第1章 説明すべき事実 (The Facts to Be Explained)

第 1 章 説明すべき事実
1
• 最後 3 分: アメリカ, 7.76m
• 最後 1 秒: ルクセンブルク, 12.28m
第 1 章 説明すべき事実
• 世界平均: 8,630 ドル,1.83m
もっとも豊かな国の人々は世界人口の 20%にあたるが,受
け取る所得はすべての所得の 58%になる.
⋆ 講義ノートは
http://www2.asia-u.ac.jp/˜ shin/lecture/growth.html にある.
⋆ 第 2 版のスライドは
http://wps.aw.com/aw weil econgrowth 2/ → Classrom ReR Slides にある.
sources → PowerPoint⃝
⋆ 第 3 版のスライドは
各国間の所得成長率の相違
1.2
1.2.1
所得水準に与える成長の効果
http://wps.aw.com/aw weil econgrowth 3/ → Classrom ReR Slides にある.
sources → PowerPoint⃝
Figure 2
アメリカの 1 人当たり国内総生産, 1870-2005
• 国際間の所得格差
• 過去と現在の所得格差
• 成長パタンの相違
• 2005 年 1 人当たり GDP は 1870 年 1 人当たり GDP
の 12.5 倍
所得水準の諸国間格差
1.1
• 135 年間年平均成長率: 1.9%
■ トータル GDP 対 1 人当たり GDP
■ 成長率による展開
経済成長率 (growth rate)
• 国内総生産 (GDP)
• 1 人当たり国内総生産 (GDP per capita)
g=
1 人当たりにするのは,国全体ではなく,各個人が平均
してどの程度実際に生産・購入できるのかを表すため
g=
Xt+1 − Xt
Xt
(X
t+n
) n1
Xt
である.つまり,個人のレベルでの発展を根本として
−1
(1.1)
(1.2)
• 線形尺度 (目盛) (linear scale)
考えるのである.
Table 1
• 比率尺度 (目盛),対数尺度 (目盛) (ratio scale)
3 つの指標による 2005 年の上位 10 か国
Figure 3
比率尺度を使ったときの効果
Figure 1
世界の所得順パレード
• 72 の法則
• 2 倍になる時間 ≈
• 6 分: サハラ以南のアフリカ諸国 (Sub-Saharan
Africa), 29cm
• 11 分: インド, 73cm
• 30 分: 中国, 126cm,13 分かかる
• 53 分: 日本, 5.32m
72
g
時間と対数目盛のフラフ
• 横軸を時間,縦軸を対数目盛 (比例目盛) にすると,グ
ラフの傾きは 成長率 を表すことになる.
• 横軸を時間,縦軸を線形目盛にすると,グラフの傾き
は成長率ではないので注意が必要.
第 1 章 説明すべき事実
2
Figure 4
アメリカの 1 人当たり国内総生産, 1870-2005 (比率尺度)
世界全体の成長ペースの加速化
年平均成長率
Figure 5
アメリカ,イギリス,日本の 1 人当たり国内総生産,
• 1820-1870 年: 0.5%
• 1870-1950 年: 1.1%
• 1950-1998 年: 2.1%
1870-2003
所得格差の増大
• 1820 年,最も豊かなグループと最も貧しいグループ
の 1 人当たり所得の差は約 3 倍
• アメリカ: 1.9%
• イギリス: 1.4%
• 1998 年,19 倍
わずかの差でも時間をへだてると大きな影響を与える.1870
年にイギリスはアメリカより 1 人当たり所得で 33%豊かで
あったが,2003 年には 27%貧しくなった.
• 1885 年,日本所得はアメリカ所得の
1
4
相対地位の変化
1820 年以前の成長
• 1939 年,日本所得はアメリカ所得の 35%
1.2.4
• 1950 年-1990 年,年平均成長率 5.9%
低い成長率
• 1990 年,日本所得はアメリカ所得の 85%
成長はカチカチに遅いものだった.
年平均成長率
1.2.2
過去 35 年間の成長
Figure 6
• 500-1000: ほぼ 0,
• 1500-1700: 0.04%,
成長率の分布, 1970-2005
• 1700-1820: 0.07%
■ 成長 対 景気循環
小さい不平等
現在の基準でみると各国間の所得格差は非常に小さかった.
• 経済成長 (growth): 長期トレンド
• 景気循環 (ビジネス・サイクル: Business Cycle):
1.2.3
短期的変動
相対順位の変化
1820 年以降のように,所得分布の順位は 1820 年以前で
はかなり変わっている.
1820 年以降の成長
Figure 7
各国グループの 1 人当たり GDP, 1820-2003
• ハイチ (Haiti) の例: 西側のヨーロッパ植民地の中で
は 1790 年にハイチが豊かな国のトップであった.
• 中国の例: ヨーロッパの生活水準は 1750 年ころ中国
より優越してしまい,19 世紀中期のアヘン戦争期に
は工業化したヨーロッパの収奪から中国は防衛できな
かった.
第 1 章 説明すべき事実
3
■ 諸国間と国内の所得不平等
1.6
• 国際間の所得不平等 (between-country inequality): 国と国の間の不平等
• 1 人当たり GDP (GDP per capita)
• 購買力平価 (purchasing power parity)
一国内のの不平等
Figure 8
購買力平価指数を使った
GDP の推定と比較
• 国内の所得不平等 (within-country inequality):
付録:
• 購買力平価による 1 人当たり GDP (GDP per capita
using PPP)
世界の所得不平等とその構成要因, 1820-1992
国際比較
• 過去: 国内の所得不平等
• 近年: 国際間の所得不平等
■ 宇宙からみた経済成長
1 人当たり GDP は,もとは各国の通貨で表されている.
しかしながら,国際比較を行う場合には,共通の通貨に換
算して比較する必要がある.
いちぶついっか
一物一価 の法則 (law of one price)
物やサービスの価格は,通貨の購買力を表し,財やサー
ビスの取引が自由に行える市場では,同じ商品の価格は 1
つに決まる.
• 明るくなった国: ポーランド (4.2%),ハンガリー
(3.4%),ルーマニア (2.5%)
一物一価が成り立つとき,国内でも海外でも,同じ商品
の価格は同じ価格で取引されるので,2 国間の為替相場は 2
国間の同じ商品を同じ価格にするように動き,均衡する.
• 暗くなった国: ウクライナ,モルドバ (-1.2%)
為替レートと購買力平価
1.3
˙替
˙レ
˙ー
˙ トが
˙
一般に,国際比較のための変換レートとして為
結論
⋆ memo
存在する.しかし,経済発展水準を示すために 1 人当た
り GDP を他国の通貨に換算するには為替レートではなく,
˙買
˙力
˙平
˙ 価を通貨換算に用いる場合が多い.
˙
購
名目為替レート ̸=PPP
本来ならば,現実の為替レートは各国通貨の購買力を反
1.4
基本用語
• gross domestic product(国内総生産)
• purchasing power parity(購買力平価)
• ratio scale(比例尺度)
• linear scale(線形尺度)
• rule of 72(72 の法則)
映しているはずであるが,実際のところ大きな乖離が発生
している.ほとんどの国において名目為替レートが PPP と
一致しない.
理由
貿易財 (tradables) と非貿易財 (nontradables)
• 所得が低い国であるほど物価水準が相対的に低くなる.
Table 2
豊かな国と貧しい国の生産と価格
1.5
問題
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7
第 1 章 説明すべき事実
4
指数の形の成長率
Table 3
購買力平価を用いたときの GDP の効果比較
∆x
∆xa
=a
xa
x
(1.5)
a
つまり,x の成長率 = a × x の成長率
バラッサ・サミュエルソン効果 (Ballasa-Samuelson ef-
練習問題
fect)
貿易財価格と非貿易財価格の加重平均である物価水準は,
発展途上国よりも先進国において高くなるはずである.こ
練習 1:基礎知識
x(t) = e0.05t で,z(t) = e0.01t であると仮定する.次の
場合のそれぞれについて,y(t) の成長率を計算せよ.
れを バラッサ・サミュエルソン効果 と呼んでいる.
1.7
(1) y = x
問題
(2) y = z
A.1, A.2
(3) y = xz
1.8
付録: 成長率に関する計算
(4) y =
ある変数の対数を時間について微分すると,その変数の
成長率が求められる.
(5) y = xβ z 1−β ,
(6) y =
掛け算の形の成長率
x
z
( x )β
z
,
(1.3)
練習 2:基礎知識
(1) y = k β
x
y
(2) y =
=
∆x ∆y
−
x
y
つまり, xy の成長率 = x の成長率 − y の成長率
(1.4)
次の場合に,k ,l,m の成長率を用いて y の成長率を
示せ.β は任意の定数とする.
割り算の形の成長率
( )
∆ xy
1
2
1
3
β=
∆x ∆y
∆(xy)
=
+
xy
x
y
つまり,xy の成長率 = x の成長率 + y の成長率
β=
k
m
(3) y = (klm)β
(4) y = (kl)β
( 1 )1−β
m