エージェンシーMBSの優位性 - ホーム • ウエスタン・アセット

ボニー M. ウォントラクール
ポートフォリオ・マネージャー
エージェンシーMBSの優位性
要約
エージェンシーMBSとは?
エージェンシーMBSは米国債券市場の中で、米国債に次ぐ最大の投資適格セクターであ
 過去の金利上昇局面と
り、バークレイズ総合指数の28%を占める。基本的な仕組みとして、エージェンシーの引
金利低下局面の双方に
受ガイドライン1を満たす適格住宅ローンが束ねられ、パススルー証券として証券化され
おいて、エージェンシー
MBSは長期的に米国債 たものであり、投資家はローンの元本および利息(サービシング手数料および保証料控
をアウトパフォームする 除後)を受け取る。
傾向。
証券はファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)、フレディマック(連邦住宅金融抵当金庫)、ジ
 エージェンシーMBSは、 ニーメイ(連邦政府抵当金庫)によって発行・保証される。ファニーメイとフレディマック
米国債との比較において、 が政府関係機関(GSE)のガイドラインを順守する銀行およびノンバンクといった民間の
リターンのボラティリティ 住宅ローン・オリジネーターによって組成されたモーゲージ・プールを証券化するのに対
が低く、デュレーション
して、ジニーメイは連邦住宅局(FHA)と米国退役軍人省(VA)のプログラムに基づいて組
が短い、また、信用リスク
成される住宅ローンを中心に扱っている。
や取引コストの観点から
も米国債に劣らないとさ ジニーメイのMBSは米国政府の full faith and credit として、米国債と同等の信用力を持
れている。
つとされている。一方で、ファニーメイとフレディマックは政府関係機関ではあるものの、両
 一般的に、エージェンシー
MBSと株式の相関は、社
債と株 式の相 関よりも
低い。
者のMBSには限定的ながら信用リスクがあると言える。
エージェンシーMBSに投資する理由
1.
 債券ポートフォリオのコア
資産としてエージェンシー
MBSの組み込みを推奨。
エージェンシーMBSは、図表1の通り、米国債に対しコンスタントに超過利回りを提
供しつつ、裏付けローンの元利金支払いに対して、ジニーメイは明示的な保証(いわゆ
る explicit guarantee )、ファニーメイとフレディマックの場合には暗示的な保証(いわ
ゆる implicit guarantee )が付与されているため、信用リスクは限定的であると言える。
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
MBSインデックス(左軸)
米国債インデックス(左軸)
スプレッド(右軸)
11年1月 11年7月 12年1月 12年7月 13年1月 13年7月 14年1月 14年7月 15年1月 15年7月
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
スプレッド(%)
利回り(%)
図表1
MBSと米国債の利回り
0.0
出所:バークレイズ、
ウエスタン・アセット 2015年12月31日現在
1.
エージェンシーMBSに証券化される大半の住宅ローンは、以下の特性を持つ。全面的な元本償還、満期は10
年・15年・20年・30年、受取代金の使途は1∼4世帯住宅の購入や借り換え、残高は41万7,000ドル以下。
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債券市場の流動性の定量化
2. さらに、エージェンシーMBSのデュレーションは通常、米国債よりも短い(図表2)。
図表2
MBSと米国債の修正デュレーション
バークレイズ米国MBSインデックス
4.5
バークレイズ米国国債インデックス
5.9
-1.4
差異(MBS−米国債)
出所:バークレイズ、
ウエスタン・アセット 2015年12月31日現在
3. また、エージェンシーMBSは長期的(3年、5年、10年)に米国債を上回る超過リターン
を生み出すと共に、シャープ・レシオ2、ソルティノ・レシオ3、そして相対的に低いトラ
ッキング・エラー4といった指標によって計測されるリスク調整後リターンも魅力的で
ある(図表3)。
図表3
MBSと米国債のリスク・リターン指標
トラッキング
対米国債
超過リターン(bps)
シャープ
レシオ
10年
48
0.39
0.72
0.75
5年
25
0.31
0.46
0.59
3年
45
0.37
0.60
0.47
期間
ソルティノ
レシオ
エラー(%)
出所:バークレイズ、
ウエスタン・アセット 2015年12月31日現在
4. さらに、長期的に見ると(3年、5年、10年)、エージェンシーMBSのトータル・リターン
は米国債のトータル・リターンを上回るだけでなく、そのボラティティも相対的に低
いという結果となっている(図表4)。
図表4
MBSと米国債のトータル・リターンの標準偏差
期間
MBS
米国債
10年
0.74
1.20
5年
0.59
0.93
3年
0.68
0.86
出所:バークレイズ、
ウエスタン・アセット 2015年12月31日現在
ウエスタン・アセット
2.
シャープ・レシオは、バークレイズMBSインデックスのトータルリターンとバークレイズ米国債インデックスのト
ータルリターンの差の平均を、MBSインデックスのトータルリターンの標準偏差で割って算出する。
3.
ソルティノ・レシオは、バークレイズMBSインデックスのトータルリターンとバークレイズ米国債インデックスの
トータルリターンの差の平均を、MBSインデックスのマイナス・トータルリターンの標準偏差で割って算出する。
従って、下方ボラティリティのみを検討する。
4.
トラッキング・エラーはアクティブ・リスクの指標であり、長期的にはバークレイズMBSインデックスのトータルリ
ターンとバークレイズ米国債インデックスのトータルリターンの差の標準偏差に相当する。
2
2016年1月
債券市場の流動性の定量化
5. 過去の実績では、エージェンシーMBSは、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き
締めサイクルにおいて、米国債をアウトパフォームしており、投資家は金利上昇局面
も超過リターンを創出することが可能である(図表5)5。
図表5
金利引き上げ後6ヶ月のトータル・リターン
MBS
5年物米国債
10年物米国債
12/16/1986
0.6%
-0.4%
-2.6%
3/29/1988
4.0%
2.3%
2.7%
2/4/1994
-0.9%
-1.9%
-4.3%
6/30/1999
1.2%
0.7%
-1.0%
6/30/2004
4.1%
2.4%
4.5%
平均
1.8%
0.6%
-0.1%
金利引き上げ日
出所:モルガン・スタンレー・リサーチ、イールドブック 2015年12月31日現在
6. 一般的な傾向として、エージェンシーMBSは他の債券セクターと比較しボラティリティ
が低く、株式市場との相関性が低い。例えば、2011年1月以降、S&P500種株価指数が
(前週金曜日終値と比較した金曜日終値ベースで)1%以上下落した週は59週間あっ
たが、当該期間中に社債のアンダーパフォームの頻度と幅は、いずれもMBSセクター
のそれらを上回る傾向にあった(図表6)。
図表6
S&P500種下落時の債券バリュエーション変化(2010年12月31日∼2015年10月30日)
S&P前週比
-4% ∼ -5% -3% ∼ -4% -2% ∼ -3% -1% ∼ -2%
発生回数
10年米国債利回り平均変化率
米国債上昇頻度
対米国債MBSのZV スプレッド平均変化率
対米国債IG社債のZV スプレッド平均変化率
MBS拡大頻度
IG社債拡大頻度
MBS平均スプレッド(標準偏差)
IG社債平均スプレッド(標準偏差)
3
-11.8
100%
10.9
16.6
100%
100%
2.1
3.3
8
-14.2
100%
3.0
4.2
75%
83%
0.6
0.8
17
-4.3
76%
3.3
2.9
71%
88%
0.6
0.6
30
-4.9
79%
1.9
3.3
77%
90%
0.4
0.7
全て
(-1% ∼ -5%)
58
-6.5
83%
3.0
4.0
76%
86%
0.6
0.8
出所:ブルームバーグ、バークレイズ、
ウエスタン・アセット 2015年12月31日現在
ウエスタン・アセット
7.
昨今の市場において、流動性に関する懸念が議論される機会が多いが、エージェンシ
ーMBSは他の債券セクターに比べて、市場規模と取引コストの点で優位性を維持してい
る。MBSセクターの平均日次出来高は約2,000億ドルであるのに対して、投資適格社債
は約150億ドルである。また、平均取引単位を見ても、エージェンシーMBSは2,000万ド
ルと社債の400万ドルを大きく上回る。さらに、米国債の平均出来高は4,000億ドルと
エージェンシーMBSの約2倍であるが、市場性のある発行済みエージェンシーMBSのタ
ーンオーバーは約10日と、米国債の約15日を下回り、そして投資適格社債の15カ月を大
きく下回っている(図表7、
「ターンオーバー=残高/日次平均取引」の概算値)。これは
エージェンシーMBSが流動性の面で米国債と同等、あるいは場合によっては米国債よ
りも優れていることを示唆している。
5.
シティ米国ブロード投資適格(USBIG)
モーゲージ証券指数のトータルリターン。
キャッシュフローが3カ月LIBOR
で投資されることを想定した複利月次リターン。
3
2016年1月
債券市場の流動性の定量化
図表7
米国債、MBS、投資適格社債のターンオーバーに係る時間
60
20
18
16
MBS(左軸)
投資適格社債(右軸)
50
米国債(左軸)
14
40
30
10
8
20
6
4
10
2
0
0
2011年7月
月数
日数
12
2012年7月
2013年7月
2014年7月
2015年7月
出所:バークレイズリサーチ、NY連銀、SIFMA 2015年11月30日現在
リスクとは何か?
価格に影響を及ぼす項目:

スプレッド:一般社債と同様に、エージェンシーMBSの全般的なバリュエーションはス
プレッド動向により変化する。すなわち、スプレッドが拡大した場合はエージェンシー
MBSの価格は低下し、逆に縮小した場合は価格が上昇する。

プリペイメント(期限前償還リスク)
:住宅所有者が予め決められた返済スケジュール
以上の元本を返済する場合、プリペイメントとなる。プリペイメントが起こる背景は様
々であり、例えば、住宅所有者が金利のより低い住宅ローンへ借り換える場合や、人生
の重大イベント(転職、離婚、死亡等)、転居などが挙げられる。元本は投資家に額面
価格で返済されるため、当初購入価格がオーバー・パーであった場合、投資家にとって
のリターンが低下する。ただし、このプリペイメント・リスクは、特定のモーゲージ・プー
ルに組み込まれている多数のローンの分散効果によって一定程度低減される。

コンベクシティ:MBSのデュレーションは一般的に米国債のそれを下回るが、住宅所
有者は利回りが低下する際にはより低い金利の住宅ローンへ借り換えを行い、期限
前償還が増加、デュレーションは短期化する。逆に利回りが上昇する際には住宅ロー
ンをそのままにする傾向にあるため、期限前償還の可能性が減り、デュレーションは
長期化する、いわゆる「ネガティブ・コンベクシティ」の特性を持つ。このため、金利
上昇局面でのMBS価格の下落幅は、金利低下局面での価格上昇幅よりも大きくなる
可能性がある。

ボラティリティ:住宅所有者が住宅ローンの期限前償還オプションを保有してお
り、MBSの投資家は「コール・オプションの売り」のポジションとなっているため、MBS
の価格はボラティリティの変化による影響を受ける。特にボラティリティの上昇はMBS
のアンダーパフォームにつながる可能性が高い。
もっとも、上記のリスクはポートフォリオのアクティブ運用によって概ね低減することが可
能で、まさにこれが当市場に対する弊社のアプローチ方法である。弊社はエージェンシー
MBS市場に対して、アクティブなレラティブバリュー(相対価値)アプローチを取っており、
長期的なファンダメンタル・バリューを重視しつつ、複数の分散投資戦略を採用している。
アクティブ・マネージャーは、その見解をセクターのアンダーウエイト/オーバーウエイトお
ウエスタン・アセット
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2016年1月
債券市場の流動性の定量化
よび銘柄選択に反映させ、中でもキャッシュフローが読み易いモーゲージ・プールを担保と
したMBSを購入する一方で、ポートフォリオに内包される上記のようなリスクを随時ヘッジ
し、ベンチマークを上回るリターンを生み出すことを目指している。
結論
ヒストリカル・データでも明らかな通り、エージェンシーMBSへの投資によって、米国債を
下回るボラティリティとデュレーション、そして優れた流動性を保ちつつも、米国債を上回
る超過リターンが得られる可能性があり、多くの債券ポートフォリオにおいて重要な役割を
果たすとみている。
ウエスタン・アセット
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2016年1月
リスク・ディスクロージャー
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