バターや油などを使って表面をカリっとさせるとおいしい。
○黒ササゲ
*黒いのは珍しい。東京でもどこでも値が張るがよい豆。
*坪田だったら栽培していると思う。欲しくてもなかなか手に入らないこともある。
*赤飯にしたときには赤ササゲよりも、黒ササゲのほうがよく色が出る。
2)海のもの
○島アサリ、ハンバノリ、セ/セッコ(カメノテ)
、コナガリ、島ノリ、天草
[島アサリ]
*島アサリは片側しか殻がないのに、なぜアサリと呼ぶのかは分からない。東京ではカタガイと呼んでいた。
*季節は関係なく採れる。岩にくっついている。
*ハンバノリが採れる時期(冬)に一緒に採ったりすることもある。
*ゆがいただけで食べたり、ゆがいてかき揚げにしたり、ごはんに入れたりする。
*出汁がよくでるので、おじや・雑炊によく入れる。おじやは押し麦で作るのが美味しい。醤油で味付けし、
みそも香り程度にちょっと入れる。ノリも入れてもよい。消化がよくてすぐお腹がへる。
*島の人はゆがいたものを冷凍して保存しておく。ゆがくと殻から身が離れる。つゆごと冷凍しておく。
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[ハンバノリ]
*ハンバノリは普通のノリと違って匂い、癖がある。採れるのは冬、2 月とか。
*今は収穫量が減ってしまってあまり採れない。岩場にもあるが、海に漂っているのを採る。
*よく日に当たっているものは黄色く日焼けしていてよくない。
*採る季節によっては固い場合もある。
*ハンバは魚釣りのエサにもなる。
[セ/セッコ(カメノテ)
]
*カメノテも島アサリと同じようにゆがいて汁ごとおいておく。これもだしが出るからおじやには歯が折れて
もよいから殻ごと入れておく。
[コナガリ(トコブシ)
]
*コナガリも少なくなった。島アサリよりも固い。固いものだと思って食べていた。
*昔はゆがく前に生のまま冷凍していたので、急にお客がきて、それからゆがいても固くて食べられなかった。
*今は焼酎か酒をふってふかしてから冷凍しておくと柔らかく食べられる。冷凍臭くなりにくく日持ちもする。
*酢みそをつけて食べてもおいしい。冷凍しておいたやつを解凍してそのまま食べられる。
[島ノリ]
*土産物屋にも売っているが、実は伊豆のどこかのノリで島産ではない。
*食べるのはよく食べる。みそ汁に使うのはもったいない。
*アシタバをゆでて一緒に混ぜてもおいしい。アシタバとノリとタマネギスライスでサラダにしてもおいしい。
[天草]
*品質で名前が変わる。大島産もよいが三宅産は一等品でさらに品質がよい。そのため三宅産のものは島外に
出したほうが高く売れるので三宅では売っていない。大島産は足(根元)が長くてもっと太い。
*白っぽくなるまで掃除されていたら、コシが無くなってしまうので美味しくない。
*少し赤っぽいところが残るくらいのものが良品。
*天草にこびりついている白っぽい固まりは貝で、掃除されているほうが品質がよい。
*貝がたくさん付くのが根太草で 3 流品。本草、猫太、足太(茎だけ。煮てもだめ、粘りもない)と品質によ
って名前が変わる。
*一等品の天草とムクという海藻はよく似ていて間違えて採ってしまうことがある。
(左)島アサリ釜飯。ハンバノリも一緒に炊き込んである。
(中)商店で購入したハンバノリ。
(右)たっぷりのノリがのった島ノリピザ。
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●カメノテの思いついたレシピ
[カメノテと大根の煮物]
18cm くらいの雪平で作るくらい。3 人前ほど。
:材料:
カメノテ 20 個くらい、大根 5cm くらい、酒大さじ 2 杯くらい、塩、醤油
:作り方:
カメノテはきれいに洗っておく。大根は 2cm 厚さくらいのイチョウ切りにする。
カメノテと大根を鍋にいれてひたひたになるくらいまで水を入れ、酒も加えて煮る。
大根が透明になってきたら汁の味をみて、塩と醤油を好みの量加える。
大根が柔らかくなったら出来上がり。
○ムロアジ
*ムロアジは酢みそで食べるのが最高。余った分を酢みそに漬けておくと、翌日身が締まってとても美味しく
なる。温かいごはんの上にのせて食べる。ノリを足してお茶漬けでもよい。
*刺身をおとしたあらをスープにするとよい。
3)その他
○酢みそ/山椒みそ
*酢みそはよく使う。
*里芋をゆでて皮をむいて山椒みそを作ってつけて食べる。
*山椒みそは山椒の葉っぱをすり鉢ですって、みそと砂糖を入れて混ぜる。ちょっと甘くする。芋にかけると
芋がおやつになる。
田楽にも使える。
芋はつぶして団子にしたりせずに、
丸のままゆでただけの方がおいしい。
*酢みそは、酢とみそに砂糖を少し入れて水ですこし割る。みそ、というよりもシャバシャバの液体状。
○餅まき
*紅白の丸餅を作って建前、上棟式の時にまく。家の枠組みを組んだ時に、ちょうど屋根の四つ角に大きな餅
を置く。
「東西南北 角(すみ)の餅」とよんで厄よけにする。角の餅には昔は入れなかったが、今はお金を入
れる。1 角につき 5000 円とか 1 万円入れたりすることもある。入れなくてもよい。
*大工さんや親族が屋根に上がって紅白の餅をまく。そのときに角の餅を先にまくので、お金が入ったその餅
を狙って下で待っている。
*餅はそれぞれ自分の家で搗いたり、業者に頼んだりする。自分の家で作る場合は家族総出で餅を搗き、赤飯
も炊いたりして、けっこう大変な仕事。頭領や大工さんたちの分も祝い膳として作る。
30
○祝いごとの食べ物
*お膳を出す。今は仕出しだが昔は自分たちで作った。
*芋の煮物やお寿司を作った。お寿司は巻き寿司やお稲荷さん。
*昔は流れ作業で 300 とか 400 人前をそれぞれが自分の家で分担して作った。
*芋は大きな釜で炊く。5kg くらい芋が入っているところに砂糖をボンッと入れて、煮干しもボンッと入れて
煮た。たくさんで煮たものはおいしい。
*巻き寿司には切り干し大根を煮付けたものを巻いた。切り干しを作るところから自分たちでやった。大根を
突いて干して。今は無くなってしまった。
*昔の巻き寿司は切り干しだけだったが、恵方巻きのちょっと小さいくらいの太さで作った。味はおいしかっ
た。みんなが上手に作るからとてもよかった。
*お稲荷さんのごはんは人によって違うが、昔はほとんどごまなども何も入れない白いままのごはんだった。
米が外から見えないようにしっかりと包み込むのが島の特徴。
昔の揚げは大きかったので 1 個の大きさが一口
では食べきれないほどとても大きかった。
*米は 2 升か 3 升炊きで炊いた。ガス釜の大きいやつを借りて作った。
*それぞれ煮物が得意な人は煮物、揚げ物が得意な人は揚げ物、調理ができない人はゴボウの皮むきとか、そ
れぞれ適材適所で人手を集めた。呼ばれたら自分の包丁を持って、三角巾をかぶっていった。昔は割烹着だっ
たが今はエプロン。割烹着のほうがあったかくてよい。
○おせち料理について
*お重で 3 段とか、食べる人数に合わせて食べるものを作る。簡単なものは今でも自分で作る。
*むかしはみんな作った。今売っているのも高くて買わない。
*きんとんを作ったら残った分は凍らせおいて、あとで粉を加えて揚げておやつにしたりする。きんとんは残
っても捨てずにおいておく。お芋のあるときしかきんとんは作れないのでたくさん作っておいておく。水飴を
入れるとつやと粘りが出ておいしくできる。サツマイモをむいて、クチナシの実と重曹につけて、きれいな色
をつける。紅芋でも普通の芋でもきれいな色がでる。芋を煮たらザルでこして、平な鍋に入れ砂糖を入れる。
砂糖で水分が引き出されるので、その後にほんの少し塩とみりんを加える。鍋はだが見えるくらいまで練りな
がら弱火で長時間こがさないように火を入れる。栗を入れるときは煮汁の中に砂糖をあらかじめ入れておいた
ので煮る。冷凍するときは、煮汁と一緒に凍らしておく。
*煮物は芋、昆布、レンコン、ニンジン、ゴボウ、タケノコなど。ゴボウはきんぴらにすることもある。
*カズノコ、有頭エビ(蒸す)
、紅白なます(大根と人参)
、錦玉子(ゆで卵の白身と黄身を分け、裏ごしして
淡雪みたいして食べるもの)
、田作り、ブリ照り焼き、伊達巻き(買う)
、紅白のカマボコ(買う)
、羊羹(口
取りや飾りとして桃やサクランボの形のものを買う)
*雑煮:すまし汁。雑煮は煮干しだと臭くなるのでカツオだしを使う。餅は角餅。バットに入れて固めたもの
を切って使う。
*餅:ごまや豆、青のり、クルミなどを入れたなまこ餅を作る。よもぎも使う。よもぎ餅をサイコロのあられ
にすると美味しい。揚げたてにお醤油をタラタラとかけるともっとおいしい。牛乳パックに搗いた餅を入れて
おくとカビがつきにくい。あられを作るのにもちょうどよい。
*お供え餅:床の間に置くお供え餅は船の形に作った。何段か重ねるので、餅と餅の間に風を通してカビがは
えにくくなるように、隙間を作るための支えを入れたりした。
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○商店について
*島の商店で売ってる卵は 240 円〜250 円。商店によってサイズと値段が違う。曜日ごとで安売りもある。
農協でも安売りしていることがある。キノコも安い。仕入れの日まで知っている。
*商店は安いところを回る。同じ商品でも商店によって値段が全然違うので安いところを探す。
○郷土料理のレシピ本について
*避難先で、
島に帰ってから料理ができるようにと料理教室が開催されたが、おしゃれすぎて庶民的ではなく、
材料がなければ作れないものが多かったのを覚えている。アイデアはもらったけど、材料は島でそろわないも
のが多かった。
*島の料理のレシピ本ももらったが、おしゃれすぎだった。
*昔、観光協会が出していたレシピ集は、昔ながらの芋の田楽とか、アシタバ料理を掲載していたが、今はも
う手に入らない。
32
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実習「島おじや」の作り方
開催:2012 年 11 月 9 日(金)
会場:三宅島大学本校舎 台所
講師:彦坂晶子さん
===============================================
[材料]30cm の鍋 2 つ分
押し麦 1 袋(800g)
、ニガッタケ、赤芽芋、白ネギ、大根、アシタバ、カメノテ、味噌、醤油、塩、粉末だし
[作り方]
1)カメノテはよく洗って水から煮ておく。煮汁はだしとして使うので煮えたら汁ごとそのままおいておく。
2)押し麦を袋から出してザルにとり、水ですすぐようにして洗う。鍋に入れてカメノテのだし(身ごと入れ
てよい)と、かぶるほどの水を入れて煮る。底がこげつくので時々まぜる。
3)野菜を切る。ニガッタケは 1cm 程度の輪切り。赤芽芋は包丁でこそげるように皮をむいて一口大に切っ
てボウルに入れ、塩をまぶしてもんで汚れを落とす。大根は 1cm 角の棒状に切る。白ネギは粗く刻む。
4)アシタバは塩を加えずにゆがいて刻んでおく。ゆで汁はあとで使うのでとっておく。
5)アシタバ以外の野菜は切れたら次々に押し麦を煮ている鍋へ入れて煮る。
6)ときどき混ぜながら、押し麦に透明感が出てぷっくりとふくらんでくるまで煮る。途中、汁気が足りない
ようなら、アシタバのゆで汁を加える。ただし、シャバシャバにならないように汁を加え過ぎないこと。
7)押し麦が柔らかくなったら刻んだアシタバを加えて、味噌で味をつける。
8)味見をして、塩気が足りないようなら醤油や塩、粉末だしを加えて味を整えたら出来上がり!
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■収集資料
○三宅島大学 平成 24 年 大学案内リーフレット(三宅島大学/2012 年 7 月)
○三宅島大学事務局ブログ【島むすめ修行日記】 http://www.miyakejima-university.jp/blog/
○三宅島研究(あしたばんブックス・慶応義塾大学環境情報学部 加藤文俊研究室/2012 年 2 月)
○かわら版をつくる『あしたばん』平成二十三年夏
(慶応義塾大学環境情報学部 加藤文俊研究室/2011 年 11 月)
○『あしたばん』
『ましたばん』
(慶応義塾大学環境情報学部 加藤文俊研究室/2011 年 8 月〜11 月)
○Miyakensis 三宅島自然ふれあいセンター研究報告 vol.14 平成 22 年度事業報告
(三宅島自然ふれあいセンター アカコッコ館/2011 年 12 月)
○三宅島自然ガイド(三宅村観光産業課/2011 年 9 月改訂版)
○三宅島ジオ MAP(三宅村役場観光産業課/発行年不明)
○三宅島郷土料理集(三宅村商工会/2009 年 3 月)
○三宅島産『明日葉』スペシャルレシピ(発行者不明/発行年不明/三宅島観光協会設置チラシ)
○TOKYO の『イイシナ』み〜っけた!(東京都産業労働局農林水産部食料安全科/2011 年 10 月)
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■おわりに
8 日間の濃厚な三宅島滞在ではたくさんの島の食を味わうことができた。観光で来ただけでは味わえない、
島に来なければ食べることができないものも多かった。ニガッタケや島アサリ、カメノテなど旬の時期しか出
回らないものや、自分で採りに行かなくては食べられないものなどである。クサヤは食べなかったが、旅館や
まのべの女将が作ったムロアジの薫製はとてもおいしかった。
もっともたくさんのことを教えていただいたのが、座談会に参加してくださった方々。食の話をきっかけに、
島のにぎわいの移り変わりや、餅まきなどの文化、結婚や避難時の苦労話までご自身の体験を交えながらのお
しゃべり会は、またぜひ開催したい。
島に住む人の声を聞き、一緒に食事をし、一緒に料理を作るところまで体験できた今回のリサーチは、短期
間ながら密度の濃いものとなったと感じている。普段接することも、これまで観光以外では行ったことがない
「離島」に入ってどのようなリサーチが可能なのか、少し不安に思っていたが杞憂に終わったと言える。突然
大阪からやってきた何ものだか分からない私に、島の方々はとてもたくさんのことを話してくださった。もし
かすると、島の外から来たからこそ、たくさん話をしてくれたのかもしれない。とはいえ、個人宅の「三宅島
の台所」のリサーチ、記録をするとお願いするには、1 度の訪問だけでは足りないと感じたので、今回は三宅
島大学本校舎の台所を存分に活用することとした。
謝辞
今回、リサーチャーとして三宅島へ招いてくれた猪股さん。8 日間、仕事の手をたびたび止めてしまったけ
れど、そのおかげでたくさんの人に出会い、貴重な体験ができました。滞在中の料理では足りないくらいの感
謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとう。調査に協力してくださった、島のみなさんにもこの場をお借
りして、感謝申し上げます。またいつか、お一人お一人に新たなリサーチのお願いに伺える日がくることを願
いながらこの報告書をまとめました。本当にありがとうございました。
[調査協力]
晶子さん、通さん、陽子さん、てるこさん、築穴製菓のみなさん、花鳥羽のマスター、北川商店お母さん、旅
館やまのべの女将さん、滞在期間中に出会ってお話を伺った方々、お食事をご一緒してくださった方々、野菜
を分けてくださった方々などなど、今回出会った島のみなさん(順不同)
[協力]
猪股春香(三宅島大学マネージャー)
[リサーチャー、レポート]
辻並麻由(geco-ya 食堂主宰/NPO recip メンバー)
■三宅島大学
[主催]
東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)
、
三宅島大学プロジェクト実行委員会、三宅村
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