第3回 : 「円安関連倒産」の動向調査

2015/1/7
東京都新宿区本塩町 22-8
TEL: 03-5919-9341
URL:http://www.tdb.co.jp/
第 3 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
2014 年は前年の 2.7 倍に急増
~12 月は 4 カ月連続で最多、全国 46 都道府県で判明、円高倒産の 4 倍~
はじめに
1 月 5 日の円相場は一時 1 ドル=120 円台後半をつけるなど、昨年末以降、120 円前後で推移。
今年もさらに円安が進むとの見方もあるなか、食品関係を中心に各種商品で値上げの動きがはじ
まっている。しかし、こうした価格転嫁ができるのは一部の大企業のみ。ギリギリの経営を続け
る中小・零細企業にとっては、円安による一段の収益悪化が“最後の追い打ち”となりかねない。
帝国データバンクは、2013 年 1 月から 2014 年 12 月までの倒産企業(負債 1000 万円以上、法的
整理のみ)の中から、円安の影響を受けて倒産した企業を抽出し、件数・負債推移、
「円高関連倒
産」時との比較、業種別、地域別、負債規模別に集計・分析した。
なお、「円安関連倒産」に関する調査は 2014 年 12 月 4 日に続き 3 回目となる。
調査結果(要旨)
1.
12 月の「円安関連倒産」は 44 件判明、4 カ月連続で最多を更新。2014 年の合計は 345 件にの
ぼり、前年(130 件)の 2.7 倍に急増。倒産企業の従業員数は 5270 人と、前年からほぼ倍増
2.
過去の「円高関連倒産」の発生状況と比較すると、今回の「円安関連倒産」は件数が 4 倍に
急増する一方、1 件あたりの負債総額は約
3 分の 1 にとどまることが判明
3.
業種細分類別では、累計で「運輸業」(166
円安関連倒産
円高関連倒産
約2年で約40円
<約2倍>
為替変動速度
約4年で約49円
件数上位の業種を見ると、食料品、建設、
345件
<約4倍>
年間件数
85件
繊維・アパレル、農林水産関連での発生が
1,633億9,600万円
<約1.5倍>
負債総額
1,036億6,900万円
約4億7,300万円
<約3分の1>
1件あたりの
負債総額
約12億1,900万円
約7万1,000社
<約2倍>
関連業者数
約3万3,000社
件、構成比 34.9%)がトップ。このほか、
目立つ
4. 地域別に見ると、2014 年は「関東」が 120
件(構成比 34.8%)で最も多い。都道府県
別に見ると、鳥取県を除く全国 46 都道府県
で判明、円安の影響は全国各地に広がって
※ 「円高倒産」の年間件数・負債総額は、2011年の数値
※ 関連業者数は、「円安倒産」が国内輸入企業数、「円高倒産」が同輸出企業数
※ 上記<>内は、「円高倒産」との単純比較
いる
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1
2015/1/7
第 3 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
1. 件数・負債推移
2013年
12 月の「円安関連倒産」は 44 件判明し、前年同月比 120.0%
月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
4
7
9
3
10
8
12
12
10
17
18
20
負債総額
(百万円)
2,989
2,909
1,216
1,080
8,542
3,039
2,200
4,142
1,838
14,254
7,096
7,694
合計
130
56,999
の増加となった。この結果、2013 年 1 月の集計開始以降で、9
月(31 件)から 4 カ月連続して月間最多を更新した。
また、2014 年の年間合計は 345 件にのぼり、前年(130 件)
に比べて 165.4%の大幅増加となった。
なお、倒産企業の従業員数は 5270 人を数え、前年(2788
人)を大きく上回り、ほぼ倍増となっている(前年比 89.0%
増)。全国各地で相次いで判明する「円安関連倒産」は、各地
域の雇用にも一定の影響を及ぼしているものと見られる。
(件数)
45
50
45
40
40
35
35
30
30
25
25
20
20
15
15
10
10
55
0
44
件数
2014年
25
26
17
23
27
27
22
22
31
39
42
44
負債総額
(百万円)
15,246
8,841
5,741
14,629
7,023
7,966
9,873
15,258
12,883
24,539
15,866
25,531
345
163,396
件数
「円安関連倒産」の推移
777
9999
333
39
39
42
39 39
31
31
31
27 2727 27
31 31
26
2526
2526
27
27
27
27
26
23
23
25 25
22
22
22
22
23 23
20 20
22 22
22 22
20 20
17 18 18
17
1717
17 1818
17 17
17
12121212
1212
12121010
10
10
1010
10
10
888 8
42
44
39
42
1月 2月
2月 3月
3月 4月
4月 5月
5月6月
6月7月
7月8月
8月
9月
10月
11月
12月
1月2月3月
2月
3月
9月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
9月
10月
10月
11月
11月
12月
12月
1月1月2月
3月
4月
4月
5月4月
5月
6月5月
6月
7月6月
7月
8月 7月
8月
9月 8月
9月
10月 10月
11月 10月
11月
12月
2014年
2013年
2014年
(集計年月)
2. 「円高関連倒産」 時との比較
前回の円高局面を振り返ると、サブプライム問題が表面化した 2007 年を境に円高傾向をたどり、
約 4 年かけて約 49 円も円高方向に振れた。この間、円高の影響を受けて行き詰まった「円高関連
倒産」が相次いで発生。大手、中小を問わず、輸出関連企業を中心に深刻な影響を及ぼしたほか、
為替デリバティブ取引の運用失敗による倒産も続
発し、当時、社会問題化した経緯があった。
当時の「円高関連倒産」の発生状況と比較する
円安関連倒産
円高関連倒産
約2年で約40円
<約2倍>
為替変動速度
約4年で約49円
と前回の 4 倍に急増。これに対し、1 件あたりの負
345件
<約4倍>
年間件数
85件
債総額は約 4 億 7300 万円となり、前回の約 3 分の
1,633億9,600万円
<約1.5倍>
負債総額
1,036億6,900万円
1 にとどまる。これは、前回の円高局面時のほぼ 2
約4億7,300万円
<約3分の1>
1件あたりの
負債総額
約12億1,900万円
約7万1,000社
<約2倍>
関連業者数
約3万3,000社
と、今回の「円安関連倒産」は年間件数が 345 件
倍という為替変動のスピードに加え、そもそも輸
出企業に比べて輸入企業の裾野が広く、今回の急
速な円安の影響を受けた中小・零細企業を中心に、
※ 「円高倒産」の年間件数・負債総額は、2011年の数値
※ 関連業者数は、「円安倒産」が国内輸入企業数、「円高倒産」が同輸出企業数
関連倒産が相次いでいるためと見られる。
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※ 上記<>内は、「円高倒産」との単純比較
2
2015/1/7
第 3 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
3. 業種別
業種別に見ると、2014 年の年間合計は「運輸・通信業」が 96 件(構成比 27.8%)で最も多く、
以下、「卸売業」(80 件、構成比 23.2%)、「製造業」(66 件、同 19.1%)、「建設業」(45 件、同
13.0%)の順で続いた。
前年比の増減率で見ると、「建設業」(前年比 800.0%増)と「小売業」(同 550.0%増)の 2 業
種の増加率が突出している。
また、業種細分類別に見ると、2013 年以降の累計では「運輸業」(166 件、構成比 34.9%)が最
も多い。以下、
「食料品・飼料・飲料製造業」と「繊維・衣服・繊維製品卸売業」(各 35 件、同 7.4%)
が続いている。件数上位の業種を見ると、運輸業を筆頭に、食料品、建設、繊維・アパレル、農
林水産関連での発生が目立つ。
順位
1
2
2
4
4
6
7
8
9
9
11
11
13
13
13
業種別
13年 14年
2月
12月 1月
3月
4月
5月
構成比
(%)
運輸業
166
34.9
食料品・飼料・飲料製造業
35
7.4
繊維・衣服・繊維製品卸売業
35
7.4
飲食料品卸売業
23
4.8
職別工事業
23
4.8
総合工事業
21
4.4
農業・林業・漁業
20
4.2
鉄鋼業、非鉄金属・金属製品製造業
9
1.9
家具・建具・じゅう器卸売業
8
1.7
飲食料品小売業
8
1.7
出版・印刷・同関連産業
7
1.5
機械器具卸売業
7
1.5
設備工事業
6
1.3
繊維工業、繊維製品製造業
6
1.3
織物・衣服・身のまわり品小売業
6
1.3
※2013年1月以降の累計で集計
業種細分類別
6月
7月
8月
件数
9月 10月 11月 12月
前月比
(%)
前年同月比
(%)
2014年合計
構成比 前年比
(%) (%)
45 13.0
800.0
件数
2013年以降累計
構成比
件数
(%)
50
10.5
建設
0
4
3
1
4
2
6
5
1
8
0
8
3
▲ 62.5
―
製造
2
1
6
5
3
8
3
4
4
7
11
6
8
33.3
300.0
66
19.1
200.0
88
18.5
卸売
7
8
4
5
5
6
3
5
6
10
7
9
12
33.3
71.4
80
23.2
263.6
102
21.5
小売
3
1
3
1
2
0
2
1
1
2
6
4
3
▲ 25.0
0.0
26
7.5
550.0
30
6.3
運輸・通信
8
9
9
3
8
10
11
3
9
3
8
13
10
▲ 23.1
25.0
96
27.8
37.1
166
34.9
サービス
0
1
0
1
0
1
1
3
0
0
3
0
3
―
―
13
3.8
225.0
17
3.6
不動産
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
―
―
1
0.3
1
0.2
その他
0
1
1
1
1
0
1
1
1
1
4
2
4
100.0
―
18
5.2
500.0
21
4.4
20
25
26
17
23
27
27
22
22
31
39
42
44
4.8
120.0
345 100.0
165.4
475
100.0
合計
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―
3
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第 3 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
4. 地域別
地域別に見ると、2014 年の年間合計は「関東」が 120 件(構成比
順位
34.8%)で最も多く、全体の 3 割強を占めた。とくに 12 月は 22 件
を数えるなど、ここにきて増加が顕著となっている。
以下、
「近畿」
(59 件、構成比 17.1%)、
「中部」(49 件、同 14.2%)、
「九州」(34 件、同 9.9%)の順で続いた。
都道府県別に見ても、鳥取県を除く全国 46 都道府県で判明して
おり、円安の影響は全国各地に広がっていることが分かる。
地域別
13年 14年
2月
12月 1月
3月
4月
5月
6月
7月
前月比
(%)
9月 10月 11月 12月
8月
1
2
3
4
5
6
7
7
9
10
前年同月比
(%)
構成比
(%)
東京都
90
18.9
大阪府
41
8.6
北海道
39
8.2
愛知県
38
8.0
埼玉県
20
4.2
神奈川県
19
4.0
兵庫県
18
3.8
福岡県
18
3.8
静岡県
16
3.4
広島県
13
2.7
※2013年1月以降の累計で集計
都道府県別
件数
2013年以降累計
構成比
件数
(%)
39
8.2
2014年合計
構成比 前年比
(%) (%)
28
8.1
154.5
件数
北海道
1
1
2
6
2
4
0
1
2
1
1
5
3
▲ 40.0
200.0
東北
2
0
1
2
0
1
0
1
2
2
1
3
1
▲ 66.7
▲ 50.0
14
4.1
75.0
22
4.6
関東
5
11
10
6
6
10
11
8
7
6
12
11
22
100.0
340.0
120
34.8
252.9
154
32.4
北陸
0
0
0
0
1
1
0
1
0
2
3
3
1
▲ 66.7
―
12
3.5
33.3
21
4.4
中部
5
3
2
0
5
3
6
3
3
6
3
8
7
▲ 12.5
40.0
49
14.2
157.9
68
14.3
近畿
4
3
5
1
5
4
3
4
5
8
9
8
4
▲ 50.0
0.0
59
17.1
210.5
78
16.4
中国
1
3
1
1
3
2
3
0
0
2
2
2
0 ▲ 100.0 ▲ 100.0
19
5.5
58.3
31
6.5
四国
1
1
1
0
0
1
2
0
1
2
2
0
0
10
2.9
42.9
17
3.6
34
9.9
209.1
45
9.5
345 100.0
165.4
475
100.0
九州
合計
― ▲ 100.0
1
3
4
1
1
1
2
4
2
2
6
2
6
200.0
500.0
20
25
26
17
23
27
27
22
22
31
39
42
44
4.8
120.0
5. 負債規模別
負債規模別に見ると、2014 年の年間合計は「1 億円以上 5 億円未満」が 164 件(構成比 47.5%)
で最も多く、全体のほぼ半数を占めた。「5000 万円未満」(53 件、構成比 15.4%)、
「5000 万円以
上 1 億円未満」(44 件、同 12.8%)と合わせて、全体の 75%強が、負債 5 億円未満の中小企業で
占める結果となった。
他方、負債 10 億円以上の倒産が 40 件判明し、前年の 16 件から 2.5 倍に増加。とくに 12 月は 8
件を数えるなど、ここにきて大型倒産も発生し始めている。
負債規模別
13年 14年
2月
12月 1月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月
前月比
(%)
前年同月比
(%)
2014年合計
構成比 前年比
(%) (%)
53 15.4
253.3
件数
2013年以降累計
構成比
件数
(%)
68
14.3
5000万円未満
3
3
2
2
2
1
3
3
3
7
7
11
9
▲ 18.2
200.0
5000万円以上1億円未満
2
3
3
4
3
4
1
3
1
2
5
11
4
▲ 63.6
100.0
44
12.8
158.8
61
1億円以上5億円未満
12
13
14
6
11
18
17
10
13
12
15
15
20
33.3
66.7
164
47.5
127.8
236
49.7
5億円以上10億円未満
2
1
5
4
2
4
4
5
2
8
4
2
3
50.0
50.0
44
12.8
340.0
54
11.4
10億円以上50億円未満
1
5
2
1
5
0
2
1
2
2
8
3
7
133.3
600.0
38
11.0
153.3
53
11.2
50億円以上100億円未満
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
―
―
2
0.6
100.0
3
0.6
100億円以上
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
―
―
0
0.0
20
25
26
17
23
27
27
22
22
31
39
42
44
4.8
120.0
合計
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
345 100.0
―
165.4
12.8
0
0.0
475
100.0
4
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第 3 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
6. 主な倒産事例
① 生菓子製造のアサバ(栃木県、負債 5 億 9800 万円)は、自社ブランドのオリジナル商品にこ
だわった運営で、栃木県フロンティア企業経営革新計画の承認を受けるなど、対外的にも県内
を代表する菓子ブランドに成長。2014 年 3 月期の年売上高は約 5 億 7000 万円を計上していた
が、この間の 2012 年 5 月、商品の回収騒ぎが発生するなど対外的な信用が失墜。さらに昨今
の円安の影響から主力材料のチーズをはじめ、原材料の価格が高騰し、最近では採算が維持で
きない状況が続くなか、12 月 17 日に破産手続き開始決定を受けた。
② 燃料販売の三盟石販(静岡県、負債 2 億円)は、専らタンクローリーで県内の建築現場や工場、
港湾施設へ、軽油や重油、オイル、重機・トラックの部品等を直接配送し、2002 年 5 月期には
年売上高約 1 億 2000 万円を計上していた。しかし、その後は景気低迷と官公庁予算の圧縮な
どで受注が落ち込むなか、 近年は政権交代後の円安進行によって燃料価格が上昇したものの、
受注獲得競争が激しいため得意先への価格転嫁が難しい状況が続き、財務面はさらに悪化し、
先行きの見通しが立たず、11 月 25 日に破産手続き開始決定を受けた。
③ 食肉・すり身加工の山尾食産(長崎県、負債 1 億 7700 万円)は、唐揚げ、照り焼き、ミンチ
ボールなど冷凍惣菜のほか、すり身の製造を飲食店や食品メーカーから受注、2011 年 9 月期は
年売上高約 2 億 8000 万円を計上していた。しかし、近年は競合激化による単価安の一方で、
円安による輸入食材の仕入高騰のため売上、収益ともに落ち込むなか、今後の業績回復の見通
しが立たないことから事業存続は困難と判断し、12 月 16 日に破産手続き開始決定を受けた。
④ 婦人靴卸のウヱムラ(東京都、負債 1 億 6400 万円)は、メーカーへのOEM供給のほか、自社
ブランドの企画販売も展開。2002 年 2 月の民事再生法(2005 年 10 月に終結)を経て、2008
年 5 月期には年売上高約 21 億 5300 万円を計上していたが、その後は消費低迷の影響等で業績
が低迷。この間、為替デリバティブ取引に伴う多額の差損が発生し、財務体質も悪化するなか、
近時は得意先が海外との直接取引にシフトし受注が減少していたほか、円安の進行による利幅
の低減もあり資金繰りもひっ迫、関係会社とともに 12 月 8 日に破産手続き開始決定を受けた。
⑤ 豆腐製造の中牟田商店(福岡県、負債 1 億 2200 万円)は、自社工場で製造し、九州のスーパ
ーや問屋へ販売するほか、油揚げなどの仕入販売も行い、98 年 12 月期の年売上高は約 1 億 3200
万円を計上。しかし近年は同業者との価格競争等で売り上げが伸び悩んでいたうえ、震災後は
主原料となる大豆の仕入価格高騰で収益も低迷するなか、製造機械のメンテナンス不備による
商品回収も発生するなど資金繰りもひっ迫し、12 月 18 日に破産手続き開始決定を受けた。
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2015/1/7
第 3 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
7. 今後の見通し
値上げラッシュが止まらない。各種食料品、日用品、電気・ガスなど、大企業による値上げ発
表が連日続いている。もちろん値上げの背景には、需給の問題や原材料価格の高騰などさまざま
な要素はあるが、急速に進む円安が大きな要因になっている商品があるのは間違いない。
原材料の多くを輸入に頼る食料品などはその典型だろう。昨年の消費税増税に加え、各種商品・
サービスで値上げの動きが広がることで、消費者の負担感がいっそう増すのは避けられない。ガ
ソリン・軽油価格の下落など家計にとってのプラス面もあるが、相次ぐ値上げの動きが、景気浮
揚のカギとなる個人消費の足を引っ張りかねない。
円安によるコスト増に苦しむ多くの中小・零細企業にとって、2015 年はまさに正念場となる。
日銀による追加の金融緩和後の急速な円安の影響が本格化すると見られるうえ、金融円滑化法に
よるリスケ効果も業績回復の遅れから徐々に薄れつつあるためだ。このままでは円安の恩恵が多
くの中小企業に行き届く前に、関連倒産の増加に拍車がかかるという最悪のシナリオも想定する
必要があるだろう。
今後については、引き続き「円安関連倒産」が増加基調をたどるなか、これまで減少を続けて
きた全体の倒産件数も緩やかに増加に転じる可能性がある。
参考
「円高関連倒産」の件数・負債推移
2008年
月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
0
0
4
0
2
0
0
1
0
1
0
6
負債総額
(百万円)
0
0
3,367
0
2,800
0
0
935
0
11,000
0
85,160
合計
14
103,262
件数
2009年
1
4
1
4
5
1
3
3
5
5
3
0
負債総額
(百万円)
6,814
3,574
1,413
4,506
21,590
1,200
4,860
4,850
10,450
10,167
1,750
0
35
71,174
件数
2010年
3
5
2
7
1
2
6
2
5
7
6
12
負債総額
(百万円)
3,022
3,467
4,000
20,473
10,062
2,390
16,163
1,600
2,735
14,190
8,389
19,562
58
106,053
件数
2011年
7
3
6
5
2
1
2
8
10
15
14
12
負債総額
(百万円)
5,192
4,437
12,004
3,819
9,739
579
12,434
5,799
4,302
6,126
15,989
23,249
85
103,669
件数
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