CIICメールマガジン-第 68回- 減価償却

CIICメールマガジン-第 68回-
公認会計士・税理士 井村
登
減価償却
[減価償却って何]
社
長
3 月決算が近づいて来ています。そこで今さら何なんですが、いつも計上されている減価償却
費ですが、そもそも減価償却っていったい何なんですか?
会計士
機械や車輛運搬具などは、消耗品とは違って取得したときに一度に費消し価値がなくなるので
はなく、利用や時の経過に伴い次第に価値が減少します。このような事実を会計的に処理する
のが減価償却という手法です。
[定額法と定率法]
社
長
なるほど。ではどのように、次第に価値を減少(減価償却費の計上)させていくのですか。
会計士
はい。会計的には定額法と定率法が代表的な手法としてあります。
社
では、簡単にその手法を例示で教えて下さい。
長
[計算方法]
会計士
では、次の設例で説明します。
(設例)
取得価額
10,000,000 円
耐用年数
10 年
取得日
期首(H27.4.1)
(その資産で国が用意している法定耐用年数表で調べる)
定額法 1/10 ⇒ 0.100
償 却 率
定率法 0.100×200%=0.200
(実務上は国が用意している償却率表で 10 年の率を各々調べる)
保証率等
保証率
0.06552
改定償却率
0.250
(定率法で使いますが、国が用意している表で 10 年の率を各々調べる )
(1)定額法の計算
経過年数
1年
2年
3年
4年
5年
6年
7年
8年
9年
10年
(単位:円)
期首帳簿価額
償却限度額
(償却費の額)
100,000,000 100,000,000×0.100
10,000,000
(償却率)
90,000,000
10,000,000
80,000,000
10,000,000
70,000,000
10,000,000
60,000,000
10,000,000
50,000,000
10,000,000
40,000,000
10,000,000
30,000,000
10,000,000
20,000,000
10,000,000
償却計算
(取得価額-償却費の累計額)
同上計算で備忘価額1
10,000,000 円控除
9,999,999
償却費の
累積額
10,000,000
20,000,000
30,000,000
40,000,000
50,000,000
60,000,000
70,000,000
80,000,000
90,000,000
99,999,999
(コメント)
・定額法で計算しますと毎期 10,000,000 円の償却費が計上されることとなります。
・耐用年数 10 年で償却が終了します。
1
会計士
(2)定率法の計算
(単位:円)
①
②
③
経過
期首帳簿価額
定率法
年数
1年
(取得価額-⑧の
償却費の累計額)
計算額
100,000,000 ②×0.200
④
⑤
⑦
⑥
定率法
償却保証額
改訂
切替後の
償却限度額
(ここまでは償却を認める額)
取得価額
償却限度額
(⑥×改訂償却率
(調整前償却額) (100,000,000×保証 (切替年度の②)
0.250)
率0.06552)
20,000,000
6,552,000
⑧
償却費の
累計額
20,000,000
2年
80,000,000
16,000,000
3年
64,000,000
12,800,000
4年
51,200,000
10,240,000
5年
40,960,000
8,192,000
67,232,000
6年
32,768,000
6,553,600
73,785,600
7年
26,214,400
5,242,880
8年
19,660,800
9年
13,107,200
10年
6,553,600
―
―
36,000,000
―
―
48,800,000
59,040,000
6,552,000
26,214,400
6,553,600
80,339,200
6,552,000
26,214,400
6,553,600
86,892,800
6,552,000
26,214,400
6,553,600
93,446,400
6,552,000
26,214,400
6,553,599
99,999,999
(コメント)
・定率法では期首帳簿価額(取得価額-⑧償却費の累計額)に償却率(ここでは 0.200)を乗
じますから、次第に償却費の額(④の調整前償却額)が減少します。
・7年目になりますと、④が 5,242,880 円になって⑤の償却保証額 6,552,000 円を下廻ること
になります。
・そこで、7年目からは計算方法を切替えて、7年目の②期首帳簿価額(ここでは 26,214,400
円)に改定償却率(ここでは 0.250)を乗じて計算します。
・この方法で計算しますと定額法と同様に 10 年で償却が終了します。
[備忘価額1円]
社
長
定額法はシンプルですが、定率法は途中で償却方法を変えて 10 年で償却が終了するように工夫
がされているのですね。
ところで、定額法 10 年目の償却費が 9,999,999 円とか、定率法 10 年目の償却費が 6,553,599
円とかいうのは何故なんですか。
会計士
はい。ともに 10 年目末の帳簿価額(取得価額-償却費の累計額)が1円となるようにするためで
す。これは、物(資産)がある限り帳簿価額0円はおかしいから、備忘価額として1円を残す
ということです。
[定額法と定率法の比較]
社
長
計算例をみますと、定額法も定率法もともに 10 年で 1 円を残して償却が終了しますが、4 年目
までは定率法の方が、5 年目以後は定額法の方が多くの償却費を計上することができるのです
ね。
会計士
そのとおりです。
社
両者の計算方法の違いや特徴がよく分りました。減価償却費も最近はパソコンソフトで計算し
長
ますが、そのからくりを知っておくのも大切ですね。
(注)当記事は平成 28 年 1 月 1 日の法令等で記載しています。税制等の適用には十分な検討をお願いし
ます。
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