長崎県における大腸がんについて

JACR Monograph No. 9
長崎県における大腸がんについて
副島 幹男 *
吉田 匡良
陶山 昭彦
1.
谷 彰子
稲田 幸弘
池田 高良
葉山 さゆり
武田 靖之
はじめに
山川 さゆみ
早田 みどり
の割合は男女共最も多かった。
昭和 59 年より長崎県がん登録事業が開始さ
1985 年から 1998 年迄に罹患した人の年齢分
れ現在に至っている。登録業務は県から委託さ
布は、いずれのがんもピーク年齢は男性が 60
れ、㈶放射線影響研究所が行っている。今回、
歳台、女性が 70 歳台で女性の年齢が高かった。
全国的に大腸癌が増加傾向にある為、長崎県の
大腸癌の実態について分析した。
1000
罹患数
結腸男
直腸男
結腸女
直腸女
900
800
2.
700
対象と方法
600
1985 年から 1998 年の 14 年間に長崎県がん
500
登録に登録された大腸がん症例 15,913 例(男
300
400
9,153 例、女 6,760 例)について全がんに占め
200
る割合、年齢分布、罹患数・罹患率・死亡率の
0
0-4
5-9
10-14
15-19
20-24
25-29
30-34
35-39
40-44
45-49
50-54
55-59
60-64
65-69
70-74
75-79
80-84
85-89
90-94
95-99
100
推移、早期がんの割合等について調べた。
3.
年齢
図 1. 年齢別罹患数(1985-1998 年)
結果及び考察
1998 年の長崎県における部位別罹患数の割
壁深達度別の罹患数の推移では m,ss の増加
合は、男性では胃がん 19.2%、肺がん 16.7%に
が著しかった。98 年では m 22.1%、sm 7.8%、
次いで結腸がん 12.3%、直腸がんが 5 番目で
pm 6.8%、ss 27.0%、se 13.8%、adv.NOS 9.8%、
7.7%、女性では、胃がん 14.9%、乳がん 13.1%
UNK 12.8%だった。
に次いで結腸がん 12.1%、直腸がんは 6 番目で
6.7%であり、結腸、直腸を合わせた大腸がん
1600
1400
表 1. 部位別罹患数の割合(1998 年)
男性
胃
気管∼肺
結腸
肝臓
直腸∼肛門
前立腺
膀胱
食道
悪性リンパ腫
膵臓
*
女性
19.2%
16.7%
12.3%
8.6%
7.7%
6.3%
3.8%
3.4%
2.2%
2.7%
胃
乳房
結腸
気管∼肺
子宮
直腸∼肛門
胆嚢、胆管
肝臓
膵臓
悪性リンパ腫
14.9%
13.1%
12.1%
8.7%
7.9%
6.7%
5.2%
5.0%
3.9%
3.6%
UNK
1200
adv .NOS
1000
se
800
ss
pm
600
sm
400
m
200
0
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98
図 2. 壁深達度別罹患数の年次推移
㈶放射線影響研究所疫学部 腫瘍組織登録室(長崎県がん登録室)
〒850-0013
長崎市中川 1-8-6
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年齢別の罹患数の年次推移では 60 歳以降の
罹患率と死亡率について日本人人口で年齢を
増加が著しかった。
調整し推移を比較すると、男性の罹患率の増加
が顕著に見られる。それに対して死亡率は男女
1600
ともほぼ横這いであった。男性では罹患率と死
1400
81才∼
76∼80才
1200
1000
800
600
400
200
亡率の乖離現象がみられた。
71∼75才
66∼70才
100
61∼65才
56∼60才
80
51∼55才
0∼50才
60
大腸 男 罹患率
大腸 女 罹患率
大腸 男 死亡率
大腸 女 死亡率
40
0
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98
20
図 3. 年齢別罹患数の年次推移
0
86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97
発見動機別に見た早期癌の割合は、検診発見
図 5. 罹患率と死亡率の比較
例、人間ドック、入院時ルーチン等の偶然発見
例で早期癌が高く、自覚症状ありのケースでは
進行癌が高かった。85-89 年と 94-98 年の比較
では検診発見における早期癌の増加が著しか
った。
80
70
60
早期がん(85-89年)
50
早期がん(94-98年)
40
進行がん(85-89年)
30
進行がん(94-98年)
20
10
0
検診(男)
検診(女)
自覚(男)
自覚(女)
図 4. 発見動機別早期がん,進行がんの割合
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