豊洲再開発 関連その3 豊洲三丁目エネルギー供給施設 高 橋 章 AKIRA TAKAHASHI (新菱冷熱工業㈱ 企画部設計一課 課長) 長谷川 有二 前 田 孝 次 YUUJI HASEGAWA (新菱冷熱工業㈱ 電装部電装二課 課長) KOJI MAEDA (新菱冷熱工業㈱ 技術一部技術五課 専任課長) 建設されたものである。このほかに豊洲センター はじめに ビルの隣にTAビル(仮称)が,また,北端には 豊洲三丁目エネルギー供給施設の位置する豊洲 豊洲IHIビルと並び芝浦工大のキャンパスが建設 地区は,都心への近接性と良好な眺望という優れ され,さらに,中央部分には巨大なオフィス区画 た環境を活かしながら,職住近接の実現に向けて, と住宅区画が準備され,そこに集う住民のための 多彩なライフスタイルに対応できる質の高い居住 公園(豊洲三丁目公園) ,学校(第2豊洲小学校), 空間を創出すると共に,地元IT企業と共に「人 ショッピングセンター(トステムビバ)などが南 材交流」 , 「共同研究」や「ベンチャー企業の育成」 東部に建設中である。 などを積極的に行ない,これまでにないオリジナ リティに溢れる多彩な21世紀型新産業拠点の実現 1.施設概要 施設名称 豊洲三丁目エネルギー供給施設 を目指している。 プラント設置建物は,IHIの本社機能および関 所 在 地 連会社などが集積する豊洲IHIビル(写真−1) 江東区豊洲三丁目一番地 豊洲IHIビル地下2階 で,先端的で高機能なオフィスであると共に,豊 建築延床面積 約99,990m2 洲地区全体のランドマークになることが期待され プラント面積 約3,115m2 写真−1 豊洲IHIビル 2006・5・建築設備士 19 図−1 豊洲地区全体図 供給区域 豊洲三丁目 豊洲IHIビルおよび芝浦 で構成される。ガスタービンで発電した電力は, 工業大学(約4.8ha) 豊洲IHIビルの受変電設備と6.6kVで系統連系し, 冷熱源容量 5,100RT 発電した電力をすべて豊洲IHIビルに売電する。 温熱源容量 23.85t/h 吸気系統には吸気冷却器を設置し,夏期において 発電機容量 2,500kW も2,000kWの発電を可能としている。また蒸気タ 事 業 主 設計・施工 工 期 豊洲エネルギーサービス㈱ 平成16年1月∼平成18年1月31日 ン設備の補機用電力として使用している(写真− 2,写真−3)。 2.地域供給概要 供給需要家は,プラント設置建物である豊洲 IHIビルと隣接する芝浦工業大学となっている。 ・供給条件 4.熱源設備 表−1に主要熱源機器表,図−2に熱源系統図 を示す。 冷水標準温度 往 6.5℃ 還13.5℃ 蒸気 0.73∼0.83MPa(飽和蒸気) 発電電力 3φ3W 50Hz ービン発電機は,ガスタービンで発生した蒸気を 利用して発電し,その電力をコージェネレーショ 新菱冷熱工業㈱ 6,600V 3.コージェネレーション設備 4.1 冷熱源設備 冷熱源は,コージェネレーションの発生蒸気を 主体に利用する蒸気吸収冷凍機と氷蓄熱システム および水蓄熱システムから構成される。 ¸ 蒸気吸収冷凍機 最大出力2,500kWの熱電可変型のガスタービン 蒸気吸収冷凍機(写真−4)は,蒸気消費率 発電機,背圧式蒸気タービン発電機85kWと 3.5kg/h・RTの高効率機を採用するとともに, 2.0MPa蒸気5,950kg/hを発生させる排熱ボイラ 水蓄熱専用機を1台(蒸気消費率4.3kg/h・RT) 20 建築設備士・2006・5 写真−2 コージェネレーション設備 写真−3 コージェネレーション設備 図−2 熱源系統図 表−1 主要熱源機器表 ¸冷熱源設備 機器名称 吸収冷凍機 スクリュー冷凍機 水蓄熱用プレート熱交換器 氷蓄熱放熱運転用プレート熱交換器 氷蓄熱追掛運転用プレート熱交換器 氷蓄熱槽 水蓄熱槽 冷却塔 冷却塔 容量 1,000RT 200RT 500RT 350RT 200RT 137m3 3 600m 7,172kW 1,052kW 台数 4基 2基 2基 2基 2基 2基 1基 4基 2基 ¹温熱源設備 機器名称 炉筒煙管ボイラ 貫流ボイラ ºコージェネレーション設備 機器名称 ガスタービン発電機 蒸気タービン発電機 排熱ボイラ 容量 6,700kg/h(換算) 1,600kg/h(換算) 台数 2基 3基 容量 2,500kW 85kW 5,650kg/h(175℃) 台数 1基 1基 1基 写真−4 蒸気吸収冷凍機 2006・5・建築設備士 21 写真−5 電動スクリュー冷凍機 写真−7 炉筒煙管式蒸気ボイラ 中央監視からの選択を可能としている。 ①供給差圧一定制御 「冷水供給差圧」を一定とするように冷水ポンプ のインバータ制御を行う。インバータ制御の下限 値以下においては,冷水差圧調整弁のバイパス制 御を行う。 ②供給差圧可変制御 「冷水供給差圧設定値」は,冷水供給流量の変化 に伴い差圧曲線に基づき設定された設定値になる 写真−6 冷却塔 ように冷水ポンプのインバータ制御を行う。イン バータ制御の下限値以下においては,冷水差圧調 設置している。また,冷水・冷却水流量とも50∼ 100%変流量対応型としている。 整弁のバイパス制御を行う。 » 冷却水システム コージェネレーション設備は,豊洲IHIビルの 冷却水系統は,吸収冷凍機系とスクリュー冷凍 電力負荷による電主熱従運転となるため,コージ 機系の2系統とし,それぞれの下限温度まで冷却 ェネレーション発生蒸気を利用する吸収冷凍機運 水温度を下げることで冷凍機の高効率運転に寄与 転が優先となる。 する。 ¹ 蓄熱システム 蓄熱システムは,電動スクリュー冷凍機(写 冷却水ポンプは,冷水ポンプと同様インバータ ー制御を採用し,動力削減を図る。 真−5)によるダイナミック型氷蓄熱システムお 冷却塔(写真−6)は,低層棟屋上に設置され, よび水蓄熱用蒸気吸収冷凍機と氷核融解時の熱回 高層棟からの眺望に配慮し白煙対策を施すと共に, 収による水蓄熱システムからなる。 冷却塔上部はルーバーによる目隠し構造となって 氷蓄熱システムは,過冷却解除式ダイナミック いる。 型で過冷却器,過冷却解除装置を併せ持つ冷凍機 4.2 ユニットで,シャーベット状の氷を生成する。ま 温熱源設備は,0.78MPaの蒸気を製造する炉筒 たブライン等の不凍液を使用しないため,保守が 煙管式蒸気ボイラと貫流ボイラ,および2.0MPa 容易で環境にもやさしい蓄熱システムである。 のコージェネレーション排熱ボイラ,蒸気タービ 水蓄熱システムでは,コージェネレーションの 発生蒸気を利用し,吸収冷凍機で蓄熱し,夜間負 温熱源設備 ン発電装置(出口0.83MPa)から構成される。 ¸ 蒸気供給システム 荷用に供給する。また製氷運転時の氷核融解用ロ コージェネレーション排熱ボイラをベースに, ス分も水蓄熱槽の冷水熱源として利用している。 負荷に応じ炉筒煙管式蒸気ボイラ(写真−7)と º 冷水供給システム 冷水供給は,低負荷時に冷水ポンプのインバー タ制御で動力削減を図るため,以下の機能を持ち 22 建築設備士・2006・5 貫流ボイラ(写真−8)により蒸気を製造し供給 する。夜間は可能な限り人員を省力化するために 貫流ボイラ優先の自動運転としている。 図−3 受変電設備結線図 写真−8 貫流ボイラ 4.3 プラント補給水システム プラント補給水は,ボイラ,冷水,冷却水とも 工水を使用し,運転費を削減するシステムとして いる。工水槽に工水を引込んだ後,二層ろ過装置 にてNaClO,PAC注入処理され,補給水槽に蓄 えられる。また工水断水を考慮し,上水にて完全 にバックアップされている。 5.電気設備 5.1 受変電設備 電力引込は,東京電力より高圧ピラボックス経 写真−9 電気室 ・設備形式:屋内キュービクル式,上部引込,高 圧部分は薄型 ・設備容量 :動力用 モールド型 自冷式 6.6kV/415V 750kVA×4台 :電灯用 モールド型 自冷式 415V/210‐ 105V 50kVA×2台 バンク分けは,熱源種別でA,Bの2系統に分 割し,高圧母線にて接続する。 低圧機器においてもA,Bの2系統に分割し, 低圧母線にて接続し,変圧器1台が故障してもバ 由で地下2階電気室まで単独引込としている。 ックアップ可能なシステムとしている。電気設備 ・受電方式:6.6kV高圧2回線受電方式(本線・ の定期点検時においても,AもしくはB系で熱源 予備線) ・想定契約電力:2,000kW未満(産業用夜間蓄熱 機器の約50%の運転を可能としている。図−3に 受変電設備結線図,写真−9に電気室を示す。 契約有) 2006・5・建築設備士 23 5.2 直流電源設備 受変電設備の操作・表示用とし,屋内キュービ クル式上部引込型で電気室に設置される。 ・鉛蓄電池MSE型54セル 最低電圧1.76V/セ ル 5℃,30分間100Ah 総合的に支援している。 中央監視室には,中央監視装置,運転支援装置, データ管理装置およびコージェネ監視装置を設け, 中央監視装置は,2セット設置し,監視部分の2 重化を図っている。 5.3 UPS設備 6.2 中央監視制御用とし,薄型屋内キュービクル式 熱源プラントが安定して信頼性のある熱供給が 上部引込型で電気室内に設置される。 ・入力3φ415V 出力1φ3W210-105V 容 量30kVA ・鉛蓄電池MSE型 5℃,30分間 5.4 幹線動力設備 配電方式,供給範囲等は以下の通りとなってい る。 自動制御設備 できるように,ローカルにて自動制御システムを 構築し,調節計も自動制御盤に設置し,ローカル で完結する設備としている。 冷水受入設備は熱交換器方式のため,冷水差圧 制御などに高速性を必要しないことから電動式制 御弁を採用し,計装用空気源装置の採用を取り止 めている。 ・配電方式 :高圧機器(RC-1.2) 3φ3W6,600V 夜間運転の省力化の観点から,システム設計 (機器構成,自動制御,監視機能等)において, :プラント熱源機器 3φ3W415V 昼間運転,夜間運転とその運用を明確にし,夜間 :電灯コンセント 1φ3W105-210V 運転対象機器の自動運転を可能としている。また, ・供給範囲 :熱源機器用動力盤(CGS室内は別電源) プラント内空調・衛生設備用動力盤 プラント内電灯コンセント用分電盤(CGS 室内は別電源) ・動力制御盤:地下2階,低層棟屋上に設置。 省エネ運転のための冷水流量可変制御機能を備え, その運用は負荷状況に応じ選択が可能となってい る。 おわりに 2006年春の新たな街開きに向けて,さらに21世 ・制御方式:手元−遠方または自動 紀の新産業創造拠点の完成に向けて,豊洲は大き ・始動方式:415V 22kW以上はスターデル く変わりはじめました。この中で豊洲三丁目エネ タ始動とする。 6.中央監視・自動制御設備 6.1 中央監視設備 中央監視装置は,種々の情報を収集し,熱源プ ラントの効率的管理と熱供給事業の円滑な運営を ◇ ◇ ◇ 24 建築設備士・2006・5 ルギー供給施設も,2006年2月より熱供給を開始 しています。 本エネルギー供給設備の計画から竣工に至るま で,ご指導と助言を頂きました関係各位の皆様方 に本誌面を借りて心より御礼申し上げます。 (平成18年3月9日 原稿受理) ◇ ◇ ◇
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