附小だより11月号

11 月
神戸大学附属小学校
2016_10_28
Global Challenge Program(マルセイユ・プログラム)に参加して
校長 伊藤篤
国際都市である神戸に位置している神戸大学は,「異文化との交流」を重視しており,豊かな国際性を備えた総合大学として発展す
ることを,大学の主要な目的の一つとしています。附属小学校も,こうした目的がこれからの未来を築く子どもたちの資質・能力に適う
ものと捉え,その教育目標として「グローバル・キャリア人の育成」を掲げています。この目標を実現するための学習活動を,本校では,
Global Challenge Program(GCP)と呼んでいます。GCP の一つは,皆さまがよくご存じのオーストラリア・ブリスベンにあるアイアン
サイド校との隔年の相互交流プログラム(AUS プログラム)です。さらに,今年度からは新たな GCP が実施されました。それが,フラン
ス・マルセイユ市内にあるドーミエ校への訪問交流プログラム(MRS プログラム)です。このプログラムには 17 名の5年生が参加しまし
た。日程は,10 月 9 日(関空発)~10 月 14 日(関空着)でした。
長時間のフライトにもかかわらず,誰もが元気にマルセイユ市内のホテルに着きました。翌日に,ドーミエ校に入りましたが,ほとん
ど時間をおかずに開かれたウエルカム・セレモニーでは,事前に入念に準備をしたパワーポイントと英語による「学校紹介」「日本文
化の紹介」と「ソーラン節」の踊りを見事にやり遂げてくれました。その後,広々とした学校のカフェテリアで昼食をとりました。午後には,
2グループに分かれて,英語と体育の授業を参観しましたが,体育ではフランスの生徒と一緒に楽しそうに体を動かす場面も見られま
した。夕刻,いよいよホストファミリーとの対面です。子どもたちは,さすがに緊張の色を隠せませんでしたが,私たち教員は「頑張っ
て!」という応援の気持ちで子どもたちを見送りました。翌日は,誰もが元気にホストファミリーと一緒に登校する姿に,私たちは安堵し
ました。ドーミエ校での2日目は,子どもたちが伸び伸びと活躍できた1日でした。午前中は,日本の伝統的な遊び(コマ,折り紙,紙
風船,トントン相撲,いろはかるた,百人一首,けん玉,あやとり,ふくわらい)をフランスの生徒に教えながら一緒に遊ぶという活動で
した。子どもたちが懸命に遊び方を教え,それが奏功してフランスの生徒が上手に遊べると,自然に拍手と歓声が起きるというほほえ
ましい姿が展開していました。午後は,中学生および高校生の「日本語」の授業に参加し,ここでも,ひらがなの書き方や日本語の表
現をフランスの生徒に指導できたため,子どもたちの充足感が一気に高まりました。夕刻は,再度,緊張の場面が待っていました。そ
れは,マルセイユ市庁舎におけるレセプションでのパフォーマンス(学校紹介・日本文化の紹介・ソーラン節)です。在マルセイユ日本
総領事館の池崎総領事と胡摩窪主席領事も見守る中,ウエルカム・セレモニーの時と負けずとも劣らぬ水準のパフォーマンスを見せ
てくれ,マルセイユの姉妹都市・神戸から来たメッセンジャーとしての大役を見事に果たしてくれました。最終日には,仲良くなったホ
ストファミリーも交えて,市内観光を楽しむこともできました。このように,子どもたち一人ひとりが,附属小学校の代表として,さらに神
戸大学の代表として,十分な成果をはたして(積極的な交流と有意義な学習を終えて)帰校しています。
私自身は,これまで,AUS プログラム,以前行っておりました6年生の宿泊活動「シンガポール・インドネシア」,そして今回の MRS
プログラムに随行するという経験をもっていますが,これらが成功するためには,渡航して交流体験をもつ子どもたちが一生懸命頑張
るだけではなく,それを支える保護者の皆さまで構成される集団(フォーマル,インフォーマルを問わず)の存在が大きな力を発揮し
ていると感じています。本校では,育みたい子ども像と対応する形で,皆さまにぜひともお願いしたい「保護者像」として,「1.子どもの
学びと育ちを学校と共に喜び合える(自律)」「2.子どものために学校と手を携え共に育む (尊重)」「3.子どものためになることを進ん
で創造し取り組む(創造)」を掲げております。今後,本校の GCP を円滑に実施していくためには,子どもを育むための共同体として
の保護者の皆さまの関係性が非常に大切になってきますし,ここから生じる保護者間の連帯・協働の高まりが,子どもの健やかな成
長・発達にしっかりとつながっていくと信じております。このことは,GCP のみならず,あらゆる場面でも機能していきます。ぜひとも,
保護者間の連帯・協働を高めるという側面を意識していただきたきたく,お願い申し上げます。
最後になりましたが,これまでのグローバル・キャリア人の育成を意図した本校の取組が,「学問の発展,人類の幸福,地球環境の
保全及び世界の平和に貢献するために,国際的に卓越した教育を提供することを基本理念とし,普遍的価値を有する「知」を創造す
るとともに,人間性豊かなグローバル人材の育成をめざす神戸大学の教育を,初等教育段階から具現化していこうとするものであり,
神戸大学の機能強化のコンセプトに沿うものである」という理由から大学内で高く評価され,この 10 月 20 日(木)に,本校および附属
学校部が「第8回学長表彰」を受けましたことを報告いたします。今後も,「子どもたちが国際的に育っていくとは,どのようなことなのか」
「そのためには,小学生段階の今,子どもたちは,どのような学習や経験をすることが望ましいのか」を,保護者の皆さまと共に探求し
ていきたいと考えております。
東北にて
6 年生で取り組んでいる 2 つの単元を紹介します。一つは「東北の魅力を 仲間とともに」という単元で,仲間づくりやくらしづくり,また,
各自の興味に基づいた学びづくりを通して,子どもたちの主体性を育てることをねらう単元です。もう一つの「どうする!?地震大国日本」と
いう単元は,阪神淡路大震災や東日本大震災などの情報を基に,地震のメカニズムや被害状況,避難状況などを調べることを通して,地震大国
日本にこれからも生きる私たちのありようを各自が考え,仲間とともに,防災の国宣言を作り上げることをねらう単元です。この 2 つの単元の
活動の一環として,東北へ出かけました。この,泊を伴う活動 4 日間における子どもたちの学びを紹介します。
「東北の魅力を 仲間とともに」
「学び・くらし・仲間」 を観点に,それぞれがめあてをもって活動しました。この活動にどのような意義があったのかは,子どもたちの
ふりかえりを読んでいただくとよくわかると思います。以下,めあての観点に沿って紹介いたします。
学び
池田 理佐子
岩手の空気はとても冷たく,新鮮でした。まずは,学びです。宮沢賢治童話村では,大地の部屋や宇宙の部屋など,不思議な世界に入りました。気
持ちも高ぶり,「賢治はこんな世界で童話を書いていたんだ。」と,なんだかうれしくなりました。記念館にも行き,賢治が岩手をこよなく愛する気持ちが
伝わってきました。また,遠野ふるさと村にも行きました。私は,コースター染めを体験しました。アカネという雑草の根を使いました。ビー玉と棒で形を
作り,輪ごむで模様をつくります。なので,結果がどうなるのかわからなく,ドキドキしました。一生懸命やり方を教えてくださる遠野の方の様は,とても遠
野の文化を守りたいのだなと実感しました。きっと,遠野の文化は,これからも受け継がれていくのだろうなと思いました。
佐藤 仁美
青森は神戸と違ってとても寒かったです。三内丸山遺跡では,縄文時代の暮らしの工夫がたくさんありました。お墓には握りこぶしぐらいの石があり,
意味は,「たましいをよみがえらせる」だそうです。大型竪穴住居の柱の木は黒く焦げていました。虫の防止や腐らないようにするためなどの工夫をして
おり,縄文人は,今も使われている方法を生み出していてすごいと思いました。縄文時代は,子どもの死亡率が多く 4 人に 1 人が死んでしまうそうです。
その原因としては,処置をする薬や治療がないなどです。とてもその時の環境や土地,暮らしがわかり,勉強できました。
くらし
釜坂 理沙
暮らしについて,お風呂では,一般の方や仲間のために少しあとから入ったり,ロッカーの場所をゆずりあったり,お土産を買うときはお店を占領しな
いなど,社会人としてできなければならない行いができました。また,常にしおりをみて,どこに何時集合で,点呼を誰がいつやるのかなど考えることが
できました。次の日の退館するときの部屋チェックがすぐに終わるように,夜に片づけ,荷物づめをして遅れないように声掛けすることができました。朝,
互いに体調のチェックをして,鼻水やのどのことなど,詳しく確認しあうことができました。朝,起きた人から順に全員を起こし,時間に遅れないようにす
ることができ,5 分前行動ができました。
ホテルでは,修学旅行用の特別な対応をしていただくことなく,一般のお客さんと同じように扱ってもらうように依頼しました。例えば,お
風呂は貸し切りにしないことや,食事会場も一般の方と極力同じ会場になるようにすることなどです。それは,附小の皆さんへ,社会人として
のふるまいを求めたからです。そのかわり,小学生だからと言って何か制限を加えるようなことは一切しませんでした。社会の一員としてふる
まう中でホテルのサービスは十分に受けたらいいと考えるからです。釜坂さんのふりかえりには,社会人としてのふるまいを大切にしたことが
たくさん具体的に記されています。ここに記されてはいませんが,けじめをつけたり他者への配慮をしたりする中で,ホテルのサービスを存分
に楽しむ子どもたちの姿がありました。部屋ではテレビを観てゆったり過ごしていました。しかし,時間が来るとさっとテレビを消して次の活
動に移っている部屋が多かったと思います。また,朝風呂にも入らせてもらいました。宿泊されている方にとって朝の静けさは重要です。それ
をわかって附小生も配慮しながら入浴していました。そのようなけじめや配慮が,結果,ホテルでのゆったりした素敵な時間を仲間とともに過
ごすことにつながったのだろうと思います。
仲間
柿坪 慧
3 日目はよく寝たので,気持ちがよく,4 日間で一番晴れ晴れした気分でした。朝食もしっかり食べました。仮設住宅でのラジオ体操は人生初めてだ
ったので意外と疲れました。でも,4 日間の中で,運動や散歩ができていなかったので,よい機会でした。この朝は,一番早く制服に着替えた僕が朝食
会場に行って準備をしました。みんなしっかりと時間通りに来てくれるか心配でしたが,部屋長がみんなを時間通りに連れてきてくれたので,頼もしいと
思いました。
門脇 祥太郎
今回の活動でも,仲間のことを考えて生活できました。忘れものをしていたら届けてあげたり,自分がやりたかった役割を譲ってあげたりし,協力,支
え合いができたのでよかったです。
久保 祐太
6 年間一緒に学校生活を送ってきた仲間とともに,東北に行くことができて本当によかったと思います。みんなの意外な一面を見ることができてとて
も楽しかったです。
私たち担任一同は,この 6 年生の仲の良さをとてもうれしく思っています。仲がいいというのは,ただ表面的なかかわりのことを言ってい
るのではありません。表面的に見ると対立していたり,言い合っていたりする姿もあるからです。しかし,それは,仲間には必要なことです。
私たちは,何か一つのことを成し遂げるのに,みんなが同じ方向を見て,よりよい暮らしをしよう,より深く学ぼう,助け合って乗り越えよう
とする,そういう仲間としての良さが見えると感じています。それを,仲が良いと感じています。これからの学校行事の中で,そのあたたかく,
強い力が余すところなく発揮されることを確信しています。
「どうする!?地震大国日本」
東北における震災学習に関するふりかえりです。東北では本単元唯一の「復興支援実践の場」として,仮設住宅訪問を計画していました。ま
た,三陸鉄道に乗って震災被害や復興状況について学んだり,南三陸の元防災庁所前で黙とうをささげたりしました。その中で,子どもたちは
以下のようなことを感じ,学んでいます。
横田 彩
私は,仮設住宅に住んでいるおじいちゃんのおうちにお邪魔して,地震が起きた当時のお話を伺いました。そして,おじいちゃんは 30 分もの間,熱
く語ってくれました。おじいちゃんの住んでいた南三陸では,地震の起こる前日 10 日に町全体で防災訓練が行われていました。これは,9 日に発令さ
れた津波警報を経験し,避難場所が変わったために行ったものでした。そして,避難場所をより高いところにある神社に変えたことや,避難訓練が生か
されて多くの人の命が助かったことを聞きました。そのため,避難訓練は手を抜いて行っては意味のないもので,真剣に取り組んでほしいとおっしゃっ
ていました。また,津波の高さを予測することや津波を止めることが人間にはできないとおっしゃっていました。その証拠に,この町でも誰もが予測しな
かった 23 メートルもの津波が押し寄せています。避難するときには,小さい子どもや高齢者の手助けは行っても,同年代の友達や,しっかりと歩ける大
人などを待ってはいけない。一人ひとりが一生懸命逃げればみんなが助かるかもしれない。でも,待つことによって,ともに死んでしまい,さらに悲しみ
は深くなるととてもつらそうに話をされていました。
私には,現地の人が復興に励んでいるという強い心が伝わってきました。東日本大震災という無残な自然災害を一生忘れてはいけないと改めて感じ
ました。特に仮設住宅では,5 年間もの歳月を仮の家で過ごしているという現状や,それとは逆に,たびたび仮設住宅のなかまが引っ越してしまうさみし
さなど,いろいろなことを知り,私たちにできる最善を尽くしたいという気持ちでセレモニーを行いました。少しでも私たちの気持ちが届いていることを願
っています。
今回の東北で聞いた現地の人の話を色々な人に話すことによって少しでも多くの人に当時のことや復興の現状を知ってもらえたら,被害にあわれた
方も喜ぶと思います。このようなことを一緒に学んだ 6 年生が一つになり,協力して現地の人をサポートして自然災害はやめさせることができないと自覚
しながらも,命をあきらめるのではなく,起きてしまったときにどのように対処するべきなのかをよく考えることで,地震大国である日本の笑顔を少しでも
増やしていくことができると思います。
これからの 6 年生は
本活動を終え,一人ひとり,以下のことを考えました。それは,卒業までにどんな学年になりたいかということです。そして,その目指す姿の
ために,自分はどのような役割を果たしていくのかということも考えました。少しずつ紹介して,6 年生のページを終わります。
井上 真緒
東日本大震災では,幼児や高齢者の避難を中学生が手伝ったという
話を聞きました。その学生は,自分たちだけが助かろうとするのではな
11月の行事予定
日 曜
く,他人を思いやっているから,私たちも,互いを思いやれる絆の強い
学年にしていきたいと思いました。そして,その中で,私は,互いを思
1
火
いやれる絆の強い学年を目指す一人として,何事も自己中心的になら
2
水 なかよし遠足予備日①(弁当日)
ず,他人のことを考えて,思いやれるようにしたいし,絆を深める大きな
3
木 文化の日
機会は,ステージにもあると思うので,私も全力で取り組みたいと思いま
4
金 6年生学年懇談会
す。
5
土
6
日
7
月
な人とでも協力することができるように,また,誰かが困っていた時や予
8
火
想外のアクシデントが起こった時に,臨機応変に対応できるようになりた
9
水
い。
10
木
学校評議員会②
田中 啓士郎
11
金
明石市連合音楽会(5年生)
12
土
今まで協力し合ったり助け合ったりした仲間といられるのもあと 5 か月で
13
日
す。5 年間,いろいろな壁を乗り越えてきた仲間のはずなのに,まだま
14
月 委員会⑦,6年生進路確定日
だ嫌がらせを受けたりする人がいます。まだ 5 か月もあるので,一人に
15
火 クラブ⑧
なっている人がいたら話しかけてあげたりして,この学年で 6 年間小学
16
水
校生活をして楽しかったと思えるようにしていきたいと思います。
17
木
原田 一生
18
金 研究発表会前日準備(14:00下校)
19
土 研究発表会
20
日
21
月 なかよし遠足予備日②(弁当日)
22
火 クラブ⑨
23
水
24
木
25
金
26
土
27
日
28
月 入学選考準備(14:00下校)
29
火
30
水 新1年生入学二次選考(自宅学習日)
山田 瑛人
学年の中で助け合いながら学び,学年全員で楽しみ,笑い合えるよう
な学年にしたい。自分の役割としては,誰にでも分け隔てなく接し,どん
ぼくは,1 日 1 日を大切にすることが大切だと思います。それとともに,
どんなときでも臨機応変に対応して,お互いに配慮し合い,よりよい
学年にしていきたいと思います。その中で,僕は,リーダー,または,リ
ーダーを支える人になってこの学年を支えていきたいです。あと,みん
なの意見を聞いて,まとめることができたらいいなと思います。
神田 羽瑠
これから卒業するまでに私はもっと仲間のことを考えられる学年にな
りたいです。例えば,誰かが悪口を言っていたり変な噂をしていたりした
らその会話には入らない。自分もしない。または止めるなど。自分の見
えないところで言われるのを知ったらすごくダメージを受ける。それを知
っているのなら自分がやらなければいい。一人ひとりが勇気を出せば
できること。私たちは,中学校が分かれてしまうため,この学校で,この
学年で卒業までにもっともっと楽しい思い出を,楽しい毎日を過ごした
い。
新1年生入学一次選考
諸費振替日
6年生進路相談日(14:00下校)
勤労感謝の日
新1年生連絡進学親子面接
12月の主な行事予定
1日(木)
6日(火)
10 日(土)
12 日(月)
16 日(金)
17 日(土)
22 日(木)
学年集会を開き,みんなの思いを共有しました。
新1年生入学二次選考(自宅学習日)
諸費振替日
「ステージ」鑑賞日(弁当日)
委員会⑧,第1回新1年生保護者会
6年生休業日
中等教育学校連絡進学適性検査
冬休み前の会,給食終了