平成25年度第1回海外事情報告会 ベトナムの今と昔 平成26年7月12日(土) 橋本明彦 元JICA筑波国際センター所長 元JICAベトナム共和国医療協力調整員 元JICA海外事務所長(エジプト、フィリピン) 元ベトナム日本センター所長 (1)ベトナム戦争を中心とした当時の状況と歴史 (2)現在のベトナム ベトナムは11世紀までは中国の支配下にありましたが、1010年の李王朝の成立により独 立国としての形ができました。しかしながらその後も同国の歴代の王朝と隣の大国、中国 の王朝との間で数々の紛争、紆余曲折がありました。 16世紀には中部ベトナムのホイアンを中心として日本との交易が盛んに行われ、現在で も同地には日本人町の痕跡が残っています。 19世紀に入り1858年のフランスの侵入、1887年のフランス植民地としてのインドシナ連 邦の成立を経て、長年にわたる抗仏運動の歴史が始まりました。 1904年には、抗仏独立運動の中心人物のひとりであつたファン・ボイ・チャウによる維 新会が設立され、日本の援助を期待して独立を図るドンヅー(東遊)運動の歴史も残されて います。 その後第二次世界大戦において、一時日本軍の支配下に入り、同大戦の終結により独立 宣言を果たしたものの、再びフランスとの間でインドシナ戦争に突入しました。 1954年有名なディエン・ビエン・フーの戦いでフランス軍を撃破し、真の統一国家なる かと思われましたが、米国の後押しにより南ベトナム政権が誕生したことにより、その後 に続く米国を巻き込んだベトナム戦争へと繋がつていきます。 1975年のサイゴン政権の崩壊後南北が統一され、ようやく統一された独立国家が成立し 現在に至っています。 このように見てくると、同国はまさに国際情勢に翻弄され続けてきた歴史そのものであ り、その中にあっても一般の人々の生活は営々と営み続けてこられました。 ベトナム人の粘り強さ、不屈の精神、知恵もその中から生まれてきたのではないかと思 われます。 私はベトナム戦争の最後の約3年間、1971年から1974年の終わりまで当時のサイゴンに 滞在する機会がありました。まだ私自身若かつたこともあり、片言のベトナム語を駆使し て、できるだけ一般庶民の人々との交流を図ってきました。 戦争というある意味極限状態の中で、人間の最も美しいもの、醜いものの一端に触れら れたことは、その後の私の考え方にも大きく影響を与えてきたと感じています。 幸いにも2002年から2006年までの4年間、わが国とベトナムとの新しい交流を図るために 設立された、ベトナム日本センターに勤務する機会に恵まれ、学生を中心とした戦争を知 らない世代の若い人々との密接な交流をとおして、新生ベトナムの息吹を感じることがで きました。 先に述べた過去のわが国との関わりも含め、これからの両国の関係を考える上で一助に なればと思っています。 ベトナム略史 10世紀末まで中国の支配下 1010年 李王朝成立:独立 16世紀 ホイアンの日本人町栄える 1858年 フランス、ベトナム侵入 1867年 南部コーチシナ、中部アンナン、北部トンキンに3分割(グエン朝とフラ ンス植民地政庁の2重支配) 1887年 インドシナ連邦成立(ベトナム、ラオス、カンボジアを含む仏植民地) 1904年 ファン・ボイ・チャウ維新会結成、東遊運動(日本の援助を得て独立を図 る運動)始まる 1907年 東遊運動を日本政府が弾圧 1930年 ホーチミン(グエン・アイ・コック)インドシナ共産党結成 1940年 日本軍北部仏印進駐 1941年 日本軍南部仏印進駐(フランスとの2重支配始まる) 1945年 ホーチミンがベトナム民主共和国宣言(第二次世界大戦の終結の機会を提 える。連合軍は独立を認めず、北緯16度線の南にイギリス軍、北部に中 国国民党軍を進駐させ、日本軍の武装解除、同時にフランス軍が南部に復 帰 1946年 フランス軍・ベトミン勢力の間にインドシナ戦争始まる。 1954年 仏軍ディエン・ビエン・フーで敗退、ジュネーブ休戦協定により、北緯1 7度線で南北分断、(2年以内にベトナム全域で総選挙を約束) 1955年 米国の後押しで南にベトナム共和国(ゴ・ジン・ジェム政権)成立 1960年 南ベトナム解放戦線設立 1965年 米軍北爆開始、ダナン上陸 1968年 テト攻勢 1973年 パリ和平協定、米軍撤退、日本と北ベトナム外交関係樹立 1975年 サイゴン解放(陥落) 1976年 ベトナム社会主義共和国成立 1978年 カンボジア紛争 1979年 中越紛争 1986年 ドイモイ政策(経済刷新)始まる 1991年 カンボジア和平パリ協定 1992年 日本ベトナム経済援助再開 1995年 米国と国交正常化、ASEAN正式加盟 1998年 APEC正式参加、2007年WTO正式加盟
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