現代のビジネスリーダーの役割 現代のビジネスリーダーの役割

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現代のビジネスリーダーの役割
ビジネスリーダーは、短期的な業績をしっかり達成するだけに留まらず、
将来に向けて企業の成長を維持することが求められています。そのためには、
企業にとって必要とされる変革を進めなければなりません。さらに企業の発
展段階に応じて、適切なリーダーシップを発揮することが求められています。
本節では、このようなビジネスリーダーの役割について認識を深めていただ
きます。
◆企業の成長の鍵を握ると言われるビジネスリーダーシップのスタイルに
は、どのようなタイプがあるでしょうか
◆各タイプは、どのような状況下でその力が最も発揮されるでしょうか
◆ビジネスリーダーは、倫理面においてどのようなことが求められている
でしょうか
◆ 現代のビジネスリーダーの役割とは、どのようなものでしょうか
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企業成長の鍵を握るビジネスリーダー
まず初めに、ビジネスリーダーシップの差が企業業績の差を生み出すという
例を見てみましょう。
For Example :GEとウェスティングハウスの成長の差
20世紀のもっとも卓越したビジネスリーダーの1人として、ゼネラル・エ
レクトリック社(GE)を20数年にわたりリードしてきた、ジャック・ウエ
ルチを選ぶことができるであろう。
ウエルチは、CEO在任20年間に「GEの各事業部(またはビジネス・ユ
ニット)をそれぞれの属する産業でNo.1ないしNo.2の地位に導く」という
ビジョンを追求し、退任時にはほぼこのビジョンを達成し、2001年にはGE
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○
C
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■■ 第1章 ■ 環境変化を先取りするリーダーシップ
の総売上げを約1300億ドルに高めた(1ドル120円換算で約16兆円)。
ウエルチがCEOに就任した1981年当時のGEの売上げは、約260億ドル
あり、元々巨大ではあったが、彼が就任後、GEの売上げを20年間で約5倍
に伸ばしたことになるわけであるから驚異的である。
(もちろん売上げだけで
企業の業績を議論することには問題が伴うが、GEは利益率、株価時価総額、
キャッシュフロー、成長率といったさまざまな指標でも、卓越した業績を達
成している)
一方、1980年まではGEのライバル的企業であったウエスティングハウス
社は、過去20年間に何人ものCEOが交代したが、1980年当時の総売上げ約
70億ドルから現在までに全く成長を示していない。
したがって、1980年当時にGEの売上げの3分の1の規模を誇ったウエス
ティングハウスは、いまやGEの20分の1の規模に留まっていることを意味
する。この間、ウエスティングハウス社は、アメリカの一流経営大学院等を
卒業した優秀な人材を採用し、懸命の努力を続けてきたにもかかわらず、こ
れだけの差をつけられたのである。
このケースはまさにビジネス(経営)リーダーシップの差であったと結論で
きるでしょう。ジャック・ウエルチという卓越したリーダーを擁したGEが大
きく成長し、いくら優秀な人材を集めても、卓越したリーダーを持たなかった
ウエスティングハウスは全く成長を達成できなかったのです。
このような例は、アメリカでも、日本でも、世界各国でも数多く発見されま
す。すなわち、かつての名門企業が卓越したビジネスリーダーを欠いたために
衰退した例が数多く見い出されるのです。一方、すぐれたビジネスリーダーの
もとで、いまなお成長を続けている企業も数多く存在します。
「企業の寿命は30
年」と言われることがありますが、すぐれた企業は30年をはるかに越えて成長
を維持しています。
すぐれた企業は環境の変化に合わせて、あるいは変化を先取りして自らを変
身させているのです(これについては第2章で詳しく学びます)。
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①各人材ごとに達成すべき目標とタスクが明確になっていること
②目標とタスクの達成に各人が意義を感じ、意欲を燃やしていること
③さらに上司と部下の間でこの種の意欲が明確に確認され、心理的な契約
が交わされていること
【 4 】コングルーエンシー(Congruency)
コングルーエンシーとは、
「各人材の目標やタスクが、組織全体の目標と整合
性が保たれる形で設定されていること」です。
先の生産性の定義にも述べたように、個々の人材の生産性は、組織全体の目
標が目指す方向に合致する形で発揮されたときに、はじめて高い生産性が発揮
されたと認識できます。
したがって、各人の目標設定の段階で、組織目標との整合性が保たれ(組織
目標が目指す方向に合致する形で)、目標設定を進める必要があります。
人材のコミットメントおよび組織目標とのコングルーエンシーを高める方法
として、「目標による管理(MBO:Management by objectives)」を活用
することをお薦めします。最近、この目標による管理法は、成果主義の流れに
乗って、日本企業でもその導入がさかんになっています。
一方では、成果主義が強調され過ぎる傾向に対して、さまざまな批判も出て
きています。とはいえ、この方法が効果的に運用されれば、人材の生産性を支
える3要素、つまりコンピテンシー、コミットメント、コングルーエンシーを
向上させることに貢献します。その効果的な運用の方法については、この節の
後半で紹介します。
以上の説明から、人材の生産性を向上させるためには3つのCを向上させる
ことが必要であることがご理解いただけたと思います。要約すると、次のよう
になります。
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■■ 第3章 ■ 組織、部門の変革を推進するリーダーシップ
高いレベルのコンピテンシーを備えた人材が
その目標やタスクの達成に高いコミットメントを示し
かつ個々人の目標が組織目標と高いコングルーエンシー(整合性)が保
たれているときに
人材の高いレベルの生産性は実現します。
では、実際にどのように3Cを向上させていけばよいのでしょうか?
以下に、
「生産性向上のためのダイヤグラム」と「目標による管理」の方法を
紹介します。
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人材の生産性向上のためのダイヤグラム
【 1 】人材のコンピテンシーの現状
まず第1番目に問うべきことは、
「人材は担当するタスクや目標を十分に遂行
できるか、または職務遂行のために十分なコンピテンシーを備えているか」と
いうことです。
もしこの問いに対する答えが「ノー」の場合、その人材に不足するコンピテ
ンシーを特定し、その向上に貢献するトレーニングや開発を実施します。この
場合、社内外で実施されている集合訓練プログラム(コンピューター・スキル
向上トレーニング等)が効果的なものであれば、参加させるように活用すべき
でしょう。
しかしコンピテンシーの向上には、
上司によるOJT(on the job training:職
場内訓練)がもっとも効果が高いと考えられます。それは、各人材を身近に観
察し、コンピテンシーの強味・弱味を理解し、各人に対して適切なコーチング
(指導、訓練)を提供できるのはその上司であるからです。
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