第3学年A組 図工科学習指導案 授 業 者 研究協力者 1 題材名 三浦 里子 長瀬 達也 ゆめをのせて どこまでも ~色の水たまりから生まれた世界~(絵) 2 子どもと題材 (1) 子どもについて 絵に表すこと,つくることが好きな子どもたちである。これまで,紙袋で友達をつくった り,自分たちが育てた野菜のスケッチを使って想像した生き物の絵をかいたりする活動を楽 しんできた。また,3年生の題材「絵の具と水のハーモニー」では,絵の具の使い方にも慣 れてきている。一方で,思いをもてなかったり,思いはあるのだが表現につなげていくとき に難儀したりする子どももいる。その一因として考えられるのは,思いを表すときに何を表 すか,どうやって表すか,材料や創造的な技能は何を使うかなど様々なことを選択する力が 十分に育っていないことが考えられる。このような場面で,様々な選択肢の中から自分の思 いを表すのに必要なものを選ぶことができるようにするために「仲間との対話」の効果を生 かすことはできないかと考え,この題材を設定した。 (2) 題材について 本題材では,にじんでできた形や色の組み合わせ方を工夫することを通して,自分の見付 けた世界を表すために形や色,表し方や材料の選択を追求する力を培う。クレヨンで枠を描 き,その枠の中に多めの水で溶いた絵の具を垂らしてにじみをつくる。クレヨンで描いた枠 の形とその中にできたにじみの模様をもとに,自分が想像した世界を表す。子どもたちが楽 しみながら,絵の具の扱いに慣れたり,にじんでできた形や色,組み合わせなどから感じた ことをもとにして表わしたいことを広げたりしていくことができる題材である。 「色の水たまりから,何かの世界が見えてこないかな。」と投げかけることで,子どもの想 像はどんどんふくらんでいく。それは,自分が憧れているものであったり,冒険心に富んだ 世界であったりしてよい。自分の好きなものを絵の具と筆で思い切り描くことは,想像する 楽しさを味わうとともに,想像力を一層働かせる。また,友達の発想を意図的に取り入れた り,教え合ったりしながら,見立てる力や効果的な配色を考える力,描く順序を工夫する力 を育てることにつながると考える。 (3) 指導について 本題材における新たな価値を次のように考える。色の水たまりから受けたイメージから表 したいことを見付けること,そして,友達の表し方や見方や感じ方の違いに気付き,自分の イメージに合った表し方を選びながら作品をよりよいものにしていくことである。 クレヨンで囲んだ形の中を水のついた筆でぬらし,水気の多い絵の具を垂らしていく。さ らに,違う色の絵の具を垂らし,初めに垂らした絵の具と交わることでにじみができる。に じみの美しさから表したいことを見付け,見立てや友達の感じ方を知る場を設定することで, 作品の世界を広げていくことができるようにしたい。そのために,にじみを美しいと感じさ せるような出会いが大切になると考える。この過程を教師が演示して,色が混ざり合いなが ら広がる面白さを味わわせたい。 紙や水,絵の具のそれぞれの性質を生かした繊細な表現なので,筆洗やパレットの基本的 な使い方を確認し,置くようにすると混じり合い美しさが増すことを,筆使いや水の量を試 す中から気付かせるようにする。色の水たまりから表したい世界を発想する段階では,グル ープで見合う活動を設定する。自分で発想を広げている子どもとなかなか活動が進まない子 どもが一緒になるようにグループ編成を工夫する。見合うことで自分が気付かなかった友達 の見方や感じ方を知ることができる。また,情報の選択肢の幅を広げることで,曖昧だった イメージを自分なりに確かなものにし,新たな意味付けにつなげることができるものと考え る。そして,自他の作品のよさに共感することが,造形活動をさらに広げていく力になるも のと期待している。 3 題材の目標〈記号は本校の資質・能力表による〉 (1) にじみの色を生かして描く活動に進んで取り組もうとする。 〈A-a-2〉 (2) にじんでできる模様から受けたイメージをもとに表したいことを見付け, 広げる。 〈A-b-6,9〉 (3) にじんでできる模様の形や色の組み合わせを工夫する。 〈A-c-3〉 (4) 友達がつくったにじみの形や色の面白さを見付け,互いのよさを認め合う。 〈B-d-3〉 4 題材の構想(総時数 10 時間) 時間 学習活動 教師の主な支援 評価〈本校の資質・能力との関連〉 1 (1) 自分の夢についての ・ 形や色には作者の思いや ・ 材料や参考作品から, 考えをもつために作家 願いが込められていること 描いたりつくったりする の作品を鑑賞する。 を知るために, ( 教科書P. ことへの興味や関心をも 6~7の)吉田佳寿さんの っている。 作品を鑑賞する。 〈A-a-2〉 ・ 作品の気に入っていると ころを話し合い,自分の夢 マップ作りの意欲付けにな るようにする。 2 (2) 白色のクレヨンで不 ・ 次の水たまりをつくるた 定形の輪をかき,その めの参考にできるように, 中ににじみの水たまり 1つ目の水たまりができた をつくる。 ら互いに見合い,色の組み 合わせ,水の量や絵の具の 量を確かめる。 ・ にじみのつくり方を知 り,クレヨンで描いた形 や絵の具の色の組み合わ せを工夫して美しい色の 水たまりをつくってい る。 〈A-c-3〉 3 本時 (3) 水たまり同士の関係 ・ 水たまりから受けるイメ 性を見付け,表したい ージが広がるように,友達 ことを見付ける。 の 色 の 水た まり を 見合っ て,互いに何に見えるか伝 え合う場を設ける。 ・ 色の水たまりの関係性 からお話を考え,表した いことを思い付いてい る。 〈A-b-6〉 4 5 6 7 (4) 想像したものを描き ・ 自分を描き加えることで 足し,さらに発想を広 臨場感が生まれ,表したい げ,表し方を工夫する。 世界がイメージしやすくな ることを助言する。 ・ 表したい世界の様子が 表れるように工夫して描 いている。 〈A-b-9〉 〈A-c-3〉 8 (5) 友 達 と 作 品 を 見 合 ・ 表し方の良いところを見 い,よい表し方や工夫 付け伝え合い,自分の感想 した表し方を見付け, と友達の感想を比べてその 互 い の よ さ を 認 め 合 感じ方の違いに気付くこと う。 ができるようする。 ・ 友達と作品を見合い, 違いやよさに気付き,互 いに認め合っている。 〈B-d-3〉 9 10 (6) みんなで飾り方を ・ どこに,どのように飾る 考えたり,インターネ か,何を伝えるかなどをグ ッ ト を 用 い て 世 界 の ループで考えることができ 人々に自分の夢を伝え るように,展示などの例を たりする。 紹介する。 ・ 自分の表したかったこ とを相手に伝えている。 〈A-a-2〉 5 本時の実際 本時(3/10) (1) ねらい 色の水たまり同士の関係性やにじんでできた模様の色や形から,自分が表したいことを 見付ける。 (2) 展 開 時間 15 分 ○: 「仲間との対話」を通して新たな価値を創造するための手立て 学習活動 教師の支援 評価 ① 前時につくった色の水たまりを ・ 夢の世界のイメージをもつことができるよ 見合う。 うに「色の水たまりが集まったら,何かの世 【仲間との対話】 界が見えてこないかな。」と発想を促す発問 (予想される子どもの反応) をする。 ・ にじんだ薄い色が優しい感じだ ね。 ○ 自分の世界を広げるきっかけとなるよう ・ 春のイメージだなあ。 に,互いに何に見えるかについて話し合いの ・ 私は,春と夏の間だと思う。 場を設け,自分の思いを伝えたり,友達の発 ・ ほんわかした感じがする。 想のよさに触れたりする。 ・ かっこいい感じの色の組み合わ せだね。 ・ 自分と友達のイメージを比べることができ ・ 鮮やかでカラフルな色がきれい。 るように,どのように見えるか,どこからそ う思ったかを確認し,板書する。 ・ 夢の世界を見付けることができるように, お気に入りフレームを置いて,友達の作品の 良さを話すよう支援する。 学習課題 色の水たまりから夢の世界を見付けよう。 5分 自分の色の水たまりを見て,ど ・ 自分の考えをはっきりともつことができる んな感じがするかどこからそう思 ように,どんな感じがするか,どのように見 ったのかを考える。 えるかなど思ったことをメモしておくよう 【自分との対話】【仲間との対話】 に助言する。 (予想される子どもの反応) ・ 虹色の風船にして,空を飛ぼう。 ○ なかなか発想が広がらない子どもの参考 ・ もっと水たまりを増やしてどこ になるように,描きたい世界が決まっている までも行ける列車にしてみよう。 子どもに説明してもらう場を設ける。 ・ 宇宙に行ったら,虹色の惑星が 見えてきたよ。 20 分 ③ 5分 ② 自分を描き入れたり,水たまり を増やしたりしながら,表したい 世界を描く。 【自分との対話】 (予想される子どもの反応) ・ 虹色の風船に乗って,動物たち が仲良く暮らす森に着いたよ。 ・ 自分は動物たちと何をしようか な。 ・ 色の水たまりの列車で,海の中 に潜ったよ。 ・ 海の中には虹色のゼリーのよう なクラゲがいたらいいな。 ・ 虹色の惑星では,宇宙人と地球 人が仲良く生活しているよ。 ・ 発想の視野を広げることができるように, 表したい世界が見付からない子どもには,画 用紙を逆さにしたり,縦横を逆にしたり,離 れて見たりするなど視点を変える方法もあ ることを伝える。 ・ その世界にあるものを具体的にイメージ し,作品に思いを込めることができるよう に,自分を描き入れるように促し臨場感を高 める。 ④ ・ 次時の学習でイメージを広げ,深めるヒン トになるように,思い付いたことを書き留め る場を設ける。 本時の学習をふり返る。 にじんでできた模様同士の関係性を見付 けたり,友達と見合ったりして表したい夢の 世界を思い付いている。 〈A-b-6〉 (作品,発言内容,シート) (3) 「仲間との対話」を通して新たな価値を創造する子どもの姿 《学習活動①②において》 子どもの姿 ・ 自分や友達の色の水たまりからどんな感じがするか,どこからそう 思ったのかを自分なりに考えている。まだ,表したいことがはっきり とは見付かっていない。 【協働して追究する「問い」】 色の水たまりは,どのように見えるか。どんな感じがするか。 【教師の手立て】 ・ 発問: 「友達の色の水たまりはどのように見えるか,どこからそ う思ったのかお互いに伝え合いましょう。」 ・ お気に入りフレームを置いて視点をはっきりさせることにより, どのように見えるか,どこからそう思ったのかなど子どもたちの思 いを話しやすくする雰囲気をつくる。 ・ 表したいことを見付けるためのヒントとなるように,友達の表し 方のよいところを見付ける際に,どのように見えるか,どこからそ う思ったかなどの視点を示して話合いの支援をする。 ・ 違う考えに触れることで新しいアイデアのヒントとすることがで きるように,友達との感じ方の違いや違うことの面白さを板書し提 示する。 仲間との対話 目指す 子どもの姿 ・ にじんだ薄い色が優しい感じだね。春のイメージだなあ。 ・ 私は,春と夏の間だと思う。ほんわかした感じがするから。 ・ Aさんの濃い色の水たまりは,色がはっきりしていてきれ いだね。カラフルでいいね。丸いから風船かな。 ・ Aさんの水たまりの虹色がきれいだね。スイミーに出てき た虹色のゼリーのようなクラゲみたい。 ・ もっと水たまりを増やして,つなげて,どこまでも行ける 列車にしてみたらどうかな。 ・ Bさんの色の水たまりは,宇宙にある惑星みたいでおもし ろいね。 ・ なるほど。Cさん,ありがとう。周りは暗い色にして,も っと他の惑星も水たまりでつくってみよう。 ・ 暗い色の組み合わせは,何かかっこいいね。宇宙かな。海 の底にも見えるよ。 ・ 色の水たまりから受けるイメージについて友達の考えを聞き,他 にもいろいろな見方があることに気付いている。 ・ 色や形,色の水たまりの関係性などから,自分の表したいことを 思い付き,発想を広げている。
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