奇跡の星、母なる地球

奇跡の星、母なる地球
平成 14 年(2002)8 月
副代表 鎌倉 国年
地球の存在を if … の形で考えてみましょう。
もし地球が太陽からもうチョット遠い軌道を回転していたとした
ら、全ての水は凍りつき酷寒の地に生命は育たなかったでしょう。
反対に、あと少し太陽に近かったとしたら、そこは灼熱の地獄と
化していたでしょう。南極の氷山、ヒマラヤの雪、アマゾンのジャ
ングル、0度で凍り、蒸発しながら100度で沸騰して気体になる
水の存在なくしてこれほど多様な世界は無く、生命の繁栄する
舞台もありません。山襞も川も平野も、勿論海そのものも、豊か
な水が作り出した世界です。下はマイナス273度から上は何億
度までの温度域の中で、僅か上下100度の範囲を維持する水
の惑星は、太陽から絶妙の距離にあり、むしろ奇跡の距離とし
か言いようがありません。
• もし地球が自転していなかったら、上期半年は昼で、下期半
年は夜になっています。昼の6ヶ月は夜間の放熱が無いので
太陽熱は蓄積される一方で、これまた大地は焼け焦げ、海は
荒ぶることでしょう。夜の半年は冷え続け、物みな凍る暗黒の
世界です。いずれにしても生命が存在できるとは思えず、大き
な宇宙船である地球が、今の軌道を自転しながら回転する姿
は、奇跡そのものではないでしょうか。そして我々人間が生き
られる温度領域と言えば、せいぜいシベリアのマイナス50度
位からインドのプラス50度ほどの、上下100度の範囲でしか
ありません。
• 月が地球の周りをめぐることで、汐の満ち干が繰り返されて、
地球上に広大な干潟が生まれ、原始の海に育った生命が水
と空気の端境地帯に満ち溢れ、そのうちのある種はやがて地
上へ上陸するようになりました。陸上生物が生まれる為には時
間で海と陸を繰り返す場所が必要でした。
• 直径1メートルの地球儀を目の前にして大気の厚さを当ては
めれば、僅かに1ミリにすぎず、薄皮饅頭のような大気層が、
有害な宇宙線から生命を守り、隕石の大部分を燃やし尽くし
て落下の脅威を除いているのです。直径10メートルの隕石が
大洋に落ちて引き起こす津波の高さを想像しただけでも、かく
も巧妙に保護された状態に畏敬の念を覚えざるを得ません。
• チリから4000キロメートル、絶海の孤島イースター島は、かつ
て森林に覆われた最盛期には人口7万に達していたと言われ
ていますが、復活祭の日に発見された時には千余人々が暮
らしていたのみであったと言われます。人間が森を切り尽くし、
木という木が無くなって島を脱出する舟さえも作れなくなった
歴史は、宇宙の孤球である地球に暮らす我々人類の将来を
暗示しかねないものです。
• 地球儀についた埃ほども無い人間が、環境を破壊し、文明の
排泄物で地球を汚して行くことへの反省は、地球にやさしくで
はなく、地球に謙虚に、母なる水の惑星の全存在を畏敬する
態度からの出発であるべきではないでしょうか。