柑きつの病害虫防除

柑きつの病害虫防除
山口県萩農林事務所 野崎 匠
黒点病
(甘夏)
黒点病 (せとみ)
ボルドーの薬害
(高温時に散布すると発生)
銅水和剤の薬害
(高温時に散布すると発生)
黒点病の伝染源
樹冠内の枯れ枝
放置されたせん定枝
放任園の枯死樹
黒点病の発生しやすい条件
枝葉の過密
風通しが悪い
樹の老化
薬剤が良く着かない
枯れ枝の多発
せん定した枝
を園内に放置、
放任園増加
黒点病菌の
密度増加
黒点病の多発生
樹のなかの湿度
が高くなる
胞子形成・胞子
発芽・侵入の好
適条件
黒点病の防除法
耕種的防除法
適切な間伐、整枝剪定により樹冠内部への採光を図
り、枯れ枝の発生を抑える。
枯れ枝の除去を徹底し、伝染源を少なくする。
園内の剪定枝が持ち出せない場合は、一カ所に剪定
枝を集めてビニールシートで覆うか、チッパーででき
るだけ細かく砕き、黒点病の伝染源とならないように
する。
黒点病の防除法
薬剤防除法
6月上旬に第1回目の防除
累積降雨量が200~250㎜前後に達した時点
で次の散布を行う(9月下旬頃まで)。ただし、
降雨が少なくても薬剤散布後30日を経過する
と薬剤の効果がなくなるので、次の防除を行う。
主な薬剤
ジマンダイセン水和剤、ペンコゼブ水和剤、
エムダイファー水和剤、ストロビードライフロアブル
など
かいよう病
(甘夏)
かいよう病
果実の初期症状
果実の症状
葉の初期症状
葉の症状(落葉直前)
かいよう病
枝病斑
ミカンハモグリガ食害に沿った発病
果実の激発症状
かいよう病の発生生態
伝染を繰り
返す
越冬病斑・
潜伏
越冬病斑
雨で伝染
新葉・枝
雨
で
伝
染
果実
主な感染時期:
春葉 5月上旬~6月中旬
果実 5月下旬~9月下旬頃
(傷口からはそれ以降も感染)
かいよう病の防除法
耕種的防除法
防風垣、防風ネットの整備などの防風対策
発病した枝や葉の除去
不要な夏秋梢の除去
(ミカンハモグリガ食害痕から感染)
ミカンハモグリガの防除徹底
抵抗性の弱い品種と混植しない
かいよう病の防除法
薬剤防除法
発芽前、開花前、落花直後、6月下旬に薬剤
防除
台風来襲前に薬剤散布を行う。
主な薬剤
ICボルドー66D、コサイドボルドー、Zボルドー、バリダシン液剤等
そうか病
耐病性 :甘夏、ハッサク、伊予柑
り病性 :温州みかん、レモン、晩白柚
ユズ
ユズ そうか病
ユズ そうか病
そうか病の発生生態
伝染を繰り
返す
越冬病斑
雨で伝染
新葉・枝
雨
で
伝
染
果実
主な感染時期:
春葉 展葉期~6月上旬まで
果実 5月中旬~7月下旬まで
そうか病の防除法
耕種的防除法
ほ場を定期的に見回り、発病した枝や葉
を取り除く。
伝染源となる抵抗性の弱い品種を園内
に混植しない。
窒素肥料を多施用すると発生が多くなる
ので、適切な肥培管理をする。
そうか病の防除法
薬剤防除法
薬剤散布は、発芽時(新芽が5 mm 程度)、5
月下旬(灰色かび病との同時防除)、6月下旬
に行う。
ベンズイミダゾール系薬剤(ベンレート、トップ
ジンM など)の耐性菌が県内で発生している
ので、防除効果の低いほ場では他の薬剤を選
択する。
主な薬剤
デランフロアブル、フロンサイドSC、トップジンM水和剤、
ベンレート水和剤、ストロビードライフロアブルなど
灰色かび病
花弁で繁殖した灰色かび病菌が果実に感染
かんきつの開花期(5月上旬から下旬)に雨
が多いと発生しやすい
灰色かび病の防除法
耕種的防除法
防風樹、カンキツの適正なせん定
→カンキツ園の風の通りを良くする
薬剤防除法
開花時期の薬剤防除を実施する。
フロンサイドSC、ストロビードライフロアブル等
炭疽病(さび果):甘夏
炭疽病菌(枯れ枝)による被害
炭疽病(さび果)の防除法
耕種的防除法
◆袋掛け等により日焼け果の発生を防止する
◆枯れ枝を除去するとともに整枝・剪定によ
り採光を良くし、枯れ枝の発生を防ぐ
薬剤防除法
さび果対策:黒点病防除を兼ねてジマンダ
イセン水和剤、エムダイファー水和剤を散布
◆貯蔵中の腐敗対策:貯蔵病害防除を兼ねて
ベンレート水和剤を散布
貯蔵病害
緑かび病(白い部分が多い)
青かび病(白い部分が少ない)
緑かび病
青かび病
黒腐れ病
軸腐病
貯蔵病害(青かび病、緑かび病、
軸腐病、黒腐病)の防除法
耕種的防除法
◆作業の際は、果実に傷を付けないようにする
◆腐敗果の早期発見に努め、発見し次第除去する
◆貯蔵量を適正にし、過湿にならないよう換気
に注意する
薬剤防除法
◆収穫前に、トップジンM,ベンレート、ベフ
ラン等を散布する
かいよう虎斑病(CTV) ゆず
凸型病斑
凹型病斑
ステムピッティング病(CTV)
接ぎ木部異常病(CTLV)
温州萎縮病(SDV)
ウイロイドを保毒した不知火の剥皮症状(CEVd)
ウイルス・ウイロイド病の防除法
耕種的防除法
育苗や高接ぎには、健全な母樹から採取した穂木を
用いる
結果量の調節、有機質の補給などにより、樹勢の増
強を図る。
薬剤防除法
◆ウイルス病やウイロイド病に効果のある薬剤は、現在
のところない
◆樹勢が低下した樹、葉が巻いている樹、樹皮をはく皮
すると枝幹に溝がある樹は早めに伐採する
ミカンハダニについて
汁を吸われて白くかすれる
雄
雌
• とがった口で葉の汁を
吸う
• 気温が十分なら10日
程で卵から成虫になる
• 春から秋に発生(秋の
高温のため発生が長
期化)
• 高温乾燥を好み、日照
りの夏に増えやすい
• 移動は歩行で行うか、
風に乗る
ミカンハダニとその天敵
ハダニ
食べる
ミカンハダニ
ケシハネカクシ幼虫
食べる
食べる
ミヤコカブリダニ
ハダニ
ケシハネカクシ成虫
ミカンハダニのリサージェンス
ダニに効かないが、天敵に影響の強い薬剤
天敵減少
ミヤコカブリダニ
ケシハネカクシ幼虫
ミカンハダニ激増
ケシハネカクシ成虫
ハダニの防除対策
• 収穫後~春まで:高濃度の機械油乳剤
• 夏(黒点病2回目防除時):低濃度の機械
油乳剤
• 8月末~9月はじめ:効果高い化学農薬
• 収穫までの間に同じ化学農薬は2度使わ
ない(直ぐに効かなくなるため)
• 他害虫の防除を行った後、ハダニが激増
する(リサージェンス)ことがあるので注意
ヤノネカイガラムシ
ヤノネカイガラムシの寄生痕
ヤノネカイガラムシの雌のコロニー
イセリヤカイガラムシ
「イセリヤカイガラムシ」と「すす病」
すす病
カイガラムシ、アブラムシが恒常的に多発していると、
これらが排泄する分泌液(甘露)で、空気中の雑菌が
増殖してこのような病害になる。
カイガラムシ類の防除法
耕種的防除法
◆通風、採光を良好にする
天敵利用
◆イセリアカイガラムシは放任園等でフタホシテントウ等を捕獲
して放飼すると有効
薬剤防除法
第一世代のふ化(6月上中旬)防除する
冬期にマシン油乳剤を散布する
ゴマダラカミキリ
カミキリの食害痕
カミキリ幼虫の食害 (ノコくず)
ゴマダラカミキリの防除法
耕種的防除法
◆主幹部の雑草を除去する。
◆株元にネット(柔らかいもの)を巻いて捕殺する
◆園内を見回って成虫、幼虫を捕殺・刺殺する。
◆木質部に入っている幼虫を刺殺する
◆通風、採光を良好にする
薬剤防除法
◆6月中下旬に成虫を対象に殺虫剤(スプラサイ
ド乳剤等)を散布する。
◆幼木は、産卵防止のために、必ず6/下、8/
上に主幹部にモスピラン水溶剤200 倍を散布する
ミカンハモグリガ
この部分でサナギになり、羽化する。
果実での被害痕
ミカンハモグリガ
ミカンハモグリガの防除法
耕種的防除法
◆不要な夏秋梢をせん除する
薬剤防除法
◆モスピラン水溶剤またはアドマイヤーフロアブル
等で2週間毎に防除する。
◆幼木は、アクタラ水溶剤25倍液等を主幹部散
布する
チャノキイロアザミウマ
チャノキイロアザミウマ
チャノキイロアザミウマの防除法
耕種的防除法
◆防風垣を防風ネットに変える。
◆タイベックシートは忌避効果がある。
薬剤防除法
◆6月上旬及び7月中旬にアドマイヤーフロアブ
ルやコテツフロアブル等で防除する
◆6月から10月まで、長期間にわたり加害するの
で注意が必要
ミカンサビダニ
●ミカンサビダニ
被害果
●ミカンサビ
ダニ
ミカンサビダニの防除法
耕種的防除法
◆防風垣を防風ネットに変える。
◆タイベックシートは忌避効果がある。
薬剤防除法
◆多発園では6月中旬(葉に集まる)にオサダン
水和剤25、7月上中旬にオサダン水和剤、8
月中下旬にサンマイトフロアブル、それでも
発生が止まらないときは9月中旬にコテツフロ
アブルを散布する
●ミカンサビダニの防除
圃場試験による各薬剤の防除効果
薬 剤 名
試験倍数
山口県
登録上の希釈倍数
サンマイト水和剤
3,000倍
○
2,000~3,000倍
ダニカット乳剤
1,000倍
○
1,000~1,500倍
オサダンフロアブル
6,000倍
○
4,000~6,000倍
ダニエモンフロアブル
6,000倍
○
4,000~6,000倍
コロマイト水和剤
2,000倍
△
2,000~3,000倍
バロックフロアブル
2,000倍
×
2,000倍
コテツフロアブル
4,000倍
○
4,000~6,000倍
〃
6,000倍
△
ハチハチフロアブル
3,000倍
○
2,000~3,000倍
レターデン水和剤
2,000倍
×
2,000~3,000倍
イオウフロアブル
400倍
○
400倍
注)
・○:効果が高い
△:効果がある
×:効果が劣る
訪花昆虫 ( ハナムグリ )
訪花昆虫の被害果
訪花昆虫(コアオハナムグリ)の防除法
薬剤防除法
◆開花初期と開花盛期が防除適期
◆発生が少ない場合は、無防除か開花初期の
み。多い場合は、初期と盛期の2回防除する
◆薬剤は、モスピラン水溶剤。
カネタタキ
カネタタキの防除法
耕種的防除法
◆ ワラ等でマルチをしない
◆周辺雑草を刈り取る
薬剤防除法
◆ 7月下旬にコテツフロアブルを散布する
ウスカワマイマイ
マイマイペレット等を
数粒に1平方メートル
あたり4~5ヶ所の割
合で適宜配置