犀川スキーバス事故 追悼の言葉

犀川スキーバス事故 追悼の言葉
今年も、1月28日がめぐってきました。学生22人、体育教員1人、バス乗務員2人、合計25人
もの尊い命が失われた犀川スキーバス事故から31年目の冬です。
毎年のことですが、この時期は大寒にあたり、一年で一番寒い季節です。1985年1月28日の現
地は、一面雪に覆われ、ダム湖周辺の湖面が氷結する寒さでした。その後毎年現地で追悼法要が執り行
われています。今年も現地では、凍てつくような寒さの中で、静かに湖面を思う時間が過ぎていること
と思います。
成人になる前後の年に、大切に育てた我が子を突然失う苦しみは、何年たっても癒されるものでは
ありません。ご遺族の悲しみは今も続きます。しかし、31年の歳月は、ご遺族を高齢化させ、その悲
しみを毎年共有し続けることも、だんだん困難になっています。私たちは、慰霊碑に書かれているよう
に、
「悲しみを二度とあらしめぬために」、ご遺族の悲しみに深く思いを寄せて、これからも合掌を続け
てまいりたいと思います。
事故から31年の間に、日本福祉大学は7学部を有する「ふくしの総合大学」に成長してきました。
そして、昨年4月には第7の学部として看護学部を開設しました。
「いのち」の尊さは、
「ふくし」の原
点です。「いのち」があってこそ、「くらし」も「いきがい」も意味を持つのです。
日本福祉大学は悲惨な事故を二度と繰り返さないために、全学をあげて「危機管理」に取り組み、毎
年1月28日に現地法要に加えて、本学で追悼集会を行うとともに、毎年10月の第3木曜日を「安全
の日」と定め、全キャンパスで地域の皆様にもご参加頂いてさまざまな啓発活動を行っています。そし
て、本日の追悼集会には、一昨年2014年4月のフェリー転覆事故で高校生を中心として300名を
超える犠牲者を出した韓国の名古屋総領事館からも代表の方にご参加頂いています。このような活動は、
今後も、日本福祉大学が存続する限り、続けてまいります。
さて、今年は、大変残念なことがありました。それは、1月15日に、長野県軽井沢町で、スキーツ
アー客を乗せた大型バスが道路から転落し、乗客・乗務員15人が亡くなったことです。亡くなった方
の大半が犀川スキーバス事故の犠牲者と同世代の学生であり、しかも事故現場が犀川からわずか60キ
ロメートルしか離れていなかったことは、私たち日本福祉大学の教職員・学生にとって大きな衝撃でし
た。それだけに、改めて、全学をあげて事故防止活動を強めようと決意しました。
最後に触れておきたいことは、本学のスキーバスを運行していた三重交通が、事故から31年を経
過した今も、社をあげて慰霊の時間を共有していただいていることです。雪深い現地でご遺族が怪我を
しないように、社員が前日から現地に赴き雪を溶かし、道をつくる等、安全確認に努めていただいてい
ます。
その気持ちも大切にしつつ、今年もみなさんと合掌をしたいと思います。そして、入学式の頃には、
亡くなった22人の学生と体育教員1人の魂が宿った「友愛の桜」が見事な花を咲かせるように願いた
いと思います。
2016 年 1 月 28 日
日本福祉大学学長
に
き
二木
りゅう
立