コアタイム1 シナリオ1 新城りなさん 38 歳女性、会社員。妊娠 17 週、2経妊0経産。夫(隆さん、41 歳)との 2 人暮らし。30 歳で結婚。33 歳、妊娠希望で不妊外来受診。排卵誘発剤を使用し、2 回妊 娠したが、2 回とも妊娠8週で自然流産となった。妊娠してもまた流産してしまうのではな いかという思いがあり、不妊治療は2年間のみでやめた。周囲の友人たちも結婚・出産す るなかで、産めるのは 40 歳ぐらいまでだろうという思いもあり、もう一度、不妊治療を受 けようかと迷っている矢先に自然妊娠した。妊娠初期は、また流産するのではという不安 も強かったが、妊婦健診の際に、超音波画像で胎児の画像を見ることで安心していってい た。 妊娠 12 週、主治医から高齢であることでの染色体異常の可能性が高いこと、その検査と して羊水検査があることと羊水検査についての説明があった。説明後、医師は、羊水検査 について書かれた資料を手渡し、「検査をするかしないかはもう一度こちらを読んでご夫婦 でよく考えてください。検査を希望される場合は、検査の予約を入れますので、2 週間以内 にお電話で連絡をください、希望されない場合は、ご連絡は必要ありませんから通常通り 4 週間後の外来、○月○日、10 時、にいらしてください。また、もし、何かわからないこと がありましたら、外来にお電話ください。」と説明を加えた。 ≪自宅にて≫ 夫・隆さんの帰宅後、医師からもらった資料を手渡し、説明を受けたことを夫に話した。 隆さんは、それほど資料を読むわけではなく、自分の姉の静香さんも 40 歳で出産したとき にも羊水検査を受けたことだし、受けてみたらと即答した。りなさんは、どのくらいたい へんな検査かイメージもつかなかったことや、流産の心配もあったので、静香さんに電話 で話を聞いた。静香さんからは、検査は緊張したけれど、針を刺すところに麻酔をしたの が痛かった程度で痛みもなくすぐ終わり、その後もいつもよりはお腹が硬くなる感じがし たけれど、次の日にはなんでもなかったこと、と「検査をすると安心するから、してみたら いいよ」と検査を勧められた。静香さんの話を聞き、りなさんは、それほどたいへん検査で もなさそうなので、安心できるならと検査を受けることにした。 ≪妊娠 18 週、検査結果の説明≫ りなさんは、妊娠 15 週に羊水検査を受け、妊娠 18 週に妊婦健診と検査の結果を聞くた めに外来を受診した。染色体検査の結果は、転座型 t(14q21q)のダウン症候群であった。医 師は、胎児は、ダウン症候群であることを説明した。そして、ダウン症候群のこと、今後 の妊娠の継続をどうするか選択することも可能であることを説明した。 医師「突然のことで驚かれていると思いますが、もし、今回の妊娠を続けないということ であれば、22 週前までに処置をしないといけません。ご主人にもきちんとお話したいので、 お二人でもう一度ご来院ください。ご主人の予定もありますでしょうから、ご相談のうえ、 こちらにお電話してください。明日までにはお電話いただけますか?」 りなさん「あっ…、はい。… わかりました、… ところで、赤ちゃんは元気なんでし ょうか?」 医師「ええ、今のところ、胎児の成長は順調です。」 りなさん「わかりました…、夫と相談して…、あっ…、今日は出張なので…、明日、電 話します。 」 医師「私は、明日も、外来におりますので、電話で私を呼び出してください。 」 コアタイム2 シナリオ2 まずDVDを見て下さい。 ≪自宅にて≫ りなさんは、胎児がダウン症候群であること、今後、妊娠を続けないなら妊娠 22 週までに 処置が必要になるらしいこと、先生がご主人をいっしょに説明をしたいので受診日を相談 するように言われたことを隆さんに一気に話した。 沈黙後、りなさんが、涙ながら話し始めた。 りなさん「先生の話って、結局は、子どもをそだてるかどうかということなんだよね?…… …、どうしていいか、全くわからない…、赤ちゃんが病気という実感もない…」 隆さん「ダウン症の子、育てていけるかな?」 りなさん「わからない…、でも、中絶することも考えられない…」 隆さん「 … 」 りなさん「今回、あきらめたら、もう妊娠はできない気がしている。年齢もあるし…でも、 育てられるかな……、育てたいかな?」 隆さん「そうだな…、気持ちはわかるけどね…」 りなさん「実はね、今日、赤ちゃんが動いたのがわかった気がしたの。先生も赤ちゃんは順 調に育てっているっていっていたのよ」 隆さん「うーん。今は、俺もどうしたらいいのかわからない…、自分たちに育てられるかの 自信もない。でも、このまま考えていても仕方ないから、まずは、明日、2人で先生にお 話しを聞いてみよう。早いほうがいいよ。」 りなさん「…そうだね…。明日の朝、電話して、当日の予約できるか聞いてみるわ…。」 翌日、外来に電話して受診となる。 ≪翌日、外来にて≫ りなさん「急ですみません。話を聞くなら早いほうがいいということになりまして…。」 隆さん「はじめまして。りなの夫の新城隆です。子どもがダウン症ということは妻から聞き ました。また、先生から私たち 2 人詳しい説明がということで…、早いほうがよいかと思 いまして…、やはり、ダウン症であることは間違いないんでしょうか?」 医師「そうですね。これが、染色体検査の結果なんですが…、(検査レポートを示そうとす る) 」 りなさん「あの、つまり、それは、産むか産まないかということなんですよね。先生から、 私たち夫婦2人にお話しがと言われたんですが、どんなお話があるかわからなくって、結 局、そういうことですよね…。 」 隆さん「昨夜もそういう話になって…、妻は、中絶は考えられないし、この後に妊娠する かもわからないと言うんです。でも、私は、まだ、育てていける自信はないです…。もち ろん、自分たちの子どもの命を無下にできないという気持ちもあって、子どもにも自分た ちにも最善となるために方法を考えたいと思ってはいるんです…」 医師「そうでしたか、わかりました。お二人とも育てられるかということが一番心配なんで すね。ところで、ダウン症という病気については、何かご存知ですか?」 りなさん「えっ?、なんとなくですが…、発達が遅いとか、余り長く生きられないとか…、 (間) 、です。 」 医師「ご主人は?」 隆さん「ぼくも何となくでしか…、障がい児というイメージで…、育てるのはとても大変 という感じです」 医師「わかりました。それでは、まずは、お腹の赤ちゃんの状態、ダウン症、医学的には ダウン症候群っていうのですが、今、わかっているダウン症の種類、これは今回の検査の 結果ですね。病気や検査のことは私のほうでお話できますが、産まれてからのことについ ては、詳しい看護師がおりますので、その看護師とお話ができるようにしたいと思います がいかがでしょうか?」 りなさん、隆さん「是非、お願いします」 (シナリオ作成 筑波大学看護科学系 村井文江)
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