茶殻リサイクルシステムの発展に向けて

第20回地球環境大賞 環境大臣賞受賞記念
ステークホルダーダイアログ(有識者懇談会)
茶殻リサイクルシステムの発展に向けて
Ⓡ
(※このシステムの登録商標です)
このシステムが「新機能性製品としての新市場の創出」等により環境大臣賞を受賞しました。
これを機に、有識者・協力企業をお招きし、2011年9月20日に懇談会を開催しました。
茶殻リサイクルシステムとは
茶殻リサイクルシステムは、当社主力商品である「お~いお茶」の製造工程で排出される大量の茶殻を有効活用する仕組み
です。2001年に協力企業との共同開発による茶殻配合製品第1号「さらり畳」の発売に始まり、その後も、封筒や折り紙など
の文具のほか、段ボールなどの日用品まで多様な分野にわたる製品を開発・販売。その数は現在、30品目以上にのぼります。
茶 殻リサイクルシステムへの期待と意見 ― 有識者から
荻田 本日は大変お忙しい中ご出席いただきまして誠にありが
とうございます。今回、当社の茶殻リサイクルシステムが、環境面
茅陽一氏
だけでなく、新たな機 能 性 製 品として新しい市 場を創出し、継
(財)地球環境産業技術研究機構
続性のあるリサイクル活動を展開してきたことが評価され、第20
《専門分野》環境・リサイクル全般
副理事長
回 地 球 環 境 大 賞 環 境 大 臣 賞をいただきました。関 係 者の皆
地球環境問題とは持続可能性の問題の一部分であり、地
様方にはご協力をいただき、心より御礼申し上げます。
球 環 境の保 全とは、現 時 点で実 現していない持 続 可 能な社
今回のダイアログでは、本システムのさらなる発展に向け、有
識者の方々、協力企業の方々からの貴
会をもう一度作り直すということです。
そして、
その旗振り役を務
重なご意 見を頂 戴するとともに、活 発な
める責任があるのが、
これまで多くの資源やエネルギーを消費
議 論を行い、外 部 視 点を事 業 活 動に
してきた産業界なのだと思います。
その上で、大事なのはやはり
活かしてまいる覚悟でございますので、
よ
「3R」です。
リデュース
(削減)、
リユース
(再利用)、
そして3番
ろしくお願いいたします。
目がリサイクル。
リサイクルというと、製 品を再 度 資 源 化して、
ま
㈱伊藤園 取締役副会長
た同じ製 品に加 工する形が一 般 的ですが、伊 藤 園さんの茶
荻田 築
茶殻リサイクルシステムの受賞歴一覧
受賞年
受賞名
2005
第2回エコプロダクツ大賞(エコサービス部門)農林水産大臣賞
2006
殻リサイクルは、
自分たちの廃棄したものを別の製品に活かす
というタイプです。
これもまた、非 常に意 義が高いと考えます。
ま
ウェステック大賞2006 環境大臣賞
た、茶 殻というのはいい香りがするという特 性もあるので、捨て
第36回食品産業技術功労賞(資材・機器・システム部門)
るにはもったいない。
それをうまく利用するということだけで大きな
平成18年地球温暖化防止活動 環境大臣賞(技術開発・製品化部門)
意味があると思います。
ただ、
どういう使い方が一番いいかとい
平成19年度資源循環技術・システム表彰 経済産業省産業技術環境局長賞
2007
うのは難しいところです。資 源の有 効 活 用という観 点からいえ
平成19年度循環型社会形成推進功労者表彰 環境大臣賞
ば、畳やボードなどできるだけ寿命の長い製品にリサイクルする
「新日本様式」100選入選 ※レンゴー株式会社と共同受賞
2010
第12回グリーン購入大賞 審査員特別賞
ほうがいいとも言えます。今後はそうしたさまざまな特徴も考え合
2011
第20回地球環境大賞 環境大臣賞
わせながら、活動を進めていただければと思います。
1
田中宏司氏
河口真理子 氏
東京交通短期大学 学長
《専門分野》ISO26000
(株)大和総研 環境・CSR調査部長
《専門分野》環境経営
2 0 1 0 年 1 1月に発 行されたI S O 2 6 0 0 0は、あらゆる組 織の
1 0 年 間にわたってこれだけ多くの企 業の方々とともに、単な
社 会 的 責 任に関する国 際 行 動 規 範です。
7つの中 核 主 題
る廃棄物処理ではなくビジネスとしての循環をつくってこられた
が定められていますが、
どのように取り組みを進めるかは、各
ことがまず素 晴らしいと思います。
それだけに「お~いお茶 」を
組 織に任せられています。企 業においては、2 0 1 1 年のC S R
見たことがない日本人はいなくても、茶殻リサイクル製品を見た
報 告 書で7つの中核 主 題 別に活 動を報 告するという動きも出
ことがある日本人がほとんどいない、
という認知度の低さは残念
ています。
その意 味で、伊 藤 園さんが中核 主 題をきちんと整 理
なところです。
マーケティングや製 品 価 値 創出の視 点を取り入
してC S Rへの取り組みを進められようとしているのは非 常に先
れていく必要があるでしょう。
「茶殻が入っている」こと自体が一
駆的です。
つの付加価値になるという逆のストーリーを作るのはどうでしょう
また、今 回のダイアログに関して非 常に感 心したのは、関 係
か。
あるいは、
日本人の暮らしというのは、茶殻製品を利用して
会社の方がここにいらっしゃることです。一社の中だけでステー
実はものすごくお茶に囲まれているんだね、
という演出をするのも
クホルダーダイアログを実 施しがちな企 業が大 半ですが、
こう
いいです。
それから、
デザインももう少しおしゃれにすれば、経済
して関 連 会 社の方々と一 緒に、考え方を共 有し、共 感するこ
産 業 省が掲げる「クールジャパン」の一 環として海 外にも打ち
とで活 動に反 映させる。
そして大きな流れにすることが重 要だ
出すこともできると思います。
と思います。
戸部依子氏
麹谷和也氏
(社)日本消費生活アドバイザー・コンサル
タント協会 NACS 消費生活研究所
主任研究員
《専門分野》消費者課題
グリーン購入ネットワーク
専務理事・事務局長
《専門分野》環境情報
環境大臣賞の受賞理由にも「新機能性製品としての新市
2 0 1 0 年 、茶 殻リサイクルシステムはグリーン購 入 大 賞 審 査
場の創出」が挙げられていますが、私もこの茶殻リサイクルシス
員特 別 賞を授 賞しました。
これは、廃 棄 物を利 用した循 環の
テムは、新しい価値やコンセプトを創出する取り組みとして評価
仕組みをさまざまな業界の方々とコラボレーションしながらつくり
したいと思います。単なるリサイクルではないというところが消 費
上げてきた、
その事業性と継続性を評価させていただいたもの
者として非常に関心を持った部分です。
です。
今後は、
リサイクルという独立したプロセスではなく、
お茶製品
一 方で、課 題もまだまだあると感じます。例えば 、
「お~いお
の製造と茶殻製品の製造を、連続した一つのプロセス、
それも
茶 」というブランドと連 携し、利 益につなげていくためのマーケ
一貫して環境に配慮したものづくりのシステムとしてとらえていくこ
ティング戦 略 。
それぞれの茶 殻 製 品が持つ効 果や価 値を、バ
とが重要だと思います。同時に、
そうしたプロセスをきちんと消費
ラバラではなく体系的に知らせていくこと。消費者に分かりやす
者に説明していくことが、今後の大きなテーマになるのではない
い言葉でプロモーションしていくこと。
さらにそれらを、
日本国内に
でしょうか。
とどまらず海外へも発信していっていただければと思います。
2
現 状 の 課 題― 認 知 度の向上と「売れる」仕組みづくり
眞下氏 当社は茶殻を用いた折り紙を販売しています。お茶
り出し買っていただけるようにするか、
その両 立を考えていかな
の香りがして、脱臭・抗菌効果もあり、化学薬品を用いた抗菌
ければならないですね。
折り紙よりも安 全 安 心という声をいただいております。一 方 、認
笹谷 例えば、茶殻入り封筒は「中身が透けて見えない」
とい
知 度 不 足でその良さが消 費 者に理 解されていないという感じ
う付加価値が評価されて、行政機関などで使われるようになっ
がしています。
ています。
これはシーズが先にあったケースですが、逆にニーズ
山 形 氏 私たちは茶 殻 入りの畳を9年 前から扱っていますが、
に対応して製品を開発するなど、
シーズとニーズをどうつなぐか
この2~3年で売れ行きが非 常に伸びていて、生 活 者の意 識
を考えるのも大事ですね。
は芽生えてきているのかなと。今後はそれをどうやって広げてい
杉村氏 当社は自動販売機脇などにある、PETボトルや缶の
くかが課題ですね。
分 別 容 器を扱っているのですが、今 回 、消 臭の機 能もある茶
内田氏 私どもが扱う販促品についても、CO 2 削減やリサイク
殻を用いた容器を開発・発表したところ、
お取引先からたくさん
ルなど「環境」が重要なキーワードになっていますが、
その中で、
のお問い合わせをいただきました。事業としての裾野は非常に
伊藤園の「お~いお茶」の茶殻を使用してると説明すると、消
広いのではないかと感じます。
費者からは「それなら安全安心ですね」
とプラスアルファで評価
小山氏 当社は、茶殻を納品する立場です。
ダンボールや畳
されます。
等に使われるというお話を聞いた時には驚きましたが、今ではリ
鈴木 エコプロダクツ展などに出展した際も反応は非常に良
サイクル原料として1つの地位を確立しているかな、
と。
これも伊
くて、実際に製品に触って香りをかいでいただいたり、
「茶殻を
藤園からご指導をいただいたおかげだと思います。
乾燥させずにリサイクルしている」とご説明したりすると、非常に
佐 藤 開 発の立 場から言えば、省 資 源やC O 2の削 減 、茶 殻
皆さん感心されます。
の効用を利用したものなど、つくり込む余 地はまだまだあると考
溝端氏 私たちは茶殻入りの紙ナプキンや箸袋を販売してい
えています。協力企業の方々とともにがんばって良いものをつくり
ますが、やはり普 通の紙を用いた製 品よりは少し高くなるので、
あげていきたいと思います。
それをどのようにお客様に理解していただくかが課題ですね。
安倍 今日のお話を伺いまして、茶殻リサイクルシステムはまだ
秋 元 認 知 度の向 上に加え、売れる仕 組みづくりが大きな
まだ入り口であることがわかり課題も見えてきましたが、
その発展
テーマですね。
コストと単 価という問 題もあります。協力企 業の
の可能性を大いに実感しました。
方々とタイアップし、地球に優しく愛される製品をいかに世に送
ダイアログ出席協力企業と茶殻製品一覧(50音順)
企業名
アートファクトリー玄㈱
出席者
杉村 総一郎社長
分別容器
内田紙工㈱
内田 浩二社長
紙製品(油とり紙など)
㈱栄光舎 吉田 公弘部長
報告書等冊子(印刷)
山形 鉄志社長
畳
㈱北一商店
キンキサイン㈱
山口
廣取締役
ジェイフィルム㈱
稲垣 和人副部長
飲料製造委託企業
フィルム
ジェーシーボトリング㈱
今成 敏道部長
飲料製造委託企業
チヨダウーテ㈱
渡邉 崇本部長
石膏ボード
㈱トーヨー
眞下 安弘社長
折り紙
ニチハ㈱
日本ケミフェルト㈱
㈱ホテイフーズコーポレーション
溝端紙工印刷㈱
レンゴー㈱
新美 義根取締役
松本 裕子部長代理
吉田 寿社長
小山 将博常務取締役
溝端 繁樹社長
三浦 一憲部長
鈴木 昭人課長
茶殻リサイクル協力企業発言者
取扱茶殻製品
杉村総一郎様 内田浩二様
山形鉄志様
眞下安弘様
小山将博様
溝端繁樹様
アートファクトリー玄
株式会社社長
株式会社北一
商店社長
株式会社トーヨー
社長
株式会社ホテイフーズ
コーポレーション
常務取締役
溝端紙工印刷
株式会社社長
内田紙工株式会社
社長
伊藤園発言者
デザインウォール
(意匠建材)
インソール
飲料製造委託企業
紙ナプキン
ダンボール
橋本俊治
笹谷秀光
鈴木尚文
秋元隆
安倍義人
佐藤崇紀
副社長
取締役
CSR担当
環境部長
特販営業本部
副本部長
開発部長
開発部
3
今 後に向けて― システムとしての活かし方
河 口 氏 「 売る」ことを考える上で認
識しなければいけないのは、消費者は
「エコだから」では買ってくれないという
ことです。私も30年ほどエコ製品を見て
きていますが、確かに良い製品かもしれ
ないけれど「これ使うの?」というデザイ
ンの製品が少なくありません。
「エコ」
ということに初めから価値を
見出す人にとってはそれで良いかもしれませんが、
それ以外の人
には「リサイクルしているから買ってね」では押し付け感がある。
ま
ず製品のクオリティや雰囲気で惹きつけて、
エコは最後に「知っ
てる?」
と付け加えるくらいの方がアピール力が高いんです。
茅氏 私が最後に申し上げておきたいのは、当たり前のことで
麹谷氏 確かに、エコ製品をつくった
すが、やはり茶 殻の持つ資 源としての効 用を、できるだけ引き
から買いなさいという姿 勢では絶 対に
出せるようなシステムであってほしいということです。持続可能性
売れませんよね。消費者にきちんとその
を高めるには、資 源を使うときには可 能な限りその資 源の効用
製品の魅力を伝える努力が必要です。
を搾り取ることが重要。お茶製品を製造した後も、茶殻には抗
それから、誰に対して、
いつ情 報 発 信
菌 性や消 臭 性などのメリットがいろいろ残っていますから、
それ
するかもポイントです。
グリーン購 入 法
をできるだけ引き出して消費者に提供していただきたいです。
は毎年対象分野と基準が見直されているので、
その時に自分
笹 谷 この茶 殻リサイクルシステムは、茶 栽 培・製 品 製 造・茶
たちの製品を入れる努力をすべきです。
また、私たちグリーン購
殻が一 連の循 環の輪をなす取り組みです。協力企 業とともに
入ネットワークなども含め環境情報を提供するサイトがあるのに、
一丸となり、Win-Winの関係を構築できるようにしていきたいと
なぜもっと活用しないのでしょうか。社会の動きをよく見て、
いつ
思います。
誰に対してどんな情 報を流すのか、
ビビッドに反 応する姿 勢で
橋本 今後も茶殻の効果・効用をしっかりと説明しながら地道
あってほしいです。
な営業活動を行い、
「売る側」
としてサポートしていくのも、当社
戸 部 氏 やはり、茶 殻が 入っている
の重要な役割だと思いました。本日は本当にありがとうございま
からこその長 所を明 確に消 費 者に伝
した。今回の受賞は、
みなさまが茶殻リサイクルの活動をさまざ
え、伊 藤 園さんの製 品 価 値をアピー
まな形でサポートしていただいたおかげだと考えています。本日
ルしていく必要がありますね。
その場合、
先 生 方からもいただいたご意 見を貴 重な力として、
さらに持 続
例えば 製 品を何かのノベルティとして
的に活動を発展させていきたいと思います。
使ってもらうのも一つの手段ですが、
そ
こで「いいな」と思っても、
どこで買えるかという接 点が見つから
なければもったいないですから、販売の段階までも含めて体系
的に取り組んでいくことが重要だと思います。
田中氏 その意味でも、
システムとしてよりしっかりと確立してい
く必要があると思うのですが、例えば、茶殻協力企業も含め委
員会などを作って議 論してはどうでしょうか。
そのときに、ぜひ社
内で公募して若い人材を加えてほしいと思います。伊藤園さん
発行年月:2011年12月
の取り組みは、持 続 可 能な発 展に貢 献するためにステークホ
ルダーを交え、サプライチェーンを巻き込むなど、ISO26000の
定義をそっくり実践しているわけです。
その成果をホームページ
などでしっかり公開してほしいですね。
ステークホルダーダイアログに参加いただいた有識者・協力企業の方々と伊藤園
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