早期出港手順と船荷証券

GARD NEWS 150 (翻訳文)
1998 年 6 月 発行
早期出港手順と船荷証券
Early departure procedure and bills of lading
背 景
船が遅滞なく荷積み施設を離れられる状態にし
船荷証券を白地のままで署名して交付すると
ておくことになっています。事実、関連ターミ
いう非常に危険な慣行を、ガードニュース99
ナルは、EDPが承認されず白地の証券が署名
1
号 で指摘しましたが、その時に西アフリカの港
されなければ、結果として12時間もの遅れが
での荷積みについて触れました。ガードニュー
生じると主張しています。この遅延は、陸側の
2
ス102号 でもコメントしまして、北海を含む
荷積み量の数値を適切に書面にし、本船に渡す
多くの荷積み港で行われている早期出港手順
ためにかかる時間によって生じるといわれ、船
(Early Departure Procedure = EDP) として知られ
主にも、余分な関連費用として500米ドルの
る手順について言及しました。EDPとしてよ
料金がターミナルから課せられます。この余分
く行われるのが上記のような船荷証券の交付で
な費用とは、(荷積み後直ちに本船が投錨地に
す。
移動するので、EDPを承認しなかったり、証
最近調査をしました、アラブ首長国連邦
券に記載する数量が合意されない場合)錨泊中
(United Arab Emirates = UAE)のターミナルでの
の本船に証券を渡しにいくためのボート代と思
原油の積み込みに関するケースでは、白地の船
われます。再計算やタンクからの再汲みあげが
荷証券に署名をする慣行を含み、EDPが行わ
要求され、また/あるいは証券への記入につい
れていることが判明しました。これはUAEに
て困難が生じた場合、遅延は更に大きくなる可
限ったことではないと思われるので、船主の皆
能性があります。そのターミナルが、証券の書
様がかかる慣行を放任し、あるいは必要な阻止
式やターミナルが挿入した詳細の証明 を変更
手段を講じないままでいた場合の危険の大きさ
するこを非常に嫌がったとしても不思議ではあ
を考えて、もう一度取り上げることにいたしま
りません3。
す。
白地のまま署名された船荷証券を手にした荷
EDPは、寄港中の船舶のオプションといわ
送り人は、最大の数値を記入しようとすること
れていますが、船主にはそれに同意するよう多
はいうまでもありません。この場合その数値は
大な圧力がかかります。ターミナルはその設備
陸上のタンクの数量であり、関連する本船経験
を最大限に利用することに懸命ですし、用船者
係数(Vessel Experience Factor = VEF)を全く適用
は遅延の結果や、後続の荷積み・荷揚げのスケ
することなく記入されてしまいます。かくして、
ジュールのおくれ、また停泊期間や期間超過を
陸上と本船の数値の差は当然大きく異なり、こ
常に心配しています。EDP は事前交渉の目玉で
のケースでは、1件の証券上の数値は本船の数
あり、用船者は、船主が EDP を承認すること、
値を1パーセントほども上回るものでした。
またこれに沿えないために発生した時間を停泊
(この1パーセントの差は、その後の独立検査
期間から差し引くという用船契約条項の挿入を
で確認されました。)この件での更なる懸念は、
目標に、商取引でしのぎを削ることはよく知ら
証券に「重量、容積など不知」の旨の保留条項
れています。
を示す文言や条項が(印刷文言さえも)なかっ
このような場合は白地の証券が荷積み完了前
たことです。
にパイロット/荷積み責任者から船長に渡され、
荷積み施設からの出港時に陸側の数量を知ら
された本船は、荷送り人/ターミナルと用船者
1
1985年10月、7ページ 「西アフリカの港で証券に署名をする
とき」
2
1986年 7 月、18 ページ「原油輸送と補給」
3
これも用船者/荷送り人にとってEDPの有利さです -無故障
船荷証券
Early departure procedure and bills of lading
Gard News 150 June 1998
-1-
に抗議書を出して数値の差異を告知しました。
信しているわけではありませんが、特に第三者
の証券所持者に対するそのような抗議書の効果
明らかになった危険
は(たとえ抗議書が、まれに、証券に添付され
船荷証券を白地のまま署名して交付することは
ていたとしても)非常に疑問です。
危険な処置であり、殊に陸側の数字が例えば
用船者に対する求償の可能性について
「重量、容積など不知」といった保留条項なし
は、”NOGAR MARIN 号”事件 7の判決が英国の
で記入される場合はなおさらです。問題の証券
裁判所の一般的取り組み方を示しています。裁
は「指図人式」証券であり、ハーグ・ウィスビ
判所は船長が、当然知り得た船荷証券の不正確
ー規則およびハンブルグ規則では、これらの規
な記載の訂正を怠り、用船者さえもかかる不正
則のさまざまな混成版国内法においてと同様、
確な記載を知っていた場合、船荷証券に基づく
善意で第三者に譲渡された証券は、そこに記載
第三者クレームの運送人による決済に関して普
された重量・容積を運送人が受け取ったという
通なら船主にあるべき契約上の、あるいは暗黙
確証とみなされ得るのです。「重量、容積など
契約上の損害賠償請求権は、用船者に対して是
不知」や「陸上/荷送り人の数値による限り」と
認されないと述べました。8他の多くの裁判国で
いった文言が用いられていても、運送人は十分
も同様な取り組み方をするものと思われます。
保護されていない場合もあります。英法ではか
このような危険な慣行に関わらされ、貨物関
4
かる保留条項が一般的ですが 、それに依拠す
係者からの数量不足のクレームに直面した船主
る権利が撤回される可能性もあります。これは
には、さらに孤立無援という冷たい現実が待ち
船荷証券と本船の数値に(0.5パーセントを
うけています。当組合の定款と規約の、規約3
超えるような)かなりの開きがある場合起こり
4(1)(b)(ix)は、船長が貨物の数値の不正確な記
得ます。この提案の基礎は、そのような差異は
載を知りながら船荷証券を交付して生じた責任、
船長にとって明白であったはずだということで
経費および費用の填補を除外しています。また、
5
す 。この英国の裁判所の理論による取り組みを
日付を前もって、あるいはさかのぼって記載し
必ずしも踏襲しない裁判国も当然多く、保留条
た証券 9 についても填補を除外しています。白
項が全く無視されることもしばしばです6。
地のまま署名した証券を交付した場合も同様に
とらえられましょう。
抗議書を出せば、荷送り人または用船者にそ
れを船荷証券に添付する責任が生じ、添付しな
では、故障貨物免責状(Letter of Indemnity =
い場合は「よくない評判」がたったり、「詐欺
LOI)なら正解だとお考えでしょうか。しかし、
行為」の可能性がおきたりすると思われるかも
かかる書類が(船長/船主が、善意の当事者が
しれません。当組合は、かかる責任の存在を確
不正確な表示を信じると考えた場合のような)
違法な状況で交付されれば、これは詐欺に等し
く、効力としては無価値です。
4
ロイドレポート 642”ATLAS”号事件[1996 年]1では、裁判官は
ハーグまたはハーグ・ウイスビー規則の自明の推定事項は、「重
量不知」の文言が証券に挿入されている場合適用されないと認
定しました。これが同様に、決定的証拠の効力となりうるはずの
証券に適用されないと信じる理由はありません。
5
ハーグおよびハーグ・ウイスビー規則第III条規則 3 は、いかな
る運送人、船長または運送人の代理人も、実際に受け取った物
品を正確に表示していないと疑うべき正当な理由があるとき、ま
た自身で調べる適切な手段がある場合は、船荷証券上に記号、
数、容積または重量を記載することを強制されるべきではないと
しています。
6
その他の裁判国が保留条項をいかに取り扱うかについては、
スペインがよい例です。スペイン法ではこのような条項は、一定
の条件が満たされた場合にのみ有効です。その条件の一つは、
船主がかかる条項を入れる理由が正当であることを証明するこ
とです。かかる条項の効果は、船長が「貨物の明細をチェックす
ることが、真実実行不可能であったこと」にかかっているからです。
これは明らかに、実行が非常に困難な義務です。
お 勧 め
EDPについては、ターミナルや用船者から
の圧力に屈せず反対すべきです。予防手段を講
じる費用や遅延が起きたときの費用は、責任の
危険度にはるかに及びません。取引上の関係は
勿論大切ですが、用船者は船主に押し付けよう
7
ロイドレポート412 [1998 年]。1988 年 10 月ガードニュース
111 号 5 ページ。
8
正確な文言ではありません。
9
規約34(1)(b)(viii)
Early departure procedure and bills of lading
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としているリスクを十分承知しています。用船
らの圧力に抗するよう求めます。
者も、自分自身ではそのようなリスクを負わな
(2) 船荷証券は、内容の正確さが証明され、必
いでしょう(それにLOIは法的に執行不可能
要とあれば、船長または船長代理の資格のある
なので、LOIをもらってリスクを負うことも
人によって適切に承認されない限り署名しませ
しないでしょう)。そして用船者が一度ならず
ん。
特定の船主を用いるのには、もっと多くの大き
(3) 船の代理店を用いることがEDP問題とそ
な理由があるに違いありません。
れに関わる圧力を避ける一つの方法かもしれま
それでも受けて立とうという船主には、英国
せんが、隔離されたターミナルでは困難であり
10
の裁判所による”BOUKADOURA 号”事件 の判
かつ高くつくと考えられます。しかしリスクの
決が頼りになるかも知れません。この事件では、
存在と比較することも必要です。代理店を用い
用船契約が船荷証券は提示された状態のままで
ることができれば、証券は、船長または船主が
署名されることとしている場合でも、証券は事
(2)が満たされていることをチェックした後、
実該当貨物に関するものであり、不正確である
船長または船主に代わって代理店だけに署名さ
との認識のある間違った記載がないという、暗
せます。
黙の前提があったとしました。そのため船主は
(4) もし船主がEDPに関わらされ、船荷証券
用船者から損失(主として出港の遅れによる費
に記入された数値が船上に積まれた量よりも大
用)の補償を得ることができました。用船契約
き 11 いとの相応な疑いを持てば、船側の数値を
上所定の特定の補償だけでなく、用船者が、不
通知するために船荷証券上の荷受け人または着
正確な船荷証券を提示したり、陸側の数値に関
荷通知先を特定する努力をします。船側の利害
して保留条件付きであれば船長の署名を拒否し
関係者は、その後考えられるすべての人、荷送
たりして暗黙の合意に違反したことにもよる補
り人、用船者、用船者の代理店、そしてできれ
償も含まれました。
ば荷受け人または着荷通知先に抗議書を出しま
このことを念頭において、次のアドヴァイス
す。荷送り人にも抗議書のコピーを証券に添付
をご検討ください。
させ、抗議書のコピーを買い手に送付させます。
(1) 船主はEDPを容認しないという明確な条
上に述べたように、このような方法は責任を回
項を用船契約に入れる努力をします。各船長に
避することは多分できませんが、紙一枚でクレ
この条項に注意し、用船者およびその代理人か
ームを回避することはできそうです。
10
ロイドレポート393 [1989 年]1
Early departure procedure and bills of lading
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