矢筒の空5…

飯綱町立牟礼東小学校学校便り
矢
筒
今 井 睦 俊
の
空
№5
平成 25 年5月 25 日
本は心の栄養、たくさん読んで心の体験を。
~読書週間に寄せて、校長講話より~
先週は読書週間でした。校長講話で読書について「本は心の栄養」という話をし、続いて『おばあ
ちゃんからの贈り物』という絵本の読み聞かせを行いました 。(私が最も好きな絵本で、子どもたち
に必ず紹介している本です)
(新年度が始まってあと少しで二ヶ月。始業式で話した「あいさつ 」「黙って掃除 」「ドリル」みん
な頑張っていることを確認し )今週は読書週間です 。もうたくさん本を読んでいることと思います 。
今日ははじめに「本は心の栄養」というお話をしたいと思います。私たちは、本を読むとことによ
って、いろいろな知識を身につけ物知りになっていきます。しかし、読書というのは、頭がよくな
るだけでなく、心を成長させてくれるということです。うんと楽しい本を読んだり、嬉しい本を読
んだりすると、私たちは楽しさや嬉しさを味わうことができるようになります。逆に、悲しくなっ
てしまうような本を読むと、悲しみがわかるようになります。そして、心温まるお話を読むと、優
しい気持ちになります。このように、わたしたちはいろいろな本に出会うことによって、いろいろ
な心の体験、気持ちの体験をすることができます。やがて、喜びや悲しみ、優しさなどが分かる心
になるということです。この読書週間中に大いにいろんな本と出会って、たくさんの心の体験をし
てほしいと思います。さて、今日は先生が皆さんと一冊
の本を読んでみたいと思います。お話の題は「おばあち
ゃんからのおくりもの」というお話です 。(本を出す、表
紙を見せて紹介)どんなおくりものなんでしょうね。そ
れでは読みます。
おばあちゃんが
老人ホームへ入った。
最近、色いろなことを忘れちゃうからだ。家族のことや、時間や、自分の家も分からなくなって、時どきふ
らっとでかけては、道にまよっちゃう。台どころの火をつけたまま、けすのをわすれてしまって、火事になり
そうなこともあった。でも、ぼくはおばあちゃんがすきだ。おばあちゃんはとてもものしりで、やさしくて、
毎年ぼくにマフラーをあんでくれた。学校へもって行くぞうきんも、ぼくの名前を入れてぬってくれた。お父
さんも、小さいころぬってもらったんだって。
そして、ぼくをしかった後には、なぜだかいつも、ぼくより先になみだをながす
んだ。だから
ぼくは、おばあちゃんが老人ホームに入るのははんたいで、ずっと
いっしょにすみたかったけれど、ぼくの家は、お父さんもお母さんもしごとをして
いるし、お母さんはおなかに赤ちゃんもいて、ぼくも学校があるから、話し合って
そうきめたんだ。
おばあちゃんが入った老人ホームは、ぼくの学校の近くにあったから、ぼくは
老人ホームへ寄って帰った。おばあちゃんは
なるべく 、学校が終わると、
ぼくに会うたびに、まるで、はじめて会うおきゃくさんをむか
えるように 、「はじめまして」って言った。だけど、おばあちゃんに会いに行けば行くほど、だんだんぼくが来
るのを楽しみにしてくれるようになった。おばあちゃんの老人ホームでの生活はとても楽しそうで、ぼくも、
いっしょに歌を歌ったり、おやつを食べたりした。でも、おばあちゃんは
いつまでたっても、ぼくが
おば
あちゃんのまごだってことを思い出せなかった。
「お母さん 。お母さんも年をとったら、ぼくやお父さんのこと 、分からなくなっちゃうの? 」ぼくが聞くと、
「お
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ばあちゃんは病気だからねえ・・・ 。」と、お母さんは言った。
「お父さん、お父さん。今度いっしょにおばあちゃんのところへ行こうよ 。」
ぼくが言っても、「行っても
お父さんのこと、わからないだろうしなあ・・
・・。」と、お父さんはおばあちゃんに会いに行かなかった。
ある日、いつものように
ぼくが老人ホームへ行くと、おばあちゃんはかぜをひい
てベットでねていた。ぼくは
おばあちゃんのしわしわの手をにぎった。すると、おばあちゃんは
ぱっと、大きく目をひらいて 、「よかった。お帰り」と言い、安心したように
の日の朝、おばあちゃんは病院へうつり、一週間後にそっと
おばあちゃんの
次
いきをひとった。
おそうしきの日、老人ホームのお姉さんが来て、ぼくに紙ぶくろをくれた 。「これ、あなた
にだと思うの」何だろう?紙ぶくろの中を見て
ぼくは思わず 、「あっ」と声を上げた。そして 、「お父さん!
お父さん!これ見て!」ぼくはあわてて紙ぶくろを
父さんの顔が
とつぜん
また目をとじた。そして
お父さんにわたした 。「何だい?」紙ぶくろをあけた
お
きゅうにしわくちゃになり、目からなみだがどんどんあふれ出した。中に入っていたのは、お
父さんの名前がししゅうされた 、ジグザグなぬい目のぞうきんだった 。おばあちゃんは 、
お父さんの小さいころに
いたんだ。お父さんは
そっくりなぼくを、お父さんだと思って
ぞうきんをぬって
ぼくを、ぎゅっとだきしめてないた 。「父さんのかわりに
孝行してくれてありがとう」あとでお母さんが話してくれた。お父さんは
親
大好きなお
ばあちゃんの病気の姿を見るのがつらくて、会いに行けなかったんだって。おばあちゃ
ん。お父さんもお母さんもぼくも
みんなおばあちゃんが大すきだよ!いっぱい
いっぱい思い出をありがと
う。ずっとわすれないからね。
感想を寄せてくれたお子さんがいましたので紹介します。
…悲しい話だなあと、やさしいお話だなあと、二つ同時に思いました。なんだか悲しいけど、心温まるお話でし
た。校長先生はどの場面が好きですか?私は最後のおばあちゃんは亡くなってしまわれたけど、みんなあばあちゃ
んを忘れないことを誓い、みんなでニコニコしているところがいいなーと思いました。私はまだおばあちゃんはい
ます。でも、もしあんなふうになってしまったら、私はほとんど毎日お見舞いに行き、おばあちゃんの前では笑っ
ていたいな、そんなふうに思いました。本当に心あたたまるお話でした。…。(6年Rさん)
…感動物語などはとても優しい気持ちになったり、悲しい気持ちになったりします。なので読んでいると涙が出る
時があります。今日、先生が紹介してくれた「おばあちゃん… 」も一人で読んでいたら多分泣いていたと思います。
すっかり認知症になってしまっていたのに最後に「ぼく」のことをお父さんの小さい頃と間違えていたけれど覚え
ていたことに感動しました。私も本をいっぱい借りたいと思います。(6年Yさん)
…読書週間だったので、読書について話をしてくれました。その中の一つは本を読んだ人の気持ちを教えてくれ
ました。…「怖いなあ」とか『悲しいなあ』とか…。本を読んでくれました 。「おばあちゃんからの…」でした。
最初は楽しかったけど、後から悲しくなって、すごくいいお話でした。(3年Kさん)
本を読んでくれてありがとうございます 。「おばあちゃんからのおくりもの」少しなきそうになりました。おば
あちゃんがお父さんにぞうきんをあげて、お父さんが「覚えてくれてたんだ」と心で思ったと思います。(3年Yさん)
おばあちゃんがぼけてしまっても、通い続けて会いに行くぼくの暖かい心、そして 、「よかった。
お休み」と言いながら亡くなっていく大好きなおばあちゃんを失う悲しさ、最後の、自分の名前が
刺繍された雑巾を見て、お父さんが、ぼくを抱きしめて泣きだす父、ぼけてしまっても、我が子を
見つめていた母。それには気づかず、ぼけてしまった我が母を見つめることが辛いからと、会いに
行けなかった自分への悔恨の念、相手を大事に思う自分の気持ちをはるかに超える、母の命の底か
ら自分を思う深い愛。さまざまなあたたかな心に、子どもたちも熱いものを感じたのではないかと
思います。短い時間でしたが、悲しくもあたたかな感動を感じてくれたようです。
こんな感動の積み重ねが、子どもたちの中へ、人やものやことに感じる豊かな心を育んでいくも
のだと思います。読書週間は終わりましたが、これからも子どもたちの本との出会いを大切にして
いきたいものです。
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