受水槽(SUS329J4L 製)の腐食 整理番号:03-28 登録年月:2008 年 2 月 分類 コード 時期:竣工後 1 年 ①現象 113 ④設備部位 454 ②建物用途 201 ⑤発生時期 502 ③建築部位 301 ⑥原因 601 ● 不具合の内容 事務所ビル屋内に設置された SUS329J4L 製の受水槽におい て、定期清掃の際に受水槽内部の腐食が確認された。 腐食は主に受水槽気相部の鋼材溶接部、鋼板同士の隙間部で発 生していたが、母材部においても腐食の発生が確認された。な お、液相部には腐食は認められなかった。 ● 原因 水道水中に含まれていた残留塩素が塩素ガスとして受水槽内で 分離し水槽気相部の結露水に再溶解することによって、塩化物イ オンの濃縮と pH の低下が生じ、このような事象が単独あるいは SUS329J4L 製受水槽腐食事例 複合的に作用し腐食に至ったものと推察される。 ● 対策 気相部に樹脂塗装を施した。 ● 再発防止策 1)溶接施工管理の徹底 2)溶接部酸化スケール除去の徹底(特に酸洗いおよび酸洗い後の水洗いの徹底) ● 解説 水槽の材料としては、1962 年頃にFRP製パネル水槽が登場し採用されてきたが、屋外設置水槽の藻の発 生、リサイクル性の観点、および価格面から、近年、ステンレス鋼製水槽が採用されるようになってきた。当 初は、SUS304 を使っていたが、気相部の腐食が問題となったため、現在では液相部にフェライト系ステンレ ス鋼である SUS444 を、気相部に二相ステンレス鋼である SUS329J4L を使用したものが主流となっている。し かし、SUS329J4L 製水槽においても施工状態、設置条件によっては、天板や側壁気相部に腐食が発生する場合 がある。 溶接型ステンレス水槽は、溶接部のピンホール形成、酸 化スケール除去の不備(特に酸洗いの不備と酸洗い後の水 洗い不備)等溶接組立時の施工不良箇所が存在した場合、 トラブルが発生する可能性が高い。 水道法では給水栓で遊離残留塩素として 0.1mg/L 以上、 結合残留塩素として 0.4mg/L 以上検出されることが定めら れている。この残留塩素が塩素ガスとして受水槽内で分離 し水槽気相部の結露水に再溶解することによって、塩化物 イオンの濃縮と pH の低下が生じる。屋外設置水槽では、水 槽内の温度変化が大きく、蒸発水の凝縮量が多いため、壁 面及び天板が洗浄され塩化物イオンの濃縮や pH の低下は生 じにくい。実際、屋外設置水槽での腐食事例はほとんどな い。一方、屋内設置水槽では、水槽内の温度変化が小さく蒸 受水槽使用経過時間と気相結露水の 発水の凝縮量が少ないため洗浄効果が期待できず、塩化物イ pH,Cl−(塩化物イオン)濃度の関係 オンの濃縮と pH 低下の進行度合いが大きくなる。 以上のような事象が単独あるいは複合的に作用し腐食に至ったものと推察される。 (出典:腐食・防食ハンドブック CD-ROM 版第 2 版) 備考 62
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