川崎ジュニア文化大賞受賞作品 「夢はパッチワーク・キルト作家」 宮崎小学校 5年生 水上 遥香 私のおばあちゃんの家に布がたくさんある部屋があります。たくさんの箱にこまかく色分けされて入っています。私は、遊 びに行くたびにその部屋に行き、箱を開けて、その布をおばあちゃんといっしょにながめます。 おばあちゃんは、少し前まで、パッチワークやキルトの先生でした。たくさんの生徒達に色々な場所で教えていたそうです。 おばあちゃんは、いつもうれしそうにそれぞれの布の色々な話をしてくれます。たとえば、その布を買った場所やどうして その布を買ったのかなど色々です。そういう話を聞きながらその時の様子を想像するのも私の楽しみの1つです。アメリカで の生活が長かったおばあちゃんは、アメリカの布をたくさん持っています。柄や色づかいがきれいなものばかりで、私はいつ もワクワクします。 「この布で人形の洋服を作ってみたい。 」と思ったり、 「あの布でポーチを作ってみたい。 」などと、次から 次へと想像してしまいます。それを聞いているおばあちゃんは、いつも私に賛成してくれて、その布をくれます。ですから、 私も箱にいっぱい布を持っています。全部お気に入りです。でも一つ問題があります。私は、まださいほうが上手に出来ませ ん。 私の夢はおばあちゃんの布を使って、パッチワークやキルトの作品を作る人になることです。おばあちゃんは二年前に病気 にかかり、手が思うように動かせなくなってしまったので、もうキルトも、パッチワークも、針を持つことすら出来なくなっ てしまいました。布はしばらくそのままにしてありましたが、パッチワークの仲間のお友達に分けていることを聞いた時、と ても悲しい気持ちになりました。 おばあちゃんの今までの歴史が思い出が少しずつなくなってしまう気持ちになったからです。 私のお母さんは、おばあちゃんの娘ですが、おさいほうが大の苦手です。私は物作りが好きです。どんな物を作ろうか考え たり、それを一人でコツコツと作ってみんなに見せたり、おどろかせたりするのが大好きです。おさいほうにもとても興味が あります。お母さんは、よく「かくせい遺伝だね。 」と言います。本当はお母さんがおばあちゃんの布を全部作品にしてくれた ら良いのですが、それは無理そうなので、私がそうしたいと思います。そうすれば、おばあちゃんやお母さんの小さなころの 思い出がなくならずにすむと思うからです。 家におばあちゃんが作ったキルトの額やふとんがあります。とても温かみがあって、それを見たり、使ったりすると幸せな 気分になります。機械で何でもかん単に上手に作れる時代ですが、ひと針ひと針と針心をこめて作った物とは比べ物になりま せん。ようち園のころ、おばあちゃんには、お弁当ぶくろやナプキン、きんちゃく、レッスンバック、レターラックなどたく さん作ってもらいました。どれもとてもうれしかったことを覚えています。今でもずっと使っていますが、まだどこもほつれ ていません。ていねいに作ってあるからだと思います。 私もおばあちゃんのように、人を喜ばせたり、幸せな気持ちにさせたりする作品が作れる人になりたいと思うようになりま した。おばあちゃんは、針は持てなくても、きっとやさしく教えてくれると思います。いつかおばあちゃんがびっくりするよ うな、そして、喜ぶような作品を私が作ってあげたいと思います。 以上
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