V - 熊本大学

能動フィルタの構成原理の諸展開
熊本大学大学院自然科学研究科
情報電気電子工学専攻
井上 高宏
2011/1/25
1
目次





はじめに
能動RCフィルタ
スイッチトキャパシタ
フィルタ
スイッチトカレントフィル
タ
MOSFET-Cフィルタ






2011/1/25
OTA-C(Gm-C)フィルタ
カレントコンベア能動
RCフィルタ
トランスリニアフィルタ
ウェーブアクティブフィ
ルタ
複素係数能動フィルタ
むすび
2
1.はじめに
1.1 フィルタ構成原理の歴史的展開
●フィルタの概念の誕生は古く、その源泉は1887年のO. Heavisideに
よる装荷ケーブルの提案、1899年のM. I. PupinによるPupinコイルの
特許、1917年のG. A. Campbellによるフィルタの発明まで遡れる。
●能動フィルタに至る経緯とその後の発展は、おおよそ下図の流れに
沿っている。
RLCフィルタ
L
C
1960年代
Lの除去
1980年代
CMOSフィルタ
能動RCフィルタ
Rの除去
R
小型化
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完全集積化
3
2.能動RCフィルタ
2.1 伝達関数の直接形構成法
●高次の伝達関数を帰還増幅回路構成で実現すると、一般に素子
感度が高い。
Analog Amplifier
Adder
v1
vi

K (s )
H1 ( s) +

N (s)
H1 (s)  1
Hv2
D(s)
H (s)
2
RC Network
v2
H2 (s) 
N2 (s)
D(s)
図2.1‐1 帰還増幅回路の回路構成を用いた能動RCフィルタ
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4
2.1‐1縦続形構成法
●実係数多項式が実係数の1次および2次の多項式に因数分解で
きることを利用して、1次および2次のフィルタ区間を縦続接続して高
次の伝達関数を実現する。
●素子感度も比較的低く、回路の最適化や調整が容易である。
bn s n  bn 1s n 1      b1s  b0
(b11s  b01 )    (b2 k s 2  b1k s  b0 k )

H (s) 
n
n 1
an s  an 1s      a1s  a0 (a11s  a01 )    (a2 k s 2  a1k s  a0 k )
b11s  b01
a11s  a01
b22 s 2  b12 s  b02
a22 s 2  a12 s  a02
b2 k s 2  b1k s  b0 k
a2 k s 2  a1k s  a0 k
n  2k  1
図2.1‐2 能動RCフィルタの縦続形構成
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5
バイカッドの構成法
●双2次伝達関数を実現するフィルタ(バイカッド)は、単一の増幅器
に対して、RC回路で単帰還ループあるいは多重帰還ループを施し
て実現できる。
●バイカッドは、後述の状態変数形フィルタ、あるいは負性インピー
ダンス変換器(NIC)を用いたフィルタ、OTA‐Cフィルタ、カレントコン
ベアフィルタ等の手法でも実現できる。
C1
R1
C2
-
+
V1
Ra
Rb
LPF:増幅器の+-を
入れ替え、C2をR2に、
R2を片接地のC2にそ
れぞれ入れ替えて実現
できる。
R2
HPF:LPFのCとRを入
れ替えて実現できる。
V2
図2.1‐3 帯域通過形単一増幅器バイカッド(SAB)
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6
2.1‐2 状態変数形フィルタ構成法
●実係数有理伝達関数 H (s ) は一般に下式のように表せる。
( a 0 s n  a 1 s n 1      a n ) x
V2
H (s) 

V1
( b 0 s n  b1 s n 1      b n ) x
●上式は以下のような2式に分解して表せる。
bn x  V1  b0 ( x s n )      bn 1 ( x s )
V 2  a 0 ( x s n )  a 1 ( x s n 1 )      a n x
●上式は下記の回路で実現できる。この状態変数形フィルタは、縦続
形構成法に比べ、加算回路を必要とするため所要の演算増幅器の数
は増えるが、素子感度が低いことがその特長である。
an
1
n 
b
v1
x
an 1
dt
+

1
  bn 1bn
 dt
bn  2bn1
    dt
b0bn1
図2.1‐5 状態変数形フィルタ
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+
v2
a0
By W.J. Kerwin,L.P. Huelsman,and
R.W. Newcomb(1967)
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2.2 両側抵抗終端LCフィルタシミュレーション
RS
~ V1
Pi 
LC Filter
V2
RL
V1
2
2 RS
, Po 
V1
2
V2
2
RL
V2
2
1

Pi  Po 
2
4RS RL
図2.2‐1 両側抵抗終端LCフィルタ
●反射零点において
V2 1

H 
V1 2
2

V2
R
 L
V1
4RS
RL
RS
よって、反射零点において素子感度は
S
H
RL
1 H
1
 , S RS   ;
2
2
S
H
x
 0, ( x  L, C )
両側抵抗終端LCフィルタの低素子感度性
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8
2.2.1‐1 Lシミュレーション法(方法1)
●LCフィルタのLをすべてジャイレータでシミュレートしたLで置き換える。
●ジャイレータは、トランジスタあるいはトランスコンダクタンス増幅器(O
TA)、またはカレントコンベア等の能動素子で実現できる。
 0
ジャイレータのコンダクタンス行列: G   
 g
C
Z in  j 2
g
L

Gyrator
(
g
0 
g : 非零の実数)
Z in
C
By B. D. H. Tellegen (1948)
図2.2‐2 ジャイレータによるLシミュレーション
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9
2.2.1‐2 Lシミュレーション法(方法2)
●LCフィルタのLをすべて一般化イミタンス変換器(GIC)でシミュレート
したLで置き換える。
●GICは、演算増幅器(OPA)を用いて実現できる。
I1
V1
+
Z1
-
Z4
Z3
Z2
-
+
I2
V2
ZL
図2.2‐3 AntoniouのGIC
By A. Antoniou(1967)
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10
●GICは以下の縦続行列をもつ。
1
V1  
 I   0
 1  
0  V
Z 2 Z 4  2 
 I 

Z1 Z 3   2 
●GICで、 Z1  R1 , Z  R2 , Z3  R3 , Z 4  1 jC とおけば、その
1次側から入力インピーダンス Zin は
Z in 
LC
L
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RR
V1
 j C 1 3 RL
I1
R2
R1 R3
RL
R2
I1

V1
+
R1
-
R3
R2
C
-
+
I2
V2
RL
11
●一般に、はしご形抵抗回路網の各非接地節点ごとに同一特性の
GICを接続すると、各GICの1次側端子からみて、はしご形インダク
タンス回路網が実現される。この性質を利用すれば、Lのみからなる
部分回路を個別のLシミュレーション法よりも少ない個数のGICでシ
ミュレートできる。
G12
G11
GIC
Vin1
V in 2
GIC
Gn1,n
G22
Gn 1,n 1
Gnn
GIC
V inn
By Gorski-Popiel(1967年)
図2.2‐4 GICを用いたL回路網の実現
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2.2.2 LCラダーシミュレーション法
●原LCフィルタを手本にして回路全体を一体としてシミュレートする
手法である。
RS
2.2.2‐1 周波数
スケーリング
sL 1
sL 3
sL 2
~
RL
1 sC2
L. T. Bruton(1969年)
1 s scaling
RS s
~
L1
L2
1 s 2C2
L3
RL s
FDNR
図2.2‐5 Brutonによる周波数スケーリング
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L
I1
I2
V1
V2
C
 I1 
1
(V1  V2 )  jC (V1  V2 )  0
jL
1
I2 
(V2  V1 )  jC (V2  V1 )  0
jL
-1
2.2.2‐2 シグナル
フローグラフ(SFG)法
By F.E.I. Girling and E.F.
Good(1970):Leapfrog Filter
C
-+
 I1
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+-
C
C
C
V1
R
R
R
R
図2.2‐6 SFG法による
浮遊LC並列枝のシミュ
レーション
I2
C
L  CR 2
-+
 V2
14
3.スイッチトキャパシタフィルタ
By J.T.Caves, M.A.Copeland, C.F.
Rahim, and S.D.Rosenbaum(1977)
B.J.Hosticka, R.W.Brodersen, and
3.1 スイッチトキャパシタ抵抗 By
P.R.Gray(1977)
●キャパシタCが標本保持している電圧情報をスイッチで短絡消去
すれば、Cがメモリレスとなり等価的に抵抗を実現できる。
I (1)   Q (1) f c  Cf c (V1(1)  V2(1) )
1 fc
I
V1
1
R
2 1 2
C
V1
V2
V1 ,V2 :Voltage sources
t
1
Q
1
R
f cC
1
2
V2
2
1
:Switch which is ON only during 1
2
:Switch which is ON only during 2
図3.1‐1 SC回路による等価抵抗の実現
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電圧反転形スイッチトキャパシタ抵抗
●キャパシタCの右側のスイッチ対のクロックを入れ替えれば、入力
に1:-1の理想変成器をもつSC等価抵抗を実現できる。このように
SC抵抗回路では電圧の反転に能動電圧反転回路は不要である。
I ( 2 )   Q ( 2 ) f c  Cf c ( V1(1)  V2( 2 ) )
1 fc
1:-1
V1
1 2 1 2
R I
C
V1
V2
t
1
Q
R
2
2
1
f cC
V2
1
1
:Switch which is ON only during 1
2
:Switch which is ON only during 2
図3.1‐1 入力に1:-1の理想変成器をもった抵抗の実現
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能動RCフィルタからSCフィルタへの変換
●能動RCフィルタの各実現法において、その抵抗素子をSC抵抗で置
換すればSCフィルタが得られる。
●特に、状態変数形フィルタやSFG法による能動RCフィルタの抵抗を
SC抵抗で置換すれば、Cの寄生キャパシタンスに不感なSCフィルタが
得られる。
●SCフィルタでLCラダーシミュレーションを精密に行うには、Scanlan
やSedraにより独立に提案された精密設計法が有効である。
S. O. Scanlan, “Analysis and Synthesis of Switched-Capacitor
State-Variable Filters,” IEEE Trans. Circuits Systs., vol.CAS-28,
no.2, Feb. 1981.
A. S. Sedra, Switched-Capacitor Filter Synthesis, in Y.Tsividis & P.
Antognetti Eds., Design of MOS VLSI Circuits for
Telecommunications, Prentice-Hall, 1985.
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3.2 SCイミタンスシミュレーション(その1)
●GICに類似の特性ともつイミタンス変換器もSC回路で実現できる。
●下図に示すSCイミタンス変換器(SCIC)では、2次側をキャパシタ
Cで終端すると1次側からみてインダクタンスが得られる。
SCIC
CI
1
+
L
CI
f c2C f C L
2
2
+
Cf
1
-
By T. Inoue and F.
Ueno(1980)
1
2
CL
-
図3.2‐1 SCイミタンス変換器(SCIC)
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●はしご形キャパシタンス回路網の各非接地節点ごとに同一特性の
SCICを接続すると、各SCICの1次側端子からみて、はしご形インダ
クタンス回路網が実現される。この性質を利用すれば、Lのみからな
る部分回路を個別のLシミュレーション法よりも少ない個数のSCIC
でシミュレートできる。
C12
C11
SCIC
Vin1
V in 2
SCIC
Cn1,n
C22
Cn 1,n 1
Cnn
SCIC
V inn
By T. Inoue and F. Ueno(1980)
図2.2‐4 SCICを用いたL回路網の実現
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3.2 SCイミタンスシミュレーション(その2)
●電圧反転スイッチ(VIS)は、サンプルした端子間電圧を反転させ
て同じ端子間に出力する回路である。
2
1
vVIS
vVIS ,a  vVIS ,b
-
+
b: just before
a: just after
1
Tc
vVIS
2
1
2
tn
図3.2‐2 電圧反転スイッチ(VIS)
t n 1
t
Impulse currents
in a network
By A. Fettweis(1979)
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●VISフィルタでは、原LCフィルタの独立ループに対応するループに
必ず1個のVISを含むことが必要である。
● J と U に関する回路方程式には、VISは陽には現われない。
v2
q(n)  Q exp( st n )
vn
v3
vb (n)  Vb exp( st n )
Tc
v1
tn
t n 1
Impulse currents
n
v
i 1
ib
n
v
i 1
ia
va (n)  Va exp( st n )
b: just before
a: just after
vVIS
VIS
J
Q
V V
, U b a
Tc
2
図3.2‐3 VISを含んだ独立ループ
 vVIS ,b
m
q (n)  0 Q
k 1
 vVIS ,a
m
k
k 1
k
m
 0  J k  0 :KCL
k 1
n
  U i  0 :KVL
i 1
vVIS ,a  vVIS ,b
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1  z 1
sTc

,
z

e
1  z 1
双1次s-z変換に基づく
等価回路素子
q (n)  C{v a (n)  vb (n)}

C
vb (n)  v a (n  1)
q(n)  C{v a (n)  vb (n)}
q(n)  C{v a (n)  vb (n)}
vb (n)  vS
2
U
J
C
vb (n)  va (n  1)
( z   z     1 )
T
2C
2
1
J

1
T
2C
U
J
2
vS
+
-
C
 VS +
-
T
2C
U
図3.2‐4 VISフィルタにおける等価回路素子
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4.スイッチトカレントフィルタ
●電流信号を電圧に変換してキャパシタでその情報を保持して遅延
させ、再びその電圧を電流に変換すれば、等価的に電流遅延回路
が実現できる。
●下図の半周期遅延回路は、トランジスタを時分割多重使用して1
個のトランジスタで実現できる。このとき、この回路はカレントコピアと
呼ばれる。
VDD
IB
By J.B.Hughes, N.C.Bird, and
I.C.Macbeth(1989)
IB
iin
iin
2
iout
z

1
2
iout
図4‐1 スイッチトカレント逆相半周期遅延セル
注: i in はクロック1でサンプルされ全周期保持された信号と仮定
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スイッチトカレント(SI)積分回路
●2個のカレントコピアを縦続接続して正相全周期遅延回路を構成
し、その出力を帰還して入力に加算すれば、SI積分器が得られる。
●SI積分器と電流インバータ(電流ミラー)をビルディングブロックと
し、電流信号の加算を結線和(wired sum)で実現すれば、状態変数
フィルタやSFG法によるフィルタなどの各種のフィルタを電流モード
回路で実現できる。
V DD
1 : 1
1 : 1
1
iin
1
2

1 :1
H (z) 
Vb
2
2
iout 1
iout 2
i in

1
2
z
1  z 1
z
1 2
i out
z 1 2
図4‐2 1入力2出力スイッチトカレント正相積分器
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24
5.MOSFET-Cフィルタ
●MOSFETの非飽和領域の I D 対 VDS 特性は2次以上の非線形項
をもつが、その主要非線形項は2次の非線形項である。
●完全平衡形あるいは完全差動形の回路構成を用い、MOSFETの
非飽和領域の I D 対 VDS 特性の偶数次の非線形ひずみを打ち消せば、
MOSFET対を等価的に線形抵抗として利用できる。
VC 1
V1
I1  I 2  K (VC1 VC 2 )(V1 V2 )
I1
VC 2
VC 2
By Z. Czarnul(1986)
VC 1
By B. –S. Song(1986)
-
+
V2
I2
図5‐1 MOSFET-Cフィルタの基本回路ブロック
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25
By C.F. Wheatley and H.A.
Wittlinge(1969):RCA CA3080
6.OTA-C(Gm-C)フィルタ
●トランスコンダクタンス増幅器(OTA)は電圧制御電流源の特性を
もった能動素子で、トランスコンダクタとも呼ばれる。
●OPAと違って位相補償のためのRC帰還回路を必要としないため、
OPAよりも高周波まで使用できる。
●下図のように積分器や等価抵抗を容易に実現でき、また信号の
加算は電流信号の結線和で実現できるため、OTAとCのみを用いて
各種の能動フィルタを実現できる。
-
vid
Gm
+
v0  
Gm
vid
sC
i
io
-
v0 v i
Gm
+
i  Gm vi
図6‐1 OTAによる積分器と抵抗の実現
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7.カレントコンベア能動RCフィルタ
By A. Sedra and K. C. Smith(1970)
●第2世代カレントコンベア(CCⅡ)は、 x, y, z という3つの端子を
もった3端子能動素子で、CCⅡ-ではx, y, zが理想トランジスタのエ
ミッタ、ベース、コレクタに相当する。CCⅡ+はCCⅡ-でコレクタ電流
に対応する電流のみその向きを逆にした特性をもつ。
●CCⅡ-を用いれば、トランジスタ回路で実現可能な能動RCフィル
タをすべて実現可能である。
R4
Vo
Positive Current Conveyor
X
CCⅡ+
Z
Y
C1
●CCⅡで構成される能動フィルタは、
一般に素子感度が低い。
R3
K 1
C2
K
C2
K
Vo 1
sC2 R4

Vi K s 2C1C2 R3 R4  sR4 (C1  C2 )  1
Vi
(by C. P. Chong and K. C. Smith, 1986)
●電流伝達関数も実現可能
図7‐1 CCⅡ+を用いた帯域通過形バイカッド
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8.トランスリニアフィルタ
●トランスリニア原理とは、「2n個のバイポーラトランジスタのベー
ス・エミッタ間電圧のみからなるループにおいて、各トランジスタが同
一温度でかつ同一飽和電流密度をもつとき、n個の時計周りの向き
のエミッタ電流の積はn個の反時計周りの向きのエミッタ電流の積に
比例する」ことをいう。このときの比例係数は、エミッタ面積の積の比
で与えられる。 By B. Gilbert(1975)
VEB1  VBE 2  VBE 3  VEB 4  0
Q2
Q1
Q3
Q4
I E1 I E2  I E 3 I E 4
図8‐1 4個のトランジスタによるトランスリニアループ
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28
●電圧源 V とバイポーラトランジスタのベース・エミッタ間電圧のみ
からなるループにおいて、電圧 V はエミッタ電流の積の比の対数関
数で表せる。
V  VEB1  VBE 2  VBE 3  VEB 4  0
Q2
Q1
V +
-
Q3
Q4
I E3I E4
V  VT ln(
)
I E1 I E2
VT : Thermal potential
図8‐2 電圧源 V とベース・エミッタ間電圧のみからなるループ
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●原LCフィルタのSFGにおける各規格化電圧に対する線形演算を
電流モードで実現し、各演算での端子電圧は端子電流の対数関数
の形で圧縮して与える方式のフィルタがLogドメインフィルタである。
●このように、Logドメインフィルタでは、各端子電圧は各端子電流
の対数関数で与えられるため、電圧信号が圧縮されており、低電源
電圧での回路構成に適している。
By R. W. Adams(1979)
①
VDD
②
I0
VˆiP
I out1Vˆo I out 2
VˆiN
C
図8‐3 Logドメイン2入力差動積分器
I0
By V.W.Leung and G.W.Roberts(2000)
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30
①
VDD
②
I0
I out1Vˆo I out 2
VˆiP
VˆiN
C
I
I0
注)有損失積分器は
VˆiN  Vˆo
と結線すれば実
現でき、これは
②の電流源をC
に並列接続する
こと同じである。
破線の接続時
トランスリニア
原理から I  I 0
VˆiP
Exp
+
VˆiN
Exp
I
Exp(Vˆo )  0
2VT C
1
k  dt
Log
I0
2VT C
{Exp(VˆiP ) Exp(VˆiN )}dt
k

Vˆo
Exp( x)  I 0 {exp( x 2VT )  1}
( VT : 熱電位)
図8‐4 Logドメイン2入力差動積分器とその等価表現
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31
トランスリニアフィルタの設計法
L0
IR
IL C
Vi +
0
-
Step 1
Vo
R
(a)Original LC filter
Vi
Step 2
k1
s
+
1
k1 
RIL
+
1
R
RI L  (Vi  Vo )
sL
1
Vo 
( RI L  Vo )
sCR
k2
s
Vo
1
R
, k2 
L0
C0 R
(b)Signal flow graph
図8‐5 原2次LCフィルタとそのSFG
(注)トランスリニアフィルタはダイナミックトランスリニア回路の一種である。
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32
k1 
I0
I0
1
R


, k2 
L0 2VT C1
C0 R 2VT C2
Vi
I in
Exp
Log
Step 3
Exp
I out
Exp
Log
+
1
k 2  dt
Vo
Exp
k1  dt
Log
RI L
+
Exp
1
図8‐6 原2次LCフィルタをシミュレートするLogドメインフィルタ
●同様のLogドメインフィルタは、バイポーラトランジスタの代わりに
弱反転領域動作のMOSトランジスタを用いても実現可能である。
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9.ウェーブアクティブフィルタ(WAF)
●ウェーブアクティブフィルタ(WAF)は、回路網のポートの電圧 V 、
電流 I なる回路変数を、入射波 A 、反射波 B なる波動変数に変換
し、波動回路の概念のもとで能動フィルタを構成する手法である。
●この方法は、一種のスタブフィルタシミュレーションと考えてよく、低
素子感度のフィルタを実現できる。
Ai  Vi  Ri I i
r
Ai
-
+
Bi
r
Ii
Bi
Ri

Ai
Ii
Bi  Vi  Ri I i
Ri
Vi
Vi
図9‐1 回路変数を波動変数へ変換する回路
A. Fettweis’ digital wave filter concept(1971)=>By H.Wupper and K.Meerkötter(1975)
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B1
B2
I1
A1
R 1 V1
I2
N
V2 R
2
A2
図9‐2 LC2ポート N のウェーブアクティブ(WA)4ポートへの変換
r
Z
V1
I2
V2
Z=sLならR/sLで
スケーリング
Z=1/sCならス
ケーリング不要
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-
+
I1
B1
r
A1
2R
Port normalization
resistances:
r
-
+
R1  R2  R
r
B2
Z
A2
(注)散乱行列は、
インピーダンス・
スケーリングに対
して不変である。
図9‐3 浮遊インピーダンス Z からなる2ポート
に対応するWA4ポート
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波動変数のもとでのLC並列枝の
等価実現法 Z  1
R1  R2  R のとき、 Z  4 R Y1 なる関係にあ
る Z と Y1 (すなわち逆回路)に関して、下式が
2
成り立つ。

B 1 , Z  B 2 ,Y1
B 2 , Z  B 1 ,Y1
1 sL  sC

1 / Y1  1 ( sL / 4 R 2 )  s 4 R 2C
波動変数のもとでは、LC
並列枝は、その逆回路で
あるLC直列枝の B ポート
を1次側と2次側で入れ替
えて実現できる。
WA4ポート間の接続規則
B1a
A1a
B2 a
Na
A2 a
B1b
A1b
B2b
Nb
A2b
図9‐4 2つのWA4ポートの接続規則
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10.複素係数能動フィルタ
● s の実係数有理伝達関数 H ( s )において、その絶対値の2乗の周波数特
性は H ( j  ) H (  j  ) で与えられる。
●そのため、その周波数特性は  に関して正負対称な特性をもつ。しかし、
有理伝達関数の係数が複素数である場合には、H (s ) は
H ( s )  H r ( s )  jH i ( s )
と表せる。ここで、 H r ( s ) と H i ( s ) はそれぞれ s の実係数有理関数であり、
それぞれ r 成分と i 成分を表す。このとき、伝達関数の入力 X ( s ) 、出力Y ( s )
についても、伝達関数と同様に、それぞれ r 成分とi 成分をもつと考えて
Y (s)  H (s) X (s)
が成立する4ポートを考えることができる。
●このとき、回路変数である電圧V と電流I も,それぞれr 成分とi 成分をもつ
複素関数であると考え,これらに対しキルヒホッフの電圧則,電流則を要請す
る。
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●複素係数有理伝達関数の振幅応答は下式で与えられる。
H ( j )  H r ( j  )  H i ( j  )
2
2
2
 2 I m H r ( j ) H i ( j )
 に関し非対称
 に関し対称
ここで I m [] は虚部を表す。
●複素係数をもつフィルタは、虚抵抗が存在すれば実現可能である。
RC  1 (s)
V1r
V2r
V1i
Complex
V2i
Filter
VS
V1
jR
C V2
90°Phase
Shifter
V1  V1r  jV1i , V2  V2 r  jV2i
1
図10‐1 伝達関数 1  js を実現する浮遊虚抵抗を
用いた複素係数フィルタとその測定法
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Im
H ( j ) 
H ( j )
s -plane
s j x
Re
1
1
1
0
1

1
図10‐2 伝達関数 1  js をもつ複素係数フィルタの
振幅応答
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●浮遊虚抵抗は下図の4ポートで実現できる。よって、4個のOTAを用
いて実現することができる。
I1r  R 1 (V1i  V2i )
I 2 r  R 1 (V2i  V1i )
V1r I1r
I 2r
I1i
I 2i
V1i
I1i  R 1 (V2 r  V1r )
V2 r
V2i
I 2i  R 1 (V1r  V2 r )
図10‐3 浮遊虚抵抗 jR を実現する4ポート
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● s の実係数有理関数である通常の浮遊インピーダンス Z(s) は、そ
の r成分と i 成分とが干渉しない下図の4ポートとして実現できる。
●接地インピーダンスの場合は、下図で V2r  V2i  0 とおけばよい。
I 1r
I2
I1
Z (s )
V1
I 2r
Z (s )
V2 r
V1r
V2 
I 1i
I 2i
Z (s )
V1i
V2i
図10‐4 浮遊インピーダンス Z (s) を実現する4ポート
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複素係数フィルタの各4ポート素子間
の接続規則
V1r ,a
V2 r ,a
Nb
Na
V1i ,a
V2 r ,b
V1r ,b
V2i ,a
V1i ,b
V2i ,b
図10‐5 2つの4ポート素子の接続規則
●原LCフィルタの伝達関数を周波数軸上でシフトすると、虚抵抗もっ
たLCR回路で構成される複素係数フィルタとなる。
●LCR回路は能動RC回路でシミュレートでき、虚抵抗はOTAで実現
できることから、以上の手法により複素係数フィルタは能動RC回路で
実現できる。
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11.むすび
●能動デバイスを用いたアナログフィルタである能動フィルタについ
て、その発展の歴史の中で誕生した様々な構成原理を、特にその基
本的アイデアに焦点を当てて紹介した。
●能動フィルタの構成原理は、個別素子を用いた実現からモノリシッ
ク集積化へというの流れに沿って、より小型化、より低電圧化、より
低消費電力化、より高周波化(また、より低周波化)の方向をめざし
て発達してきた。
●今後の能動フィルタの発達を担う若い回路技術者・研究者が、能
動フィルタの構成原理へさらなる斬新なアイデアを吹き込んでくれる
ことを心から期待したい。
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