理 科 佐賀大学文化教育学部附属中学校 ◎力久茂昭 田中千恵子 中尾裕二 研究テーマ 探究の質を高める理科学習の研究 1 研究の概要 本研究は,生徒の探究の質を高めるための指導法の研究である。今年度より,小・中理科部会では「児童・生徒が自 然の美しさ,精妙さ,偉大さを実感する理科学習」を共通研究テーマとし,研究を進めていく。生徒が試行錯誤を繰り 返すような科学的な探究活動,即ち,本研究で考える質の高い探究活動を行わせれば,生徒の科学的な原理や法則の理 解が深まり,理科の学習対象である自然の事物・現象について,美しさや精妙さ,偉大さを感じるようになるのではな いかと考え,研究に取り組むことにした。 2 本年度の公開授業 第1学年 「水溶液」 授業者 中尾裕二 (1)単元を貫く問い 水溶液を効率的に調べる方法は? (2)本時の指導目標 水溶液を区別するための実験計画を立て,これまでに学習してきた知識や技 能を活用して実験に取り組み,科学的に考える力を育てる。 (3)本時に期待する生徒の学び 課題に対しての実験計画を立て,分析していく過程を通して,科学的な思考力 が培われ,探究の質が高まっていく。 (4)本時の授業過程 未知の水溶液を調べる実験計画書を基に,計画書についてグループで意見交換 を行わせる。計画書の修正を行い,個人実験(マイクロスケール実験)を行い, 実験結果より水溶液の同定を行う。 (5)授業者の提案 ①「イメージを図で表現させる」活動の工夫については,コンセプトマップを用 いて表現させることで,自分の考えを整理しまとめさせことができると考えた。 ②「実験報告書を作成させる」活動の工夫については,水溶液を区別する中で,区別した根拠を明確にするよ うに実験報告書を作成させた。また,個人でマイクロスケール実験を行い,自分の意見を基にまわりの意見 を取り入れることで新たな発見ができ,試行錯誤することで探究の質が高まると考えた。 第2学年 「電流のさまざまなはたらき」 授業者 田中千恵子 (1)単元を貫く問い 原子力発電所の再稼働は必要か? -節電から考える- (2)本時の指導目標 家庭で使用している電気器具の電力表示と使用時間の調査結果や,様々な電化 製品のパンプレットの消費電力の表示から,家庭でできる節電方法をについて具 体的に提案させる。 (3)本時に期待する生徒の学び 各自で考えた節電方法をグループで出し合ったり,様々な資料をもとに節電方 法の吟味をすることにより,多くの視点があることに気付いている。 (4)本時の授業過程 各自で調査してきた家庭の電気器具の電力と 1 日のおおよその使用時間から, 電力量を算出し,より節電するための方策を考え,話し合い発表をさせる。 (5)授業者の提案 ①「日常の生活や社会の中から課題を見いださせる」活動の工夫として,今年度 の夏の電力不足が心配され,強く節電を求められたことから「節電」をキーワードに電力,電力量に着目させた。 具体的に自分の家で使用している電気器具の電力,電力量を調査し,その結果からどこまで節電可能かを考えさせ, より現実的な問題として捉えさせたいと考えた。 「認識論的 Vee 地図」 ②「認識論的 Vee 地図の活用」における工夫として,2 年生は,科学的な探究の過程をすべて, に記録させている。 「疑問・質問や自分の考え」と「実験の結果や実験方法の工夫で分かったこと」 「学習して理解 したこと」を行き来しながら,生徒自身が学習の流れをつかみ,思考を整理しながら探究活動に取り組むことがで きるようにしたものある。特に「仮説」と「考察」の欄には,生徒がそのように考えた根拠を必ず記録させるよう にしている。
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