2 第 IIステージ紹介

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2.1
第 II ステージ紹介
Se la face ay pale (もし私の顔が蒼いなら)Guillaume Dufay(ca.1400-1474)
非常に美しい曲で、どのくらい美しく仕上がるかと期待しつつ取り組んでみたものの、なかな
か簡単には行きませんでした。殊に私が歌う声部であるコントラテノールは、楽譜に歌詞が載せ
られていないため、強引に歌詞付けをしたものの、音域が広く何よりも音形が難しいため、かな
りキツイです。まあ、私がやらなければ誰かがやることになっていたのだから、仕方がないと思
いますが。定演までに、良い仕上げができるよう努めます。
なお、歌詞であるフランス語(現代フランス語ではない)の発音は、デュファイ世俗全集の解
説、CD のプロ演奏、詩の脚韻などを参考にしました。
Superius(石橋(孝)、若月)、Tenor(佐藤、青木)、Contratenor(西野)の 3 声。
2.2
Ave Regina cælorum(めでたし天の女王)Guillaume Dufay
歌っている時の我々の様子がおかしいなどと、言われのない嘲笑を浴びたり、人数の少なさの
故か、練習中に他の曲の人々に邪魔者扱いされたりと色々あったが、何と言っても一番困ったの
は、メンバー 3 人が全員揃って練習したのが数える程しかない、という事だろう。息が合わない、
などは勿論、この曲の命とも言うべき和声に大変手こづった。ある程度練習を重ねて、この曲の
魅力を再認識するとともに、この曲の難しさと自分の実力の到らなさを思い知らされる今日この
頃である。
Cantus(谷口)、Contratenor(朴澤)、tenor(原田)の 3 声。
2.3
Fortuna desperata (やけになった運命の女神よ)Antoine Busnois(ca.14301492)
何に苦労したかって、やっぱり母音の発音と和声の響きがなかなか思うようにいかなかったこ
とかな。楽譜自体は単純だし、音を取るのは決してムツカシイものではなかったから、その分合
わせる段になって「こっ、こんなはずでは」という感じで。今夜はステキに演奏できるといいん
だけど。
でもねぇ、リーダーは他曲の仏語専属コーチになっちゃて帰ってこないし、あっちは寝てばっ
かいるし、こっちは口開けば麻雀のことばっかだし、頼みの綱のあのコはアンサンブル練習の時
に限って踊り狂ってていないし、もお、まじめなのはあたしだけだったのよね。それが一番大変
だったわ。なんちゃって。
Supirius(三好、鈴木)、Tenor(岡崎、石橋(和))、Bassus(吉増)の 3 声。
2.4
En actendant (愛する方の優しさを待ち望み)Alexander Agricola(ca.14461506)
アンサンブルのメンバ−が発表となった時、みんなが我々に向かって言った言葉は「勝田君、可
哀そう。」だった。女性陣のうるささが耐え難かろうという意味であるが、実際は 4 人が 4 人と
もお祭り人間なのでそういうことはなかった(と思う)。問題は別にあったのだ。(本当は)奇麗
な曲だが、声域が苦しい、仏語がわかる者がいない、曲が長い、全員 2 年生である、それぞれの
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声質が全くバラバラである、など途方にくれてしまった。そのため何人もの専属トレーナーが現
れたくらいであるが、まだまだ前途多難である。しかし出席率だけは抜群の我々は、定演までは
ちゃんとした演奏ができるようにしようと思うので、暖かい耳で聴いてやって下さい。
Superius(菅生、松下)、Tenor(黒瀬)、Contratenor(勝田)の 3 声。
2.5
Que vous madame/In pace in idipsum(奥様、貴女以外には/平安に)Josquin
des Préz(ca.1440-1521)
この曲は、一昨年の五月祭(本郷にある東大のお祭り)において、アンサンブルとしてではな
くムジカサクラ全体で演奏されました。そのときは、女声 1 声、男声 2 声で歌われましたが、今
回は女声 2 声、男声 1 声でお聴きいただきます。一昨年と同じパートを歌う者、一昨年とは違う
パートを歌うことになった者、そして、初めてこの曲を歌うもの、と、様々なキャリアの者が 6
人で歌います。
Superius(隈原、新妻)Tenor(篠田、山田)、Bassus(Cantus firmus)(篠原、寺林)の 3 声。
2.6
Nimphes,nappés/Circumdederunt me (ニンフたち、ナパイアたち/死の呻
き我を取り巻けり)Josquin des Préz
アンサンブルは 3 声の曲が主体なのだが、我々が歌うジョスカンのモテトゥス・シャンソンなん
と 6 声である。歌詞の内容は非常に重いのだが、紡ぎだされる和声は何とも明るい響きで、我々
現代人の(メジャーなら「明るい」というような)和声から感じる感情と当時のそれとの違いが
興味深い。
Superius(村長、松澤)、Sexta Pars(Cantus firmus)(渡井)、Contratenor(横田)、Quita
Pars(Cantus firmus)(伊藤)、Tenor(中野)、Bassus(吉原、高橋)の 6 声。
2.7
Donna di dentro(奥様、貴女の家のなかには)Heinrich Isaac(ca.1450-1517)
単純な構造と軽快さが特徴のこの曲は、それを歌うメンバーの性格を如実に表している(とい
うのもアンサンブルのメンバーは本人達の希望により決められたからだ)。あっこちゃんは明る
く、しかも冷静に歌う。私、宮井は「この曲たけーよ」とブーたれながら声をふりしぼる。M ぞ
ぐちさんは淡々と張りのある声を響かす。松ちゃんと大西は怪しげなリズムにながらも、屋台骨
を支える。男 3 人がいかに冷静に、かつ女性 2 人がいかに楽しげに歌うかがポイント?
Superius(加藤)、Contratenor(宮井)、Tenor(溝口)、Bassus(松原、大西)の 4 声。
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Se la face ay pale
もし私の顔が蒼いなら
Guillaume Dufay(ca.1400-1474)
ギョーム・デュファイ
Se la face ay pale,
La cause est amer,
C’est la principale,
Et tant m’est amer
Amer,qu’en la mer
Me voudroye voir;
Or,scet bien de voir
La bella a qui suis
Que nul bien avoir
San elle ne puis.
もし私の顔が蒼いなら、
それはこの苦しみのためである。
苦しみが私のすべてを支配している。
あまりに辛い苦しみ、
その苦しみのために私は
海に身を投げたくなる程だ。
ああ、彼女をこの目に映す悦び、
この美しい人は私を得た、
彼女なしでは何の悦びも
もう得られない私を。
Se ay pesante malle
De dueil a porter,
Ceste amour est male
Pour moy de porter;
Car soy deporter
Me veult devouloir,
Fors qu’a son vouloir
Obeisse,et puis
Qu’elle a tel pooir,
Sans elle ne puis.
相克の辛い悲しみを
ひとり抱かねばならぬのなら、
この愛はあまりに辛くて
私には支えきれない。
彼女と苦しみを分かつことを
心から望むばかりに、私は
彼女の意志に従うよりほかには
どうしようもない、そしてその力を
彼女は待っているのだから、
彼女なしではだめなのだ。
C’est la puis reale
Qu’on puist regarder,
De s’amour leiale
Ne me puis guarder,
Fol sui de agarder
Ne faire devoir
D’amours recevoir
Fors d’elle,je cuij;
Se ne veil douloir,
Sans elle ne puis.
人の知り得る限り、それは
何にも増して真実なのだが、
彼女に対する誠実な愛を
私が守れない時、そして
彼女以外の人から
愛を受けねばならない時、
私は気が狂ってしまうだろう。
私は思うのだが、
苦しみを望まないのなら
彼女なしではだめなのだ。
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Ave Regina Cælorum
めでたし天の女王
Guillaume Dufay(ca.1400-1474)
ギョーム・デュファイ
Ave Regina cælorum,
Ave domina angelorum,
Salve radix sancta,
Ex qua mundo lux est orta.
めでたし天の女王、
めでたし天使の統率者、
やすくあれ聖性の根よ、
御身より世に光出ず。
Gaude gloriosa,
Super omnes speciosa,
Vale,valde decora,
Et pro nobis semper Christum exora.
Alleluia.
喜びませ聖なるもの、
すべてに勝りて美しきもの、
めでたし、ほまれあるものよ、
常に我等をキリストによりなし給え。
アレルヤ。
Fortuna desperata
やけになった運命の女神よ
Antoine Busnois(ca.1430-1492)
アントワーヌ・ビュノワ
Fortuna desperata,
Iniqua e maledeta,
Che de tal dona electa,
La fama hai denigrata.
やけになった
意地悪で邪悪な運命の女神よ、
汝はこのような素晴らしい女の
名声を傷つけた。
O morte dispiatata,
Inimica e crudele,
Che d’alto piu che stelle,
L’ahi cuis abassata.
ああ、無慈悲な
敵のような残酷な死よ、
それは星よりも高貴な女を
このように惨めな状態に陥れた。
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En actendant
愛する方の優しさを待ち望み
Alexander Agricola(ca.1446-1506)
アレクサンダー・アグリーコラ
En actendant la grace de ma dame,
Loyal seray de corps et de ame,
Et pour ce,tant que j’ay vivray,
Ja nulle autre ne serviray,
Se Dieu plaist ja n’en auray blasme.
愛する方の優しさを待ち望み
この身も魂も誠実でいよう,
生ある限り。
他の人には決して心を寄せません,
神かけてこれには反しません。
Ne pense personne ne ame,
Que je change celle que j’ame,
Ne ja le voulloir n’en auray.
En actendant la grace de ma dame,
Loyal seray de corps et de ame,
Et pour ce,tant que j’ay vivray,
僕が愛する人を変えてしまうなんて
誰だって考えないでしょうし,
僕だってそんな気持ちは一切ありません。
愛する方の優しさを待ち望み
この身も魂も誠実でいよう,
生ある限り。
Si prenement je diz je l’ame,
Car j’entens bien que sana diffame,
Aussi cela je deffendray
Jusqu’au morir,et maintiendray
Que mon cueur souvent la reclame.
あの人をとても愛しています,
だから僕は名誉を傷つけることなく
あの人を護りましょう。
死の時まで保ちましょう,
あの人を讃えるこの心を。
En actendant la grace de ma dame,
Loyal seray de corps et de ame,
Et pour ce,tant que j’ay vivray,
Ja nulle autre ne serviray,
Se Dieu plaist ja n’en auray blasme.
愛する方の優しさを待ち望み
この身も魂も誠実でいよう,
生ある限り。
他の人には決して心を寄せません,
神かけてこれには反しません。
Que vous madame/In pade in idipsum
奥様、貴女以外には/平安に
Josquin des Préz(ca.1440-1521)
ジョスカン・デ・プレ
Que vous madame,je le jure
N’set ne sera de moy servie,
Et tant Qu’aura vostre serf vie
Garde n’avez qu’il se perjure.
奥様、貴女以外には、
誰にもお仕えしないと誓います。
あなたの下僕は生きている限り
決して誓いを破りますまい。
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Une fois a vous me donnay,
Et derecef certes my donne.
私はかつてこの身を貴女にお捧げしましたが、
もう一度確かに、この身をお捧げいたしましょう。
Onques riens mieulx je n’ordonnay
Se vostre grance a moy se donne.
貴女が私にご好意を示してくださるなら、
それ以上のものは望みようがありません。
Grande me soit dicte injure
d’aultre a ma franchise asservie,
Et mort vueil avoir desservie
Se nulle dame me conjure.
私の誠実な服従のために、
私はいわれのない中傷を受けるでしょう。
そしてもし私が他の女性と
言い交わすようなことがあれば
死が私を捕らえるでしょう。
Que vous madame,je le jure
N’set ne sera de moy servie,
Et tant Qu’aura vostre serf vie
Garde n’avez qu’il se perjure.
奥様、貴女以外には、
誰にもお仕えしないと誓います。
あなたの下僕は生きている限り
決して誓いを破りますまい。
(Cantus firmus)
In pace in idipsum,
dormiam et requiescam.
Si dedero somnum oculis meis,
(Et palpebris meis dormitationem.)
(定旋律)
平安に、ことごとく、
我は眠り、憩わん。
我が目に眠りを、
我が瞼にまどろみを与えるならば。
Nimphes,nappés/Circumdederunt me
ニンフたち、ナパイアたち/死の呻き我を取り巻けり
Josquin des Préz(ca.1440-1521)
ジョスカン・デ・プレ
Nimphes,nappés,néridriades,driades,
Venez plorer ma désolation.
Car ie languis en telle’affliction
Que mes espris sont plus mort que malades.
ニンフたち、ナパイアたち、
ネリドライアドたち、ドライアドたちよ、
私の悲しみに浸りに来よ。
私はこれほどの苦悩に苛まれているから
私の魂は、病を通り越して死に至っている。
(Cantus firmus)
Circumdederunt me gemitus mortis.
Dolores inferni circumdederunt me.
(定旋律)
死の呻き我を取り巻けり。
地獄の苦悩 我を取り巻けり。
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Donna di dentro
奥様、貴女の家の中には
Heinrich Isaac(ca.1450-1517)
ハインリヒ・イザーク
Donna di dentro della tua casa
Son rose,gigli et fiori.
Dammene un pocho di maza chroca;
Ne sente ghusto alcuno,
Fortuna,d’un gran tempo.
O gloriosa donna mia bella,
Dammene un pocho di quella maza chroca.
奥様、貴女の家の中には
薔薇や百合や他の花々が咲いている。
クロッカスの花束を少し下さい。
運命の女神よ、人は長い間
どんな香りも楽しむ。
ああ輝かしく美しい我が奥様、
そのクロッカスの花束を少し下さい。
Dammene un pocho di quella maza chroca;
Et mene dar troppo.
そのクロッカスの花束を少し下さい。
多すぎても構いません。
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