これは多摩美術大学が管理する修了生の論文および

これは多摩美術大学が管理する修了生の論文および
「多摩美術大学修了論文作品集」の抜粋です。無断
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目 次
第1章
環境デザイン領域デザインシンクタンクプロジェクトグループとは
第2章
2002年度のデザイン活動事例を通して
2−1 等身大の環境デザイン
−概要
−環境デザイン学科在学生に対しての質問と回答結果とその感想
−まとめ
2−2 橋本アートタウン化構想(HAT Project)
−概要
−芸術のある空間の必要性
−具体的な提案
−橋本駅前空間現状調査
−まとめ
2−3 八王子市道路原標デザインコンペティション応募作品
−概要
−作品解説
−まとめ(コンペティション結果)
2−3 橋本アートタウン化構想ワークショップh*ripple
−概要
−作品解説
−市民の想い ジャンル別集計結果
−まとめ
第3章
2002年度デザイン活動総括とグループの展望(おわりに)
参考文献
01)都市とデザイン/ボイスオブデザイン編/電通/1992年
02)魅力あるまちづくりのために 橋本6丁目地区/相模原市発行/1996年
03)魅力あるまちづくりのために 橋本3丁目地区/相模原市発行/1998年
04)ハシモト まちづくり案内/相模原市発行/1999年
05)都市計画マスタープラン/相模原市都市計画部都市計画課発行/2001年
06)新世紀さがみはらプラン/相模原市発行/2001年
07)第24回相模原市統計グラフコンクール/相模原市都市情報システム課統計室/2001年
08)まちづくりの近未来/三船康道+まちづくりコラボレーション/学芸出版社/2001年
09)HASHIMOTO杜のプラザ/発行者記載無し/発行年記載無し
10)橋本駅北口地区第一種市街地再開発事業/橋本駅北口地区市街地再開発組合発行/発行年記載無し
11)橋本駅北口C地区第一種市街地再開発事業ミウイ橋本/橋本駅北口C地区市街地再開発組合発行
/発行年記載無し 図 版
01)ワークショップ開催時の橋本駅北口ペデストリアンデッキ周辺風景
02)h:ripple見学の手引き
03)h*ripple アンケート原本45%縮小版
第1章 環境デザイン領域デザインシンクタンクプロジェクトグループとは
多摩美術大学博士課程(前期)の組織編成改訂に伴い2002年度から新たに発足した「環境デザイン領域
デザインシンクタンクプロジェクトグループ(E−1)」は、現実の都市や街において環境デザインがどの
ように関わってゆくことが出来るのか、実施デザイン計画や実施建築設計を交えながら研究・デザイン行為
を行っていく社会との接点を大きく持つグループでの活動を主とした実践的な研究室である。
一般的に多摩美術大学環境デザイン学科あるいは大学院環境デザイン領域というフィールドでの学生デザ
イン・学生設計というと、現状では個々人で企画した架空のプロジェクトや、デザイン講義によってあらか
じめフレームが設定された場合が殆どである。これら架空のプロジェクトでは、実社会でのデザイン・設計
行為に付随する様々な社会的制約や個別の与条件は基本的にスポイルされる傾向にあり、「社会に即した具
体的な提案」や「社会というフィールドの中での最良の提案」とはおよそかけ離れた「個人的主観に基づい
たきわめて個人的提案」や「意匠的に際立つ事だけを主眼とした提案」が創造されがちである。
しかしこれら個々人の主観を優先して提案されたものが、はたして真のデザインと呼べるのだろうか。こ
れはよく言われる「デザイン作品とアート作品との制作されるスタンスの差」から見てもそう呼べないこと
は明白である。デザインとアート両者において制作の過程上決定的な差は、デザイン作品においては(それ
が物質的であれ非物質的であれ)アート作品のそれと比べ「常に一般社会に消費される事が明確に意識され
た上で制作されたもの」であり、またそうすることによってデザインが成り立っている。それに対しアート
作品はそれ自体がそもそも消費されることを目的として制作されるものではなく、一般社会という外的環境
を重視するよりも、制作者本人の内的環境が作品に反映した上で初めてアート作品として成り立つ、という
根本的にデザイン作品とは異なる制作過程での構造を持つ。この見地から考えても、一般的に大学・大学院
で提案・立案される「環境デザイン作品」を真のデザイン活動と呼ぶのはきわめて難しい。
そこで本デザインシンクタンクプロジェクトグループでは、研究を進めていく上でのデザインフィールド
を常にクライアントが現実に存在するプロジェクト(いわゆる実社会でのデザイン行為)に設定し、「現実
社会で機能するデザインの探究」を大きな研究テーマ・制作テーマとして掲げている。
また2002年度は当デザインシンクタンクプロジェクトグループの発足初年度であったので、我々自身が
どのような基本方針を持ちこのグループを運営してゆくのか、という今後の研究指針や定義になるような位
置づけのデザイン活動も併せて行った。
続いて第2章では2002年度を通じて行ったデザイン活動の足跡を、具体的に記述していく。
第2章 2002年度のデザイン活動事例を通して
2−1 等身大の環境デザイン
♦概要
これは2002年5月より準備を始め7月中旬に多摩美術大学主催によって行われたオープンキャンパス会
期中に発表した「環境デザイン学科学生のデザイン・生活に対する意識調査」である。
言うまでもなくオープンキャンパスとは将来多摩美術大学で学ぶ事を希望する高校生や浪人生が、入学後
の大学諸施設や大学生活をうかがう大切な機会なのだが、学校主催の行事ということもあり在学生は基本的
に参加することは殆どない。これによって本来の多摩美術大学が持つ現実の雰囲気は損なわれ、極度に美化
されたプロパガンダのみで開催されているのがオープンキャンパスの現状である。
このような現状を受け、我々デザインシンクタンクプロジェクトグループでは、この虚構と現実の格差を
是正できるような(ありのままの環境デザイン学科を紹介できるような)提案、かつ視覚的にも優れ意匠的
に彩りを与えることが出来るような提案はないものかと、連日議論を重ねてきた。
最終的に我々は、今現在の環境デザイン学科在学生に対して「環境デザイン・建築デザイン・空間デザイ
ン等に関連する質問」を問いかけ、それらの回答を個々に集計し、在校生のデザインに対する意識を抽出、
それぞれの回答結果を合計50枚からなるパネル展示という形態でデザイン棟校舎5階にて発表・展開し
た。パネル形式の意識調査が連続して構内に展示されることで、閑散としたオープンキャンパス時の大学構
内に視覚的な彩りを与え、かつその内容から環境デザイン学科の持つ方向性や、環境デザインに対して在学
生が持っている興味をありのまま浮き彫りにすることが出来たのではないかと思う。またデザインに絞った
意識調査のみを連続して展示すると、パネルの構成上変化がなくなってしまう恐れもあるので50問中15
問は、あえて(環境デザイン・建築デザイン・空間デザインとは関係のない)一般的な質問も織り交ぜて展
示した。これによって楽しみながら環境デザインの姿を知る事ができたのではないかと思う。
本事例は幸いにもオープンキャンパス終了後、多方面から多くの賛同を受けることができた。また結果と
して、社会(このケースでは多摩美術大学がこれにあたるだろう)が持つ情報を、正確にどの様な形で人々
(このケースではオープンキャンパス来訪者がこれにあたるだろう)に対し発信・伝達するのかをスタディ
する事ができ、またその成果についても一定の評価を得ることができたことは、デザインシンクタンクプロ
ジェクトグループ発足初年度の第一作目の成果物として、重要なデザインだった。
またこの後の研究に大きな影響を与えることとなった、多摩美術大学在学生と相模原市橋本市街の繋が
りや、多摩美術大学在学生が持つ相模原市橋本についての印象についても、興味深い資料をこの機会に蓄積
することができた。
♦環境デザイン学科在学生に対しての質問と回答結果とその感想
基本データ
回答者平均年齢 20.5才
回答者性別比率 男子 - 31% 女子 - 69%
回答者血液型 A型 - 35% B型 - 21% O型 - 32% AB型 - 11% 不明 - 1%
■質問01(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたの出身地を教えてください。
□回答01
東京都-25% 神奈川県-23% 千葉県-7%
■質問02
あなたは現在どこに住んでいますか。
□回答02
神奈川県相模原市-19% 東京都八王子市-13% 神奈川県横浜市-10%
□在学生のコメント
神奈川県相模原市:学校が近く、便利だから。(3年生、22才、男、A型)
神奈川県相模原市:大学があるので。(1年生、21才、女、A型)
神奈川県相模原市:学校が近い。(2年生、21才、女、O型)
神奈川県相模原市:多摩美に近い。(2年生、20才、女、A型)
神奈川県相模原市:タマビに通っているから。(4年生、22才、女、B型)
□この質問に関する感想
これは当初ごく一般的な質問として出題したのだが、回答結果は予想以上に興味深いものとなった。とい
うのも「問01」で関東圏からの出身者が在学生の多数を占めていたにもかかわらず、現在2割の学生が神
奈川県相模原市在住である事は、我々には全く予想できなかった事だったからである。この回答結果が契機
となり、この作品以降、研究の舞台を神奈川県相模原市橋本に設定することが多くなった。
■質問03(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたは現在アルバイトをしていますか?またアルバイトをしている方は、どんな職種ですか?
□回答03
飲食系バイト-33% デザイン系バイト-32% 販売系バイト-22%
■質問04(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたの学校に登校するまでの 交通手段を教えてください。
□回答04
電車+バス-64% バスのみ-19% バイク-11%
■質問05
あなたにとって、橋本は良い印象がある街ですか?
□回答05
よい印象-45% わるい印象-29% その他-26%
□印象深いコメント
よい印象:なかなかよくなってきた。都心に出るには不便だと思うが住民にとっては使いやすい、便利な街
になってきたと思う。(4年生、21才、女、A型)
よい印象:店は少ないが緑が多いから。(1年生、20才、男、A型)
どちらともいえない:少し前までは良い印象があったが、近年の再開発のやり方が好きじゃない。(3年
生、22才、男、A型)
よい印象:だって通ってる街ですから。(3年生、21才、男、O型)
よい印象:思っていたよりもきれいな街だった。治安が良い。(1年生、19才、女、A型)
□この設問に関する感想
良い印象が約半数に達するほど好評価を得た、大学から最寄りの街である「橋本」。もう一つの最寄りの
街、八王子と比べると興味深い結果がでたと言えるだろう。この意識調査が大きな決めてとなり、当デザイ
ンシンクタンクプロジェクトグループの研究テーマは、橋本を舞台にする計画が増えることとなる。そう
いった意味からも非常に重要な質問であったと思う。また学生のコメントからも、橋本の街が秘める可能性
の高さや、再開発計画について具体的に記述したものが非常に多く見受けられた。
■質問06
あなたにとって、八王子は良い印象がある街ですか?
□回答06
よい印象-18% わるい印象-60% その他-22%
□印象深いコメント
わるい印象:狭い、清潔でない、ゴミゴミしている、低級なイメージ。(4年生、21才、女、A型)
わるい印象:グレーな街。(2年生、21才、女、O型)
わるい印象:こわいきたない。(3年生、20才、男、A型)
わるい印象:夜がコワイです。(3年生、23才、男、A型)
わるい印象:橋本にくらべると乱雑したイメージ。(2年生、19才、女、B型)
□この設問に関する感想
橋本に対する印象とは逆にネガティブな意見が6割も占めてしまった、もう一つの最寄りの街「八王子」。
コメントの多くは治安の悪さや混沌とした街の様相について述べられている。これらが八王子全体の印象を
悪くしているようだ。
■質問07(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたが意識する「日本国内の他大学」はどこですか?
□回答07
東京大学-15% 武蔵野美術大学-14% 東京芸術大学-10%
■質問08(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたの平均睡眠時間を教えてください。
□回答08
6時間-31% 5時間-22% 8時間-16%
■質問09(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたは録茶、紅茶、コーヒー、烏龍茶のなかでどれが一番好きですか?
□回答09
録茶-34% 紅茶-33% コーヒー-16%
■質問10(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
「東学食堂」と「イイオ食堂」あなたがよく利用する学食は、どちらですか? □回答10
東学食堂-83% イイオ食堂-11% その他-6%
■質問11(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたが乗るなら「ベンツ」と「BMW」のどちらに乗りますか?
□回答11
ベンツ-42% BMW-50% その他-8%
■質問12(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたの持っているキーホルダーに鍵は何個ついてますか?
□回答12
1個-30% 2個-21% 3個-14%
■質問13(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
彼氏または彼女にする人の髪型は「ショート」と「ロング」のどちらがより好みですか?
□回答13
ショート-63% ロング-15% その他-22%
■質問14(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
ペットとして飼うならイヌとネコどちらを飼いますか?
□回答14
イヌ-67% ネコ-26% その他-7%
■質問15(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたはレンタルビデオを月に「何本」借りますか?
□回答15
0本-45% 3本-12% 5本-12%
■質問16(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたがお薦めする「実写映画」はありますか?
□回答16
アメリ-3% スパイダーマン-3% レザボアドッグス-2%
■質問17(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたがお薦めする「アニメ映像作品」はありますか?
□回答17
天空の城ラピュタ-7% AKIRA-6% TOYSTORY-6%
■質問18
あなたは0,1,2,3,4,5,6,7,8,9のなかでどの数字が一番好きですか?
□回答18
①-30% ⑦-22% ②-21%
□印象深いコメント
1:はじまりだから。(2年生、19才、女、O型)
1:TOPっぽいから。(3年生、21才、男、A型)
7:しあわせそうだから。(1年生、18才、女、O型)
7:ラッキーセブンだから。(3年生、21才、男、O型)
2:ポジション的に。(3年生、22才、男、A型)
□この設問に関する感想
一般的に偶数に比べ奇数を好むと言われる日本人だが、この質問ではそれがより謙虚な形で表れた。さらに
回答結果にあるように「1」と「7」を選んだ学生が、半数以上だったことは非常に興味深い。またこの回
答で「9」を選んだ学生がほぼ皆無だった事も、付け足しておく。
■質問19(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたの「好きな色」を一色教えてください。
□回答19
青-17% 緑-12% 黒-10%
■質問20
あなたは●▲■の中でどれが一番好きですか?
□回答20
●-69% ▲-22% ■-9%
□印象深いコメント
●:カドがない。(3年生、22才、男、A型)
●:角がないから。(3年生、21才、男、A型)
●:有機物に近い。(2年生、20才、女、O型)
●:円満。(4年生、22才、女、B型)
●:カドがない。(2年生、21才、女、O型)
□この設問に関する感想
抽象的な形態をどのように認知しているか、これを狙いとして出題した。結果は我々が事前に立てた予想に
反して「●」を選んだ学生が7割を占めた。この結果から推測すると、モダニズム、ポストモダニズム以
降、混沌の時代と言われ続けている「現在の建築やデザインの潮流の一端」がこのような意識調査から読み
とれるのではないだろうか。また「●」を選ぶ理由として、「角がない、安定している」という一般常識的
解釈で回答している意見も多かった。
■質問21(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたが好きな音楽ジャンルを教えてください。
□回答21
JAZZ-17% J-POP-11% HIP-HOP-10%
■質問22(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたが今使っている携帯電話はどのキャリアですか?
□回答22
docomo-44% au-31% J-Phone-22%
■質問23(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
ダウンタウンなら「まっちゃん」と「はまちゃん」どちらが好きですか?
□回答23
まっちゃん-73% はまちゃん-16% その他-11%
■質問24
あなたは 右利きと左利き どちらですか?
□回答24
右利き-87% 左利き-5% 両利き-8%
□印象深いコメント
左利き:大体7割が左で3割が右。重要な事は右が多い。(3年生、21才、男、O型)
両利き:両利きになっちゃった。(4年生、24才、男、B型)
左利き:右利きになおらなかった。(1年生、18才、女、B型)
両利き:元左利きをなおされて途中半端になった。(2年生、21才、女、B型)
両利き:ぐちゃぐちゃだから。(2年生、19才、女、A型)
□この設問に関する感想
右利きが大半を占めることはあらかじめ予想できたが、両利きの学生が8%もいたことに感嘆した。一般的
にデザイン行為は、右脳・左脳のバランスがとれているほど良いとされているが、この点から考えると8%
というこの調査結果は美術大学学生ならではなのではないだろうか。
■質問25
あなたは「親指、人差し指、中指、薬指、小指」のなかで、一番好きな指はどれですか?
□回答25
薬指-36% 小指-20% 親指-15%
□印象深いコメント
薬指:けなげ。(4年生、24才、男、AB型)
薬指:一番まっすぐだから。(1年生、18才、女、B型)
薬指:爪の形が一番きれいだから。(1年生、18才、女、AB型)
薬指:きれいだから。(4年生、22才、女、B型)
薬指:微妙な指だから。(3年生、22才、男、A型)
□この設問に関する感想
外部と接触するインターフェイスとして、一番目に付くことの多い「指」。この質問では学生が、自分自身
の身体をどのように捉えているかを探るべく出題した。しかし結果からは、それぞれの指が持つ「表層のイ
メージやその形態」に深い興味を持っていることが明らかになった。出題意図とは多少異なる回答結果が多
かったものの、環境デザイン科学生が「指」に対しさまざまな形態的志向(あるいはマニア的志向?)があ
ることが判明した事は、非常に興味深かった。
■質問26(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたは、「ナイキ」と「アディダス」どちらのスポーツブランドが好きですか?
□回答26
ナイキ-42% アディダス-49% その他-9%
■質問27(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたの好きな国名を教えてください。
□回答27
日本-25% イタリア-9% オランダ-6%
■質問28
日本のデザインは、海外のそれに比べて「優れている」「劣っている」?あなたは、どちらだと思います
か?
□回答28
優れている-31% 劣っている-23% その他-45%
□印象深いコメント
どちらとも言えない:お互いに良い面も悪い面も持っているから。(3年生、21歳、男、O)
どちらとも言えない:ものによる。(3年生、23才、男、A型)
どちらとも言えない:ものによりけり。(3年生、21才、女、A型)
どちらとも言えない:どちらとも言える。(3年生、21才、女、B型)
どちらとも言えない:どちらでもない。(4年生、23才、男、O型)
□この設問に関する感想
質問が抽象的だった為か「どちらとも言えない」「ケースバイケース」といった意見が多く見受けられた。
また「劣っている」と回答した学生には、外国のデザインに対して日本国内のデザイナーは啓蒙しすぎてい
る、といった厳しい意見も多かった。
■質問29
あなたにとってデザインの良し悪しは「何で決まる」と思いますか?
□回答29
作り手本位-44% モノ本位-31% 消費者本位-22%
□印象深いコメント
五感:一瞬で決まるから。(2年生、19歳、女、A型)
独創性:独創性とバランス。(3年生、23才、男、A型)
バランス感覚:物事は十人十色。(4年生、24才、男、B型)
ひらめき:なんとなく。(1年生、19才、女、O型)
センス:全てのもとはセンスだから。(1年生、19才、女、A型)
□この設問に関する感想
独自性やセンス・直感といった制作者個人の力が、デザインにとって重要とする学生が多い事がこの結果か
ら見て取れる。この回答結果からも、個人趣向の強い時代ということが言えるだろう。
■質問30
あなたの好きな「デザイナー(建築デザイナー、インテリアデザイナー、家具デザイナーなど)」を一人教
えてください。
□回答30
なし-14% ルイス・バラガン-5% イサム・ノグチ-4%
□印象深いコメント
いない:影響されると自分らしさを失う気がして。(3年生、20才、男、A型)
いない:人が手を加えたものより月などの方がきれい。(3年生、22才、女、O型)
いない:好き嫌いで見ない。(4年生、21才、男、O型)
□この設問に関する感想
回答結果は、殆ど偏りがなく個人の趣向によって千差万別だった。強いて言えば、この偏りのないことが特
徴であり、現在の混沌としたデザインシーンを象徴していると言える。あるいは、個人趣向の強い時代を反
映した結果と取ることもできるのではないか。
■質問31
あなたの一番好きな「デザイン雑誌のタイトル」を教えてください。
□回答31
CASA BLUTUS-28% AXIS-9% a+u-5%
□印象深いコメント
CASA BLUTUS:写真がきれい。文章も読みやすい。(2年生、21歳、女、O型)
CASA BLUTUS:いろんな情報、建築のことがわかる。(2年生、19歳、女、O型)
CASA BLUTUS:とってもとっつきやすい。(3年生、20才、女、A型)
CASA BLUTUS:堅すきず柔らかすぎず…独自性があって良。(4年生、23才、女、A型)
CASA BLUTUS:衣・食・住すべてが載っているから。(3年生、22才、男、O)
□この設問に関する感想
CASA BLUTUSが3割を占める回答結果となった。デザインに関する情報も、以前に比べよりライトネスに
向かって収束しつつあることが見て取れる。この潮流が続くと、空間デザインや環境デザインが、ファッ
ションと同列に扱われる時代が来るのもそう遠いことではないだろう。
■質問32
あなたは「都市、都外、田舎」のうち、どこに一番興味がありますか?
□回答32
都市-46% 郊外-13% 田舎-41%
□印象深いコメント
都市:情報であふれるから。(4年生、21才、女、A型)
都市:あの土地の狭いところに大勢の人がいて、いかにその問題をクリアして建築建てるか。(2年生、2
1才、女、A型)
都市:デザイナーのつくった物、建築、展覧会がたくさんあるから。(1年生、19才、女、A型)
田舎:自然が残ってるから。(3年生、22才、男、O型)
郊外:都市程栄えてないけど録があるし、仕事にも便利そう。(1年生、18才、女、O型)
□この設問に関する感想
郊外(ニュータウン)を選んだ学生が少なかったことが一番印象的。戦後相次いで構想されたニュータウン
計画は、やはり一時期の幻想でしかなかったことが、こういった簡単な意識調査からも垣間見れるところが
興味深い。また一方で、コメントに環境デザイン的な見地から意見を述べたものが少なかったことも印象に
残る。これは実際の生活とデザイン的な思考が直結していないことに起因するのだろうか。
■質問33(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたが東京の中で住みたい場所を教えて下さい。
□回答33
無し-13% 下北沢-9% 皇居-5%
■質問34
あなたが住むとしたら和室と洋室、どちらに好んで住みたいですか?
□回答34
洋室-72% 和室-22% どちらでもない-6%
□印象深いコメント
洋室:今現在座り生活なのでイス生活をしてみたい。(3年生、20才、女、A型)
洋室:畳はそこまで好きじゃない。(1年生、18才、女、O型)
洋室:畳がどうも好きじゃない。(4年生、26才、男、O型)
和室:日本男児だから。心が和む(4年生、22才、男、A型)
和室:日本人だから。(3年生、20才、女、A型)
□この設問に関する感想
この質問に対する「和室」を回答理由に選んだ学生の意見で圧倒的に多かったのが「日本人だから」という
安直な答え。できれば環境デザインを専攻している以上、もう少し空間に対する意識や注意があるべきでは
ないだろうか。結果としてこの質問からは、いかに環境デザイン科在学生が空間のイメージのみに囚われて
生活を送っているかが浮き彫りとなってしまった。また逆説的に、このような結果が表れたことで「等身大
の環境デザイン」という本研究の有効性が証明されたとも言えるだろう。
■質問35
あなたが住むなら狭い部屋と広い部屋どちらが好きですか?
□回答35
広い部屋-50% 狭い部屋-45% どちらでもない-5%
□印象深いコメント
狭い部屋:ほどよく狭い部屋/広いと落ち着かないから。(1年生、18才、女、B型)
狭い部屋:掃除が嫌だから。(4年生、21才、女、B型)
狭い部屋:落ち着く。(3年生、22才、男、A型)
広い部屋:解放的。(3年生、20才、女、A型)
広い部屋:気持ちがゆったりする。(1年生、20才、女、AB型)
□この設問に関する感想
一般的には「広い部屋」がより好まれているが、対象を環境デザイン科在学生としたこの調査に限っては、
狭い部屋と広い部屋を選んだ比率が半々だったことが一般的な認知とずれていて非常に興味深い。また上に
抜粋したコメントからも分かるように、この質問においても環境デザイン的な意見が、殆ど見ることができ
なかったことは非常に残念だ。
■質問36
あなたがデザインするならば「住宅、商業施設、家具、ランドスケープ」どれを選びますか?
□回答36
家具-23% 住宅-22% 商業施設-22%
□印象深いコメント
家具:自分で作れるから。(3年生、21歳、男、O)
家具:もの作りが好き。(4年生、22才、男、O型)
家具:それがやりたくて多摩美来たから。(1年生、19才、女、B型)
なし:すべて。良い考えは全てにつながるということを実践したい。(4年生、21才、男、O型)
なし:全部。欲張りなので。(4年生、22才、男、A型)
□この設問に関する感想
事前に我々が描いた予想に反して「家具」を選ぶ学生が多かった事が興味深い。これもインテリア志向の強
い最近の潮流を反映してなのだろうか。また一方でジャンル分けする事自体がナンセンス、といった多様な
ジャンルを包括する環境デザイン学科ならではの意見も少数ながら、見て取れた。
■質問37
あなたは「外部空間(エクステリア)」と「内部空間(インテリア)」どちらに興味がありますか?
□回答37
外部空間-25% 内部空間-55% 両方-20%
□印象深いコメント
内部空間:スケールが大きいと理解を超えるから。(4年生、23才、女、A型)
内部空間:人の内面と深く関わるから。(4年生、22才、女、O型)
内部空間:物事はやはり、内部にこそ真意があるから。(4年生、23才、男、O型)
内部空間:これからのびる分野だから。(4年生、24才、男、B型)
内部空間:一番自分の近くにあるものだから。(4年生、21才、女、O型)
□この設問に関する感想
昨今のインテリア志向を反映したかのような回答結果となったこの質問。あるいは長引く社会の不況や閉塞
感が引き起こした結果か。また建築が莫大な建設費用を有することを考えればそれも当然なのだろうか。い
ずれにせよ昨今のインテリア志向には、目を見張るものがある。そしてますます世界が情報や政治によって
収縮の道をたどるに従い、根本的に「外部」という概念自体に大きな変化が訪れる事を微少ながら暗示する
ような意識結果になった、とも言い換えられるのではないか。
■質問38
あなたが製図する場合「CAD」と「手書き」のどちらが好きですか?
□回答38
CAD-47% 手書き-43% その他-10%
□印象深いコメント
CAD:すぐに直せるから。(4年生、22才、男、A型)
CAD:過去のデーターを使えるから。(4年生、22才、女、O型)
CAD:CADのほうが数字を打ち込めばいいから、使いこなせれば楽。手書きは、間違えないようにとかき
れいにとか気を使うことが多い。でもパソコンがない...。(1年生、20才、女、O型)
手書き:脳と直結しているように思える。(3年生、20才、男、A型)
手書き:図面と自分が理解し合える。(1年生、20才、女、O型)
□この設問に関する感想
回答結果はおよそ半分ずつに分かれる形となったこの質問だが、コメントを読むと双方が持つその特徴が良
く表れている。「CAD」を選んだ学生からは、過去のデータに簡単にアクセスできるというような、いわ
ゆるランダムアクセスの特徴を記述したものが多い傾向にあった。また一方で「手書き」を選んだ学生から
は、思考の順番が残りやすいなどシーケンシャルアクセスについて記述したものが多かった。それぞれ単体
では個人的な意見でも、母数を増やすことによりそれぞれの特徴が確実に浮き彫りになることが明らかにな
り、意識調査を俯瞰する上で非常に有用な質問だった。
■質問39
あなたは「模型」と「CG」のどちらでエスキス(計画を進めること)するのが好きですか?
□回答39
模型-95% CG-2% その他-3%
□印象深いコメント
模型:実際に手で触れた方が考えが浮かびやすい。(1年生、20才、女、O型)
模型:自分が設計したものを自分の手で一つ一つ仕上げていく感じがとても好き。(3年生、20才、女、
A型)
模型:わかりやすいから。(4年生、22才、女、B型)
模型:図面がCADだから同時進行させるのに模型が便利。(4年生、23才、女、A型)
模型:スケール感を重視。(1年生、18才、女、AB型)
□この設問に関する感想
個々人の技量からか「模型でのエスキス」が、回答結果の殆どを占めたこの質問。しかしその中の意見とし
て、手を動かしながら作業することの重要性についてコメントしている学生が多くいたことが印象的だっ
た。
■質問40
あなたは模型作りが「好きですか」と「嫌いですか」?
□回答40
好き-78% 嫌い-20% その他-2%
□印象深いコメント
好き:手動かすのすき。(1年生、18才、女、O型)
好き:たのしい。(1年生、18才、女、AB型)
好き:やっているととまらなくなるから。(3年生、21才、男、O型)
好き:地道なパーツ作りの後の達成感がたまらない。(4年生、22才、女、B型)
嫌い:不器用なもんで...。(1年生、18才、女、AB型)
□この設問に関する感想
この質問も大多数が「模型作りが好き」と回答した。その細かな理由は様々だったが、概して手を動かすこ
とが好きなようだ。また「嫌い」と回答した学生の殆どは、不器用だから苦手であるといった極めて明快な
コメントが多かったのも特徴か。
■質問41(一般的な質問として出題したので詳細は割愛する)
あなたは「おすぎさん」と「ピーコさん」どちらが好きですか?
□回答41
おすぎさん-26% ピーコさん-59% その他-15%
■質問42
「木」と「コンクリート」あなたはどちらが好きですか?
□回答42
木-80% コンクリート-12% 両方-8%
□印象深いコメント
木:年を重ねるにつれて味が出るし、愛着がわくから。(1年生、18才、女、B型)
木:壊れても直しやすい。(4年生、21才、女、B型)
木:コンクリートは冷たい感じがする。(1年生、19才、女、O型)
木:人間らしい素材だから。(3年生、22才、男、O型)
木:いろいろな表情が出やすいから。(3年生、21才、男、O型)
□この設問に関する感想
「木」を選んだ学生の意見として圧倒的に多かったのが、木の「香り」について記述したもの。現代社会で
は、これだけ金属・ガラス・樹脂に囲まれて生活していながら、ここまで偏った結果になるとは驚嘆であ
る。また「木」を選んだ意見の中には、建築建材として再利用できる点に着眼したものも数多くあり、素材
について環境デザイン科在学生の意識の高さを伺わせる結果となった。
■質問43
あなたは同潤会アパートを壊すことに賛成と反対どちらですか?
□回答43
賛成-5% 反対-72% その他-23%
□印象深いコメント
反対:なんでもかんでも古いものを壊してしまうのは違うと思う。表参道の雰囲気をよくしてるし、壊さな
いで次の世代に受け継ぐことができると思ってるから。(1年生、18才、女、A型)
反対:戦後の最先端の建築物であったわけだし、表参道の街並にもあっている。
反対:安藤忠雄でもなんでも壊さないでほしい。(2年生、19才、女、B型)
反対:目で見ることのできる歴史がどんどん減ってしまう。(4年生、21才、女、A型)
反対:日本の住宅史の一部だから。(3年生、20才、男、O型)
□この設問に関する感想
この質問では我々の事前予測通り、反対意見が7割以上にも及ぶ結果となった。この回答結果からも「古く
からの建物に対する意識」の高さが伺える。こういった意識こそが新しい時代ならではなのではないかと思
う。また環境デザインという学問を専攻している以上、このような意識は常に持っていなければならない問
題だろう。そして今回のような意識調査としては、非常に有意義な質問であったと思う。
■質問44
あなたは「古くから残っている建物」と「最先端の建物」どちらに興味がありますか?
□回答44
古い建物-63% 最先端の建物-24% その他-13%
□印象深いコメント
古くから残っている建物:新しい物を知るには古いものから知る必要があると思う。私は、まだ何も知らな
さすぎる。(1年生、20才、女、AB型)
古くから残っている建物:残されるべくして残されたものは今も存在するが、今最先端のものが後世に残っ
ていくとは考えにくいから。(2年生、19歳、女、A型)
古くから残っている建物:歴史を感じる。(4年生、23才、男、O型)
最先端の建物:その時代背景にあっているものなら良い。(3年生、21歳、男、O)
最先端の建物:私の時代のものだから。建築に意志を与えなきゃいけないような大変な時代になったから。
その辺をどうみてるか見たい。(2年生、19歳、女、A型)
□この設問に関する感想
「古くから残っている建物」が6割以上を占める結果となり、全体的に「建築の保存やその建物の趣」にも
興味があるようだ。また一方で「最先端の建物」を選んだ学生からは、時代性やその建物に使われている技
術を挙げる意見が挙げられた。この回答結果も良い意味で我々の事前予測を裏切る結果が得られた。
■質問45
あなたは「自然が作り上げる風景」と「人間が作り上げた人工的な風景」どちらに興味がありますか?
□回答45
自然の風景-67% 人工的な風景-20% その他-13%
□印象深いコメント
自然が作り上げる風景:自然には勝てない人間の無力さを感じたい。(3年生、20才、男、A型)
自然が作り上げる風景:人間には絶対作れないから。(4年生、22歳、女、O型)
自然が作り上げる風景:実際は両方。所詮、人の作る物なんて自然にかなわない。(2年生、19歳、女、
A型)
人間が作り上げた人工的な風景:どうしたら人工的な風景ができるのか、また自分は人工的なものをつくる
立場だから。(3年生、22才、男、A型)
人間が作り上げた人工的な風景:自分たちで作らなきゃいけないから。(3年生、21才、男、A型)
□この設問に関する感想
自然の雄大さを挙げる意見が大多数を占め、このように偏った結果がでた。また「人工的な風景」を挙げた
学生からは、自分自身が人工物を建てる立場からコメントしたものも多かった。
■質問46
あなたは「針葉樹」と「広葉樹」のどちらが好きですか?
□回答46
針葉樹-22% 広葉樹-68% その他-10%
□印象深いコメント
広葉樹:紅葉がきれい。(3年生、23才、男、A型)
広葉樹:季節感が得られるから。(1年生、18才、女、AB型)
広葉樹:四季を楽しめる。(2年生、21才、女、O型)
針葉樹:すっとしていてかっこいい形態のが多いから。(2年生、19才、女、B型)
針葉樹:あのストイックな感じがいい。(4年生、22才、女、O型)
□この設問に関する感想
外部空間を設計・デザインする上で非常に大きな要素を占める樹木の種類。この質問では、学生がどういっ
た樹木を好んで自分自身の作品に配置しているか、を狙いとして出題した。だが回答結果は我々の予想以上
のものであり、広葉樹が表情として持つ様々な季節感や、表層的な特徴として持つ枝葉のバランスなど、か
なり詳細かつ具体的な意見が大多数を占めた。
■質問47
あなたは「朝方、昼間、夜間」のうちで、どの時間帯が一番好きですか?
□回答47
朝方-30% 昼間-0% 夜間-42%
□印象深いコメント
朝方:においが好き。(1年生、18才、女、B型)
朝方:光がきれいだから。(1年生、18才、女、AB型)
朝方:静かだから。(3年生、21才、男、A型)
昼間:太陽の光が気持ちいいから。(3年生、21才、男、O型)
夜間:一番のんびりできるから。(2年生、19才、女、O型)
□この設問に関する感想
この質問は「光」に付随する環境デザイン科学生の意識を探ることを期待して出題した。そのような中、回
答結果3つの比率に、偏りがあまり見られなかった事は非常に興味深い。また朝方の印象的な意見には「空
気感やにおい」を挙げる学生が多かった。そして夜間では「落ち着く」という意見を持った学生が非常に多
かった。
■質問48
あなたは「日中に見る建物」「夜間に見る建物」どちらに興味がありますか?
□回答48
日中に見る建物-30% 夜間に見る建物-56% 両方-14%
□印象深いコメント
夜間に見る建物:夜にしか見えない雰囲気が出るから。(3年生、21才、男、O型)
夜間に見る建物:夜、建築が照明になると思っている。(4年生、21才、男、O型)
夜間に見る建物:ライティングがドラマチックだから。(3年生、22才、女、A型)
夜間に見る建物:夕方から夜にかけての光の変化や照明で印象が変わるから。(1年生、18才、女、AB
型)
夜間に見る建物:昼に見えない姿が見える。日没くらいがBEST。(4年生、22才、女、B型)
□この設問に関する感想
建物の「見かけ」に関する事柄をどのように捉えているかを、主眼として出題したこの質問。しかし昨今の
「あかり」や「光」に対する社会意識を反映してか、半数以上が「夜間に見る建物」に興味があると回答し
た。
■質問49
あなたなら「蛍光灯が灯る空間」と「白熱灯が灯る空間」どちらに好んで住みますか?
□回答49
蛍光灯の空間-12% 白熱灯の空間-78% その他-10%
□印象深いコメント
白熱灯が灯る空間:蛍光灯の光は冷たい。白熱灯の方がオレンジであたたかい光だと思う。オレンジ色の蛍
光灯だったら、蛍光灯でも可。(2年生、21才、女、A型)
白熱灯が灯る空間:蛍光灯は仕事の時のみ使いたい。(4年生、23才、女、A型)
白熱灯が灯る空間:蛍光灯は何もかも見え過ぎて雰囲気がない。(1年生、20才、女、A型)
蛍光灯が灯る空間:いろんなものがクリアーに見える。(1年生、20才、男、A型)
蛍光灯が灯る空間:白いから。(3年生、21才、男、AB型)
□この設問に関する感想
うって変わってこの質問では比較的空間に対する詳細なコメントが多く、環境デザイン科在学生の「あか
り」に対する意識の高さを読みとることができた。また「白熱灯が灯る空間」を選択した学生が78%と極
端な結果になったことも興味深い。これは1960年代以降「蛍光灯による均一なあかり」が当たり前だった
日本の住環境に、多様な「あかり」とそれに付随する知識が戻ってきたことを伺わせる。
■質問50
「一軒家」と「集合住宅」あなたが将来住みたいのはどちらですか?
□回答50
一軒家-86% 集合住宅-14%
□印象深いコメント
一軒家:人のつながりを求めたい(4年生、22才、男、A型)
一軒家:一軒家庭付きがいい。(1年生、19才、女、A型)
一軒家:小さくてもいいから一つの家を何代にもわたり住んでいきたい。(4年生、21才、女、O型)
集合住宅:コミュニケーションの将来性がありそう。(3年生、21才、男、A型)
集合住宅:人が周りにいるところに住みたい。(1年生、20才、男、A型)
□この設問に関する感想
昨今の住宅事情を反映してか、8割以上の学生が「一軒家に住むことを希望する」と回答した。また上記コ
メントでも挙げたように、建築形態そのものより、そこで行われるであろう住民間のコミュニケーションに
より大きな関心を持っている学生が数多くいたことが非常に印象的だった。こういった意見を環境デザイン
科在学生から多数聞けたことは、我々環境デザインに関わる一員としても、何よりの収穫であった。
♦まとめ
2002年度第一番目の研究としては、十分すぎる収穫のあった環境デザイン科在学生に対する意識調査
「等身大の環境デザイン」。そもそも研究当初は、まさに等身大の学生を捉えることを目標にしていたのだ
が研究を完了してみると、”多摩美術大学在学生が、最寄りの街である橋本を殆ど利用していない事実”
が、如実に浮き彫りになる…という思いもよらない結果が得られた。
この意外な意識調査結果が契機となり当デザインシンクタンクプロジェクトグループの研究テーマは、
「橋本の街を環境デザイン的見地から改善すること」を目標としたより実践的な研究室へと、研究テーマを
変化させることになる。
本来の目的である意識調査においては、環境デザイン科在学生の持つ様々な側面を垣間見ることができた
と思う。例えば現在の在学生は、我々が認識していた以上に「あかり」や「光」について強い関心をもって
いた。また例えば、昨今のデジタル化されたデザインが多勢を占める中、手書きのスケッチや模型づくり、
製図を重視する在学生が多数を占めていたことは、大きな驚きであった。
しかしその一方で在学生のデザインに対する興味が、デザインの表層に限られ、そのデザインが内包して
いる「かくれた事象」には、殆ど目を配ることが無いといった残念な事実も発覚した。また環境デザインが
幅の広い分野を扱う学問のためか、一つ一つの問題を掘り下げて見る目や、掘り下げる行為が非常に欠落し
ているようにも感じた。
今後環境デザインという学問を考える上で、考慮していかなければならない問題や欠点が今回明らかと
なった事は、同じように環境デザインを学ぶ我々デザインシンクタンクプロジェクトグループにとっても非
常に有意義であったのではないだろうか。
2−2 橋本アートタウン化構想
♦概要
これは2002年7月中旬から9月の中までの1ヶ月間をかけて実地調査し、その後相模原市都市整備課や財
団法人相模原みちの協会に対して行った「環境デザイン分野から見る橋本駅前空間の可能性」のプレゼン
テーションである。
前事例でも述べたように、多摩美術大学環境デザイン科在学生に対して行った「等身大の環境デザイン」
の研究終了後、我々は橋本の街と多摩美術大学との関係を見直す必要性を強く感じた。
さらに「等身大の環境デザイン」の回答結果を見ると、現在20%もの学生が橋本在住にも関わらず、そ
の殆どが橋本の街に際立った特徴や、際立つ印象を感じていないことも判明した。さらに調査すると、橋本
駅を大学までの通学に利用している学生は、環境デザイン科学生の約60%に上ることも新たに判明した。
しかし現状ではその殆どが、橋本の駅や街を単なる通過駅・通過地点としてしか捉えておらず、わざわざ橋
本の街で買い物や飲食をすることは、基本的に殆ど無いようであった。
そこで本企画をまとめ相模原市各機関に掛け合うことで、多摩美術大学と橋本の街を結びつける実践的な
運動を起こすきっかけが作れないだろうかと考えた。
周知のように現在美術系単科大学は全国にも数えるほどしかなく、そのうちの一校である多摩美術大学を
近隣に有する橋本の街は、そういった地理的環境において既に大きな特徴を持つ街である。また多摩美術大
学へ大学直行のバス路線が橋本駅構内に新たに新設されるなど、時期的にも提案が可能な条件がそろってい
た。そして同じように多摩美術大学側でも、産学協同としてアート作品を八王子駅ビルに設置するなど徐々
に近隣の街と関係を強め始めた時期であった。
このように訪れた時期をうまく転用すれば、多摩美術大学のもつ特徴やイメージを橋本の様々な空間に無
理なく浸透させ、いずれの街にも劣ることのない個性と特徴のある街づくりが可能となるのではないだろう
かとの最終的な仮説を立てた。そして本企画を「橋本アートタウン構想(通称HAT)」と名付け、実地調査
とそれに伴うデザイン的な提案の作成を開始した。
♦芸術のある空間の必要性
① 芸術空間の実現
・全国でも数少ない芸術系単科大学の所在を地域の魅力として捉え、大学と街との交流をはかっていくこ
とが地域の個性、相模原市と他市町村との差別化につながる。
・橋本での公開講座/ワークショップの開催が住民と大学の交流を招き、関係強化/相互理解を生む。
・芸術が生活に根ざしたものとなり潤いのある駅前空間、活性化した街並が形成される。
・橋本の街に愛着が強くなり、街の美観/景観に対して意識的になる。
・橋本にしかない魅力的な雰囲気が醸し出され、街の個性が確立される。
・新しい文化、価値が生まれ、様々な刺激、影響を外部に対し与えられる。
・芸術が人々の回遊性を誘い、商業施設の需要拡大、利用増加が促進される。
② 計画に際する学生ならではの利点
・短期間集中発想/製作が可能であり、その成果が顕著に表れる。
・本計画は今後毎年継続/更新されていくプロジェクトである。
・既存の概念にとらわれない柔軟な発想が可能。
・環境のハード/ソフト両面から、魅力ある街づくりに向けた実践的な提案が可能である。
③ さらなる展望として
・計画区域を橋本駅前から徐々に拡大することで、学生の周辺施設利用頻度が高まる。
・橋本駅から多摩美術大学へと延びる通学路を本計画のシンボルプロムナードと位置づけ、その沿道上に
は学生による作品が配置される。
・芸術を介して 多様な価値観/解釈を抱擁し相互理解を得、 人々が多様な表現/評論を享受できる街を
形成してゆく。
・芸術の存在が創作活動環境の制度改革/概念変化をもたらすよう、事業者/各団体/住民と連携しなが
ら推進する。
♦具体的な提案
各提案の想定している敷地は、図版「具体的な提案の想定エリア」としてまとめて表記した。
① 親緑空間
・再開発により発生した小規模空地を植栽し、ポケットパークとして新たに計画する。
・mewe1階外部ウッドデッキ空間からの景観を改善し、緑化の推進/創出を行う。
・背景に里山があるため知覚されにくいが、街中に緑が少なく親しむ空間がない現状を改善する。
・経年変化を見通した植栽計画を確立し、地域への緑化推進の発信源/拠点とする。
② ファニチャー1(駅前ペデストリアンデッキ側)
・利用頻度の低い動線空間へファニチャーを新たに設置し新しい動線を形成する。また従来の重複した機
能分離を速やかに行い、より魅力的なペデストリアンデッキへと周辺環境と共に再構築する。
③ ファニチャー2(mewe2階ウッドデッキ側)
・利用頻度の低い動線空間にファニチャーを導入することで、人々が滞在する要素を創出する。これに
よって、現在外部空間に対して閉ざされたmewe2階店舗の積極的なショーウインドウ利用をも促す。
④ サウンドアート
・橋本駅前空間全体を多摩美術大学へと続くオープンエアーミュージアムと捉え、サウンドアート作品を
周辺歩道植え込み等に設置、展開する。
・無機質な駅前空間においても季節をより感じられるよう「自然音・四季折々の音」をサウンドアートに
盛り込み、新たなパブリックアート環境の創出を模索する。
⑤ 親水空間
・ペデストリアンデッキ下部に位置したmewe1階エントランス部分の現状は、違法駐輪であふれ魅力的
な空間とはとうてい言い難い状況。そこでこの空間に違法駐輪減少を目的とした、親水スペースを形成
する。また光を取り込み反射させる装置をかねたこの親水スペースは、日中薄暗くなりがちなペデスト
リアンデッキ下を、明るく軽やかで清潔なスペースに演出する。
・また親水空間の存在は近隣の住民を引き寄せる事となり、経済効果拡大へと繋がる要因となる。
⑥ デッドスペース活用法
・結果的に違法駐輪を引き起こすデッドスペース的な空間に、違法駐輪の制止を兼ねたアート作品を
配置する。
・現状では立入禁止と書かれたポールサインを用いてこれを表現しているが、これらのサインをアート作
品に置き換える。これによりデッドスペースを新たにギャラリースペースとして創出する。
⑦ ライティングデコレーション
・緩勾配で細かな配慮がなされたmewe2階デッキ部ではあるが、夜間ともなると暗くなり歩行上、
相当危険な為、下方からの面光源により足下を明るく照らす配慮を兼ねたライティングデザイン。
・また現状のデッキ空間に潜在する都会的要素を引き出し、さらに魅力的な空間を形成する。
・またライティング効果によって利用頻度の低い動線空間の頻度を、高める手助けとする。
⑧ 改札出口シンボルサイン計画
・橋本駅北口改札から出た直後の直感的なゲートの創出を行う。
・橋本駅周辺へと拡大していく「橋本アートタウン構想」のサイン、あるいは導入的要素も形成する。
・このサインにより街のイメージカラーを創出し、街全体のカラーコーディネーションを制御する。
⑨ オーニング
・橋本駅北口ペデストリアンデッキに新たな日陰を創出し、日中における人々の滞在を促す。
・中心商業施設2店舗の関係性の強化、視覚的連続性を与える。
・硬い表情を持つ建築素材に柔らかい表情を付加することで、相対的に街の印象を和らげる。
⑩ 学生作品展示用什器
・什器設置一帯に芸術的雰囲気を与える。
・収納作品には一定の更新性を持たせ、多摩美術大学学生の展示機会/住民の鑑賞機会を設ける。
⑪ 公開授業(学生作品講評会や生涯学習など)スペース
・公開講座/パネル展示/作品講評会を橋本の街で行い、街と大学の関係性強化を促進する。
・住民と学生/大学による交流の機会を増加させ、相互理解を得ることで街全体の活性化を促進する。
・市民団体/各種自治体/大学など、それぞれの宣伝効果を上げる。
⑫ ペデストリアンデッキフェンスのデコレーション
・本計画の介入を示唆する鮮やかな色彩で構成し「橋本アートタウン構想」計画地域の境界を定義する。
・さまざまな情報の伝達媒体として一般に広く開放、また広く活用を促す。
・更新性、企画性を持つ媒体として設置する為、構成素材には適度に安価なものを用いる。
♦橋本駅前空間現状調査
なお下記調査の英字記号は、図版「橋本駅前空間現状調査」の記号と対応している。
A:橋本駅北口改札出口から、こちら側「B's mall1商店街」への通行は殆ど無い状況。
B:コンコース2階に隣接するB's mall エントランスゲートにはサインの可能性がありうる。
C:夕方以降になると、この場所へダンスの練習を行いに若者が自然と集まり出す。秋葉原駅前広場が自
然発生したコンテクストと良く似た状況があるように映る。このアゴラ的な要素をより抽出すれば、
ポケットパークとして整備できる可能性があるのではないだろうか。
D:コーヒーショップ「スターバックスカフェ」店内からの視線がコンコース円周に配された備え付けの
ベンチに影響を及ぼす為、このあたりでは備え付けのベンチを利用する人は殆どいない。
E:B's mall1階通路より、エスカレータ経て上ってくる人の主動線はこちら側にある。
F:5階建ての橋本駅ビルが、2003年春をめどに竣工予定。
G:新しく完成する橋本駅ビルとコンコースとの繋がり部分は動線の交流部分なので、デザインの可能性
が残されているのではないか?
H:どこからともなく既製品の簡易ベンチが持ち込まれこのあたりに置かれていた。これはこの付近に新
たにファニチャーの類が、設置できる可能性を示唆するのではないか。
I:夕方はこのあたりの花壇をベンチ代わりにして待ち合わせをする人が多い。
J:駅から出てくる人の主動線(その殆どがSATY方面へと向かう)。
K:SATY1階部分の歩行者用通路は、自転車による違法駐輪地帯と化している。相模原市から整理のた
め職員も出向しているが、職員が帰宅する17時以降は、再び違法駐輪であふれかえってしまう。
L:夕方はこのあたりの花壇をベンチ代わりにして待ち合わせをする人が多い。
M:橋本駅北口改札出口から正面に見える場所。この正面には、街の顔として様々なサインの可能性が
あるのではないだろうか。
N:現状では橋本駅北口改札出口から人の流れが殆ど無い為、mewe2階店舗のショーウインドウがこの
デッキ部分に対して機能していない。従ってショーウインドウは有効活用されないまま「裏方扱い」
となり周辺の外観を損なう結果になっている。
O:mewe2階レベルのウッドデッキは、その延長上に明確な到達点や動線が確保されていないため、
このデッキの利用者は殆ど無く、常にまばらである。
P:この備え付けベンチの利用時間のピークは夕方に訪れ、夜間になるとベンチの利用率は殆ど無くな
る。それ以降はスケートボードを練習する少年達の休憩所と化し、一般の通行者が利用しがたい雰囲
気ができあがってしまう。
♦まとめ
この研究によって、これまで漠然と接してきた橋本を詳細に調査する機会を得たことは、我々デザインシ
ンクタンクプロジェクトグループにとっても都市空間を再認識、再確認する重要な契機となった。加えて都
市空間を理解するためにはその都市空間の中で相当な時間を費やさなければならず、精神的・体力的にも非
常に根気のいる研究だったといえる。
また同時に我々が多くの時間を橋本の街で過ごすにつれ、我々自身いかに橋本が持つ様々な可能性(ポテ
ンシャル)を見過ごしていたかも痛感できた。
例えば橋本駅北口駅前ペデストリアンデッキに隣接した大型店舗と大型店舗の間にまたがる非常用通路で
は、近隣の若者がダンスの練習をする光景をしばしば目にした。彼らはその非常用通路にダンスステージと
いう空間の新たな可能性を見いだしその場を活用していた。これは環境デザインや都市デザイン、建築デザ
インを学ぶ我々以上に都市を理解していることの現れであり、非常に感心した光景であった。
また例えば橋本駅北口駅前ペデストリアンデッキに偶然持ち込まれたであろう既製品のベンチが置かれた
様は、ペデストリアンデッキにおける現状の家具配置計画が、正常に機能していない事をまざまざと我々に
見せつけた。
また同ペデストリアンデッキ1階エスカレーター付近は、大型店舗の1階入口という店舗・ペデストリア
ンデッキ双方の平面計画上重要な位置にも関わらず、人工地盤の悪影響によって薄暗く陰惨な人気のない場
所と化していたことも分かった。
そして駅前再開発事業の影響によって生まれたであろう小規模空地が駅周辺のあちらこちらに点在し、そ
の殆どが仮設的な駐車場として、あるいは単なる空き地として街全体の風景を奇妙なものにしていた。その
中には橋本駅北口駅前ペデストリアンデッキから数十メートルと離れていないものもあり、今後橋本駅前の
景観を考える上で大きな課題となるものであった。
以上これらの可能性や課題をまとめ、2002年9月上旬に相模原市都市整備課に橋本に関する環境デザイ
ン的提案として、本研究成果を提出した。残念ながらこの機会では思った以上の手応えは感じることができ
なかったが、その直後新たに打ち合わせた相模原市観光課の担当者よって、財団法人相模原市みちの協会へ
とこの企画内容が伝えられ事態は、実現へと向け急変した。
そしてその後、財団法人相模原市みちの協会とのさまざまな協議を経て「橋本アートタウン化構想」は、
2002年度中に実現可能なワークショップへと段階移行し、事例2−4橋本アートタウン構想ワークショッ
プ 「h*ripple」へと続くことになった。
2−3 八王子市道路原標デザインコンペティション応募作品
♦概要
これは2002年度9月上旬から9月中旬の短期間で制作した、原標デザインのコンペティション応募作品
である。設定された敷地は、国道16号と国道20号が交差する八王子市横山三丁目交差点の歩道部分。そ
こに八王子の起点を示す道路原標のデザインを提案せよ…という内容のコンペティションだった。そもそも
このコンペティションは早い時期から一般公募されていたものだったのだが、締め切り間際になっても一般
応募作品が少なかった。そこで急遽、参加依頼を我々デザインシンクタンクプロジェクトグループが受け、
それに答える形で制作を始めた…という経緯を持つ作品である。
♦作品解説
一般的に道路原標のデザインというと東京日本橋の原標に代表されるように、基本的には平面的な作品や
図案が多い。そこで私は、環境デザイン/建築デザイン的なアプローチを用い原標をデザインする事で、他
の作品に比べ明確な差異を設けられるのではないかと考えた。また敷地である八王子市横山三丁目交差点
は、空間的に原標とそれに付随するポケットパーク(新原標設置に併せて新たに開園予定のもの)を確保す
る上で十分な敷地面積を確保しているとは言い難く、平面的な原標デザインでは際立った効果を敷地に現す
ことができないようにも感じた。以上の理由から今回のデザインを立体的なデザインとして提案する必要を
強く感じたのである。
私が提案したデザインは、(カメラのシャッター構造から引用した)シンプルな8枚の絞り羽と、それを
地中基壇から照らすスポットビームユニットから構成されるものである。平面的な原標に、この可変機構と
照射用ライトを内蔵する事で、日中は絞り羽一枚一枚に刻まれた気孔が様々な文様を原標に浮かび上がらせ
る。そして夜間には地中基壇に内蔵されたスポットビームからの光を受け、夜空に八王子市の原点を光のラ
インとして描き出す…という仕組みのものだった。
また可変機構の機械的な構造については、八王子市に大手のカメラメーカーが研究施設をかまえている事
もあるので、技術的な問題はここで解決できるのではないかと推測しこれを採用した。
♦まとめ(コンペティション結果)
最終的にコンペティションは一般的な平面デザインに決まってしまい、当提案は残念ながら落選という結
果となった。しかし「平面的な原標デザイン」という既存概念の枠に囚われることなく、環境デザイン的見
地から、立体的な作品を提案できたこと、また八王子市のまちづくりに当デザインシンクタンクプロジェク
トグループが微力ながら尽力できたことは、橋本アートタウン構想等他の研究にも必ず役立つだろう。
そしてここまで行ってきた研究の延長上に、このような都市デザインに関連したコンペティションを組み
込むことができた事は、非常に有意義な研究機会であったように思う。
2−4 橋本アートタウン構想ワークショップ h*ripple
♦概要
本研究は前段落(2-1)で制作した「橋本アートタウン構想」の第一作目の実践デザインとして、2002
年11月2日から4日にかけ、橋本駅北口ペデストリアンデッキ上で財団法人相模原市みちの協会と共同開催
したワークショップである。
本研究では橋本市民のみならずこの作品を観覧した全ての人々が、橋本の街に対する想いを再認識し橋本
の景観や街区の在り方について、今以上に意識的になる事を狙いとしている。また今後、このような計画を
継続していく上で不可欠な「相模原市政・橋本住民・多摩美術大学」三者の関係を今以上に深めることも研
究上の大きな柱とした。
このワークショップでは、橋本駅前空間の中でも最も人々の目に触れやすい橋本駅北口ペデストリアン
デッキエスカレータ付近の床面(ペデストリアンデッキは人工地盤の為、その表面は水磨きのタイル仕上げ
となっている)を敷地として設定した。
ここにカッティング出力した橋本在住者の「本人の手書きによって記述してもらった橋本の街に対するさ
まざまな意見」を、円形状にレイアウトして発信・表現した。円形状のデザインを選択した理由は経済上の
制約や、角ができにくい形状のためある程度の耐久性が保証される事など多々あるが、一番の理由はその形
態上の特徴が”丸みを帯びた有機的な形状だった”ためである。
一般的に有機的な形状は金属が多用され直線的なデザインで占められた近代の都市や街において、非常に
異質な形態に分類される。この結果、視覚的に橋本駅北口ペデストリアンデッキ通行者の目に、強く訴える
ことができるのではないかと我々は考えた。
通常このような企画を提案した場合、最終的な見え掛かりを最優先させるため「均一なフォーマットもし
くはコンピューターで扱いやすい状態」に変換・加工して表現するのが普通であり、またそれが妥当な手段
であることは疑いようもない。もちろん我々も、少なからず同様の処理を施した部分はあるが、根本的には
手書きによる記述を残したままのかたちを最終デザインとした。
ではなぜわざわざそのような手段を用いたのか。本研究では橋本在住の市民ひとりひとりの声が重要であ
り、どういった市民がどのような意見を持っているのか…を正確に表現する必要があった。抽象的な概念で
捉えられた「地理上の橋本」という認識から、手書きによって記述された意見やその筆跡を通して、「具体
的な事柄で溢れている街(言い換えれば住民の顔が見える街)」へと、人々の認識を変革するために「より
具体的でより直感的な記述方法」が必要だったのである。
以上のような理由から、コンピューターによって単一な表情に置き換えられた「記号としての意見」では
なく、「手書きによる直感的なデザイン」を選択したのである。
またこのワークショップの模様は様々な方面で反響を呼び、地元タウン誌である「橋本タウンニュース」
やその他インターネット情報サイトでも大きく報じられたことも追記しておく。
・タウンニュース 多摩美術大学生による「橋本アートタウン構想」
(2003年1月現在は閲覧可能)
http://www.townnews.co.jp/020area_page/01_thu/02_saga/11_07/saga_top2.html
注:財団法人相模原市みちの協会とは
財団法人相模原市みちの協会は、相模原市内における道路愛護意識の啓発や道路の環境美化推進等を
目的に組織された協会である。主な事業内容は「みちの花壇づくり・街路樹を再利用した家具の販売・
ペデストリアンデッキ等駅前施設の維持管理」である。また近年は道路愛護的な見地から文化的貢献も
数多く行っており、1998年から相模原市役所通りにて「みちの造形展」なる屋外彫刻展を主催。
またかわったところでは「みちのミニ百科」という小冊子を刊行するなど、従来の土木交通を主に扱
う公的機関に比べ、非常に柔軟な発想とそれに伴った行動力を持つ協会である。
♦作品解説
作品に使用する市民の意見は、2002年10月25/26日両日に開催された「橋本ふるさと祭まつり、宮上
町ふるさとまつり」にてアンケート形式で、会場内の市民合計210名より事前採取した。これら市民の意見
や思いを「ripple=リップル/波紋/水の広がり(多様な声が互いに響きあうさま)」と題して、前述の通
り橋本駅北口ペデストリアンデッキエスカレータ付近の床面にて、2002年11月2/3/4日にワークショッ
プ成果展として発表した。
A:橋本の街に対する市民の想いが表されるスペースの作成手順
① 事前アンケートから、市民の意見を抽出する
↓
② コンピューターで印刷原稿に円形状にレイアウトする。
この部分がrippleの外周部分となる。
↓
③ 「B」と合成してripple印刷原稿を完成する。
↓
④ カッティングプロッタにて出力。
↓
⑤ 我々デザインシンクタンクプロジェクトグループメンバーが現地にて施工。
B:手書きの文字が配置されるスペースの作成手順
① 事前アンケート中央円形状の部分に位置した手書きによる「橋本」の文字を、
スキャナーを使用してコンピュータに取り込む。
↓
② コンピューターで印刷原稿にレイアウトする。
↓
③ 「A」と合成してripple印刷原稿を完成する。
↓
④ カッティングプロッタにて出力。
↓
⑤ 我々デザインシンクタンクプロジェクトグループメンバーが現地にて施工。
上記のように各rippleは「A:橋本の街に対する市民の想いが表されるスペース」と「B:手書きの文字
が配置されるスペース」の2つのスペースからデザイン的に構成される。
以上の行程を、計120枚分出力したのち橋本駅北口ペデストリアンデッキエスカレータ付近の床面に施
工、多摩美術大学大学院田淵研究室 相模原市みちの協会共催ワークショップ h*rippleはこのような道のり
を経て完成した。
補足1
ペデストリアンデッキ床面に貼られた完成作品を、図版「ワークショップ開催時の橋本北口ペデストリア
ンデッキ周辺風景」に納めた。作品の詳細なイメージについては、そちらを参照されたい。
補足2
ワークショップ開催期間中、会場にて配布したA5サイズのリーフレットを、図版「h:ripple見学の手引
き」として納めた。
補足3
橋本ふるさと祭まつり・宮上町ふるさとまつりの2会場で採取したアンケート用紙原本を、巻末に図版
「h*ripple アンケート原本45%縮小版」として納めた。橋本市民が記述した原文の持つ雰囲気は、
そちらを参照されたい。
♦市民の想い ジャンル別集計結果
これは橋本ふるさと祭まつり会場と宮上町ふるさとまつり会場で採取したアンケート結果を、ジャンル別
に集計したものである。大きく分けると「橋本の街の良い点、橋本の街にある思い出、橋本の街に対する要
望・不満点」と3種類への分類が可能だった。
①橋本の街の良い点
・隠れた小さい文化がある。 ・川がきれい。 ・境川に鯉がいる。 ・川に「はや」がいる。
・山がきれい。 ・自然が多い。 ・意外に緑が多い。 ・花畑のようにあじさいの咲く公園がある。
・境川沿いを歩くと気持ちいい。 ・図書館が便利。 ・大きい図書館が2つもある。
・牧場がある。 ・買い物が便利。 ・買い物がしやすい。 ・交通の便が良くなった。
・京王線の始発駅。 ・京王線で座れる。 ・すごく便利。 ・街がにぎやかになってきた。
・どんどん発展していっている。 ・活発な街である。 ・老若男女も楽しめる街。
・進化中である。 ・住みやすい。 ・静かなところが多い。 ・商店街、スーパー等が多い。
・自治会が仲良し。 ・自治会がしっかりしているので隣組がばっちりである。 ・上下関係の絆が強い。
・他地域からの移住者が多いが、人情細やかである。 ・おまつりをたくさんやっている。
・おまつりが楽しい。 ・七夕祭りにたくさん人が来る。 ・鼓笛隊がすごい。 ・みんな親切である。
・みんな仲がよい。 ・人情深い街である。 ・良い人がたくさんいる。
・おもしろい人、優しい人がいる。 ・美人が多い。 ・お年寄りが元気。 ・古い家がある。
・歴史のある街である。 ・古く味のある街である。
②橋本の街の思い出
・昔は田舎だった。 ・昔は駅の周りは原っぱだった。 ・桑畑ばかりだった。
・昔はすすき野原、桑畑だった。 ・20年前は夜9時を過ぎると駅にも人があまりいなかった。
・昭和30年頃は駅から100m以内に桑畑があった。 ・昔は駅の周りまで買い物に行った。
・さびしい橋本だった。 ・昔は川がきれいだった。 ・寿橋は吊り橋だった。
・春は砂埃がすごかった。 ・30年前は昔の家が多かった。 ・昔は何もなかった。
・橋本駅は昔、単線だった。 ・昔、きつねの嫁入りが出た。 ・旭小学校への道は上道下道だった。
・昔は高いビルが少なかった。 ・橋本駅は、昔は木造駅舎だった。 ・元橋本町は、宿場町だった。
・大山まいりの宿場町だった。
③橋本の街に対する要望・不満点
・橋本駅前に無料駐輪場を増やしてほしい。 ・橋本駅前に一時駐車、駐輪スペースが欲しい。
・駐輪場をもっと停めやすくしてほしい。 ・自転車置き場が不便。 ・買い物時の駐輪場が不便。
・迷惑駐車が多い。 ・駐輪場が停めにくい。 ・駐輪場が少なすぎ。 ・自転車が多すぎる。
・自転車がじゃま。 ・公園を増やしてほしい。 ・野球、サッカーができるような施設、広場がほしい。
・公園に遊具を増やしてほしい。 ・大きい公園が欲しい。 ・公園が少ない。
・お花見ができる公園がほしい。 ・子供の親、子供だけの広場が欲しい。
・子供が遊べる広い場所が欲しい。 ・公園にトイレをもっとたくさんつくってほしい。
・市立幼稚園、学童を増やしてほしい。 ・幼稚園が満杯である。
・文化・カルチャーセンターが少ない。 ・暴走族、不良が多い。 ・排気ガスが多い。 ・空気が悪い。
・道が狭い。 ・交通が便利になったが、利用客が少ない。 ・駅より店に向かって延びる道が不便。
・駅の周りにゴミが多いからきれいにしてほしい。 ・ゴミが散らばっている。
・駅前に落ちているたばこと、鳩が多い。 ・たばこを減らしてほしい。 ・ゴミ箱が少ない。
・橋本名物が欲しい。 ・昔の地名を復活させてほしい。
・昔のままの所と整備されているところとあるので、全部整備してほしい。
・開発がアンバランスであり、駅前はにぎやかだが5分歩くと暗い畑である。
・開発に埋もれた。 ・防犯対策をしっかりして市民を守ってほしい。 ・福祉を充実させてほしい。
・もっとバリアフリーにしてほしい。 ・京王線の橋本行きの特急をつくってほしい。
・駅だけハデ。 ・自然がもっとたくさん欲しい。 ・緑を増やしてほしい。
・お花畑が欲しい。 ・あじさい以外の花が少ない。 ・畑が少ない。
・昔の緑がだんだん少なくなって寂しい。 ・学校の校庭を広くしてほしい。 ・パチンコ屋が多い。
・ホームレスが多くなった。 ・和が足りない。 ・若さがない。 ・顔がない街。
・人口が増えすぎた。 ・ビルが多すぎる。 ・高層ビルが建ちすぎ! ・マンションが多すぎる。
・橋本にもうマンションはいらない。 ・都会のようで都会になりきれない。 ・映画館がほしい。
③橋本の街に対する要望・不満点(前項からの続き)
・スポーツセンターをつくってほしい。 ・大きなプールがほしい。 ・安い店がもっと欲しい。
・日常の買い物がしにくい。 ・もっと買い物をしやすくしてほしい。
・若者向けだけでなく様々な年齢層が使える店がほしい。 ・ファミリー向けのお店がほしい。
♦まとめ
「橋本アートタウン構想」における最初の成果として企画、開催されたワークショップ「h* ripple」。橋
本に住む市民ひとりひとりと向き合い、それぞれの街に対する想いを取り上げる為企画したワークショップ
だったが、前項「市民の想い ジャンル別集計結果」で記したように我々の予想以上に多様な意見を汲み取
れた。
このように橋本市民が持つさまざまな想いや意見を、このような公共の場において広く公開できたことも
非常に有意義だった。例えば現状において、相模原市政に対し一市民が意見を公共の場で発言できる機会は
殆どないが、そういった(市政に届きにくい)細かな意見も今回のワークショップではあえて取り上げ、こ
れを橋本駅北口ペデストリアンデッキという公共の場において表現することもできた。
例えば現在の橋本の街からは想像もできないような数十年前の橋本の姿を、人々の脳裏に創造させること
もできた。
さらにこの研究で印象に残ったことの一つに橋本に住む市民の多くが、ペデストリアンデッキにてripple
の施工作業をしていた我々の行為に興味を持ち、積極的に話しかけてきたことがあげられる。そしてその殆
どの人は、今施工中のこの作品が多摩美術大学と相模原市みちの協会共催のワークショップであることを告
げると心から本ワークショップの開催を喜び、今後の活動を奨励・推進してくれたことである。これは多摩
美術大学や多摩美術大学に通う学生の芸術活動に対する理解の表れに他ならない。
そしてこういった地域住民との身近なふれあいが、この研究で得た一番の成果ではなかっただろうか。一
連の研究活動やアンケート、実施デザイン以上に、その様々な過程で偶然に起きた交流を通して橋本の街を
理解したとは言えまいか。本研究においてはこの「相互理解」こそが重要な成果であり、デザインやアート
を通してコミュニケーションは構築可能なものである…という一般的な定義を実体験、実経験できたことが
ワークショップh* rippleだったとも思えるのである。
第3章 2002年度デザイン活動総括とグループの展望(おわりに)
第1章でも記述したように、今年度はデザインシンクタンクプロジェクトグループの発足初年度というこ
ともあり、非常に実験的な研究が多かった。
1作目の「等身大の環境デザイン」は、意識調査と視覚伝達デザインに分類される作品。2作目の「橋本
アートタウン構想」は建築系の調査に分類されるだろう。3作目の「八王子原標デザインコンペティショ
ン」は、視覚伝達デザインとサインデザインに分類される。そして4作目の「橋本アートタウン構想ワーク
ショップ h*ripple」は平面インスタレーションに分類される。またこの論文中に記述の無い「集合住宅コン
ペティション」と「研究施設の改装計画」という建築デザインに分類される研究も行った。
以上のように、ざっとその分類された分野だけを見ても、研究する範囲や研究ジャンルが相当多岐にわ
たっていたことが分かる。
通常大学院の研究室というと研究テーマを一つ設定し、そのテーマを様々な角度から検証し解析すること
を目標とするが、当デザインシンクタンクプロジェクトグループでは「社会と環境デザインの接点を実社会
で探ること…」という大枠だけを設定して、その後の研究内容はそのケースごとに変化させるというもので
あった。
こういったオーバージャンルな研究活動は、うまく設定すればそのケースに応じて様々な経験を積むこと
可能なのだが、今年度はひとつひとつの研究の密度が低くなってしまうことがあったようにも感じる。
例えば研究の密度よりも、その作品の締め切りを優先させるため、(悪く言えば)内容が厳密に検討され
る前に最終的なデザインとなってしまうことも少なからずあった。あるいはグループでの研究を主体として
いるため、最終的なデザインに際立った特徴が無くなってしまう(平均化されてしまう)事も、あったよう
に思う。
また個人的な感想として、環境デザインという学問がまだ黎明期の中にある学問である…ということも強
く感じた。つまりその定義の曖昧さゆえ建築デザイン/インテリアデザイン/ランドスケープデザイン/イ
ンフォメーションデザイン…など全ての分野をまたいでしまう環境デザインは、良い意味ではどのジャンル
にも縛られない独自の活動や思想が可能だが、一方で「これ」という環境デザイン特有のスキルを獲得でき
ず、結果どの分野にも対抗しうる独自の力を拾得することが、非常に難しい学問でもあるのでは無いだろう
か。
しかし今後もデザインシンクタンクプロジェクトグループが「社会と環境デザインの接点を実社会で探る
こと…」を研究目的とする以上、さまざまな競争はさけることができないのは明白である。そういった見地
からもグループのメンバー全員がいずれかの分野に突出したスキルを持ち、プロジェクトごと研究テーマご
とに、どの分野にも対抗しうる独自の力を身につけていかなければならないだろう。
2002年度は「橋本アートタウン構想」をはじめとする、当デザインシンクタンクプロジェクトグループ
研究テーマの第1段階をようやく築いたばかりである。来年以降、これを第2段階、第3段階へと確実にス
テップアップさせ、橋本の街中にデザイン作品とアート作品が溢れる日が来ることを期待してやまない。