学校カウンセリング特論 (講師 國分康孝先生)まとめ その2 - Hi-HO

岩手大学大学院教育学研究科
「学校カウンセリング特論」(講師
國分康孝先生)まとめ
その2
Ⅱ.カウンセリング理論の比較研究( 2000.2.20,1 3:00 -14 :30)
・なぜ,理論を話すのか。
・カウンセリング技法
・カウンセリング理論∼技法を支える理屈。概念の束。
・哲学∼理論を支えるもの。
・パーソナリティ∼上の三つを支えるもの。
・概念の束とは ,例えば,無意識 ,感情転移 ,抵抗 等の概念を束ねると「精神分析理論 」,
自己一致,自己概念,歪曲,自己不一致等の概念を束ねると「自己理論」になる。
・かつては一つのやり方で治療ができるようなことを言っていたが,最近はどの理論も一
長一短があるので,折衷でいこうという考え方が出てきた。
・一つの哲学で,一つの理論を説明しにくい。理論の折衷があるなら,思想の折衷が合っ
てもいいだろう。観念論,自然主義,プラグマティズム,実存主義,論理実証主義などの
折衷が考えられてもいい。論理療法のエリスは,実存主義と論理実証主義,プラグマティ
ズムを上手く折衷している。
・カウンセリングは行う人間の性格が絡むものである。それ故に,自分に合う哲学を理論
の背景に持てということ。
・アメリカの大学講義で「カウンセリング理論」を受講すると,理論全てを学ぶというこ
と 。8つの理論(精神分析理論 ,自己理論 ,行動理論,特性・因子理論 ,実存主義的理論,
ゲシュタルト理論,交流分析,論理療法)を知っているのは常識。 それらの理論に短時間にな
じむには ,「カウンセリングの理論(誠信書房 )」を精読してほしい。
・霜田静志先生のアドバイスで ,「君の手で自分の理論を作ろうとするのはまだ早い。人
の考えを理解するにつれ,自分の考えが定まってくるものだ」とあった。そこで ,「カウ
ンセリングの理論 」を著した。ロジャーズの理論に触れながら ,
「 俺はこうだ 」という「 I
think 」が出てきた。
1.人間観の比較
(1)精神分析理論
・もともと神経症の治療理論。カウンセリングに使うと「精神分析的カウンセリング」と
いう 。神経症の治療に使う心理療法としては「精神分析療法 」となる。心理療法の場合は ,
詳しく精神分析理論を学ばねばならない。カウンセリングの場合は,精神分析理論を啓蒙
的に学ぶ必要がある。
・フロイドは人間を「犬,猫と同じで本能がある。本能こそが人間の出発点」と考えた。
(2)自己理論
・ロジャーズは ,「どんな人間にもよくなる力,成長の力が潜んでいる」と考えた。
*精神分析と自己理論は「生物主義」の点では同じ。フロイドはもともと医者であり,生
物主義の本能を考えた。ロジャーズは神学校出身,自然主義的。
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(3)行動理論
・条件反射理論からスタート。条件反射理論はパブロフ,試行錯誤理論はソーンダイク。
前者がS−Rでベルが鳴ると唾液が出る ,後者がR−Sで猫が走り回るとバーにぶつかり ,
餌が出るという実験。共通項は ,「全ての行動は刺激と反応のワンセットであり,順番が
異なるだけ」ということ。この考えから,行動理論が生まれた。この理論を用いると,行
動療法であり,行動カウンセリングになる。技法としては,S−R,R−Sをミックスし
た技法がある。
・「人間はもともと白紙である 」という人間観。いろいろな刺激が与えられているうちに ,
反応,行動ができあがってくるというもの。ワトソンは ,「私に人間を一ダース預けてく
れたら,いかような人間にも望み通りにしてみせる」と言った。
(4)特性・因子理論
・心理テストの理論。
・特性とは「具象的に測定できる反応」のこと。記憶力や思考力などだが,それは言葉を
用いての反応である。日本人に英語でものを言ってもそうはわからない。日本語で言えば
必ずわかる。つまり,言葉を用いてこそ,記憶や思考といった反応が生まれる。ここでの
言葉を「因子」という。
・「人間は特性と因子の束である。人間は長所と短所の束でもある。優れたところと劣っ
たところを持っている 。」
(5)実存主義的理論
・「人間は大人でも子供でも,白人でも黒人でも,自分の人生は自分で選ぶ権利を持って
いる 。」
(6)論理療法
・「人間は本来,事実や論理に従うラショナルなものである。ところが,イラショナルに
振り回される 。
」
(7)ゲシュタルト理論
・「人間は本来,ものを全体像(ゲシュタルト)と捉える傾向がある 。」
・ルビンの杯。 図と地
*同じゲシュタルト派でもクルト・レヴィン(Tグループを提唱)と混同しないように。
(8)交流分析
・精神分析の口語版と呼ばれる。
・「人間は養育者から,P(親心),A(大人心 ),C(子供心)をもらう 。」
2.性格論について
(1)精神分析理論
・「 幼少期の家庭が性格を作る。性格は後天的に作られる 。」
ウンセラーがやるということ。カウンセラーは親の代理人。
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親がやり残したことをカ
(2)自己理論
・「生まれた後の自己概念(自分へのイメージ,他人の評価によって決まる)が性格の決
め手となる 。
」 「僕は頭のいい人間だ」などのように後天的に人に評価されてできてく
る。
(3)行動理論
・「生まれてからの条件付けの結果が性格を作る 。」
*精神分析理論,自己理論同様 ,「環境論」の立場である。
(4)特性・因子理論
・テストの結果,数量的に性格を示すことはできるが,弱い 。「内向的とか外向的とか」
(5)実存主義的理論
・性格論はきわめて弱い。もともと哲学なので,性格論については,他の理論を借用して
いる。
(6)論理療法
・「後天的に学習したビリーフが性格を作る。生まれながらに口の重い人はいない。どこ
かでビリーフを獲得したということ 。」
(7)ゲシュタルト理論
・「 人はどういうゲシュタルトを作っているかによって性格が決まる 。」
焦点を図,背
景を地とすると,再婚した母親への気持ちが図になっていて,再婚先を尋ねた自分にいつ
も小銭を持たせてくれた母親への気持ちが地となっていれば,母親を恨めしく思う気持ち
が出てくる。しかし,図と地が逆転すれば,たえず自分のことを気にかけてくれた母親へ
の愛しい気持ちが前面に出てくる。
(8)交流分析
・「養育者から学習されたP,A,Cが自由に出入りし,性格を作る 。」
3.病理論について(なぜ,人は問題を起こすのか?)
(1)精神分析理論
・諸悪の根元は抑圧にある。なぜ抑圧がいけないかといえば,押さえ込んだ無意識に振り
回されるからである。母を捨て,他人である妻と結婚するという罪障感に振り回される。
(エディプスコンプレックス) 治すとは,気づかない無意識を意識化することである。
・洞察(気づき)に重きを置く。
(2)自己理論
・諸悪の根元は二つの自己概念のズレ 。「思いこみの自分(例えば,優しい自分 )」と「あ
るがままの自分(例えば,子供をたたいてしまう自分 )」のズレ。愛しているからこそ,
子供をたたいたと考え,たたいたという事実を認めないと不幸になる。治療目標は,ある
がままの自分に気づき,自己概念を作り直すこと。すなわち,自己イメージの作り直し。
自己不一致から自己一致へ。
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(3)行動理論
・病理の原因は ,「学習が足りない(条件付けが足らない )」,あるいは ,「学習したこと
の一般化しすぎ」と考える。治すには,前者の場合は,赤面症のようなとき,対症療法を
行うとか,後者の場合は ,「目上の人には敬語を使うように」と学習したことを一般化し
すぎ,誰彼かまわず敬語を使ってしまうような場合,弁別学習が有効となる。
・教師にはなじみのいい理論だと思う。
(4)特性・因子理論
・病理の原因は ,「自分の特性・因子に合わない環境を選んだから」と考える。例えば,
しゃべるのが不得意な人が,しゃべる世界に入ったから,のように考える。治すには,テ
ストで組み合わせの間違いに気づかせ,よりより情報を与えればよい。
(5)実存主義的理論
・病理の原因は ,「自分の人生の意味が見いだせないから」と考える。治すには,苦境の
意味を自ら発見すれば大丈夫。エンカウンターなどにより,カウンセラー,クライエント
が共に自己開示して,自己発見を促す。
・アウシュビッツのガス室に収容されたフランクルの話 。友人が死にたいと話したが ,
「私
はあなたが生きる意味があると思う。あなたはお嬢さんにとって生きる源泉になってる。
お嬢さんにとっては意味がある 。」と伝えた。友人がもし言い返したならば,そこでエン
カウンターすればいい。
(6)論理療法
・病理の原因は ,「イラショナルナビリーフがあるから」と考える。教室で一人の生徒が
「反乱」を起こす。教師は全て尊敬されなければならないというイラショナルビリーフが
あるために,自分のことをだめ教師と思い落ち込む。治すのは,カウンセラーが事実と論
理にもとづいて,能動的に説得を行い,イラショナルビリーフをラショナルビリーフに変
えること 。「君が周りの全ての人を好きにならないように,君のことを好きにならない人
もいる」というように,ビリーフを変えると悩みは変わる。考え方次第で悩みは消えると
いうこと。
(7)ゲシュタルト理論
・諸悪の根元は ,
「一度作ったゲシュタルトに固執するからである 」と考える。治すには ,
いったんできあがったゲシュタルトをつぶして,再構成する。能動的にエクササイズをさ
せ,エクササイズによってゲシュタルトを再構成する。例:病気で子供を死なせてしまっ
た23歳の母親が,自分は子殺しの母であるというゲシュタルトを持っているとする。エ
クササイズとして,枕を子供に見立て,子供に語りかけるように促す。ある程度,時間が
経過したところで,ストップをかける 。「今はどんな気持ち?」と尋ねる。23歳なりに
自分のベストを尽くした母というようにゲシュタルトが再構成される。
・ゲシュタルト療法では,精神分析のように解釈をするのではなく,自分から気づくのを
待つ。
(8)交流分析
・病理の原因は ,「PACの出し入れがワンパターンだから」と考える。治すには,柔軟
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なPACの出し入れができるようにアドバイスする。
4.カウンセラーの役割について
(1)精神分析理論
・解釈すること。クライエントより先に,クライエントを見抜く(洞察)ことが大切。
・クライエントは自由連想で,正直に語ることがルール。
(2)自己理論
・非審判的,許容的な雰囲気を作ること。そうすることでクライエントはあるがままの自
己を再構成する。
(3)行動理論
・課題を出すこと。アクションから行動変容をねらう。
(4)特性・因子理論
・テストの情報を伝達する。
(5)実存主義的理論
・正直に自己をぶつける 。(自己開示,エンカウンター)
(6)論理療法
・説得者に徹する。クライエントはカウンセラーと一緒にイラショナルビリーフを粉砕し
ていく。
(7)ゲシュタルト理論
・エクササイズを行う。
(8)交流分析
・抽象的ではなく,具体的に∼しなさいと指示をして,教える。
5.各理論の得意技について
(1)精神分析理論
・守備範囲が広い。
(2)自己理論
・リレーションづくりがポイント。どんなクライエントが来てもやることは同じ。
(3)行動理論
・対症療法。問題に応じて,技法が様々にある。症状そのものの解決をねらう良さ。
(4)特性・因子理論
・情報を与えて考えさせるのがポイント。
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(5)実存主義的理論
・クライエントの話を聞き,教師やカウンセラーが自分の考えをすぐに話してはいて二返
すことがポイント。
(6)論理療法
・説得することが得意。クライエントは事実,論理性をふまえて考えることになる。
(7)ゲシュタルト理論
・ノンバーバルコミュニケーションが特徴的。
(8)交流分析
・ノンバーバルコミュニケーションが特徴的。
6.各理論の留意点
(1)精神分析理論
・プロフェッショナリズム(役割重視)から抜け出す勇気を!!
(2)自己理論
・プロフェッショナリズム(役割重視)から抜け出す勇気を!!
(3)行動理論
・飴とムチの操作はいけない。はじめに治療契約をしっかりと!!
(4)特性・因子理論
・データに決め手を与えすぎないこと。
(5)実存主義的理論
・コンフロンテーション(喧嘩)とエンカウンター(出会い)の違いを明確に。
(6)論理療法
・リレーションづくりを大切に。
(7)ゲシュタルト理論
・リレーションづくりを大切に。
(8)交流分析
・「なぜ?」という問いかけに応える技法面で弱い。
*今回のまとめ部分に関しては ,「カウンセリングの理論」(誠信書房)に詳しい。
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