基幹系システムのアウトソーシング移行による検証について [283KB pdf

基幹系システムのアウトソーシング移行による検証について
1.はじめに
平成23年1月から稼働している基幹系システムは、これまでの大型汎用コン
ピュータ(ホストコンピュータ)による自庁内処理方式から、基幹系システム(オ
ープン系サーバシステム)本体を外部データセンター内に設置し、運用・管理を
一括して処理するアウトソーシング方式へ移行した。
基幹系システムのアウトソーシング移行は、オンライン処理やバッチ(一括大
量)処理に対する情報管理課及び各主管課の負担軽減、事務処理を効率化し、運
用・管理に係る経費を削減するとともに、市民サービスの向上を図ることを目的
に実施したものであり、以下は移行後における検証を行い、その状況をまとめた
ものである。
<参考>
基幹系システム一覧
課名
市民課
保険年金課
産業振興課
納税課
課税課
高齢介護課
システム名
住民基本台帳システム
印鑑登録システム
外国人登録システム
窓口連携システム
国民健康保険給付システム
国民健康保険資格管理システム
国民健康保険滞納対策システム
国民健康保険税システム
前期高齢システム
国民年金システム
農業政策システム
収納管理システム
住民税システム
法人市民税システム
固定資産税システム
軽自動車税システム
介護保険システム
介護収納システム
学務総合システム
学校教育課
選挙管理委員会事務
選挙システム
局
下水道課
下水道受益者負担金システム
情報管理課
システム管理、データ連携
共通照会システム、
各課共通
宛名管理システム
口座管理システム
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2.経費削減の効果について
(1)情報システムの運用に係る経費
(単位:千円)
科目
平成 21 年度
需用費
平成 22 年度
平成 23 年度
11,999
6,732
6,186
委託料
使用料及び
賃借料
その他
193,852
102,437
38,578
99,167
128,451
224,192
1,690
4,915
3,014
合計
306,708
242,535
271,970
※
※
※
※
需用費:消耗品購入、電算帳票印刷等に要する費用
委託料:システム改修、処理、機器保守、パンチ入力等に要する費用
使用料及び賃借料:情報システム等の賃借(リース)に要する費用
その他:通信運搬、備品購入等に要する費用
情報システムの運用に係る経費は、基幹系システム移行前の自庁内処理方式で
あった平成 21 年度の合計額が 306,708 千円を要していた。
基幹系システムが通年稼働になった平成 23 年度は、全体の経費は 271,970
千円となり、34,738 千円の経費削減効果が得られた。
<情報システムの運用に関する経費の推移(平成 21~23 年度)>
350,000
306,708 千円
242,535 千円
271,970 千円
300,000
250,000
200,000
34,738 千円
の削減
150,000
100,000
50,000
0
平成21年度
平成22年度
平成23年度
運用経費(全体)
<基幹系システム>
※ 平成 22 年度は、
基幹系システムの移行期間にあたり、一時的に運用経費が減少している。
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各年度の経費内訳を比較すると、平成 21 年度は、システム改修、電算処理、
機器管理保守に係る委託料が 193,852 千円(構成比 63%)、機器等使用料及
び賃借料(リース料)が 99,167 千円(構成比 32%)であった。
基幹系システムが通年稼働になった平成 23 年度は、委託料が 38,578 千円
(構成比 14%)、機器等使用料及び賃借料(リース料)が 224,192 千円(構
成比 83%)となり、経費内訳が大きく変わっている。
<情報システムの運用に関する経費内訳の推移(平成 21~23 年度)>
平成21年度
その他 1%
平成22年度
その他 2%
需用費 4%
需用費 3%
委託料 63%
委託料 42%
使用料及び賃借料
32%
使用料及び賃借料
52%
平成23年度
その他 1%
需用費 2%
委託料 14%
使用料及び賃借料
83%
このように、従前のホストコンピュータの運用経費は、システム改修費や設備
保守費に大きなコストをかけていたが、標準化された仕様に基づいて構築された
基幹系システムを導入した以降は、法改正等に伴うシステム改修費が抑制でき、
また、基幹系システム本体を外部データセンターに移管したことにより、ホスト
コンピュータ等の大規模な設備保守が丌要になったこと等によって、大きな経費
削減効果を得ることができた。
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(2)人件費
ア.情報管理課
<情報管理課の人件費の推移(平成 21~23 年度)>
70,000
47,000 千円
60,000
50,000
65,800 千円
65,800 千円
40,000
18,800 千円
の削減
30,000
20,000
10,000
0
平成21年度
平成22年度
平成23年度
人件費(情報管理課のみ)
※ 数値は、1 人あたりの平均人件費(9,400 千円)に職員数を乗じて算出した。
<情報管理課の時間外勤務手当の推移(平成 21~23 年度)>
6,000
4,998 千円
1,989 時間
5,000
4,000
3,000
合計金額
1,825 千円
1,293 千円
の削減
延べ時間数
641 時間
2,000
532 千円
242 時間
1,000
0
平成21年度
平成22年度
平成23年度
時間外勤務手当(情報管理課のみ)
※ 数値は、情報管理課職員全員の時間外勤務手当の実績である。
※ 平成22年度は、基幹系システムの移行にあたり、一時的に時間外勤務が増大した。
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情報管理課では、基幹系システムをアウトソーシングしたことによって、職
員数が移行前の7名から移行後の 5 名に減員され、概ね 18,800 千円の人件
費削減効果が得られた。
また、これまで自庁内処理対応が必要であった時間外勤務手当は、平成21
年度実績に比べ、平成23年度実績で約70%削減され、1,293 千円の人件
費削減効果が得られた。
なお、平成 22 年度は、基幹系システムの移行に係る作業に伴い、合計金額、
時間数ともに一時的に増大した。
イ.各主管課
各主管課においては、職員数の削減はないものの、事務の効率化や省力化に
よって、これまで基幹系システムに関わった職員を他の業務に振り向ける等、
人的資源の有効活用に効果が得られた。
3.事務の効率化について
(1)情報管理課
情報管理課では、職員が行っていたプログラム修正やバッチ処理等に関わる
業務がアウトソーシングされたことで、情報システムの運用・管理業務が効率
化された。
(2)各主管課
各主管課では、次のような効果があった。
・ 端末の画面構成が見やすく、新規入力や更新入力が容易になり、入力ミ
ス等が減った。
・ システムや端末の処理性能が高くなり、操作性が向上したため、事務処
理が迅速化された。
・ 住基情報、税情報の照会が円滑に行えるようにより、窓口や電話での問
合せに迅速かつ正確に対応できるようになった。
・ 台帳管理が電子化され、紙媒体で保管していた台帳が丌要になり、保管
場所等の省力化が図られた。
・ 台帳管理が電子化され、特記事項等の入力も可能なため、同じ業務を担
当する職員による情報共有が緊密になったことにより、意思疎通や業務連
携がスムーズになった。
・ 台帳管理が電子化され、EUC 機能(利用者が容易に条件設定して該当
データを抽出・加工できる機能)を活用して、該当データの検索が容易に
なり、調査票作成や資料作成に要する労力が軽減された。
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4.市民サービスの向上について
市民サービスでは、次のような効果があった。
・ 事務処理が迅速化し、各種証明書の発行までの所要時間が短縮され、窓
口での市民の待ち時間が短縮された。
・ 窓口連携機能を活用することで、例えば、転入手続きに来庁した方(世
帯)の諸条件によって、転入手続き以降に、どの窓口での手続きが必要か
案内できようになり、手続漏れを防ぐことができた。
5.個人情報保護と情報セキュリティの向上について
(1)個人情報保護について
・ 業務毎に閲覧できる個人情報を細かく制御できるようになり、個人情報
保護体制が強化できた。
(2)情報セキュリティについて
・ 職員個々に付不された IC カードを利用し、利用権限のない者の丌正利
用を抑止できた(人的セキュリティ)。
・ 誰(職員)が、いつ、どの情報にアクセスしたかといった記録(アクセ
スログ)が収集できるようなり、丌正利用の抑止効果が高められた(技術
的セキュリティ)。
・ サーバ等の重要機器が外部データセンターに移管されたことで、大規模
な災害発生時に情報システムが被災しない体制にすることができた(物理
的セキュリティ)。
6.その他、運用全般に関することについて
新基幹系システムは、平成 23 年 1 月の稼働直後(平成 23 年 3 月 11 日)
に東日本大震災が発生したことによる計画停電の影響によって、業務時間中のシ
ステム停止を余儀なくされた以外は、現在までにシステム障害等による長時間の
システム停止は生じていない。
また、システムの丌具合による各種証明書や帳票類の誤出力によって、市民サ
ービスに著しい悪影響を及ぼすことはなく、細かな丌具合(プログラムのバグ等)
は散見されるもののシステム全体としては安定稼働している。
システム全体の性能向上とアウトソーシング移行後の運用スケジュールの綿
密な調整によって、これまで自庁内処理で行っていたバッチ処理における情報管
理課及び各主管課の負担が軽減され、また、短期間かつ正確に処理が行われてお
り、事務の効率性は飛躍的に高まった。
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