マレク・シウィキ コンサルタント・エグゼクティブ 2014年8月 アセット・アロケーションのソリューション−ダイナミック債券ベンチマーキング 過去10年にわたって年金基金は、利回りを追求するためにより多彩で一段とグローバル なアプローチを取るようになり、現在はより広範な債券市場へと足を踏み入れている。当 初は国債のみの投資だったが、その後投資適格社債へと投資対象を広げ、その後もハイ・ イールド債やABS(資産担保証券)、バンクローン、エマージング社債などの市場に軸足を 広げ、グローバル化を一層重視することで、ポートフォリオの分散化を進めてきた。こうし た投資対象の移行の背景には、これらの資産クラスが市場サイクル全体にわたって価値 を提供する潜在性を備え、年金基金の資産積み立て目標を達成する手助けとなり得ると の年金基金の考えがある。 しかし、特定の資産クラス内で、今後12∼18カ月間の資産配分が目標のリターン水準に達 しない可能性があるというシグナルが発信された場合、年金基金の運用担当者は素早く 反応する必要がある。だが、年金基金のガバナンス体制ではこれが直ちに容認されるこ とは難しい。意思決定のプロセスは往々にして緩慢であり、戦略変更は一般に定期的に 行われないため、相対的に低い価値を提供する資産クラス、または元本値下がりのリス クが高い資産クラスを回避することは年金基金にとって難しい。 そのため、ここ数年間は戦術的な意思決定の課題に対応して、ポートフォリオの運用方法 に関して外部のファンドマネージャーにより大きな自由裁量権を与えるソリューションへ の移行が見られた。例えば、キャピタルゲインに軸足を定めた運用について言えば、年金 基金はDiviersified Growth Fund(分散型成長ファンド=DGF)を選定していた。DGFでは、 運用者がが小売物価指数(RPI)やLIBORをベンチマークとして広範な資産クラスに自由 に資金を配分することができる。同様の傾向は債券市場でも定着し始めており、クレジッ ト・オポチュニティーズ(Credit Opportunities)/マルチアセット・クレジット(Multi-Asset Credit(MAC))の運用委託を通じてDGFの成功に続こうとしている。 万能な手法と言えるのか? DGFおよびCredit Opportunities/MAC戦略は「誰にでも当てはまる万能な」資産運用 アプローチを想定している。だが、十分なガバナンス体制を備えた基金にとっては、特 定資産のバリュエーションが割高であったり、基金の負債への対応が求められる場合 には、専門の運用会社とパートナーシップを組む方が、市場にアクセスして戦術的な資 産配分を決定する上でより良い方法であろう。このような体制をとった場合、ファンドマ ネージャーと受託会社は四半期毎に資産/負債の状況をレビューし、ベンチマークや 投資対象市場について議論する任務を負っているため、資産配分の意思決定をより頻 繁に行うことができる。 ケーススタディ ウエスタン・アセットは2001年にある年金基金(以下「お客様」)、およびそのコンサルタ ントとパートナーシップを組み、前述のアプローチを実行した。ここでは、お客様の経験 について簡単にコメントすると共に、この方法にはなぜメリットがあり、より広範に適用す ることができるのかという点について、当社の考えを説明する。 © Western Asset Management Company 2014. 当資料の著作権は、 ウエスタン・アセット・マネジメント株式会社およびその関連会社(以下「ウエスタ ン・アセット」 という)に帰属するものであり、 ウエスタン・アセットの顧客、その投資コンサルタント及びその他の当社が意図した受取人のみを対象として 作成されたものです。第三者への提供はお断りいたします。当資料の内容は、秘密情報及び専有情報としてお取り扱い下さい。無断で当資料のコピーを 作成することや転載することを禁じます。 アセット・アロケーションのソリューション − ダイナミック債券ベンチマーキング まず、お客様はベンチマークを議論する頻度に関してガバナンス体制を構築し、議題を 定めた。これらのミーティングを意図的にポートフォリオのレビューから切り離すことによ り、債券市場に関する正式な議論とコンサルタントの戦略的な助言が適切な度合いで注 目されるようにした。さらにミーティングでは、当社は各市場の相対的な投資価値を説 明し、広範な市場に関する見解を示すことで、お客様に包括的なレビューを提供した。議 論を通じて、お客様とコンサルタントは当社の見解を聞き、既存のベンチマークが適切で あるか否かについて十分な情報を得た上で意思決定を下す機会が得られた。年金債務と 年金スポンサーのコベナンツに関連して基金が直面している問題に対して、ファンドマネー ジャーが議論を通じて明確な理解を得た点は重要である。 議論は当初、コンサルタントの戦略的助言とその背後にある想定に重点が置かれる傾向 にあった。当社は議論を補足するため、その後18∼24カ月にわたる広範な債券市場の相対 的な魅力に関する見解を説明した。 図表1は、コンサルタントとお客様が2001年以降、ベンチマークをいかにダイナミックに変 更してきたかを示している。 図表1 2011年∼2014年のダイナミックなベンチマーク変更 期間 英国 クレジット グローバル 現地通貨 英国 グローバル インフレ グローバル グローバル グローバル バンク 米ドル建て 建て ブロード 総合 クレジット ハイ・イールド ローン EM社債 国債 連動債 EM債 25% 35% 05年6月 - 06年1月 35% 06年2月 - 07年4月 25% 01年4月 - 02年3月 02年4月 - 05年5月 07年5月 - 08年11月 08年12月 - 09年3月 09年4月 - 11年6月 11年7月 - 13年6月 35% 35% 10% 13年6月 - 14年3月 14年4月 - 現在 10% 10% 10% 25% 25% 25% 10% 10% 20% 20% 20% 25% 30% 30% 15% 15% 45% 35% 35% 25% 10% 10% 20% 15% 15% 25% 20% 20% 20% 25% 10% 10% 15% 10% 25% 35% 25% 25% 25% 出所:ウエスタン・アセット 2014年4月30日現在 変更の背後にあった理由を実例として以下に示す。 • 2006年にお客様は英国のクレジット・スプレッドを懸念し、投資対象の広い指数を 採用することで国債への投資比率を引き上げた。 • 2009年に当社はグローバル・クレジットとハイイールド債の魅力的な価値を高く評価 し、資産配分を引き上げるよう助言した。 • 2011年に当社は米ドル建てのエマージング債券市場セクターよりも現地通貨建てのエ マージング債券市場セクターを選好し、乗り替えを助言した。これと同時に、分散化 の手段としてバンクローンが導入された。 • 2013年のお客様の主な懸念は、インフレ率の上昇とそれが債務に及ぼす影響、およ びリスクを軽減したいとのスポンサーの意向だった。当社はいくつかのシナリオ分 析を実施した後、ベンチマークにおけるグローバル・インフレ連動債とバンクローン の構成比率を引き上げるよう助言した。 • ウエスタン・アセット 直近に実施した当社の助言は、金利上昇に対する顧客の継続的な懸念、並びにイ ンフレ・リスクをヘッジする(そして当社とコンサルタントとのパートナーシップによ って実行された)債務マッチング・プログラムを考慮して、ベンチマークのインフレ連 2 2014年8月 アセット・アロケーションのソリューション − ダイナミック債券ベンチマーキング 動部分を引き下げると同時にバンクローンの組み入れ比率をさらに引き上げるとい うものだった。 適切なベンチマークがいったん導入されると、ファンドマネージャーは収益目標を持つこと になる。そして、さらに重要なことだが、年金基金は固有のニーズを満たすだけでなく、当 該時点の市場の状況を反映するように調整されたベンチマークを持つことになる。この後 者の要素により、市場のイベントに関係なく事前に設定された間隔でしか評価されない ベンチマークを持つポートフォリオよりも、優れたリスク調整後リターンを年金基金は実 現できるとみられる。図表2は、様々な株式・債券市場に対する当戦略の相対パフォーマ ンスを示している。ベンチマークは分散化されたエクスポージャーを持つことによって他 の多数の市場をアウトパフォームしているほか、ポートフォリオのリターンがベンチマーク を上回っているのは、資産クラス内のアクティブ運用に直接起因すると当社は考えている。 図表2 ポートフォリオ 対 株式、債券市場ベンチマークのパフォーマンス 10.7 10.3 10.1 米ドル建てエマージング債(英ポンドヘッジ有り) グローバル・ハイ・イールド(英ポンドヘッジ有り) FTSE 250 8.8 ポートフォリオ 8.0 7.8 ベンチマーク 英インデックス連動15年超 6.9 6.7 6.4 英非国債15年超 グローバル・インフレ連動債(英ポンドヘッジ有り) 英ブロードマーケット15年超 5.9 グローバル総合(英ポンドヘッジ有り) 5.3 FTSE オールシェア 0 2 4 6 8 10 12 トータル・リターン(%) 出所:バークレイズ、ブルームバーグ、JPモルガン、メリルリンチ、ウエスタン・アセット 2011年4月30日設定来∼2014年6月30日 図表3はボラティリティも考慮した様々な市場セクターのリターンを示している。 図表3 リスク・リターン 2001年4月30日設定来∼2014年6月30日 12 米ドル建てエマージング債 グローバル・ハイ・イールド リターン(年率、%) 10 ポートフォリオ ベンチマーク 英インデックス連動15年超 グローバル・ 英非国債15年超 インフレ連動 英ブロードマーケット15年超 グローバル・ グローバル クレジット 米国バンクローン 総合 8 6 4 2 FTSE 250 2 4 6 8 10 12 リスク(年率標準偏差、%) FTSE オールシェア 14 16 18 20 出所:バークレイズ、ブルームバーグ、JPモルガン、メリルリンチ、ウエスタン・アセット 2014年6月30日現在 パフォーマンスは報酬控除前です。グローバルおよび非英国のインデックスは全て英ポンドヘッジ有りです。 色別に ポートフォリオ、ベンチマーク、債券ベンチマーク、株式指数、債務ベンチマークを表示しています。 ウエスタン・アセット 3 2014年8月 アセット・アロケーションのソリューション − ダイナミック債券ベンチマーキング ダイナミック・ベンチマークのリターンは、英国の非国債、英国市場全体、米国バンクローン、 グローバル・インフレ連動債を上回り、ボラティリティが低かった。この特定のスキームは 債務ベンチマークとして英国の15年物価指数連動国債も意識しており、そのリターンは債 務ベンチマークを若干上回る一方で、ボラティリティはほぼ半分の水準だった。 振り返ってみると、全ての動きがタイミング的に完璧だったわけではないが、年金基金全 体のリターンは、当資産クラスに対する年金数理人の予想水準を上回っている。パートナ ーシップを組むことで、全ての当事者はなぜベンチマークが設定され、固有のリスクが取ら れているのかを理解することができる。 当社は流動性の高い全ての主要債券市場を網羅するグローバル・チームを擁しているた め、お客様がそれぞれの期待リターンを達成するための様々な選択肢を提供することが できる。このため、当社はこの種の投資アプローチを提供する上で好位置につけている。 ウエスタン・アセット 4 2014年8月 リスク・ディスクロージャー © Western Asset Management Company 2014. 当資料の著作権は、 ウエスタン・アセット・マ ネジメント株式会社およびその関連会社(以下「ウエスタン・アセット」 という)に帰属するもので あり、 ウエスタン・アセットの顧客、 その投資コンサルタント及びその他の当社が意図した受取人 のみを対象として作成されたものです。第三者への提供はお断りいたします。当資料の内容は、 秘密情報及び専有情報としてお取り扱い下さい。無断で当資料のコピーを作成することや転載 することを禁じます。 過去の実績は将来の投資成果を保証するものではありません。当資料は情報の提供のみを目的 としており、作成日におけるウエスタン・アセットの意見を反映したものです。 ウエスタン・アセット は、 ここに提供した情報が正確なものであるものと信じておりますが、それを保証するものではあ りません。当資料に記載の意見は、特定の有価証券の売買のオファーや勧誘を目的としたもので はなく、事前の予告なく変更されることがあります。当資料に書かれた内容は、投資助言ではあり ません。 ウエスタン・アセットの役職員及び顧客は、当資料記載の有価証券を保有している可能性 があります。当資料は、お客様の投資目的、経済状況或いは要望を考慮することなく作成されたも のです。 お客様は、 当資料に基づいて投資判断をされる前に、 お客様の投資目的、 経済状況或いは 要望に照らして、 それが適切であるかどうかご検討されることをお勧めいたします。お客様の居住 国において適用される法律や規制を理解し、それらを考慮する責任はお客様にあります。 ウエスタン・アセット・マネジメント株式会社について 業務の種類: 金融商品取引業者(投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業) 登録番号: 関東財務局長(金商)第427号 加入協会: 一般社団法人日本投資顧問業協会(会員番号 011-01319) 一般社団法人投資信託協会 ウエスタン・アセット
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