エネルギー機器学Ⅱ 国立大学法人筑波大学 大学院システム情報工学研究科 構造エネルギー工学専攻 阿部豊 講義概要 • • • • • • 科目番号: FG55791 科目名: エネルギー機器学Ⅱ 開講学期: 3学期 曜日: 水曜日 時限: 5時限(15:15-16:30) 教室: 3B303 • 担当教官: 阿部豊 シラバスに記載の事項 • [授業概要] 火力発電所や原子力発電所などの大規模集中 型エネルギー施設における蒸気タービンやボイラなどのエネ ルギー機器,ならびに冷凍・空調・コジェネレーションなどの 小型分散型エネルギー設備における交換機器などの熱機器 の原理や構成,流体・熱・力学エネルギ相互間の関わり、さ らには新エネルギーや地球環境問題とエネルギー機器の関 わりなどについて学ぶ。 • [授業の狙い] 種々のエネルギー形態相互間の変換の原理 と機器の構成について学び、エネルギーを扱うシステムを広 い視野に立って開発・設計する能力を養う。 • [受講生の到達レベル] 火力発電ならびに原子力発電用の 動力機器や冷凍空調機器用の小型分散型熱機器などの熱 エネルギー機器の動作原理や構成がわかるようになる。 授業計画 1.蒸気プラントの原理 蒸気の性質と蒸気表 ランキンサイクル 蒸気原動所システムと熱効率 2.ガスタービン発電 ブレイトンサイクル ガスタービンサイクルの熱効率 3.蒸気タービン・ガスタービン複合発電 汽力発電とガスタービン複合発電 複合発電の熱効率 廃熱回収 4.原子炉プラント 軽水炉(BWR、PWR)の原理 高速増殖炉(FBR)の原理 5. 冷凍・空調・コジェネレーション 熱交換器の原理と構成 ヒートパイプ、ヒートポンプの原理と構成 1. (12/1) 2. (12/8) 3. (12/15) 4. (12/22) 5. (1/12) 6. (1/19) 7. (1/26) 8. (2/2) 9. (2/16) 10.(2/23) 11.(3/2) 平成22年度講義予定 休講 動力エネルギー変換技術の変遷 ランキンサイクルと蒸気プラントの熱効率 沸騰の科学・蒸気の性質とボイラ 燃焼と輻射伝熱 ガスタービン発電とブレイトンサイクル 蒸気タービン・ガスタービン複合発電 蒸発管内気液二相流の流動と伝熱 原子力発電 冷凍・空調・熱交換器 試験 エネルギー機器(熱利用設備) • • • • • • • • • 燃焼機器: ボイラ、蒸気タービン、ガスタービン 発電プラント: 火力発電、原子力発電、廃棄物発電 外燃機関: ジェットエンジン、ロケットエンジン 内燃機関(ガソリン、ジーゼル): 自動車、船舶、原動機 工業炉: 溶鉱炉、金属精錬炉、窯業炉 工業プラント: 蒸留、蒸発、濃縮、乾燥、乾留、ガス化 電気化学反応機器: 燃料電池、太陽電池 冷凍・空調機器: エアコン、冷蔵庫 熱交換器: ラジエター、電子機器冷却、給湯 動力発生のアイディア • • ヘロン(10年頃 - 70年頃)の蒸気機関 古代アレクサンドリアの工学者・数学 者であったヘロン(10年頃 - 70年頃) が考案したさまざまな仕掛けの中に、 「ヘロンの蒸気機関」と呼ばれるもの が存在する。これは、蒸気を円周上の ノズルから噴出させることで回転力を 得るものである。これが人類史上に蒸 気機関が登場した最初のものである とされる(これは現在のものとは原理 が異なる)。 蒸気タービンに関して、1629年にイタ リアのジョバンニ・ブランカ(Giovanni Branca)が蒸気タービン(衝動タービ ン)の概念を図示したものを残してい る。その後、1882年にスウェーデンの ド・ラバル(Carl G. P. de Laval, 1845 年-1913年)が衝動式タービンを開発 (試作)。1884年にイギリスのチャール ズ・アルジャーノン・パーソンズ (Charles Algernon Parsons, 1854年1931年)が多段階反動式タービンを開 発(試作)、1889年に発電用に実用化。 1895年にアメリカのチャールズ・ゴード ン・カーティス(Charles Gordon Curtis) が二段階多速衝動タービンを開発、 1898年にはフランスのラトーが現在の ものの直系の原型にあたるタイプの タービンを実用化した。 動力発生のアイディア ブランカのタービン(1629) 鉱山の水の排水 史跡佐渡金山http://www.sado-kinzan.com/ 水上輪(1653-) パパンの真空機関 パパン パパンのエンジン(1690) 圧力とは・・・・・ • 単位面積S 当たりに加わる力F: P=F /S • パスカルの原理 「非圧縮性流体中に加えられた力 は、流体の他の 部分の圧力を同じ だけ増加させる。」 • 高さhで密度ρの流体の下にある物 体に加わる圧力P : P = ρgh • 圧力の単位: P= F( N ) 2 = ( N / m ) = ( Pa ) 2 S( m ) 10 5 ( Pa ) = 1( bar ) = 1000 ( mbar ) 10 − 3 ( bar ) = 1( mbar ) = 1( hPa ) = 100 ( Pa ) P0 h P0 + P 大気圧 • 大気圧とは、「地球上の平均海水面高さにおいて受ける圧力」 • その値は、「水銀の高さ760mm」に等しい。 ( )( ) P = ρ ⋅ g ⋅ h = 13.5951 × 10 3 ( kg / m 3 ) ⋅ 9.80665 ( m / s 2 ⋅ (0.76 ( m )) = 1.01325 × 10 5 ( kg ⋅ m / s 2 / m 2 ) = 1.01325 × 10 5 ( N / m 2 ) = 1.01325 × 10 5 ( Pa ) ≈ 10 5 ( Pa ) = 1( bar ) • また、重力単位系において大気圧は、 P 760 mm 1.01325 × 10 5 ( kg ⋅ m / s 2 / m 2 ) P= 9.80665 ( m / s 2 ) ( N / m2 ) = 1.0332 × 10 ( m / s2 ) 4 水銀 = 1.0332( kg f / cm 2 ) • 地球上の海水面高さにおいて、我々は、1(cm2)当たり1(kgf)の 力を受けている。 サグァリのポンプ機関 サグァリのポンプ機関の外観 (1698) サグァリのポンプ機関の動作原理 ニューコメンの大気圧蒸気機関 (1717) ニューコメンの大気圧蒸気機関の動作原理 ワットの蒸気機関 ワット (1802) ワットの単段膨張ポンプ機関 ワットのアイディア(その1)凝縮器の発明 ワットのアイディア(その2)往復動を回転動へ 横置往復動蒸気機関(1788) 各機関の動作原理の比較 初期の蒸気機関車 蒸気機関車の動作原理 • 加熱蒸気がピストンの左側に 入る。 • ピストンを右側に押す。 • ピストンが右側に押し切られる と、弁が開いて右側に加熱蒸 気が入る。このときピストンの 左側は低温・低圧となり、蒸気 が排出される。 • ピストンは左側へ動く。 フルトンの蒸気船 (1807) 四段膨張往復動蒸気機関 (1908) グレートイースタン号の破裂事故 (1859) 蒸気機関車の破裂事故 (1860) 熱力学の先駆者たち カルノー ジュール マイヤー クラウジウス スターリングの曲管式水管ボイラー (1889) USSミッドウェー空母博物館 東京電力㈱千葉火力発電所1号タービン発電機 (展示場所)東京電力株式会社電気の史料館 [大型火力用蒸気タービン諸元] メーカー:アメリカ・General Electric Co. 製造年:1956年 形式:タンデムコンパウンド型複流、単一再加熱 出力:125,000kW 回転数:3,000rpm 蒸気温度:1000F(538℃) 蒸気圧力:1,800psi(126kg/cm2) 排気:1.5インチ(38.1mm)水銀柱絶対圧 完全3次元流動設計低圧最終翼群 (3000rpm-48インチ スチール翼) 排熱回収ボイラー 超臨界圧ボイラ 発電機 三菱G型ガスタービン ヒートポンプの原理 日本のエネルギー需給 動力プラントの変遷(その1) • わが国における最初の火力発電所明治20年に日本 橋茅場町に設置された25kWの直流式火力発電所 である。電気事業の初期においては電力消費地を 中心として火力発電所を建設し地区ごとに電気を供 給していた。 • したがって発電はすべて火力であったがその後水力 発電技術と長距離送電技術の発達に伴い山間地の 水力発電所より消費地である市街地まで送電する ようになりさらに消費地相互の送電連系もでき発電 の規模は次第に大きくなってきた。 動力プラントの変遷(その2) • わが国は地理的にも気象的にも水力発電が比 較的容易であったため年とともに数多くの水力地 点が開発された一方火力発電所も渇水期に減 少する水力発電の出力の補給用として必要にな りいわゆる『水主火従』の原則のもとに建設が進 められてきた。 • 戦後も主として水力発電の開発に重点がおかれ 火力発電はあまり建設されなかったが昭和27年 頃から産業の飛躍的発展に伴い電力の需要は 急速な増加率で急増した。 動力プラントの変遷(その3) • しかしながらこれに対処するための水力の経済 的な開発地点は次第に少なくなってきたこと建設 期間が火力に比較して非常に長い事などの理由 から水力を主体として需要の増大に対応する事 は困難となってきた。 • 一方火力発電技術は急速に進歩し建設費の安 い熱効率の高い大容量の火力が比較的短期間 に建設されるようになってきたため従来の『水主 火従』から現在の火力を主とした『火主水従』の 電源開発方式に移行せざるえなくなった。 相変化を利用したシステム ー ランキンサイクル - Rankineサイクル(蒸気サイクル) 火力発電の種類 • 汽力・・・燃料をボイラーで燃やして作った高温高圧の 蒸気を回して発電する。 現在、火力発電の中では発電 能力・発電量ともに圧倒的に高い比率を占めてる。 • 内燃力・・・ディーゼルエンジンなどの内燃機関を回し て発電する。島などの小規模発電用として利用。 • ガスタービン・・・灯油・軽油などの燃料ガスでタービン を 回して発電する。 ピーク時の需要に対応する役割を 担っている。 • コンバインドサイクル・・・ガスタービンと蒸気タービンを 組み合わせた新しい発電方式で熱効率に優れており、 運転・停止が短時間で容易にでき、需要の変化に即応 した運転が可能。 火力発電プラントの推移 演習問題1-0 • 動力エネルギー変換技術の歴史的変遷と現代 のエネルギーと環境の問題に関連して、講義内 容を参考に考えるところを述べよ。 実存気体の性質 熱力学の復習 状態変化 状態変化の説明 • 液体をシリンダ内に入れ,摩擦のない気密性のあるピストンで蓋を する。いま,ピストンに一定の圧力 p を加えて加熱する場合を考える。 理解を容易にするために,最初,20℃であった水を 1 気圧(= 0.1013 MPa)の下で加熱するものとする。液体は加熱されると,温度がしだ いに上昇し,一般にその体積は少し大きくなる。液体の加熱による温 度上昇はどこまでも続くのではなく,液体の種類と圧力で決まる極限 値がある。例えば水は1気圧では100℃,10 MPaでは311.06℃まで は液体であるが、それ以上加熱しても液体の状態ではこれ以上の温 度にはならない。この温度をその液体の,その温度における飽和温 度という。また,この温度の液体を飽和液という。この状態では温度 と圧力の間に一定の関係があり,互いに独立な状態量にはならない。 つまり,温度が与えられると圧力は決まってしまうので、この圧力を 与えられた温度に対する飽和圧力という。 蒸気線図 温度: T 圧力: P 臨界点 液体 飽和液線 湿り 蒸気 ボイルの法則: P・v=一定 気体 飽和蒸気線 比容積: v 状態量と状態線図 V 体積 = 比容積:v m 質量 比エンタルピー:h h = u + pv = (内部エネルギー ) + (仕事 ) dQ 加熱量 = 比エントロピー:ds ds = 温度 T Helmholtzの自由エネルギF: F = U − TS v= Gibbsの自由エネルギG: G = H − TS 湿り飽和蒸気の状態量 v,h,S:湿り蒸気 v’,h’,S’:飽和水 圧力: P v”,h”,S”:飽和蒸気 x:乾き度 (dryness) 0≦x≦1 液体 x 1-x 湿り蒸気 V’ V’’ 比容積: v 気体 v − v′ x= v ′′ − v ′ v = (1 − x )v ′ + xv ′′ = v ′ + x(v ′′ − v ′) h = (1 − x )h′ + xh′′ = h′ + x(h′′ − h′) S = (1 − x )S ′ + xS ′′ = S ′ + x(S ′′ − S ′) 蒸気表の使用法[例1](湿り蒸気の場合) (T= 150℃,s = 5.0000 kJ/kgK) の場合の状態量 T = 150℃の場合 飽和圧力は、Ps = 4.760 bar = 476 kPa, v' = 0.0010908 m3/kg, h' = 632.15 kJ/kg, s' = 1.8416 kJ/kgK, v" = 0.3924 m3/kg h" = 2745.4 kJ/kg, s" = 6.8358 kJ/kgK r = 2113.2 kJ/kg ∴s’<s<s’’であるから、この状態は、湿り蒸気である。 この時の渇き度は x = (5.0000-1.8416)/(6.8358-1.8416) = 0.6324 よって v = 0.0011 + (0.3924-0.0011)×0.6324 = 0.2486 m3/kg h = 632.15 + 2113.2×0.6324 = 1968.5 kJ/kg u = h-Pv = 1968.5-476×0.2486 = 1850.2 kJ/kg 蒸気表の使用法[例2](過熱蒸気の場合) ( P = 10 MPa,T = 394℃)の場合の状態量 P = 10 MPa = 100 barの場合, Ts = 310.96℃より,Ts<T= 394℃ であるから、この状態は、過熱蒸気 である。 従って、蒸気表より、P = 10 MPaの過熱蒸気に対して T= 390℃ : v = 0.02568 m3/kg,h = 3068.5 kJ/kg,s = 6.1711 J/kgK T= 400℃ : v = 0.02641 m3/kg,h = 3099.9 kJ/kg,s = 6.2182 kJ/kgK であるから、 394℃の時の値は、 内挿値: (394-390)/(400-390) = 0.4 より v = 0.02568 + (0.02641-0.02568)×0.4 = 0.02597 m3/kg h = 3068.5 + (3099.9-3068.5)×0.4 = 3081.1 kJ/kg s = 6.1711 + (6.2182-6.1711)×0.4 = 6.1899 kJ/kgK u = h-Pv = 3081.1-10000×0.02597 = 2821.4 kJ/kg 蒸気表の使用法 [例3] (P= 10 MPa,s = 6.1899 kJ/kgK) の場合の温度 P = 10 MPa = 100 barの過熱蒸気の場合、蒸気表より 400℃の過熱蒸気のエントロピーは、s’’ = 6.2182 kJ/kgK 390℃の過熱蒸気のエントロピーは、 s’ = 6.1711 kJ/kgK であるから、 内挿値: x=(6.1899-6.1711)/(6.2182-6.1711) = 0.0188/0.0471=0.4 より、温度は T=Ts+(T-Ts) ・x= 390 + (400-390)×0.4 = 394℃ と求めることができる。 蒸気表の使用法[例4](湿り蒸気の場合) (T= 150℃,s = 5.0000 kJ/kgK) の場合の状態量 T = 150℃の場合 飽和圧力は、Ps = 4.760 bar = 476 kPa, v‘ = 0.0010908 m3/kg, v" = 0.3924 m3/kg h‘ = 632.15 kJ/kg, h“ = 2745.4 kJ/kgK, r = h" - h' =2113.2 kJ/kg s‘ = 1.8416 kJ/kgK, s" = 6.8358 kJ/kgK ∴s’<s<s’’であるから、この状態は、湿り蒸気である。 この時の渇き度は x = (5.0000-1,8416)/(6.8358-1.8416) = 0.6324 よって v = 0.0011 + (0.3924-0.0011)×0.6324 = 0.2486 m3/kg h = 632.15 + 2113.2×0.6324 = 1968.5 kJ/kg u = h-Pv = 1968.5-476×0.2486 = 1850.2 kJ/kg 相変化の科学 沸騰現象のマイクロメカニズム 半径 (mm) 2σ 気泡内外の圧力差 ΔP = r 0.1 0.05 0.02 0.01 0.005 0.002 圧力差 12 (mbar) 24 59 118 236 589 気泡内の圧力は、常に周囲流体の圧力より高い。 小さい気泡ほど、高い圧力が必要となる。 何も無いところからの発泡には、無限大の圧力差 が必要となる。 ↓ 実際の沸騰には、ある大きさの発泡核が必要。 非均質核生成 発泡核の形成 発泡開始点での気泡曲率と気泡体積 発泡の開始と最小沸騰核半径 周囲流体より高い気泡内の圧力の発生源は? 圧力と温度は一対一の関係にある。 高い圧力を得るためには、発泡核のある壁面の温度が 飽和温度より高いことが必要となる → 壁面加熱度 壁面加熱度が高い程、より小さな発泡核から沸騰可能。 飽和温度(℃) 100 102 104 106 108 110 1013 1088 1176 飽和圧力 (mbar) 圧力差(mbar) 0 75 154 1250 1339 1433 237 326 420 最小沸騰核 半径(μm) 4.87 3.52 2.71 ∞ 15.6 7.55 クラジウス-クラペイロンの式 ΔTsat = ( ρ l − ρ g )Tsat Δhv ρ g ρ l ⋅ ΔP ΔTsat = ( Tw' )onb − Tsat 2σTsat Tg ( r ) = Tsat − rΔhv ρ g ラプラスの式 2σ ΔP = Pv − Pl = r y⎞ ⎛ Tl ( y ) = Tsat + ΔTsat ⎜ 1 − ⎟ δ⎠ ⎝ 気泡の成長のメカニズム 半径rの気泡を維持するためには、気泡頂部y=r において、Tl(y)=Tg(r)でなければならないことから、 rminとrmaxがの間の大きさのキャビティが気泡を維持 可能な活性な気泡核となりうる。 沸騰現象の極限(均質核生成) ー 水蒸気爆発 - 均質核生成温度: THN 液体同士の伝熱面のように気泡核 液体同士の伝熱面のように気泡核 が存在しないとき、低温液体側が飽 が存在しないとき、低温液体側が飽 和温度以上にまで加熱されていき、 和温度以上にまで加熱されていき、 自発的に核が生成され、瞬間的に 自発的に核が生成され、瞬間的に 激しく気泡が発生する温度 激しく気泡が発生する温度 Lienhardの半理論式より ( ) THN = TSAT + 0.905 − ϑSAT + 0.095 ϑSAT 8 TCRIT ϑSAT = TSAT TCRIT 大気圧下での水の均質核生成温度は、THN = 315.6 [℃] 分散混合型蒸気爆発実験(例) スズを用いた蒸気爆発実験 1kg、800℃のスズを水槽内に落下 ⇒ 時間遅れを伴って蒸気爆発が発生 アルミニウムを用いた蒸気爆発実験 25kgの溶融アルミニウムを6m下の水槽内に落下 ⇒ 水槽を破壊する規模の激しい蒸気爆発が発生 横浜国立大学(飯田、高島)特命リサーチ200X 「謎の大爆発はなぜ起こったか」 アルミニウムを用いた蒸気爆発実験 30kgのジルカロイとアルミナを1m下の水槽内に落下 ⇒ 水槽を破壊する規模の激しい蒸気爆発が発生 K. Moriyama, et al., JAERI-Research 2005-017, (2005) 水蒸気爆発現象の詳細可視化観測 観測画像 輪郭抽出画像 PIV解析結果 平均速度:4.7m/s VISIFLOW 相変化を利用したシステム ー ランキンサイクル - Rankineサイクル(蒸気サイクル) Rankineサイクル(蒸気サイクル) • 蒸気サイクルでは、一般にポンプなどで加熱した液 体を適当な熱源(色々な種類やタイプがありうる)で加 熱し、発生する蒸気でタービンなど原動機を運転、そ こから発生する蒸気を冷却凝縮させ、再びポンプに 戻す方法がとられる。 • 作動流体としてはサイクルの作動する圧力温度範囲 で都合の良い物質を選ぶ必要があり、例えば使用す る高熱源が特に低温レベルである場合は、フレオン、 アンモニアなどが作動流体に適している。 • 火力発電や原子力発電などの通常の蒸気サイクル では、作動流体として水が使用されている。 Rankineサイクル(蒸気サイクル) 各要素内を作動流体が定 常的に流れているとする。 各要素の入り口、出口など の位置で流体の運動エネ ルギー、位置エネルギー は無視する。 1→2 ポンプ吸収仕事: LP = W (h2 − h1 ) 2→3’ ボイラ加熱: QB = W (h3' − h2 ) 3’→3 過熱器加熱: Q S = W (h3 − h3′ ) 3→4 タービン発生仕事: LT = W (h3 − h4 ) 4→1 復水器放熱: QC = W (h4 − h1 ) Rankineサイクルの理論熱効率 • 理論熱効率 η th は次のように算出される。 L − LP (h3 − h4 ) − (h2 − h1 ) (h3 − h2 ) − (h4 − h1 ) h − h1 = = 1− 4 η = T = th QB + Q S = 1− h3 − h2 h3 − h2 h3 − h2 QC QB + Q S • 給水ポンプの仕事LPは圧縮性の小さな水の仕事 であるから、普通その値は非常に小さく、タービン 仕事LTに比べて無視できることが多い。この時に は近似的にh2=h1と考えてよく、次のように書ける η th = 1 − Q h4 − h1 = 1− 2 h3 − h1 Q1 ランキンサイクルの効率向上 Q2 η th = 1 − Q1 Q2→小、Q1→大 ⇒ ηth→大 ① h3を大きくする: Q1→大 dh = c p dT T3を大きくする 圧力を上昇させる 炉の出口温度を上げる タービン翼の材料の耐熱性 ②廃熱を減らす: Q2→小 再生サイクル タービンから蒸気を取り出し、給水を加熱。タービン の効率がわずかに下がるが、全体の効率は上がる。 Rankineサイクルの熱効率向上の方法 • h1(復水器出口の飽和水のエンタルピー)は冷却水温度 (ほぼ大気温度)に近い状況下のエンタルピーであるか ら、ほぼ一定の値をとる。 • またh4(タービン出口の湿り蒸気のエンタルピー)は、湿 り蒸気の状態が飽和蒸気に近づくほど値が上昇するが、 簡単のために一定とする。 • ηthの値はh3(過熱器出口の蒸気のエンタルピー)が大 きいほどに1に近づく。 • 蒸気のエンタルピーは蒸気温度にほぼ比例して増加す る傾向を持つ。したがって、h3の値を上げるには、過熱 器出口の蒸気温度T3を上げる必要があるが、過熱器 材料やタービン翼材料の耐熱性に関連し、ある限度以 上にはT3を上げることができない。 Rankineサイクルの熱効率向上の方法 • 温度T3がある上限値で押さえられる条件の下で、熱効率 ηthをさらに高める手段として、ボイラ圧力を上げる方法が ある。これはh4(タービン出口の湿り蒸気のエンタルピー) の値が減少することを意味する。 • ただし、その際、タービ ン出口の湿り蒸気に含 まれる液体の質量割合、 すなわち湿り度が増加 し、湿り蒸気に含まれ る液滴の量が多くなり、 タービン翼に衝突して 浸食作用を起こすよう になる。 高圧:タービン出口エンタルピの低下 • 通常、蒸気タービン出 口の湿り度は、約12% 以下にするのが普通。 再熱サイクル • 蒸気タービンを高圧、低圧の2段に分ける。 • 高圧タービン内で膨張する蒸気が、湿り蒸気の状態に入る前に高圧 タービンから出て再熱器に至り、ここで加熱された後、低圧タービンに 流入するようにした方式。 湿り度の大きな湿り蒸気の発生が巧みに避けられている。 • 再熱サイクルの理論熱効率 • 理論熱効率は給水ポンプ仕事を無視 (h2=h1)した形で、 ( h3 − h4 ) + (h5 − h6 ) h6 − h1 η th = = 1− (h3 − h1 ) + (h5 − h4 ) (h3 − h1 ) + (h5 − h4 ) 再生サイクル • • • • Rankineサイクルの理論熱効率: h −h η th = 1 − 4 1 h3 − h1 上式の右辺第2項分子のh4-h1は復水器における放熱量であって、 この量は一般に非常に大きいものである。 いま、単位時間に質量Wの蒸気が流入している蒸気タービンの途中 の位置6から、蒸気の一部(質量mW)を外部へ抽出する。残りの蒸 気(1-m)Wは、さらに蒸気タービン後段で仕事をした後、復水器で 冷却されて復水する。 抽気した分だけタービンの出力は減るが、復水器からの放熱が減少 するためボイラの熱負荷も減る。したがって、後者の減少のほうが大 であれば、プラントの熱効率が上昇する。 再生サイクル 加熱方法: 混合式抽気給水加熱器: 図のように復水と抽気蒸気を給水加熱器で混 合し給水を作る方式 表面抽気給水加熱器: 抽出蒸気によって金属壁をはさんで給水を間接的 接触で加熱する方式である。 再生サイクルの理論熱効率 • 簡単のためポンプ仕事は無視すると、ボイラと加熱器での合計 か熱量はW(h5-h3)、復水器での放熱量は(1-m)W(h7-h1)で あるので、理論効率ηthは ηth = 1 − (1 − m )(h7 − h1 ) h5 − h3 • 抽出蒸気と復水の混合時のエネルギー保存を考えると、 mW (h6 − h3 ) = (1 − m )W (h3 − h2 ) ∴m = • この関係より、(h2=h1)として、 ( h5 − h7 ) − m (h6 − h7 ) η th = (h5 − h1 ) − m (h6 − h1 ) h3 − h2 h6 − h2 再生サイクルの運転条件 • 抽出蒸気が無い場合(m=0)の再熱サイクルの理論熱効 率ηth,0は、 η th,0 h5 − h7 h7 − h1 = = 1− h5 − h1 h5 − h1 • 再生サイクルによる熱効率の向上、すなわちηth>ηth,0 が成立するためには、h2=h1として h6 − h3 h6 − h1 < h5 − h3 h5 − h1 • 抽出蒸気の単位質量あたり、タービン出力の減少割合 (左辺)より、ボイラと過熱器の合計熱負荷の軽減割合(右 辺)が大であればηth> ηth,0 である。 ABWRの給水加熱 湿分 分離加熱 器 RFPT 1356MW 発電機 低圧タービン 高圧タービン 空気抽 出器 復水器 7646t/h 24at 415t/h 0.5at 566t/h 7576 t/h 216℃ 186℃ 156℃ 87at 4. 0a t 20 9t /h 計 TD-RFP 2台 19 MW 139℃ 2. 1a t 19 8t /h 115℃ 90℃ 49℃ 28at 75℃ 高圧給水 加熱器 ドレン タンク MD-RFP HPDP 4.8MW 低圧給水加熱器 低圧給水加熱器 ABC3系列計12基 復水ろ過 脱塩装置 LP CP 3M W 0. 5a t 31 3t /h 1. 0a t 21 6t /h ドレン タンク 42℃ 2.9at HP CP 5. 7MW 全12基 LP DP 0. 9MW RIP 10台 計1 3MW TEPCO 6 超音速蒸気インジェクター 蒸気の超音速噴流で駆動されるジェットポンプ ・シンプルかつコンパクトな構造 ・静的機器で動力用電源が不要 ・直接接触熱交換による高い伝熱性能 蒸気 供給蒸気ノズル スロート 水噴流 水 蒸気 混合部 デフューザ 超音速蒸気ジェットインジェクター 蒸気供給流量・・・0.023kg/s 水供給流量・・・0.53kg/s 蒸気供給面積・・・149.7mm2 スロート直径・・・7mm Steam Water Steam 観察箇所 ・蒸気供給直後にテスト部中心軸上に 水が自給され噴流が形成される ・SIの基本的な作動状態 革新的原子力発電プラント簡素化技術開発 ー 高性能蒸気インジェクタ - 復水器高さ、 タービン建屋高さ 約3.5m低減 #4 バ ッファー タン ク #3 #2 #1 ABWRの低圧 給水加熱器 #3 #4 段 Jet DA S I 段 #2 段 #1 SI 段 多段蒸気インジェクタシステム 給水加熱系の簡素化 TEPCO 8
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